《税務Q&A》
情報提供 TKC税務研究所
【件名】
弁護士に支払った着手金の損金計上について
【質問】
当社は、派遣労働者の解雇を行ったところ、不当解雇という訴えが提訴されました。この提訴に不服があるので、最後まで争うこととし、専門の弁護士に依頼しましたところ、着手金として200万円の請求があり、これを支払いましたが、この200万円は、今後の進展に関わらず相互に請求等を行わないことを約しています。このような着手金は一時の損金計上が認められると思われますが、いかがでしようか。
【回答】
法人税法における損金は、法人税法第22条第4項の規定により一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算することとされており、損金をいつの事業年度に計上すべきかについては、企業会計上の発生主義及び費用収益対応の原則が妥当するものと解されています。 一般的に、販売費等については、いわゆる期間対応により発生した事業年度で計上されることになりますが、同条第3項の規定において「債務確定基準」が採用されていると考えられます。 この「債務確定基準」は、法人税基本通達2-2-12において次のような要件のすべてに該当するものとされています。(1)当該事業年度終了の日までに当該費用に係る債務が成立していること。(2)当該事業年度終了の日までに当該債務に基づいて具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していること。(3)当該事業年度終了の日までにその金額を合理的に算定することができるものであること。 ところで、従来、設けられていました各弁護士会の報酬規程によりますと、着手金は事件または法律事務を依頼するときに支払う費用とされ、また、報酬金は依頼した事件等が解決したときその解決の程度に応じて支払う費用とされています。これらの算定方法は、事件の種類、事件の内容及び事件によって依頼者が受ける経済的利益の額などによって異なっています。なお、通常、着手金は、報酬金の前払いでもなく、手付金でもないとされていますので報酬金の一部として充当されることもないとされています。また、事件等の解決の有無にかかわらず、着手金の返金は行わないと取り決められています。(この報酬規程も平成16年4月1日改正された弁護士法の施行に伴い廃止され、事件の種類、事件の内容及び事件によって依頼者が受ける経済的利益の額などによって、各弁護士と依頼者の間で個別に決められることになります。) このような弁護士費用の実態において、本件ケースの着手金は、今後の進展に関わらず相互に請求等を行わないことを約されていますので、いわば、その支払時点において金額が確定し支払いも成立していると捉えられ、また、その支払いの意図も訴訟を前提にし、金額の算定も明確であるということ等を考えますと上記通達の2-2-12の債務確定の要件をすべて充足していると捉えることもできます。従いまして、着手金を支払ったときに、一時の損金に計上しても不合理とは考えられないと思われます。
【関連情報】
《法令等》
【収録日】
平成21年 2月17日