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《税務Q&A》

情報提供 TKC税務研究所

【件名】

法定相続分で相続登記がしてある土地の譲渡代金の任意分配と課税

【質問】

 被相続人甲の遺産については、現在共同相続人間での分割協議中であるが、このほど、遺産中の特定の土地(A土地)について不動産業者から買申込みがあり、共同相続人は、共同で各法定相続分による相続登記を経由して譲渡する予定である。
 しかし、現実には、提示された譲渡代金が好条件なので譲渡の合意は成立したものの、その譲渡代金の分配額については、改めて共同相続人間で協議して決めることにしたので、結果的には、登記上の持分には必ずしも対応しない分配が行われることになるものと予想される。
 このような土地譲渡代金の分配が行われた場合、課税上の問題が生じるか。

【回答】

1 相続の開始後分割協議等が確定するまでの間に、遺産である不動産の全部又は一部について、共同相続人の全員又は一人が単独で申請し、法定相続分により相続登記をすることがよく見受けられる。
 このような登記の法的性質については、通常、次の二つに整理される。
(1)その不動産については、共同相続人間に、法定相続分に相当する持分による共有財産(民法第2編第3章第3節に規定する共有関係にあるもの)とする合意(法定相続分の割合による遺産分割)の下に行われているもの
(2)その不動産については、まだ遺産分割を了していないが、売却の予定がある等の理由により、共同相続人が共有(民法898条に規定する共有-いわゆる「合有」)する相続財産の保存行為(民法252条但書)として行われているもの
 したがって、(1)は遺産分割済財産に当たり、(2)は未分割財産に当たることになるが、そのいずれに該当するかは登記上ではほとんど見分けがつかず、登記に至る事実関係に即して個別的に判定する必要がある。
 なお、後述のように、最高判(一小)昭54.2.22は、法定相続分で共有登記をした土地を譲渡した場合には、特段の事情がない限り、その土地については共同相続人間で法定相続分による遺産分割が終わっていたものと解するのが相当であるとしている。
2 したがって、本件において、A土地についての法定相続分による相続登記が、上記(1)に当たるものと認められる場合には、相続税の申告では、各相続人は、A土地を自己の相続分割合により取得したものとして申告をし、同土地に係る譲渡所得では、同土地の相続分割合に相当する譲渡所得を申告すべきことになる。
 しかし、A土地についての相続登記が(2)に当たるものと認められる場合には、未分割財産の譲渡に当たることになるので、同土地が換価分割されたものとして、相続税の申告では、各人が同土地を譲渡代金配分の割合で計上し、譲渡所得では、各人が代金受領額を収入金額としてその部分の譲渡所得を申告することになる。

【関連情報】

《法令等》

所得税法33条
所得税法36条

【解説】

 法定相続分で共有登記をした土地を譲渡した場合には、共同相続人全員によって他に譲渡されたその土地は、遺産分割の対象から逸出しているので、その譲渡代金については、これを一括して共同相続人の一人に保管させて遺産分割の対象に含める合意をするなどの特別の事情のない限り、もはや遺産分割の対象には含まれず、共同相続人が各持分に応じて個々にこれを請求でき、また分割すべきものと解されている(最高裁<一小>昭和54年2月22日判決・判例時報395-56)。
 これは、その土地については、相続分の割合で取得する旨の遺産分割協議がされたものと解した結果、その売却代金は、可分債権として法定相続分の割合で当然分割されると考えられたからであろう。
 本件のケースも、原則的には、そのように考えるのが相当であるので、その土地は法定相続分の割合で分割され、代金も同割合で各相続人に帰属すると考えることになる。したがって、これと異なる代金配分については、贈与等の事実認定の問題が発生する可能性がある。
 しかしながら、この法定相続分によるA土地の相続登記が同土地を他に譲渡するための登記手続上のプロセスとして行われたものであって、いまだ同土地の遺産分割は済んでおらず、その譲渡代金の配分の取決めを予定しているときは、「換価分割」に該当するので代金収受後に決まる代金配分割合をもって同土地を取得した効果が生じることになる。
 この場合には、各相続人は、A土地を代金配分の割合で取得したとして相続税の申告をするとともに、同土地の譲渡所得については、各人がその代金配分額を収入金額として申告すべきことになる。
 A土地の相続登記が未分割のまま担保に供されたような場合で、当該土地が譲渡されて、その代金を分割したようなケースについても、同様の扱いである。

【収録日】

平成17年 2月17日


 
注1: 当Q&Aの掲載内容は、一般的な質問に対する回答例であり、TKC全国会及び株式会社TKCは、当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。個別の案件については、最寄りのTKC会員にご相談ください。
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