《税務Q&A》
情報提供 TKC税務研究所
【件名】
事前確定届出給与の支給日が届出の支給日と異なる場合の取扱い
【質問】
A社(3月決算法人)は、平成26年6月30日開催の定時株主総会において、全役員(5名)に対する賞与として、平成26年12月20日に総額1000万円を、また、平成27年6月20日に総額800万円を支給する旨を決議し、その旨を記載した「事前確定届出給与に関する届出書」を適法に提出しました。 ところが、平成26年12月の役員賞与は支給日及び支給額とも届出書の記載のとおり支給しましたが、平成27年6月の役員賞与については、支給額は届出のとおりであったものの、支給日については、新年度に入って資金繰りが極めて順調であったことを受けた社長の「鶴の一声」で、10日間早い平成27年6月10日に繰り上げて支給してしまいました。 この場合、繰り上げ支給とはいえ、同じ月内のわずか10日間の支給日の変更にすぎず、支給額自体に変更がないことから、事前確定届出給与として損金算入して問題ないと考えますが、いかがでしょうか。
【回答】
お尋ねのケースの平成27年6月10日に支給された役員賞与については、事前確定届出給与に該当しないものとして損金の額に算入することはできないものと考えます。1 事前確定届出給与とは、その役員の職務につき、所定の時期に確定額を支給する旨の定めに基づいて支給する給与(定期同額給与及び利益連動給与を除きます。)で、原則として、株主総会等の決議により事前確定給与の定めをした場合における当該決議の日(同日が職務執行開始日後である場合には、職務執行開始日)から1月経過日(同日が会計期間開始日から4月を経過する場合には4月経過日とし、新設法人の場合にはその設立日以後2月を経過する日)までに、納税地の所轄税務署長にその定めの内容に関して所定の事項(事前確定届出給与の支給時期及び各支給時期における支給金額等)を記載した届出をしている場合のその給与をいうとされています(法法34〔1〕二、法令69〔2〕、法規22の3〔1〕)。 この場合、事前確定届出給与としてその事業年度の損金の額に算入される給与とは、所定の時期に確定額を支給する旨の定めに基づいて支給するもの、すなわち、支給時期及び支給金額が事前に確定しており、実際にもその定められた支給時期において定められた金額が支給される給与に限られることとされています(法基通9-2-14)。 したがいまして、A社のケースのように事前確定届出給与の届出における支給時期(平成27年6月20日)と異なる時期(平成27年6月10日)に支給された役員賞与は、ご見解のようにたとえ「同じ月内のわずか10日間の支給日の変更にすぎない」としても、その実際の支給日は「事前に確定していたもの」とは認められないため、その日に支給された役員賞与の額800万円は、事前確定届出給与に該当せず、損金不算入として取り扱われるものと考えられます。2 ところで、事前確定届出給与の支給日の変更について合理的かつやむを得ない理由がある場合においてまで、その損金算入を認めないというような取扱いは、いささか硬直的にすぎるのでは?との考え方もあろうかと思われます。 例えば、法人における資金繰りの都合で、届出書に記載した支給日において役員賞与の全額を支給することができないため、一部の支給を後日に繰り延べざるを得ない等のやむを得ない事情がある場合においては、支給予定日においては受給者たる全役員に支給を繰り延べる賞与の額を通知するとともに、未払計上を行うなどの、法人としての意思表示を会計処理上明らかにしておくことによって、事前確定届出給与としての取扱いが是認されることは十分にあり得るものと思われます。 しかしながら、A社のケースのように単に「資金繰りが極めて順調」であるからとして支給日を繰り上げることについては、「支給日を変更すべきやむを得ない事情」に該当するものとは思われませんし、その場合の繰上げ支給された役員賞与について事前確定届出給与としての取扱いが是認されるものとは考えられません。3 上記のとおり、A社における平成27年6月10日に支給された役員賞与は、事前確定届出給与に該当せず、平成28年3月期の損金の額に算入することはできませんが、そのこと自体は前期(平成27年3月期)の課税所得の計算に影響を与えるものではないことから、定めのとおりに支給された平成26年12月20日支給分については、そのまま前期における損金の額に算入して差し支えないものと考えられます(国税庁質疑応答事例法人税「定めどおりに支給されたかどうかの判定(事前確定届出給与)」参照)。
【関連情報】
《法令等》
【収録日】
平成27年 7月31日