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《税務Q&A》

情報提供 TKC税務研究所

【件名】

株式の発行法人が自己株式を無償又は時価より低額で取得した場合の取扱い

【質問】

 A社は、社長一族が発行済株式1,000株のうち900株を保有する同族会社ですが、この度、社長一族ではない少数株主である使用人兼務役員B氏が退職することになりました。
 B氏はA社株式20株を所有していますが、退職に当たりその20株全部のA社による買取りを希望したため、両者協議の上、1株当たり1万円でA社が買い取ることになりました。
 なお、買取りの直前における純資産価額等を斟酌して算定したA社株式の評価額は1株当たり5万円ですが、配当還元方式による評価額は1株当たり3万円であり、A社の資本金等の額は1株当たり1万円です。
 そこで質問ですが、A社は自己株式を時価評価額(3万円ないし5万円)より低額で取得することにより受贈益を計上する必要があるものかを含め、税務上の取扱いをご教示ください。
 併せて、自己株式を無償で取得した場合の税務上の取扱いについてもご教示ください。

【回答】

1 株式の発行法人による取得すなわち自己株式の取得については、税務上は、取得の対価のうち、〔1〕取得した株式に対応する資本金等の額(以下「取得資本金額」といいます。)に達するまでの金額については、取得時に資本金等の額から減算することとなる(法令8〔1〕二十)ほか、〔2〕対価の額が取得資本金額を超える場合のその超える金額については配当とみなされる(市場取引等により取得される場合を除きます。)ことになり(法法24〔1〕五、法令23〔1〕六)、その金額は利益積立金額から減算されることとされています(法令9〔1〕十四)。
  したがいまして、仮にA社が少数株主であるB氏から自己株式20株を配当還元方式による評価額である1株当たり3万円で取得した場合の取得対価の額60万円のうち、取得資本金額20万円(@1万円×20株)を超える40万円がみなし配当の金額となりますから、税務上の仕訳は次のとおりとなります(源泉所得税については省略します。)。
    資本金等の額         20万 / 現預金     60万
    利益積立金額(みなし配当の額)40万 / 
2 お尋ねのケースは、A社がB氏から自己株式20株を1株当たり1万円で買い取ることから、対価の額は20万円(@1万円×20株)となり、その金額は取得資本金額を超えないため、みなし配当が生じることはなく、税務上の仕訳は次のとおりとなります。
    資本金等の額         20万 / 現預金     20万
  また、自己株式を無償取得する場合には、取得の対価がないことから、減少する資本金等の額も0で、みなし配当も生じないことになり、結果として何らの仕訳も要しません。
3 上記1のとおり、自己株式の取得は、資本金等の額及び利益積立金額の減少取引、すなわち資本等取引として取り扱われることから、たとえ取得対価の額が時価を下回る場合であっても、受贈益等の損益は生じません。
  この点、平成18年度税制改正以前においては、自己株式の取得は資産(有価証券)の取得として取り扱われていたため、時価より低い対価で取得した場合には、受贈益が認識されることとされていましたが、会社法の制定に伴う平成18年の税制改正により、自己株式の取得は資本等取引として取り扱われることになりました。
  もっとも、時価と乖離した低い対価により自己株式の取得が行われた場合、株式発行法人(自己株式取得法人)において受贈益課税等があるか否かについては諸説見受けられるところ、この点に係る税務当局における明確な取扱い等は示されていませんが、現行法上は自己株式の低額(時価未満)取得がなされたとしても、現実問題として発行法人における受贈益課税は想定し得ないものと考えられます。
  すなわち、自己株式の低額取得の実質的効果を考えるために、低額取得の最たるものとして、お尋ねのような無償取得の場合を想定すると、自己株式の無償取得は、債務の免除でもなく、有価証券の無償取得でもありませんから、発行法人において得るべき経済的利益はなく、単に株式数の減少に止まります。
  そして、株式数の減少により一株当たりの価額が増加しますが、これにより利益を得るのは発行法人ではなく残余の株主のみとなります。
  ちなみに、無償譲渡をした株主から他の個人株主に対して、株式数減少に伴い反射的に生じる所有株式の価値の増加に係る経済的利益の贈与があったとする取扱い(相続税法基本通達9-2)及び時価の2分の1未満の譲渡対価で譲渡した場合のみなし譲渡所得課税に係る取扱いについては、TKC税研DB:税務Q&A文献番号46005514を参照ください。
  なお、法人株主については、法人税法上、株式数減少に伴う反射的利益に係る課税の取扱いはありませんし、また、所有株式の価値の増加すなわち評価益は原則益金不算入とされること(法法25)から、課税関係は生じません。

【関連情報】

《法令等》

法人税法24条1項
法人税法25条
法人税法施行令8条1項18号
法人税法施行令9条1項13号
法人税法施行令23条1項13号

【収録日】

令和 1年 5月16日


 
注1: 当Q&Aの掲載内容は、一般的な質問に対する回答例であり、TKC全国会及び株式会社TKCは、当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。個別の案件については、最寄りのTKC会員にご相談ください。
注2: 当Q&Aの内容は、作成時の法令等を基に作成しております。このため、当Q&Aの内容が最新の法令等に基づいているかは、利用者ご自身がご確認ください。
注3: 当Q&Aの著作権は株式会社TKCに帰属します。当Q&Aのデータを改編、複製、転載、変更、翻訳、再配布することを禁止します。

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