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《税務Q&A》

情報提供 TKC税務研究所

【件名】

報酬が0の場合に、支給する役員退職金の損金算入の可否について

【質問】

 甲社は、社長であるAの退職に当たり、役員退職金1,000万円を支給する予定です。
 法人税法上、役員給与として相当な金額を超える過大な役員退職金は損金不算入とされているようです。相当な金額の計算において、いわゆる功績倍率法があると聞いています。その功績倍率法とは、退職する役員の最終月額報酬に、役員としての勤続年数及び一定の功績倍率を掛けたものとのことです。
 この度のAの退職は健康上の理由によるものですが、直近3期は甲社がコロナ禍の業績悪化により債務超過となったため、2年前からA自らが月額報酬を0として会社再建に励んでいる途中でした。
(1)功績倍率法は最終月額報酬に勤続年数及び功績倍率を掛けるものであることから、最終報酬が0の場合は、退職給与の相当な金額も0となってしまい、支給した全額が損金不算入になるのでしょうか。
(2)功績倍率法以外にも、類似する業種・規模の法人退職金の勤続1年当たりの平均支給額による一年当たり平均額法もあると聞きましたが、どのようなものか教えてください。

【回答】

1 法令等の規定及び取扱い
  法人税法では、退職役員に対して支給した退職給与の額が、当該役員の業務に従事した期間、退職の事情、同種の事業を営む法人でその事業規模が類似するものの役員に対する退職給与の支給の状況等に照らし、その退職役員に対する退職給与として相当であると認められる金額を超える場合にはその超える部分の金額は過大役員給与として損金に算入できないとされています(法法34〔2〕、法令70二)。
  しかしながら、「退職給与として相当であると認められる金額」の算定方法については、特に規定されていないことから事実認定の問題であり、退職給与の額については、個々の役員や法人における個別的事情を踏まえて合理的と認められる算定方法によって算定にされるものと思われます。
  ところで、一般に、役員退職金の算定方法としては、平均功績倍率法(類似法人における退職した役員の最終月額報酬に勤続年数を乗じ、その数値で退職給与の額を除して得た功績倍率の平均値にその役員の最終月額報酬及び勤続年数を乗じて算出する方法)及び一年当たり平均額法(類似法人における退職した役員の勤続年数一年当たりの平均退職給与の額にその役員の勤続年数を乗じて算出する方法)がよく知られています。
  この平均功績倍率法の算定の要素として最終報酬月額が用いられている理由としては、一般に、役員の最終報酬月額が、その役員の在職中における法人に対する功績程度を最もよく反映しているものであるという考え方に基づくものと解されます。
  そのため、その最終報酬月額が、その役員の功績の程度を反映したものと認められない場合には、これをそのまま用いて算定することは合理性を欠くものと認められます。その場合には、最終報酬月額によるのではなく、その役員の退職時における適正報酬月額を算定した上で、その金額に勤続年数及び功績倍率を乗じて算出する方法が考えられ、その方法も合理的なものとされています(高松地裁平成5年6月29日判決:TKC税研DB:税務判決要旨文献番号60027651)。
  また、一年当たり平均額法には次のような裁決がありますので、ご参照ください。
  「請求人の退任役員に対する退職給与の額は、功績倍率法により算出した金額と1年当たり平均額法により算出した金額とのうち、いずれか高い金額を超える部分の金額を不相当に高額な部分の金額とすべきであるとの請求人の主張について、原処分庁は1年当たり平均額法は役員退職給与の額の算定の重要な要素である最終報酬月額が考慮されていないため、功績倍率法に比べて合理性を欠くので、採用できないとしたが、最終報酬月額が役員の在職期間を通じての会社に対する貢献を適正に反映したものでないなどの特段の事情があり低額であるときは、最終報酬月額を基礎とする功績倍率法により適正退職給与の額を算定する方法は妥当でなく、最終報酬月額を基礎としない1年当たり平均額法により算定する方法がより合理的である。」(昭和61年9月1日裁決)。
2 ご質問に対する回答
(1)業績悪化や引責等により最終報酬月額が少額又は0となることもあり得ますので、その最終報酬月額をそのまま用いて算定することは合理性を欠くものと考えられます。したがいまして、現在の役員報酬が0であったとしても、業績悪化前の支給額等を参考に適正報酬月額を算定した上で、平均功績倍率法を用いることにより役員退職金の適正額を計算することも、合理的な方法として認められるものと考えます。
(2)一年当たり平均額法による場合には、TKC全国会ネットワークProFIT>TKC経営指標WebBAST>Y-BAST>月額役員報酬、役員退職金をご参照ください。業種や売上など法人の規模などの条件で抽出することが可能となっています。

【関連情報】

《法令等》

法人税法34条
法人税法施行令70条

【収録日】

令和 6年12月19日


 
注1: 当Q&Aの掲載内容は、一般的な質問に対する回答例であり、TKC全国会及び株式会社TKCは、当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。個別の案件については、最寄りのTKC会員にご相談ください。
注2: 当Q&Aの内容は、作成時の法令等を基に作成しております。このため、当Q&Aの内容が最新の法令等に基づいているかは、利用者ご自身がご確認ください。
注3: 当Q&Aの著作権は株式会社TKCに帰属します。当Q&Aのデータを改編、複製、転載、変更、翻訳、再配布することを禁止します。

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