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《税務Q&A》

情報提供 TKC税務研究所

【件名】

相続した非上場株式を発行会社に譲渡した場合

【質問】

 個人A氏は、令和2年2月5日に相続により取得したX社株式(非上場)を、令和3年3月26日にX社へ譲渡しました。A氏は措置法9条の7の特例の存在を認識しておらず、措置法施行令5条の2に規定する書面をX社経由で所轄税務署へ提出していませんでした。令和4年7月にこの事実に気づき期限後申告を行うことを考えていますが、期限後申告において措置法9条の7の特例の適用を受けることはできますか。なお、当該譲渡については配当課税に基づく源泉徴収がされています。

【回答】

 A氏は相続により取得したX社株式をその譲渡時までに「相続財産に係る非上場株式をその発行会社に譲渡した場合のみなし配当課税の特例に関する届出書」をX社を経由して所轄税務署へ提出していませんので、A氏は措置法9条の7のみなし配当課税の特例の適用を受けられないと考えられます。

【関連情報】

《法令等》

所得税法25条1項
租税特別措置法9条の7
租税特別措置法施行令5条の2第2項

【解説】

 個人である株主がその株式を発行する会社に譲渡した場合には、所得税法25条1項5号に規定する「当該法人の自己の株式又は出資の取得」に該当し、これに伴い当該法人から交付を受けた金銭等のうち資本金等の額を超える部分については、同項の規定によりみなし配当としての課税を受けることになります。
 このみなし配当の特例として設けられている措置法9条の7《相続財産に係る株式をその発行した非上場会社に譲渡した場合のみなし配当課税の特例》では、相続又は遺贈により非上場株式を取得した個人で相続税額がある者が、相続開始の日の翌日から相続税の申告期限から3年を経過する日までに譲渡した場合には、上記みなし配当の規定を適用することなく、その全額を譲渡所得として課税することとしています。
 この特例の適用を受けるためには、譲渡する時までに特例の適用を受けようとする旨その他同項に定める一定の事項を記載した書面(相続財産に係る非上場株式をその発行会社に譲渡した場合のみなし配当課税の特例に関する届出書)をその譲渡先である非上場会社を経由して当該非上場会社の所在地の所轄税務署長に提出しなければなりません(措令5条の2第2項)。
 ご質問の場合、個人A氏は、令和2年2月5日に相続により取得したX社株式(非上場)を、令和3年3月26日にX社へ譲渡した。A氏は措置法9条の7の特例の存在を認識しておらず措置法施行令5条の2に規定する書面をX社経由で所轄税務署へ提出していなかったとのことです。
 そうしますと、A氏は相続により取得したX社株式をその譲渡時までに「相続財産に係る非上場株式をその発行会社に譲渡した場合のみなし配当課税の特例に関する届出書」をX社を経由して所轄税務署へ提出していません。したがって、X社においては、一般の例により自己株式の取得としてみなし配当の源泉徴収を行うことになり、A氏は、措置法9条の7のみなし配当課税の特例の適用を受けられないと考えられます。

【収録日】

令和 4年 9月14日


 
注1: 当Q&Aの掲載内容は、一般的な質問に対する回答例であり、TKC全国会及び株式会社TKCは、当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。個別の案件については、最寄りのTKC会員にご相談ください。
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