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《税務Q&A》

情報提供 TKC税務研究所

【件名】

取引相場のない株式を個人間で売買する場合の譲渡価額

【質問】

 取引相場のない株式を個人間で売買する場合、その売買価額については、相続税評価額(財産評価基本通達で定めるところにより評価した価額)と所得税基本通達59-6に準拠して算定した価額のいずれによるのが適当か。
 なお、仮に、所得税基本通達59-6に準拠し、その株式の発行会社の純資産価額を基に時価の算定をする場合、その発行会社の有する土地、上場株式、ゴルフ会員権などの資産については相続税評価額で評価すべきか、それとも株式の譲渡直前の時期における時価で評価すべきか。また、純資産価額の計算上、評価差額に対する法人税額等に相当する金額の控除は可能か。

【回答】

 所得税の場合、資産の譲渡による所得の計算上、その収入金額には、原則として、その資産の譲渡によって収入すべき金額を計上することになっています(所得税法36(1))ので、本件の場合も、当事者が定めた売買代金の額(譲渡対価の額)を収入金額として所得計算することになります。
 なお、所得税法59条には、時価によって譲渡があったものとみなす特別の規定がありますが、これは、法人に対する贈与、低額譲渡などの場合に限って適用される規定であって、個人間で行われる資産の譲渡(贈与を含む)に対しては適用されません。
 したがって、本件の場合も、当事者の定めた譲渡対価の額が、たとえ譲渡株式の時価に比し著しく低い金額であったとしても、その譲渡者に対しては、時価による譲渡があったとみなす「みなし譲渡所得課税」は適用されず、当事者が定めた売買代金の額を基にその譲渡所得等の金額を計算すればよいことになるので、譲渡益課税上は、ことさら譲渡株式の時価算定を必要とする理由が見当たらないことになります。
 ちなみに平成元年3月29日付直評5ほか個別通達は、その名が示すとおり、土地等又は家屋等に係るものであって、株式等の対価を伴う取引については適用がありません。
 なお、個人から、株式その他の財産の低額譲受をした個人については、その低額譲受による経済的利益が贈与税の課税対象になります(相続税法7)。
(注)1 当事者の定めた譲渡対価の額が、その株式の時価の1/2未満である場合には、その株式の譲渡によって損失が発生したとしても、その譲渡損失はなかったものとみなされます(所得税法59(2))。
   2 個人からの財産の低額譲受に対する贈与税の課税実務では、譲り受けた株式その他の財産の相続税評価額と支払った譲受対価の額の差額が贈与によって得た経済的利益の額として認定されています。
 以上のように、個人間で行われる資産の譲渡に関する限り、その譲渡による所得の計算上、譲渡資産の時価をどのようにして算定すべきかについて、課税実務上問題になったケースはほとんどありません。

【関連情報】

《法令等》

所得税法36条
所得税法59条
所得税基本通達23~35共ー9
所得税基本通達59ー6

【解説】

1 個人間で株式の譲渡が行われた場合に、その譲渡益課税上、譲渡株式の時価が問題になることは上述のように考えにくいところですが、所得税法59条2項に規定する譲渡損失の処理といったこともありますので、以下、取引相場のない株式の時価算定の方法について、個人の課税関係に関するものをまとめてみます。
2 現行取扱い上、取引相場のない株式の時価については、次のような算定基準があります。
(1)所得税関係
 イ 所得税基本通達23~35共-9《株式等を取得する権利の価額》
 所得税法施行令84条に規定する新株の引受権等の行使等による経済的利益の計算の要素となる「株式等を取得する権利の価額」の算定基準を定めたものですが、広く株式等の時価の算定に準用されています。
 この通達によれば、取引相場のない株式の時価については、
 (イ)その株式について売買実例がある場合は、適正と認められる売買実例価額により評価し、
 (ロ)その株式について売買実例がない場合は、類似法人の株式等の売買実例価額に比準し、又はその法人の1株当たりの純資産価額等を参酌して評価する、こととしている。
 ロ 所得税基本通達59-6《株式等を贈与等した場合の「その時における価額」》
   法人に対する株式等の贈与又は低額譲渡等があった場合に適用される所得税法59条1項《みなし譲渡所得課税》の規定の運用上、低額譲渡に該当するかどうかの判定の基準となる「株式等の時価」の算定基準を定めたものです。
   この通達によれば、株式等の時価は、原則として所得税基本通達23~35共-9に準じて算定しますが、同通達中「1株当たりの純資産価額等を参酌して評価した額」については、原則として、一定の条件の下で「財産評価基本通達178から189-7《取引相場のない株式の評価》」の例により算定した価額によることとしています。
ただし、この財産評価基本通達178、188、188-6、189-2、189-3及び189-4で定める「取得した株式」とあるのは「譲渡又は贈与した株式」と、同通達の185、189-2、189-3及び189-4で定める「株式の取得者」とあるのは「株式を譲渡又は贈与した個人」と、同通達188で定める「株式取得後」とあるのは「株式の譲渡又は贈与直前」とそれぞれ読み替えるほか、読み替えた後の同通達185ただし書、189-2、189-3又は189-4において株式を譲渡又は贈与した個人とその同族関係者の有する議決権の合計数が評価する会社の議決権総数の50%以下である場合に該当するか及び読み替えた後の同通達188の(1)から(4)までに定める株式に該当するかどうかは、株式の譲渡又は贈与直前の議決権の数により判定することになります。
 (注)「一定の条件」は、概ね次のとおりです。
 1 その株式等を譲渡(贈与)した個人がその株式発行会社の「中心的な同族株主」に該当するときは、その発行会社は、常に「小会社」に該当するものとすること。
 ただし、財産評価基本通達180の類似業種比準価額を算出する計算において類似業種の株価等に乗じるしんしゃく割合は、その株式発行会社の会社規模に応じたものとなります。
 2 その株式発行会社が有する土地又は上場有価証券については、1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)の計算においては、相続税評価額によらず、通常の時価により評価すること。
 3 1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)の計算においては、評価差額に対する法人税額等に相当する金額の控除は行わないこと。
(2)相続税関係
 財産評価基本通達(178~189-7《取引相場のない株式の評価》)
 相続税(贈与税)の課税価格計算上の評価基準として定めてあるものである。
3 これらの時価算定基準のうち、(2)の財産評価基本通達によるものは、所得税法の適用上の時価の算定基準とすることは予定されていないので、所得税課税において、これを参考にすることは考えられるとしても、これをもって時価算定の根拠とすることは適当ではないでしょう。
 また、(1)のロの所得税基本通達59-6は、通達の形式上、所得税法59条所定のみなし譲渡所得課税の解釈適用に限定して規定されているので、これをもって、その射程距離外である個人間の株式譲渡における時価算定の根拠とすることには問題がないわけではありません。
 とすれば、個人間の株式譲渡に関して、課税上、その時価算定が必要となるときは、形式的には、(1)のイの所得税基本通達23~35共-9をその基準とすべきことになるわけですが、同じカテゴリーに属する個人の株式等譲渡益課税の運用上において、その譲渡先が個人であるか法人であるかの違いによって、譲渡株式等の時価算定の基準が異なることについては、合理的な説明付けは困難ではないでしょうか。
 そこで、所得税基本通達59-6の制定の経緯を考え合わせれば、今後においては、個人間で株式譲渡が行われた場合の譲渡株式の時価算定の基準については、同通達の準用が認容されるようになるのではないかと予想されます。

【収録日】

令和 2年10月19日


 
注1: 当Q&Aの掲載内容は、一般的な質問に対する回答例であり、TKC全国会及び株式会社TKCは、当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。個別の案件については、最寄りのTKC会員にご相談ください。
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