《税務Q&A》
情報提供 TKC税務研究所
【件名】
クラウドサービスに係るシステムのカスタマイズ費用の取扱い
【質問】
A社は都内に複数の大学進学塾を展開する法人ですが、最近の生徒数の増加に伴い、生徒の管理、講師の手配及び出勤状況管理並びにカリキュラム管理等の効率化を図るために、システム専門業者B社のクラウドサービスによる「E塾管理システム」を導入することになりました。 導入に当たっては、B社から〔1〕導入月の初期費用として、「E塾管理システム」のカスタマイズ費用90万円及び〔2〕クラウドサービス月額利用料3万円の請求を受けて支払いました。 これらの費用の税務上の取扱いをご教示ください。
【回答】
1 お示しの「E塾管理システム」とは、B社からクラウドサービスにより提供されるシステムであり、そのシステムの「カスタマイズ」とは、一般にユーザーの個別事情に合わせて、システムやソフトウェアの機能等を設定し直すことを意味するものと解されますから、請求内容〔1〕の「E塾管理システム」のカスタマイズ費用とは、B社からクラウドサービスにより提供される「E塾管理システム」についてA社の個別的な事情に対応すべく設定し直すための費用と認められるところ、その費用の税務上の取扱いについては、そのカスタマイズされたシステムが、A社自らの所有に属するものか、あるいは、B社からの賃借資産に相当するものかのいずれかによって異なるものと考えられます。2 まず、カスタマイズされたシステムがA社の所有に属するものである場合には、ソフトウェアの取得価額として取り扱うのが相当と考えられます。すなわち、他の者から購入したソフトウェアについて、そのソフトウェアの導入に当たって必要とされる設定作業及び自社の仕様に合わせるために行う付随的な修正作業等の費用の額は、当該ソフトウェアの取得価額に算入することとされています(法基通7-3-15の2(注))。 お尋ねの場合のカスタマイズ費用についても、上記の「ソフトウェアの導入に当たって必要とされる設定作業及び自社の仕様に合わせるために行う付随的な修正作業等の費用」に該当することから、そのカスタマイズ費用自体をA社所有のソフトウェアの取得価額として取り扱うのが相当と考えられます。 そして、ソフトウェアの資産区分については、減価償却資産である無形固定資産と規定され、複写して販売するための原本及び開発研究用のものについては3年、その他のものについては5年の耐用年数で償却することとされている(耐用年数省令別表第3)ところ、上記のカスタマイズ費用は、複写して販売するための原本や開発研究用のものではないことから、5年の耐用年数で償却すべきところと考えられます。3 次に、カスタマイズされたシステムがB社からの賃借資産に相当するものである場合には、A社が支出するカスタマイズ費用は、法人税法施行令14条1項6号ロ《資産を賃借するための権利金等》と同様に、支出の効果が将来に及ぶ費用と解されることから、繰延資産として取り扱うべきところと考えられます。 その場合の償却期間は、法人税基本通達8-1-5(1)の「建物を賃借するために支出する権利金等として5年(法基通8-2-3)とするのが相当と考えられます。4 次に、請求内容〔2〕クラウドサービス月額利用料とは、その賃借資産たる「E塾管理システム」のライセンス料と認められますから、期間の経過に応じて各月の損金の額に算入するのが相当と考えられます。
【関連情報】
《法令等》
【収録日】
令和 2年 2月 4日