《税務Q&A》
情報提供 TKC税務研究所
【件名】
リース期間定額法の一部改正について(令和7年度改正)
【質問】
当社(3月決算法人)は食品製造業を営んでおり、リース会社とリース契約を行い商品製造機械を事業に供しています。この機械のリース契約は所有権移転外リース取引に該当しますので、現在、リース資産として資産計上を行い、リース期間定額法に基づき減価償却費を計上しております。 ところで、令和7年度税制改正において、リース期間定額法の一部改正があったとのことですが、どのような改正内容なのかについて教えてください。
【回答】
1 リース期間定額法について リース期間定額法とは、所有権移転外リース取引に係る賃借人が取得したものとされる減価償却資産であるリース資産の取得価額(取得価額に残価保証額が含まれている場合には、これを控除した金額)をリース期間の月数で除した金額に、その事業年度におけるリース期間の月数を乗じて計算した金額を各事業年度の償却限度額とする償却方法です(改正前の法令48の2〔1〕六)。 これを算式で示しますと次のとおりです。 【算式】 (リース資産の取得価額-残価保証額)×その事業年度におけるリース期間の月数÷リース期間の月数=償却限度額 この場合の「残価保証額」とは、リース期間終了時にリース資産の処分価額がリース契約において定められている保証額に満たない場合に、その満たない部分の金額を賃借人が賃貸人に支払うこととされている場合の保証額をいいます。 なお、「リース期間」は、リース資産がリース期間の中途において適格合併、適格分割又は適格現物出資以外の事由により移転を受けたものである場合は、その移転日以後の期間に限られます。2 令和7年度改正の内容について(1)令和9年4月1日以後に締結された所有権移転外リース取引に係る契約のリース資産の減価償却について、上記の計算において取得価額に含まれている残価保証額を控除しない(新法令48の2〔1〕六)とする改正が行なわれています。 実際の改正後条文には「当該リース資産の取得価額(当該リース資産についての所有権移転外リース取引に係る契約が令和9年3月31日以前に締結されたものの取得価額に残価保証額に相当する金額が含まれている場合には、当該取得価額から当該残価保証額を控除した金額)」と定められていますので、リース契約が令和9年3月31日以前に締結されたもので取得価額に残価保証額が含まれているものはその残価保証額を控除することになります。そうすると、これに該当しない令和9年4月1日以後に締結されたリース契約は対象から除かれますので、取得価額に残価保証額が含まれている場合でも控除しなくてよいことになります。 したがって、実際に改正事項の効力が及ぶのは令和7年度改正法の施行日(令和7年4月1日)から2年後の令和9年4月1日以後に締結された所有権移転外リース取引に係る契約のリース資産が適用対象となります。(2)上記(1)が改正後の原則的な取扱いとなりますが、次の経過措置が設けられています(令和7年改正法令附則7)。 その内容は、リース資産のうち所有権移転外リース取引に係る契約が令和9年4月1日前に締結されたもの(残価保証額に相当する金額が含まれているものに限ります。)を「経過リース資産」としてその対象とし、令和7年4月1日以後に開始する事業年度から「経過リース期間定額法」の適用を認める経過措置です。 この場合、経過リース期間定額法を採用しようとする事業年度(令和9年3月31日後最初に開始する事業年度以前の事業年度に限ります。)の法人税の確定申告書の提出期限(中間申告書を提出する場合はその提出期限)までに、経過リース期間定額法の適用を受けようとする経過リース資産の種類その他一定の事項を記載した届出書を税務署長に提出する必要があります。そして「経過リース期間定額法による償却額に関する明細書」(別表16(4))を添付します。 【算式】(経過リース期間定額法) 経過リース資産の改定取得価額×その事業年度における改定リース期間の月数÷改定リース期間の月数=償却限度額 *上記の月数は、暦に従って計算し1月に満たない端数が生じたときはこれを1月とします。 経過措置の適用に関する説明は次のとおりです。 イ 「改定取得価額」とは、その適用を受ける最初の事業年度開始の時(経過リース資産がその最初の事業年度内に事業の用に供したものはその事業供用時)における取得価額(その最初の事業年度前の各事業年度に損金の額に算入した償却額がある場合にはその償却額を控除した金額)をいいます。なお、取得価額に含まれている残価保証額を控除する必要はありません。 ロ「改定リース期間」とは、経過リース資産のリース期間(リース期間の中途において適格合併、適格分割又は適格現物出資以外の事由により移転を受けたものはその移転日以後の期間に限ります。)のうちその適用を受ける最初の事業年度開始の日以後の期間をいいます。 ハ 「経過リース期間定額法」は、その採用しようとする事業年度において有するすべての経過リース資産について適用する必要があります。3 質問の事例検討 貴社のように令和9年4月1日前に既にリース資産を事業の用に供している場合には、上記2(2)の経過措置により、令和7年4月1日以後に開始する事業年度(令和9年3月31日後最初に開始する事業年度以前の事業年度に限ります。)の法人税の確定申告期限までに税務署長に経過リース資産の一定の事項を記載した届出書を提出することにより、経過リース期間定額法により減価償却費を計上することができます。なお、この経過措置の適用を受けない場合には改正前のリース期間定額法により減価償却費の計算を行うことになります。
【関連情報】
《法令等》
【収録日】
令和 7年 5月20日