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《税務Q&A》

情報提供 TKC税務研究所

【件名】

新型コロナウイルス感染症の影響で減額した役員給与を元に戻した場合の取扱いについて

【質問】

 飲食業を営むA社では、この度の新型コロナウイルス感染症による緊急事態宣言等の影響で売上が激減したこと等を受け、代表者である甲氏の役員給与を5月より80万円から40万円に半減していますが、7月からは売上もある程度戻り、業績が回復してきたため元の80万円に戻すこととなりました。この場合、新型コロナウイルス感染症の影響による役員給与の減額は定期同額給与に該当する、との取扱いが国税庁から示されていると聞きましたが、A社のように減額した役員給与を元に戻した場合の取扱いは、どのようになりますでしょうか。

【回答】

1 法人税法上、役員給与のうち損金算入ができるもののひとつとして挙げられている定期同額給与は、その支給時期が1月以下の一定の期間ごとである給与(「定期給与」)で、〔1〕当該事業年度の各支給時期における支給額が同額であるもの、及び〔2〕その他これに準ずるものとして政令で定める給与(改定役員給与等)とされています(法法34〔1〕一)。
  そして、〔2〕その他これに準ずるものとして政令で定める給与については、次の3つの改定がされた場合に事業年度開始の日又は給与改定前の最後の支給時期の翌日から給与改定後の最初の支給時期の前日又は当該事業年度終了の日までの支給額が同額であるものとされています(法令69〔1〕一)。
 イ 事業年度開始の日の属する会計期間開始の日から3月を経過する日(3月経過日等)までにされた定期給与の額の改定(いわゆる「通常改定」)
 ロ 内国法人の役員の職制上の地位の変更、その役員の職務の内容の重大な変更その他これらに類するやむを得ない事情によりされたこれらの役員に係る定期給与の額の改定(いわゆる「臨時改定」)
 ハ 内国法人の経営の状況が著しく悪化したことその他これに類する理由によりされた定期給与の額の改定(いわゆる「業績悪化改定」)
  上記のとおり、役員に対して支給する定期給与の額につき改定が行われた場合には、その改定が、「通常改定」、「臨時改定」又は「業績悪化改定」に該当する場合を除き、その役員給与は定期同額給与に該当しないことになります。
2 このうち、ハの「業績悪化改定」については、国税庁が公表する「国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取扱いに関するFAQ(令和2年3月(令和2年7月1日更新))」-「5 新型コロナウイルス感染症に関連する税務上の取扱い関係」-<法人税に関する取扱い>の「問6.《業績が悪化した場合に行う役員給与の減額》」及び「問6-2.《業績の悪化が見込まれるために行う役員給与の減額》」において、新型コロナウイルス感染症の影響で予定していた収入が無くなり、毎月の家賃や従業員の給与等の支払いも困難な状況下での役員給与の減額、及び、現状では売上などの数値的指標が著しく悪化していないとしても、新型コロナウイルス感染症の影響により役員給与の減額等といった経営改善策を講じなければ今後の経営状況が著しく悪化することが不可避な状況下での役員給与の減額は、業績悪化改定事由による改定に該当する、との見解が示されています。
  このFAQでは、これらの新型コロナウイルス感染症の影響による業績悪化改定事由により減額した役員給与について、その後の状況改善等により元に戻した場合の取扱いについては、特に触れられていませんが、この点については、上記1のとおり、改定役員給与等が定期同額給与と取り扱われるのは、改定前後の支給額が同額である場合となります。
  したがって、お尋ねのように、売上の激減等による業績悪化改定後に、業績の回復等を受け支給額を再び増額した場合には、上乗せして支給した増額分については、原則として、定期同額給与に該当しないものとして損金不算入の取扱いとなるものと考えられます(「役員給与に関するQ&A(平成20年12月 国税庁)」[Q3(複数回の改定が行われた場合の取扱い)]の解説をご参照ください。)。
3 なお、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、一定期間、役員給与を減額することとした場合においても、その改定事由がロの「臨時改定事由」に該当する場合には、その改定前後の支給額が同額となっている以上、定期同額給与に該当するものとして取り扱われます。
  「臨時改定」に係る法人税基本通達によれば、「役員の職制上の地位の変更、その役員の職務の内容の重大な変更その他これらに類するやむを得ない事情」として、定時株主総会後、次の定時株主総会までの間において社長が退任したことに伴い臨時株主総会の決議により副社長が社長に就任する場合(役員の分掌変更のケース)や、合併に伴いその役員の職務の内容が大幅に変更される場合(組織再編成のケース)が例示されています(法基通9-2-12の3)。
  また、同通達の解説書では、このほか、役員の病気入院により職務の執行が一部できない状態となった場合や役員が不祥事等を起こした場合の一定期間の減額が示されています(税務研究会出版局発行「九訂版法人税基本通達逐条解説」826ページ)。
 これらの判断は、改定事由が、法令に規定する「役員の職制上の地位の変更、その役員の職務の内容の重大な変更」に類するやむを得ない事情に該当するか否かによることとなります。そして、「役員の職制上の地位」の変更がない場合には、当該役員の「職務の内容の重大な変更」の事実に該当するか否かがポイントになるものと思われます。
  この点は、事実認定次第となりますが、例えば、他の多くの企業と同様、新型コロナウイルスの影響に対処するための緊急措置として、店舗の休業や工事の中断等を余儀なくされ、役員が従来から担ってきたそれらの現場の管理業務等が不要になるなど、役員の職務内容が大幅に変更されることから役員給与を減額し、その後、従前の職務内容に戻ったことを受けて役員給与を増額し減額前の水準に復する場合、又は、上記の通達の解説書で例示しているように、役員の新型コロナウイルスへの感染等による病気入院により職務の執行が一部できない状態となったことから役員給与を減額し、その後、退院をして元の職務に復帰したことを受けて役員給与を増額し減額前の水準に戻す場合などは、臨時改定事由に該当する可能性があるものと思われます。

【関連情報】

《法令等》

法人税法34条
法人税法施行令69条
法人税基本通達9-2-12の3

【収録日】

令和 2年 8月14日


 
注1: 当Q&Aの掲載内容は、一般的な質問に対する回答例であり、TKC全国会及び株式会社TKCは、当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。個別の案件については、最寄りのTKC会員にご相談ください。
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