《税務Q&A》
情報提供 TKC税務研究所
【件名】
居住用賃貸建物に係る付属設備や構築物の取扱い
【質問】
仕入税額控除が制限される居住用賃貸建物にはその付属設備を含むこととされていますが、その前提となる高額特定資産に該当するかどうかについてもその付属設備を含めて判定するのでしょうか。 また、居住用賃貸建物の仕入れ等に伴い、その敷地に駐車場とするための構築物としてのアスファルト舗装がある場合に、土地の譲渡代金とは別に対価を支払って当該構築物を譲り受ける場合は、当該構築物を含めて居住用賃貸建物に該当するかどうかを判定することになるのでしょうか。
【回答】
消費税法第30条第10項に規定する居住用賃貸建物とは、「住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな建物(その付属設備を含む。以下この項において同じ。)以外の建物で高額特定資産に該当するもの」とされています。すなわち、その課税仕入れ等の税額が仕入税額控除の対象から除かれることとなる居住用賃貸建物に該当するかどうかの判定における「建物」については、その付属設備が含まれることになります。ただし、同項の建物にその付属設備を含むこととする取扱いは、同項のみにおける取扱いとして規定されています。 他方で、同法第12条の4第1項及び同法施行令第25条の5第1項によれば、高額特定資産とは、「棚卸資産及び調整対象固定資産のうちその税抜価額が1,000万円以上のもの」が該当することになります。また、税抜価額が1,000万円以上かどうかの判定は、一の取引の単位(通常一組又は一式をもって取引の単位とされるものにあっては一組又は一式)に係る課税仕入れに係る支払対価の額を基礎として判定することとされており、棚卸資産及び調整対象固資産については、同法施行令4条及び5条に列挙されています。 調整対象固定資産に該当する資産の区分を減価償却資産の耐用年数等に関する省令(耐用年数省令)の各別表に掲げる区分によるとする明確な見解は課税庁から示されていませんが、各別表の「種類」欄に掲げられている資産と同法施行令5条に列挙される資産とがほぼ一致することからして、同省令に掲げる資産に該当するものについて、独立して譲渡の目的物として当事者間で認識されている場合には、それぞれの資産ごとに調整対象固定資産である高額特定資産に該当するかどうかを判定することで差し支えないものと考えます。したがって、このような場合には、調整対象固定資産としての建物とその付属設備ごとに税抜対価の額が1,000万円以上かどうかを判定し、その結果、税抜対価の額が1,000万円未満となる場合には、それが住宅としての賃貸の用に供される建物又は当該建物に係る付属設備であっても、同法第12条の4第1項及び第37条第3項第3号の規定は適用されないことになると考えられます。 しかし、同法第30条第10項の適否の判定に当たっては、建物とその付属設備について、当事者間で独立して譲渡の目的物として認識されている場合であっても、その付属設備を含めたところで「建物」として高額特定資産に該当するかどうかを判定し、高額特定資産に該当する場合において、「住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな建物以外の建物」に該当するときは居住用賃貸建物に該当することとなり、その課税仕入れ等の税額については仕入税額控除が制限されることになると考えます。 同法第30条第10項の創設が、金地金スキーム等により95パーセント以上の課税売上割合を作出することで、非課税売上げにのみ要するものに該当する居住用賃貸建物の仕入れ等に係る課税仕入れ等の税額について仕入税額控除の対象とすることを防止することにあったこと、そもそも建物本体と一体となって居住用賃貸の用に供される暖冷房設備、照明設備、昇降機等の付属設備について別個に居住用賃貸建物に該当するかどうかを判定するとした場合には、取得した資産の金額面から同項の適用を回避できる余地が生ずることを踏まえますと、上記のように解することが相当と考えます。 なお、駐車場とするための舗装路面等の構築物についても、付属設備と同様に「建物」に含めて居住用賃貸建物に該当するかどうかを判定するようにも考えられなくはありません。 しかし、消費税法30条10項において「建物」に含むこととされているのは、当該建物に係る「付属設備」のみとなっています。そして、構築物については、高額特定資産に該当する場合であっても、そもそも建物には該当しないことから、その課税仕入れ等の税額は同項の適用対象とはならないものと考えます。
【関連情報】
《法令等》
【収録日】
令和 3年 3月17日