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《税務Q&A》

情報提供 TKC税務研究所

【件名】

国庫補助金の圧縮損の任意振分けについて

【質問】

 甲社は、食品加工製造業で青色申告をしている資本金2,000万円、従業員数40名の中小企業です。
 今期、工場において、A空調設備(500万円1台)、B空調設備(300万円1台)、C空調設備(25万円×4台=100万円)の合計900万円を新規取得する予定ですが、これには、経済産業省の中小企業等の省エネ・生産性革命投資促進事業費補助金交付要綱に基づく国庫補助金が300万円交付される(補助対象経費額の1/3)見込みです。
 少額減価償却資産の損金算入の特例(措法67の5)と国庫補助金等の圧縮記帳(法法42)を併用適用するつもりですが、これらは同じ空調設備ですから、全体を国庫補助金の一つの補助対象事業として見て、C空調設備100万円は少額減価償却資産の損金算入の特例で損金とし(1台25万円)、A空調設備からのみ圧縮記帳で300万円を減額するという処理は可能でしょうか。

【回答】

1 租税特別措置法67条の5は、中小企業者等が、取得価額が30万円未満である減価償却資産を平成18年4月1日から令和6年3月31日までの間に取得などして事業の用に供した場合には、一定の要件のもとに、その取得価額に相当する金額を損金の額に算入することができる旨の特例(以下「少額減価償却資産の損金算入の特例」といいます。)について規定しています。
  租税特別措置法上の特別償却等に関しては、原則として2以上の規定の適用を受けることができる減価償却資産について、複数の規定のうちいずれか1つの規定のみを適用する旨が規定されています(複数の規定の不適用。措法53)。また、少額減価償却資産の損金算入の特例においては、その対象となる資産から同法53条1項各号等の規定の適用を受けるものを除くとされています。
  このため圧縮記帳と特別償却等とが、ともに租税特別措置法上の規定である場合には、併用適用は不可となっています。
  これに対して、同じ圧縮記帳でも法人税法上の国庫補助金等の圧縮記帳(法法42)との併用適用であれば、租税特別措置法上の措置である少額減価償却資産の損金算入の特例とは法律が異なりますので、併用適用ができることとなります。
2 甲社は、青色申告法人で資本金2,000万円の中小企業で、従業員数40名ですから、少額減価償却資産の損金算入の特例の前提要件は満たしています。
  まず、空調設備が複数ある場合には、国庫補助金の圧縮損を対象となった固定資産の全てに振り分ける必要があるかどうかが問題となります。
  この点、条文上「固定資産の取得又は改良に充てるための『国庫補助金等』の交付を受けた場合において、…取得又は改良をしたその『交付の目的に適合した固定資産』につき」と規定されているだけで、それ以上に国庫補助金とその対象資産とに個別的な対応を求めていないものと考えられます。そうすると、国庫補助金等で取得した資産の圧縮記帳について、その対象となる固定資産が2以上あるという場合、いずれの固定資産について圧縮記帳を行うかは法人の任意ということになります。
  それゆえ、同じ補助金に適合した資産を複数取得し事業の用に供した場合に、圧縮記帳の対象となる固定資産の取得価額が補助金の額を超えるというときは、各固定資産につき均等に圧縮記帳を行うことももちろんできるでしょうが、補助金を任意に振り分けて圧縮記帳の計算を行うことも許されると考えられます。
3 以上のことから、1台25万円のC空調設備については、少額減価償却資産の損金算入の特例を適用して100万円全額を損金算入した上で、取得価額500万円のA空調設備からのみ圧縮記帳で300万円を減額するという処理は可能と考えられます。

【関連情報】

《法令等》

法人税法第42条
租税特別措置法第53条
租税特別措置法第67条の5

【収録日】

令和 4年10月31日


 
注1: 当Q&Aの掲載内容は、一般的な質問に対する回答例であり、TKC全国会及び株式会社TKCは、当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。個別の案件については、最寄りのTKC会員にご相談ください。
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