《税務Q&A》
情報提供 TKC税務研究所
【件名】
インボイス制度における少額特例
【質問】
令和5年度税制改正により、インボイス制度の定着までの実務に配慮し、一定規模以下の事業者の行う少額の取引につき、帳簿のみで仕入税額控除を可能とする事務負担軽減策が設けられたということですが、具体的にはどのような制度なのでしょうか。
【回答】
インボイス制度においても、請求書等の交付を受けることが困難であるなどの理由により、次の取引については、一定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められます(新消令49〔1〕、新消規15の4)。〔1〕適格請求書の交付義務が免除される3万円未満の公共交通機関による旅客の運送〔2〕適格簡易請求書の記載事項(取引年月日を除きます。)が記載されている入場券等が使用の際に回収される取引(〔1〕に該当するものを除きます。)〔3〕古物営業を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの古物(古物営業を営む者の棚卸資産に該当するものに限ります。)の購入〔4〕質屋を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの質物(質屋を営む者の棚卸資産に該当するものに限ります。)の取得〔5〕宅地建物取引業を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの建物(宅地建物取引業を営む者の棚卸資産に該当するものに限ります。)の購入〔6〕適格請求書発行事業者でない者からの再生資源及び再生部品(購入者の棚卸資産に該当するものに限ります。)の購入〔7〕適格請求書の交付義務が免除される3万円未満の自動販売機及び自動サービス機からの商品の購入等〔8〕適格請求書の交付義務が免除される郵便切手類のみを対価とする郵便・貨物サービス(郵便ポストに差し出されたものに限ります。)〔9〕従業員等に支給する通常必要と認められる出張旅費等(出張旅費、宿泊費、日当及び通勤手当) これらに加えて、令和5年度改正において、課税事業者が令和5年10月1日から令和11年9月30日までの間に国内において行う課税仕入れ(その基準期間における課税売上高が1億円以下である課税期間又はその特定期間における課税売上高が5千万円以下である課税期間に行うものに限る。)で、課税仕入れに係る支払対価の額が1万円未満であるものについては、一定の事項が記載された帳簿のみの保存による仕入税額控除を認める経過措置(少額特例)が設けられました。この経過措置の対象となる課税仕入れについては、その相手方が適格請求書発行事業者以外の者であっても、〔1〕~〔9〕と同様に課税仕入れ等の税額の全部が仕入税額控除の対象となります。【少額特例の留意事項】〔1〕特定期間における課税売上高が5千万円以下の事業者は、適用対象者となりますが、特定期間における5千万円の判定に当たり、課税売上高による判定に代えて給与支払額の合計額の判定によることはできません。〔2〕令和5年10月1日から令和11年9月30日までの期間が適用対象期間ですから、たとえ課税期間の途中であっても、令和11年10月1日以後に行う課税仕入れについては、少額特例の適用はありません。〔3〕少額特例の判定単位は、課税仕入れに係る1商品ごとの金額により判定するのではなく、一回の取引の合計額が1万円未満であるかどうかにより判定します。 例えば、9,000円の商品と8,000円の商品を同時に購入した場合(合計17,000円)は、少額特例の対象になりません。 また、月額200,000円(稼働日21日)で個人事業者に外注を行っている役務の提供である場合には、通常、約した役務の取引金額により判定しますから、月単位での取引(200,000円の取引)となり、少額特例の対象とはなりません。〔4〕新たに設立した法人における基準期間のない課税期間については、特定期間の課税売上高が5千万円超となった場合であっても、当該課税期間について、本経過措置の適用を受けることができます。
【関連情報】
《法令等》
【収録日】
令和 5年 5月17日