《税務Q&A》
情報提供 TKC税務研究所
【件名】
会社役員に対する日当の取扱いについて
【質問】
東京に居住するA社の代表取締役甲は、新潟市に所在する本社には月に2・3度出勤するだけで、ほとんど自宅等においてパソコンや電話で職務を遂行しています。 A社では、旅費規程に基づき、甲が本社に出勤する際に自宅からの交通費及び宿泊費(以下「交通費等」といいます。)の実費を支給していますが、この度、旅費規程を改定し、交通費等のほかに役員には1日当たり4千円、管理職には3千円、一般職には2千円の日当をそれぞれ支給することとしました。 この日当の額は、交通費等以外の諸雑費を補填するためのものとして所得税基本通達9-3(1)及び(2)の要件を満たした合理的なものと考えていますので、これを甲が本社へ出勤する際の交通費等に加えて支払った場合でも、通常の旅費と同様に非課税として取り扱われることになりますか。
【回答】
非課税とされる旅費の範疇には含まれず、給与課税が行われることになるものと考えます。
【関連情報】
《法令等》
【解説】
1 給与所得を有する者が勤務する場所を離れてその職務を遂行するために旅行した場合に、その旅行に必要な支出に充てるために支給される金品で、その旅行について通常必要であると認められるものは、所得税法第9条第1項第4号により非課税とされており、この旅行に必要な旅費には、交通費等のほかその旅行に必要な食事その他の雑費的な費用に充てられるものとして支給されるいわゆる「日当」(所基通9-3(1)及び(2)の要件を満たした支給額であることが必要です。)も含まれるものとされています。 また、給与所得を有する者で常には出勤を要しない非常勤役員等に対し、その勤務する場所に出勤するために行う旅行に必要な運賃・宿泊料等の支出に充てるものとして支給される金品で、「社会通念上合理的な理由があると認められる場合」に支給されるものについては、その支給される金品のうち「その出勤のために直接必要であると認められる部分に限り」、上記非課税規定に掲げる金品に準じて課税しなくて差し支えないとされています(所基通9-5)。 この理由としては、非常勤役員等の出勤日数は一般の常勤者に比較して著しく少なく、その出勤状態が「通勤」といえるものではないことなど、一般の通勤手当と同様のものとして課税することは、かえって実情にそぐわないと考えられることから旅費に準ずるものとして取り扱うことを明らかにしたものである旨説明されているところです(同通達逐条解説)。2 お尋ねの甲の場合、代表取締役としての地位にあり、その勤務の大半が自宅等で行われ、A社には月に2~3度出勤するという場合の交通費等の実費支給という点に関しましては、所得税基本通達9-5では、上記1のとおり、「社会通念上合理的な理由があると認められる場合」に支給されるものとされており、自己の意思で自宅等において勤務を遂行している者が月に2~3度出勤するという場合もこの合理的理由に該当すると考えるか否かは、はなはだ疑問のあるところです。特に、一般の通勤者に適用される所得税法9条1項5号の通勤手当については、その要件が厳格に規定されており、日当が支給されるということは前提とされていませんし、同通達では、「その出勤のために直接必要であると認められる部分に限り」非課税規定に掲げる金品に準じて課税しなくて差し支えないとされていることとの対比においても、通勤時に概算経費とされる実費補填としての日当を支給する是非ということについては、否定的に解するのが相当と思料します。 したがって、甲の通勤に係る交通費等の実費支給という点に関しましては、所得税基本通達9-5の取扱いに準じて非課税とする取扱いが考えられるとしましても、日当についてまで非課税とはされず、この支給を受けた甲への給与として課税関係が生じることになることが考えられます。
【収録日】
平成25年 7月30日