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《税務Q&A》

情報提供 TKC税務研究所

【件名】

不動産の管理料について

【質問】

 個人所有のマンションをその同族会社である法人が一棟借りし、法人で管理賃貸していこうと思います。
 その場合の適正な地代家賃(法人から個人に支払うもの)の計算基準を教えて下さい。
 法人の見積年間
  家賃収入     33,000千円
  ガレージ収入    3,500千円
  礼金・更新料収入  3,500千円
          (40,000)

【回答】

1 同族関係者の所有する賃貸用建物等(マンション)を同族会社である不動産管理会社が一括借り上げて又貸しすることとしたいが、会社が所有者に支払うべき適正な賃料相当額はいかほどかというお尋ねです。
2 ご質問の趣旨によれば、このマンションから生じる年間収入の見積もりは、家賃収入が3,300万円、ガレージ貸付収入350万円、礼金・更新料収入350万円、合計で4,000万円とのことです。
3 ところで、同族関係者の所有する賃貸用建物等(マンション)を同族会社である不動産管理会社が管理する場合、いわゆる又貸し方式(ご質問のケース)と管理料方式(対外的な貸付の当事者は所有者個人として、管理会社が管理事務を行うもの)とがあります。
 これらが併用されている場合もあり、同族会社はいずれの方式も採用できるのですから両方式を区分して考える意味はなく、税務当局も両方式とも同じ基準で適否を判定しています。
 すなわち、当該不動産から挙がる全収入(外部から入ってくる全賃料年額)に「通常あるべき管理料率」を乗じた金額が管理会社の受けるべき収益であり、残余が貸主である個人の収益となります。
 この場合の「通常あるべき管理料率」は、同族会社以外の第三者との間で約定されている管理料率によって、認定されます。過去の裁判例では、その率は、6~7%とされています。
 実際にも、同族会社が更にプロの管理会社に管理を全面的に再委託している例などがあり、信託銀行などが行っている管理の実例でも、その程度の割合です。
 つまり、その実例をつぶさに見れば、ふつうは1年間の賃料のうち1か月分を管理会社が取り、11か月分の賃料は貸主が取るほか、貸主には、礼金・更新料や立退時の保証金(敷金)償却収入があるため、この程度の割合になっているものです。
4 ご質問では、同族会社が一括借り上げをして又貸しするということですが、年間収入が4,000万円と見込まれるなら、個人法人間の賃料は、3,720万円ないし3,760万円ということになります。
 しかし、年間の見込み収入は、家賃収入とガレージ収入は平常的に収入があるため、あまり変動がないと思いますが、礼金・更新料収入、保証金償却収入は、年度により変動があり、これらを含んだ意味での正常賃料を算定することが難しくなります。事実、その見込みが狂ったために当事者間で恣意的な値上げや値下げを繰り返して、税務上否認される場合が多く生じています。また、修繕費の負担をどちらにするかによっても、事情が変わってきます。
5 そこで、管理料方式の方が簡明であり、年々の変動にも対処しやすいので、管理料方式によられる方が税務上のトラブルが少ないと考えられます。
 この場合、修繕費の負担は、貸主である個人の負担とし、同族会社は、管理事務を行う都合上単に立替え払いをすることとされれば、経理事務の面倒も少ないと思います。
6 なお、個人が受け取っている実質賃料が過少であるとして、同族会社等の行為計算否認規定に基づき(所得税法157条)個人所得税の更正処分を受ける場合、同族会社の法人税には影響を及ぼさず、また、個人が受ける給与所得にも影響を及ぼしません。
 上記のような取扱いは、既に最高裁平成6.6.21判決により支持されており、確立した判例となっています。
7 上記を参考にされて、当事者間で適切な契約を締結してください。

【関連情報】

《法令等》

所得税法157条
法人税法22条

【収録日】

平成17年 8月 5日


 
注1: 当Q&Aの掲載内容は、一般的な質問に対する回答例であり、TKC全国会及び株式会社TKCは、当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。個別の案件については、最寄りのTKC会員にご相談ください。
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