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《税務Q&A》

情報提供 TKC税務研究所

【件名】

確定申告書を提出しなければならない場合

【質問】

 居住者が確定申告書を提出しなければならない場合又は給与所得者が確定申告をしなければならない場合とはどのような場合ですか。

【回答】

 確定申告書を提出しなければならない人とは、原則としてその年分の各種所得金額の合計額から、配偶者控除、扶養控除、基礎控除及びその他の所得控除を差し引き、その金額を基として算出した税額が、配当控除額を超える人とされています。
 ただし、給与所得者については、通常、年末調整によって所得税が精算されているから、ほとんどの人は確定申告書を提出する必要はありませんが、次のいずれかに該当する人は確定申告書を提出しなければなりません。
 (1)その年中の給与等の収入金額が2,000万円を超える人
 (2)1か所から給与を受けている人で、給与所得及び退職所得以外の所得の合計額が20万円を超える人
 (3)2か所以上から給与を受けている人で、年末調整を受けない従たる給与の収入金額と給与所得及び退職所得以外の所得の金額との合計金額が20万円を超える人
 (4)同族会社の役員又はその役員の親族等やその役員と特殊な関係にある人で、その同族会社から貸付金の利子又は資産の賃貸料を受けている人
 (5)災害減免法によって源泉徴収の猶予など受けた人
 (6)源泉徴収の規定が適用されない給与等の支払を受けた人

【関連情報】

《法令等》

所得税法120条1項
所得税法121条
所得税法124条1項
所得税法125条
所得税法126条1項
所得税法127条1項
租税特別措置法28条の4第6項
租税特別措置法41条の2の2第4項2号
租税特別措置法41条の3の2第1項
災害減免法3条5項
所得税法施行令262条の2
租税特別措置法施行令4条の2第4項
租税特別措置法施行令19条23項
租税特別措置法施行令20条3項
租税特別措置法施行令21条7項
租税特別措置法施行令25条の8第13項
租税特別措置法施行令25条の11の2第17項
租税特別措置法施行令25条の11の2第18項
租税特別措置法施行令25条の12の2第20項
租税特別措置法施行令26条の23第5項
租税特別措置法施行令26条の26第9項
所得税基本通達121-5

【解説】

 確定申告を大別すると、確定申告を義務づけられている場合と、確定申告の義務はないが、還付を受けるなどのために任意に確定申告をする場合の二種類に分けることができます。このうち、確定申告を義務づけられている場合は次のとおりです。
1 一般の人の場合
  その年分の総所得金額、短期譲渡所得の金額(特別控除後の金額)、長期譲渡所得の金額(特別控除後の金額)、土地等の譲渡等に係る事業所得等の金額、分離課税の上場株式等に係る配当所得の金額(上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の適用後の金額)、株式等に係る譲渡所得等の金額(上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除及び特定株式に係る譲渡損失の繰越控除の適用後の金額)、先物取引に係る雑所得等(先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除の適用後の金額)、退職所得金額及び山林所得金額の合計額が、雑損控除その他の所得控除の額の合計額を超え、その超える金額を課税所得金額として計算した場合の所得税額が、配当控除の額及び年末調整に係る住宅借入金等特別控除の額との合計額を超えるときは、確定申告書を提出しなければなりません(所法120条1項、措法28条の4第6項、41条の2の2第4項2号、41条の3の2第1項、措令4条の2第4項、19条23項、20条3項、21条7項、25条の8第13項、25条の11の2第17、18項、25条の12の2第20項、26条の23第5項、26条の26第9項)。
 (注)総所得金額には、源泉分離課税の利子所得及び配当所得、確定申告をしないことを選択した少額の配当所得、源泉分離課税とされている割引債の償還差益は含まれません。
2 給与所得者の場合
  給与所得者については、年末調整により所得税の課税が終了している場合が通常であり、ほとんどの人は確定申告をする必要はありませんが、次のような人は確定申告書を提出しなければならないものとされています(所法120条1項、121条1項、所令262条の2)。
 (1)その年中に支払を受けるべき給与等の金額が2,000万円を超える人
 (2)1か所から給与等の支払を受け、かつ、その給与等の全部について源泉徴収をされた又はされるべき場合において、その年分の給与所得及び退職所得以外の所得金額が20万円を超える人
 (3)2か所以上から給与等の支払を受け、かつ、その給与等の全部について源泉徴収をされた又はされるべき場合において、その年分の従たる給与の金額と給与所得及び退職所得以外の所得金額との合計額が20万円を超える人
 (4)(1)に該当する場合を除き、2か所以上から給与等の支払を受け、かつ、その給与等の全部について源泉徴収をされた又はされるべき場合において、その年分の給与等の金額が150万円と社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除、生命保険料控除、損害保険料控除、障害者控除、寡婦(寡夫)控除、勤労学生控除、配偶者控除、配偶者特別控除および扶養控除の額との合計額を超え、かつ、その年分の給与所得及び退職所得以外の所得金額が20万円を超える人
 (5)上記の(1)から(4)に該当しない人であつても、同族会社の役員及びその親族、その他特殊関係者で、その同族会社から給与等のほかに貸付金の利子又は不動産、動産、営業権その他の資産をその事業の用に供することによる対価の支払を受けている人
 (6)その他
   イ 給与所得について、災害減免法の規定により源泉徴収の猶予を受け、または徴収された税金の還付を受けた人(災害減免法3条5項)
   ロ 在日大公使館等の勤務者や家事使用人などで、源泉徴収を受けなかった人(所基通121-5)
3 公的年金等に係る雑所得のみがある人の場合
  公的年金等に係る雑所得のある方は、上記1の「一般の人の場合」と同様の方法で確定申告をする必要性の有無を判断しますが、その年分の公的年金等の収入金額が400万円以下であり、かつ、その公的年金等の全部が源泉徴収の対象となる場合において、その年分の公的年金等以外に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下であるときは確定申告の必要ありません(所法120条1項、121条3項)。
 (注)所得税の確定申告の必要がない場合であっても、住民税の申告が必要な場合があります。
4 退職所得がある人の場合
  退職所得については、源泉徴収だけで所得税の課税が終了している場合が通常ですが、退職金の支払を受ける際に、その支払者に「退職所得の受給に関する申告書」を提出しなかったために20パーセントの税率で源泉徴収された場合で、その源泉徴収された税額が、正規の方法で計算した税額より少ないとき又は外国で支払われた退職所得がある場合には、確定申告書を提出しなければならないものとされています(所法120条1項、121条2項)。
5 死亡又は出国した人の場合
 (1)確定申告を提出すべき人が、翌年1月1日からその申告書の提出期限までの間にその申告書を提出しないで死亡した場合には、相続人が相続の開始があつたことを知った日の翌日から4か月以内に申告書を提出しなければならないものとされています(所法124条1項)。
 (2)納税者が年の中途において死亡した場合において、その年分の所得税につき確定申告書を提出しなければならない場合に該当するときは、その相続人が相続の開始があったことを知つた日の翌日から4か月以内に申告書を提出しなければならないものとされています(所法125条)。
 (3)確定申告書を提出すべき人が、その年の翌年1月1日からその申告書の提出期限までの間に出国をする場合には、その出国の時までに申告書を提出しなければならないものとされています(所法126条1項)。
 (4)納税者が、年の中途において出国をする場合において、その年1月1日からその出国のときまでの間における所得金額について確定申告書を提出しなければならない場合に該当するときは、その出国の時までに申告書を提出しなければならないものとされています(所法127条1項)。

【収録日】

平成28年 2月29日


 
注1: 当Q&Aの掲載内容は、一般的な質問に対する回答例であり、TKC全国会及び株式会社TKCは、当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。個別の案件については、最寄りのTKC会員にご相談ください。
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