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《税務Q&A》

情報提供 TKC税務研究所

【件名】

親族間で金銭の無利息貸付があった場合の経済的利益の取扱い

【質問】

 親が、子に事業資金として無利息で金銭を貸し付けた場合には、利息相当額の贈与があったものとして贈与税が課税されるか。

【回答】

 親族間における無利息による金銭消費貸借契約については、第一義的には、それが事実上贈与であるにかかわらず、貸与の形式をとったものであるかどうかについて事実関係を把握し、真実の金銭消費貸借であるか否かについて判断する必要があるとされています。
 その結果、贈与と認められた場合は元本そのものの贈与として贈与税が課税されます。
 また、金銭消費貸借契約であることが確認されたものについて、利息の支払いがないもの又は低利の支払いがされているものについては、それによる利益の享受(経済的利益)があるものとして、原則として、相続税法9条に基づき贈与税が課税されます。
 ただし、その利益を受ける金額が少額である場合又は課税上弊害がないと認められる場合には、強いて課税の取扱いをしないこととされています。

【関連情報】

《法令等》

相続税法9条
相続税法基本通達9-10

【解説】

 親族間の無利息の金銭貸付による経済的利益に対する贈与税の課税については、次のような裁決事例があります。
(裁決事例) 平成元年6月16日裁決(裁決事例集37巻241頁)
       LEX/DB(税務判決(裁決)データベース)文献番号26010538
(1)事実関係
〈1〉Aは、自動車学校を開設するための事業資金を、昭和53年から昭和60年までの間、その父甲から無利息の約定で借りていた。
 この貸付金の残高は、甲が死亡した昭和60年9月1日現在では、3億2,331万円であった。
 なお、この貸付金残高は、この貸付金債権を遺産分割により取得した相続人Bらに対して、昭和62年3月27日、Aから全額返済されている。
〈2〉この親子間(甲とA)の無利息による金銭貸借の事実を把握した原処分庁は、金銭の無利息貸付による経済的利益が、相続税法9条に定めるその他の利益の享受に当たるものと判断した上で、決定処分が可能な昭和56年分から昭和60年分にかけて、貸付金残高に応じて、年率5%(民事法定利率)の割合で計算した1日当たりの経済的利益額を積み上げ、これを基に、次のとおり、各年分の贈与税等の決定処分をした(昭和62年2月26日)。

 (課税年分)   (課税価格)  (贈与税額)  (単位:千円)
 昭和56年分    8,762   3,194
   57     10,994   4,421
   58     12,762   5,394
   59     14,336   6,296
   60     16,470   7,577
(注)1 千円未満の端数は、切り捨ててある。
   2 無申告加算税の賦課決定額は、省略した。
(2)請求人の主張
〈1〉相続税法9条に規定する「利益を受けた」とは、「おおむね利益を受けた者の財産の増加又は債務の減少があった場合等をいう」ものと解されている(相基通9-1)。
 本件のような金銭の無利息貸借があったからといって、ただちに借受者に「財産の増加又は債務の減少」という結果が生ずることにはならない。
〈2〉原処分庁が認定した本件経済的利益の額は、事業資金に充てた借入金に係る利息相当額であるが、事業所得の計算上、これを必要経費に算入していないので、その分だけ事業所得の金額が多くなっている。
 したがって、本件経済的利益の額について、贈与税の課税対象とすることは、所得税との二重課税になる。
〈3〉相続税法基本通達9-10(無利子の金銭貸与等)のただし書によれば、無利子の金銭貸与による経済的利益であっても、その利益を受ける金額が「少額である場合又は課税上弊害がないと認められる場合には、しいてこの取扱いをしなくても妨げない」ことになっている。
 この場合、「課税上弊害がある」とは、租税回避を意図したり、借入金を借り入れ目的以外に流用したりすることであると考えられるが、請求人にはそのような事実はないので、課税上何らの弊害も生じない。
 また、「少額である場合」については、金額基準の定めがないので、金額の多少は関係がない。
(3)国税不服審判所の判断
〈1〉について
 一般の経済取引において支払うべき利息を、親子という特別の関係によって支払わずに済んだのであり、この事実に照らしてみれば、実質的な意味において、本件経済的利益の額相当額の財産の増加又は債務の減少があったとみるべきであって、相続税法9条に規定する対価を支払わないで利益を受けた場合に該当する。
〈2〉について
 贈与税は取得した財産を課税対象としており、資産の運用益等すなわち所得を課税対象とする所得税とはおのずからその課税対象を異にするものであり、また、経済的利益の額は、事業所得の収入金額には加算されておらず、所得税は課税されていないのであるから、二重課税であるとの主張は採用できない。
〈3〉について
 請求人は、本件金銭貸借について、相続税法基本通達9-10ただし書を適用すべきであると主張するが、右通達は、本来夫と妻、親と子、祖父母と孫等特別の関係がある者相互間での無償又は無利子で金銭の貸付があった場合に、「利益の享受」(相続税法9)に該当するものとして扱う旨の原則を明らかにした上で、例外的に、その利益を受ける金額が少額である場合又は課税上弊害がない場合には強いて課税しなくても差し支えない旨の取扱いをすることとしたものであり、本件貸借は、自動車学校の運営資金としてAの事業活動に活用されたものであり、額が多額で、期間は長期間にわたっていること、また課税上弊害がある場合とは、単位租税回避を意図したり、借入金を本来の借入目的意外に流用したりするような場合のみに限定されるものではなく、その行為を容認して課税を行わないとした場合には、課税の公平が維持できないというようなものが該当するものであり、請求人主張のように限定的にとらえるべきではない。

【収録日】

平成16年 6月18日


 
注1: 当Q&Aの掲載内容は、一般的な質問に対する回答例であり、TKC全国会及び株式会社TKCは、当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。個別の案件については、最寄りのTKC会員にご相談ください。
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