《税務Q&A》
情報提供 TKC税務研究所
【件名】
設計監理と建築工事を異なる事業者と契約した場合の居住用賃貸建物に係る仕入税額控除制限規定の適用
【質問】
A社会福祉法人(3月決算)は、新たに有料老人ホームを建設するに当たり、B設計との間で設計・監理(契約金額990万円(税込み))について契約し、C建設との間で建物建築工事(契約金額44,000万円(税込み))について契約しました。設計・監理業務はX1年8月31日で完了しましたが、建物の建築工事が完了して引渡しを受けたのはX2年5月31日でした。 この有料老人ホームの建物は、居住用賃貸建物に該当し、課税仕入れ等の税額は仕入税額控除が制限されるのでしょうか。また、居住用賃貸建物に該当する場合、設計・監理に係る課税仕入れ等の税額についても仕入税額控除制限の対象となるのでしょうか。
【回答】
消費税法における「居住用賃貸建物」とは、同法別表第一第13号に掲げる住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな建物(その附属設備を含みます。)以外の建物で、同法第12条の4第1項に規定する高額特定資産又は同条第2項に規定する調整対象自己建設高額資産に該当するものをいうこととされています。したがって、居住の用に供するものとして賃貸される建物の一部に居住の用に供されない部分があるとしても、居住の用に供されない部分を含めた課税仕入れに係る税抜支払対価の額が1,000万円以上の場合は、その建物の全体が居住用賃貸建物に該当することになります。ただし、そのような建物であっても、その構造及び設備等の状況により居住用賃貸部分とそれ以外の部分とに合理的に区分しているときは、消費税法施行令第50条の2第1項の規定により、当該居住用賃貸部分に係る課税仕入れ等の税額についてのみ、仕入税額控除が制限されます。 ご質問の場合、有料老人ホームは、介護保険法に規定する居宅介護サービス費の支給に係る居宅介護に該当する特定施設入居者生活介護に利用されることが考えられますが、有料老人ホームは入居者が日常生活を営む場所ですから、居室だけでなく、入居者が日常生活を送る上で必要な部分は住宅に該当し、入居者が支払う負担金のうち住宅部分は住宅家賃として非課税とされています。したがって、有料老人ホームについては、建物附属設備を含めたところの課税仕入れに係る税抜支払対価の額が1,000万円以上の場合は、全体として居住用賃貸建物に該当することになり、その課税仕入れ等の税額は仕入税額控除が制限されることになります(消費税法施行令第50条の2第1項が適用される場合は、居住用賃貸部分のみ制限されます。この場合の合理的な区分方法については消費税法基本通達11-7-3によります。)。 なお、居住用賃貸建物に該当することとなるのは、消費税法第12条の4第1項に規定する高額特定資産ですから、当然のことながら、自己建設高額特定資産(他の者との契約に基づき調整対象固定資産として自ら建設等をした高額特定資産)である居住用賃貸建物も含まれることになります。したがって、ご質問の場合のように、設計・監理と建築工事を異なる事業者と契約した場合でも、建設のために要した原材料費及び経費に係るものの課税仕入れに係る税抜支払対価の額を合計したところで高額特定資産に該当するかどうかを判定することになります。ただし、居住用賃貸建物が自己建設高額特定資産として仕入税額控除の制限を受けることとなる場合には、消費税法施行令第25条の5第2項に規定する累計額が1,000万円以上となった課税期間以後の当該建物に係る課税仕入れ等の税額について適用され、当該課税期間の前課税期間以前に行われた当該建物に係る課税仕入れ等の税額については、仕入税額控除することができます。 ご質問の場合、設計・監理業務の課税仕入れ等に係る支払対価の額は990万円であり、X1年度における有料老人ホームに係る課税仕入れに係る税抜支払対価の額の合計額は1,000万円未満ですから、設計・監理業務に係る課税仕入れ等の税額は仕入税額控除の対象になると考えます。
【関連情報】
《法令等》
【収録日】
令和 3年 8月 3日