TKC会員事務所一覧 TKC会員のご紹介
前文献
20文献中の4文献目

《税務Q&A》

情報提供 TKC税務研究所

【件名】

抵当権抹消費用と譲渡費用の範囲

【質問】

 譲渡した土地は、銀行から融資を受けたときに担保に提供した土地であり、売却時に銀行からの借入金が残っていたためにまだ抵当権がついたままになっていた。
 そこで今回その土地を売却するに当たりその土地に設定してあった抵当権を抹消して譲渡した。
 この抵当権抹消費用は、譲渡所得の計算において譲渡費用として控除することができるか。

【回答】

 譲渡所得は、本来資産の増加益に対する課税所得ですから、譲渡費用は、自ずと限定されることになり、資産の譲渡に際して支出した仲介手数料、運搬費、登記若しくは登録に要する費用その他当該譲渡のために直接要する費用をいうとされています。
 抵当権抹消費用は、その担保に提供された土地を譲渡しない場合であっても、担保の目的となった借入金を完済しその抵当権を抹消する場合に発生する費用であり、当該譲渡と直接的な関係はありません。したがって、抵当権抹消費用は、当該譲渡のために直接要する費用には該当しませんので、譲渡費用として控除することはできません。

【関連情報】

《法令等》

所得税法33条3項
所得税基本通達33-7

【解説】

1 譲渡所得の金額の計算上控除される譲渡費用は、〔1〕資産の譲渡に際して支出した仲介手数料、運搬費、登記若しくは登録に要する費用その他当該譲渡のために直接要した費用、〔2〕〔1〕に掲げる費用のほか、借家人等を立ち退かせるための立退料、土地(借地権を含む)を譲渡するためその土地の上にある建物等の取壊しに要した費用、既に売買契約を締結している資産をさらに有利な条件で他に譲渡するため当該契約を解除したことに伴い支出する違約金その他当該資産の譲渡価額を増加させるため、当該譲渡に際して支出した費用をいうものと解されています(所基通33-7)。
  具体的には、次のような費用(資産の取得費とされるものは除かれる。)が譲渡費用に当たるものと考えられています(所基通33ー7、33ー8)。
(1)土地建物等の譲渡に際して支出した登記に要する費用、測量費用、仲介手数料等その譲渡のために直接要した費用
(2)借家人を立ち退かせるための立退料、土地を譲渡するためその土地の上にある建物等の取壊し費用、既に売買契約を締結している資産をさらに有利な条件で他に譲渡するためその契約を解除したことに伴い支出する違約金その他譲渡資産の価値を増加させるために譲渡に際して支出した費用
(3)土地等の譲渡に際しその土地の上にある建物等を取壊したような場合で、しかもその取壊しがその譲渡のために行われたものであることが明らかなときにおけるその取壊しによる資産除却損失
(4)借地権を譲渡するに際して支払った地主への承諾料(名義変更料)
(5)農地を転用目的での譲渡に際して土地改良区に支払われた農地転用決済金等
(平成19年6月22日付で「土地改良区内の農地を転用目的での譲渡に際して土地改良区に支払われた農地転用決済金等がある場合における譲渡費用の取扱いについて」)
2 抵当権抹消費用は、その借入金を完済したため必要のなくなった抵当権の設定登記を抹消するための費用であって、その譲渡のために直接要した費用ではありません。
  したがって、譲渡所得の計算上、譲渡費用として控除することはできないものと考えます。
【判決要旨】
○ 一般に、根抵当権の抹消費用は、被担保債権の弁済、根抵当権設定契約の解除等に付随して根抵当権が消滅したことを明らかにするために行われるものであり、仮に、その抹消登記手続が事実上、当該不動産の譲渡の前提として必要であったとしても、それ自体で不動産の譲渡価格を増加させるために支出されたものとは評価できず、その費用は当該資産の譲渡のために直接かつ通常必要な費用に当たらないというべきである。

【収録日】

平成24年 6月26日


 
注1: 当Q&Aの掲載内容は、一般的な質問に対する回答例であり、TKC全国会及び株式会社TKCは、当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。個別の案件については、最寄りのTKC会員にご相談ください。
注2: 当Q&Aの内容は、作成時の法令等を基に作成しております。このため、当Q&Aの内容が最新の法令等に基づいているかは、利用者ご自身がご確認ください。
注3: 当Q&Aの著作権は株式会社TKCに帰属します。当Q&Aのデータを改編、複製、転載、変更、翻訳、再配布することを禁止します。

 TKC会員事務所一覧 TKC会員のご紹介
前文献 次文献