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《税務Q&A》

情報提供 TKC税務研究所

【件名】

リース終了資産の購入・再リースの各場合に追加支出をしたときの各税務処理

【質問】

 A社においては、所有権移転外ファイナンスリースにより電動フォークリフト(市場価額400万円。以下「本件フォークリフト」といいます。)をリースして事業の用に供していました。
 リース期間終了後、通常であれば購入することが多いのですが、「本件フォークリフト」については、契約上は1年ごとに更新可能だが概ね4年使用することを前提に再リースとし、リース期間中よりかなり安価となった再リース料を損金算入することにしました。
 ただし、本件フォークリフトについては、バッテリーが経年劣化して十分機能していないためその交換費用180万円を要すると指摘されており、本来はこれをリース会社が負担すべきですが、安価となった再リース料を増額しないことを条件にA社がこれを支出する(この支出を、以下「本件追加支出」といいます。)ことにしました。
 このような「本件追加支出」について税務上どのように処理すればよいかを、リース期間終了後に本件フォークリフトを購入した場合と比較してご教示いただけないでしょうか。

【回答】

1 リース期間終了後の対象資産の取扱いを定めた法令等
(1)通達には、賃借人がリース期間終了の時にそのリース取引の目的物であった資産を「購入」した場合、「購入の直前における当該資産の取得価額」にその購入代価の額を加算した「取得価額」に係るその後の償却限度額は、当該資産に係るリース取引が「所有権移転外リース取引」であった場合には、法人が当該資産と同じ資産の区分である他の減価償却資産について採用している償却の方法に応じて計算することとなる(法基通7-6の2-10の(2)のイ)との取扱いがあります。
 これは、リース期間終了時に賃借人が賃貸人からリース資産を「購入」するということは、とりもなおさず、賃借人がすでに保有しているリース資産について追加的な支出をすることにほかならないとして、平成19年度の税制改正前の資本的支出の取扱いと同様に、その購入時(リース期間終了時)にその購入代価をその取得価額に加算するという立場を採ることとした(税務研究会出版局刊・十一訂版法人税基本通達逐条解説745ページ)との考え方によるものと説明されています。
(2)また、通達には、リース期間の終了に伴い賃貸人が賃借人からそのリース取引の目的物であった資産の返還を受けた場合には、賃貸人は当該リース期間終了の時に当該資産を取得したものとし、この場合の当該資産の取得価額は、原則として、返還の時の価額による。リース期間の終了に伴い「再リース」をする場合についても同様とする(法基通7-6の2-11)との取扱いがあります。
 これは、リース期間の終了に伴い「再リース」をする場合でも、税務上は、賃貸人がいったんリース資産の返還を受けた上で、あらためて賃借人に対して賃貸をしたものとして取り扱うことになる(同掲書747ページ)と説明されているものです。
(3)そして、内国法人が有する減価償却資産について支出する金額のうちに「資本的支出」により損金の額に算入されなかった金額がある場合は、当該金額を取得価額として、その有する減価償却資産と種類及び耐用年数を同じくする減価償却資産を新たに取得したものとする(法法55〔1〕)取扱いとなっています。
2 リース期間終了後に対象資産を「購入」し、それに本件追加支出をした場合
(1)この場合、本件追加支出の前は、上記1(1)のとおりリース終了に伴う購入時(リース期間終了時)に、その購入代価を取得価額に加算した状態となっています。
 そして、その金額を新たな取得価額とした上で、A社が車両及び運搬具を減価償却する場合に「定率法」を採用しているものとしますと、同様に「定率法」によってこれを償却していくものと考えられます。
 ちなみに、フォークリフトの法定耐用年数は「4年」(耐用年数省令別表第1→車両及び運搬具→前掲のもの以外のもの→フォークリフト)ですから、「購入」した本件フォークリフトについても、「定率法」により「4年」で償却していくものと思われます。
(2)その上で、本件フォークリフトに本件追加支出を行うわけですが、上記1(3)のとおり、資本的支出と認められるバッテリー交換費用180万円を取得価額として、本件フォークリフトと種類及び耐用年数を同じくするフォークリフトを新たに取得したものとすることになります。したがって、この場合の「本件追加支出」は、同様にこれを「定率法」により「4年」で減価償却していけばよいと考えられます。
3 リース期間終了後に対象資産を「再リース」し、それに本件追加支出をした場合
(1)法人税法上のリース取引が税務上「売買があったもの」とされたとしても、所有権移転外リース取引が「再リース」となった場合ですが、通常、「再リース」は税務上売買取引とされる資産の賃貸借には該当しないため、税務上、賃貸人はリース期間の終了に伴いリース物件の返還を受けた上で、改めて賃借人に賃貸をするということになります(法基通7-6の2-11)。
 そうすると、そのような本件フォークリフトを「再リース」しているとしますと、本件フォークリフトはこの段階ではリース会社の資産ですから、A社は税務上も純粋な「賃借人」に該当するため、当該再リース料は一般経費として損金処理されているものと考えられます。
(2)その上で、本件フォークリフトに「本件追加支出」を行うわけですが、上記(1)を踏まえると本件追加支出は「他人の資産」である本件フォークリフトに対する費用の負担と位置付けられます。この場合、バッテリー交換費用180万円は、本来はこれをリース会社が負担すべきであるところ、安価となった再リース料を増額しないことを条件にA社がこれをあえて支出することにしたものですから、対価性のある費用負担と考えられます。
 そして、そのような費用は税務上、自己が便益を受けるために支出する「費用」(法令14〔1〕六ホ)等で、法人が支出する費用のうち支出の効果がその支出の日以後1年以上に及ぶものとして、繰延資産(法法2二十四)に該当するものと考えられます。
 したがって、この場合の「本件追加支出」については、バッテリーがA社の資産でない以上減価償却はできませんが、これを「繰延資産」と認識した上で、概ね使用することとした「4年」を償却期間として、償却費を損金処理していくことになると考えられます。

【関連情報】

《法令等》

法人税法2条
法人税法施行令14条
法人税基本通達7-6の2-10
法人税基本通達7-6の2-11

【収録日】

令和 7年 3月12日


 
注1: 当Q&Aの掲載内容は、一般的な質問に対する回答例であり、TKC全国会及び株式会社TKCは、当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。個別の案件については、最寄りのTKC会員にご相談ください。
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