《税務Q&A》
情報提供 TKC税務研究所
【件名】
中小企業向け所得拡大税制(教育訓練費:大型特殊自動車運転免許取得費用)について
【質問】
A社は、建設業を営む中小企業です。工事現場ではショベルカー、ロードローラーなどの大型特殊自動車を使っています。運転手2名が5月末に退職することになり、大型特殊運転免許を有する運転手の募集を行いましたが、建設従事者の不足もあってか応募者がないことからやむを得ず、営業担当の従業員1名を配置換えするほか、新規に1名(役員の息子)を5月から採用する予定です。 仕事上2名とも大型特殊自動車運転免許の取得が必要となりますので、5月中の取得に向けてその取得費用をA社で負担することにしました。所得拡大税制の教育訓練費の範囲に、自動車教習所に支払う大型特殊自動車運転免許の取得費用が含まれるか教えてください。
【回答】
1 賃上げ促進税制について 令和6年度の税制改正後の中小企業向け賃上げ促進税制では、教育訓練費に係る上乗せ措置として、教育訓練費の対前年度増加率が5パーセント以上かつ教育訓練費の額の当該中小企業者等の雇用者給与等支給額に対する割合が0.05パーセント以上である場合は10パーセントを上乗せすることとされています(措法42の12の5〔3〕二)。 この上乗せ措置の対象となる教育訓練費とは、法人がその国内雇用者の職務に必要な技術又は知識を習得させ、又は向上させるために支出する費用で政令で定めるものをいうとされています(措法42の12の5〔5〕七)。 それを受けて政令では、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める費用とすることとされています(措令27の12の5〔10〕)。 一 (省略。外部講師謝金、外部施設使用料等。) 二 (省略。研修委託費。) 三 法人がその国内雇用者を他の者が行う教育訓練等に参加させる場合 当該他の者に対して支払う授業料その他の財務省令で定める費用 更に財務省令では、授業料、受講料、受験手数料その他の同号の他の者が行う教育訓練等に対する対価として支払うものとする(措規20の10〔7〕)とされています。2 大企業向け「賃上げ促進税制」御利用ガイドブック(経済産業省) 教育訓練費に該当する費用の具体的な範囲等について、経済産業省が公表する『大企業向け「賃上げ促進税制」御利用ガイドブック(令和6年4月3日公表版)』及び『大企業向け「賃上げ促進税制」よくある御質問Q&A集(令和4年7月6日公表版)』等に詳しく説明されています。法人の規模によって教育訓練費の範囲は異なるものではありませんので、中小企業についても同様に解することができることとなります。 それによりますと、租税特別措置法施行令第27条の12の5第10項三号の費用(以下「外部研修参加費」という。)は、法人等がその国内雇用者の職務に必要な技術・知識の習得又は向上のため、他の者が行う教育訓練等(研修講座、講習会、研修セミナー、技術指導等)に参加させる費用を法人等が直接又は間接に(国内雇用者を通じて)他の者に対し支払う費用であり(当該国内雇用者が費用の一部を負担する場合は、その負担された金額を教育訓練費の額から控除する。)、他の者が行う教育訓練等に対する対価として当該他の者に支払う授業料、受講料、受験手数料その他の費用、具体的には、教育訓練等の講座等(研修講座、講習会、研修セミナー、技術指導等)の授業料、受講料、参加料、指導料等、通信教育に係る費用等(受験手数料は、教育訓練等の一環として各種資格・検定試験が行われる場合に対象となります。)が対象となるとされています。3 ご質問について 以上の法令等を踏まえ、ご質問の大型特殊自動車運転免許の取得費用は、職務に必要な技術・知識の習得とのことですので、外部研修参加費に該当すると思われます。 しかしながら、教育訓練費の前提となる国内雇用者とは、法人の使用人のうち法人の有する国内の事業所に勤務する雇用者で国内に所在する事業所につき作成された賃金台帳に記載された者をいい、パート、アルバイト、日雇い労働者も含まれますが(措令27の12の5〔6〕)、使用人兼務役員及び役員の特殊関係者(役員の親族等:6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族)は含まれません(措令27の12の5〔5〕)。したがって、従業員は該当しますが、5月からの採用予定者は役員の特殊関係者となりますので、該当しませんのでご注意願います。 また、教育訓練等の実施時期、その内容、訓練等の対象となった国内雇用者の氏名、支出の年月日、内容及び金額並びに相手先の氏名又は名称を記載した書類の保管が必要となります(措令27の12の5〔11〕、措規20の10〔8〕)。
【関連情報】
《法令等》
【収録日】
令和 6年 6月25日