《税務Q&A》
情報提供 TKC税務研究所
【件名】
完全支配関係のある学校法人に対する寄附金に係るグループ法人税制の適用について
【質問】
A社(株式会社)は、公益法人等である学校法人Bに発行済み株式のすべてを保有されている完全子法人ですが、このたび、A社の業績が好調のため、余剰資金の一部を完全親法人である学校法人に寄付したいと考えています。この場合、A社と学校法人Bの間には、完全支配関係がありますが、当該寄附金について、グループ法人税制の寄附金損金不算入の適用はありますでしょうか。なお、当該寄附金は、学校法人の公益事業会計で受け入れ、設置する学校の施設や設備の改修等に使用する予定です。
【回答】
1 グループ法人税制では、内国法人が当該内国法人との間に完全支配関係(法人による完全支配関係に限ります。)がある他の内国法人に対して支出した寄附金の額は損金不算入とされるとともに(法法37〔2〕)、当該他の内国法人が受けた受贈益の額は益金不算入とされる(法法25の2〔1〕)特例が適用になります。 ただし、このグループ法人税制における寄附金の損金不算入の特例の適用対象となる寄附金の額は、法人税法第25条の2(受贈益の益金不算入)の規定の適用がないものとした場合に益金の額に算入される受贈益の額に対応する寄附金の額に限られます(法法37〔2〕かっこ書)ので、寄附金と受贈益が対応する関係になければなりません。 この「受贈益の額に対応する寄附金」の解釈については、通達において、内国法人が当該内国法人との間に完全支配関係がある他の内国法人に対して支出した寄附金の額が、当該他の内国法人において法第25条の2第2項《受贈益の益金不算入》に規定する受贈益の額に該当する場合であっても、例えば、当該他の内国法人が公益法人等であり、その受贈益の額が当該他の内国法人において法人税が課されない収益事業以外の事業に属するものとして区分経理されているときには、当該受贈益の額を当該他の内国法人において益金の額に算入することができないのであるから、当該寄附金の額は、上記のグループ法人税制が適用される「受贈益の額に対応するもの」には該当しないこととされています(法基通9-4-2の6)。2 一般に、学校法人等の公益法人等は、収益事業以外の事業から生じた所得以外の所得については課税されません(法法6)。収益事業とは、「販売業、製造業その他の政令で定める事業で、継続して事業場を設けて行われるものをいう」とされ(法法2十三、法令5)、法人税法施行令5条において34業種が特掲されています。 そして、公益法人等が他から贈与を受ける行為(寄付金や補助金等)は、原則としていずれの収益事業にも該当せず、また、収益事業に付随して行われる行為にも該当しないため、それらの収入について受贈益課税等は行われませんし、その贈与等が、実質的に収益事業に係る資産の譲渡や役務の提供等の対価として行われるものでない限り、法人税の課税対象とされることはありません。 公益法人等が受ける寄附金等が課税対象とされる可能性がある「実質的に収益事業に係る資産の譲渡や役務の提供等の対価として行われるもの」とは、例えば、収益事業に係る収入又は経費を補てんするために補助金等の交付を受ける場合(法基通15-2-12(2))、また、収益事業の収益に計上すべき物品販売や請負の対価を寄附金の名目で収受しているような場合や、寄附金を支払った会員のみが収益事業に該当する特定の物品やサービスの提供を受けるような場合など、寄附金の経済的実質が収益事業の対価とみなされるようなケースです。3 この点、お尋ねのA社が実施予定の学校法人Bに対する寄付は、学校法人Bの公益事業会計で受け入れ、設置する学校の施設や設備の改修等に使用する予定、とのことであり、実質的に収益事業に係る資産の譲渡や役務の提供等の対価として行われるものに該当しない場合には、学校法人Bについて、法人税の課税対象となる収益事業の所得金額の計算上、益金の額に算入されることはないものと思われます。 したがって、お尋ねのA社(子法人)が完全支配関係のある学校法人B(親法人)の公益事業に充てるために支出する寄附金は、グループ法人税制が適用される「受贈益の額に対応する寄附金」には該当しないものと思われます(なお、学校法人などの特定公益増進法人に対してその主たる目的である業務に関連する寄附金を支出した場合には、資本金及び資本準備金の額と所得金額を基に一定の算式で計算した特別損金算入限度額以内の金額は、一般の寄附金とは別枠で損金の額に算入されます(法法37〔4〕、法令77、77の2)。)。
【関連情報】
《法令等》
【収録日】
令和 5年 8月16日