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《税務Q&A》

情報提供 TKC税務研究所

【件名】

譲渡費用の範囲

【質問】

 譲渡所得の金額の計算上控除される譲渡費用とは、どのような費用をいうのか。

【回答】

 譲渡所得を算出する場合に、収入金額から差し引くことができる譲渡に要した費用とは、資産の譲渡に際して支出した仲介手数料、登記に要する費用、その他その譲渡のために直接要した費用のほか、借家人等を立ち退かせるための立退料、土地を譲渡するためにその土地の上にある建物等の取壊しに要した費用、有利な条件で他に譲渡するために支出した売買契約解除に伴う違約金、その他その資産の譲渡価額を増加させるためその譲渡に際して支出した費用が当たります。
 また、土地改良区内の農地の転用目的での譲渡に際して土地改良区に支払われた農地転用決済金・協力金等のうちその土地の譲渡価額を増加させるためその譲渡に際して支出した費用も当たります(平成19年6月22日付国税庁個別通達(課資3-7・課審6-13)。

【関連情報】

《法令等》

所得税法33条
所得税基本通達33-7
所得税基本通達33-8
平成19年6月22日付国税庁個別通達(課資3-7・課審6-13)

【解説】

 譲渡所得とは、資産の譲渡による所得をいう(所得税法33条1項)ところ、譲渡所得の本質は、資産の値上がりによりその資産の所有者に帰属する増加益(キャピタル・ゲイン)を所得として、その資産が所有者の支配を離れて他に移転するのを機会に、これを清算して課税する趣旨のものと解されています(最高裁昭和43年10月31日判決ほか)。
 そして、この資産の値上がり益は、純粋にはその資産を取得したときの時価と譲渡したときの時価の差額に相当する金額であるが、所得税法では、このような抽象的な利益を所得としてとらえるのではなく、別段の定めのある場合を除き原則として、その資産の実際の譲渡価額からその資産の取得に要した金額を控除した残額、つまり実現した利得を所得として捉えることになります。
 したがって、譲渡所得が資産の値上がり益に相当するものであるとはいっても、資産の譲渡による収入金額は、必ずしもその資産の時価と一致するとは限らないので、その所得も当然資産の値上がり益と完全に一致するものではありません。
 その資産をいかに時価に近い価額で売るかまたはそれより高い価額で売るか、つまり、より多くの所得を得るかは、その資産を譲渡者の手腕によっても違ってくることになります。
 そこで、譲渡所得の金額の計算上控除される譲渡に要する費用は、上記のことなどから、その資産の譲渡価額を増加させるために要したと認められる費用やその資産の譲渡を実現するために直接必要であった費用などをいうものとされています。
 具体的には次のような費用(資産の取得費とされるものは除かれる。)がこれに該当することになります(所基通33ー7、33ー8)。
1 土地建物等の譲渡に際して支出した登記に要する費用、測量費用、仲介手数料等その譲渡のために直接要した費用
2 借家人を立ち退かせるための立退料、土地を譲渡するためその土地の上にある建物等の取壊し費用、既に売買契約を締結している資産をさらに有利な条件で他に譲渡するためその契約を解除したことに伴い支出する違約金その他譲渡資産の価値を増加させるために譲渡に際して支出した費用(手付金の返還分に相当する金額を除きます。)
3 土地等の譲渡に際しその土地の上にある建物等を取壊したような場合で、しかもその取壊しがその譲渡のために行われたものであることが明らかなときにおけるその取壊しによる資産除却損失
4 借地権を譲渡するに際して支払った地主への承諾料(名義変更料)
5 農地転用許可等は停止条件となっている土地改良区内の農地の売買契約において、その転用に伴い法令等の規定に基づき土地改良区へ支払った農地転用決済金等(平成19年6月22日付国税庁個別通達(課資3-7・課審6-13)

【収録日】

令和 4年 3月 8日


 
注1: 当Q&Aの掲載内容は、一般的な質問に対する回答例であり、TKC全国会及び株式会社TKCは、当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。個別の案件については、最寄りのTKC会員にご相談ください。
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