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《税務Q&A》

情報提供 TKC税務研究所

【件名】

賃貸用中古マンションでユニットバスを交換した場合の処理について

【質問】

 A社は、平成26年7月に取得した中古マンション(以下「本件マンション」といいます。)を賃貸用物件として、取得後5年間事業の用に供してきましたが、購入時ですでに本来の法定耐用年数47年に対して35年を経過していたため、簡便法による耐用年数が19年でした。本件マンションは、このように全体的に老朽化していたため、この度、ユニットバスを全面的に交換し、工事業者にその工事費用(以下「本件交換費用」といいます。)を支払いました。
 この場合、本件交換費用を修繕費として処理できるでしょうか。また、ユニットバスは、これまで建物に含めて減価償却を行ってきましたが、本件交換費用が資本的支出に該当する場合は、ユニットバスの浴槽が樹脂製であることから、減価償却資産の耐用年数等に関する省令(以下、単に「省令」といいます。)別表第一の「器具及び備品」、「1家具、電気機器、ガス機器及び家庭用品(他の項に掲げるものを除く。)」、「その他のもの」、「その他のもの」の8年を適用してもよいでしょうか。あるいは、「建物附属設備」、「給排水又は衛生設備及びガス設備」の15年を適用してもよいでしょうか。

【回答】

1(1)中古資産の耐用年数については、〔1〕当該資産をその用に供した時以後の使用可能期間(残存耐用年数)を見積もることができるほか(省令3〔1〕一)、〔2〕法定耐用年数の全部を経過した資産は法定耐用年数の100分の20に相当する年数(2年に満たないときは2年とします。)とし、法定耐用年数の一部を経過した資産は法定耐用年数から経過年数を控除した年数に経過年数の100分の20に相当する年数を加算した年数による(同項二。「簡便法」)こともできるとされています。
  本件マンションについては、購入時で、本来の法定耐用年数47年に対してすでに35年を経過していたとのことですから、「(47年-35年)+(35年×20/100)」の算式により、中古建物としての耐用年数を19年と算定したことは妥当な処理と考えます。
 (2)法人が、修理、改良その他いずれの名義をもつてするかを問わず、その有する固定資産について支出する金額で、〔1〕その支出により、通常の管理又は修理をするものとした場合に予測される当該資産の使用可能期間を延長させるもの、〔2〕その支出により、通常の管理又は修理をするものとした場合に予測される当該資産の価額を増加させるもの(そのいずれにも該当する場合には、いずれか多い金額)については、資本的支出に該当するものとして損金の額に算入されず、種類及び耐用年数を同じくする減価償却資産を新たに取得したものと取り扱われることになります(法令55、法令132)。
  一方、法人がその有する固定資産の修理、改良等のために支出した金額のうち当該固定資産の通常の維持管理のため、又はき損した固定資産につきその原状を回復するために要したと認められる部分の金額は、修繕費に該当するものとされています(法基通7-8-2)。
 (3)この点、ユニットバスは、これまで建物に含めて減価償却を行ってきたとのことですが、本件マンションそのものは、購入時で、本来の法定耐用年数47年に対してすでに35年を経過していたものですから、これまでユニットバスを交換してこなかったとしますと、これ自体も相当老朽化していたものと推測されます。この度そのようなユニットバスを交換したのであれば、従来なかった新たな機能も盛り込まれているでしょうし、新品への交換ですから本件マンションの使用可能期間もそれなりに延長されることになると思われます。そうすると、本件交換費用は、修繕費として処理することはできないものと考えます。
  したがって、本件交換費用は、資本的支出に該当するものと解されますが、ユニットバスは、上記のとおりこれまで建物に含めて減価償却を行ってきたとのことですから、種類(建物)及び耐用年数(19年)を同じくする減価償却資産として、簡便法による耐用年数19年で償却していくべきものと考えられます。この場合、お尋ねにはありませんでしたが、旧ユニットバスの除却損については、建物の未償却残高を総床面積で除してユニットバスの床面積を乗ずるなどの方法によりユニットバス部分の帳簿価額を合理的に算出できれば、これを損金の額に算入できるものと考えられます。
  なお、中古資産を取得した場合に、その減価償却資産を事業の用に供するに当たって支出した資本的支出の金額が、その減価償却資産の「再取得価額」の50パーセント相当額を超えるときには、見積法及び簡便法を適用することができず、本来の耐用年数を適用することとされていますから(省令3〔1〕ただし書、耐通1-5-2)、資本的支出の金額が多額である場合は注意が必要です。
2(1)ところで、「器具及び備品」に該当するのではないかとの点についてですが、「構造上建物と独立・可分」であって、かつ、「機能上建物の用途及び使用状況に即した建物本来の効用の維持以外の『固有の目的』により設置されたもの」は、省令別表第一の「器具及び備品」に関する耐用年数が適用されるものと解されます。
  この点、ユニットバスは、防湿性の部材(壁、天井、ドア等)を用いて当該部材を連結・結合させ、湿気、水分を漏らさないようにして浴室を形成するもので、少なくとも「構造上建物と独立・可分」のものとは言えませんから、「器具及び備品」の耐用年数は適用できないものと考えます。
 (2)また、「建物附属設備」については、解説書では、「本来は建物そのものに含まれるものだが、構造及び使用状況等からその使用可能時間が建物本体の使用可能時間と開差がある(短い)もの」などと説明されており、建物とは別に、暖冷房設備、照明設備、通風設備、昇降機その他建物に附属する設備と規定されています(法令13一)。
  この点、確かに省令別表第一には「給排水…設備」が耐用年数15年の建物附属設備として規定されていますが、ユニットバスは、上記のとおり防湿性の部材(壁、天井、ドア等)を用いて当該部材を連結・結合させ、湿気、水分を漏らさないようにして浴室を形成するものです。
  したがって、ユニットバスが連結している先は「給排水…設備」と言えるとしても、ユニットバス自体はそうではありませんので、「建物附属設備」には該当しないものと考えます。
 (3)そもそも建物の耐用年数は、建物本件の他に、個々の内部造作(建物附属設備に該当するものは除く)を総合して算定した上、更に、建物の構造及び用途の違いを勘案して、具体的な建物の耐用年数に差を設けており、旅館用なら旅館用というように用途にふさわしい内部造作を想定して算定されていると考えられます。
  このような趣旨からしますと、「建物附属設備」に該当しない建物の内部造作に対しては、建物本体の耐用年数が適用されると解されますから、この点からも、本件交換費用を耐用年数19年の建物として償却していく上記1(3)の処理は妥当なものと考えられます。

【関連情報】

《法令等》

法人税法施行令13条
法人税法施行令55条
法人税法施行令132条
耐用年数省令3条
減価償却資産の耐用年数等に関する省令別表第一
法人税基本通達7-8-2
耐用年数通達1-5-2

【収録日】

令和 1年10月31日


 
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