《税務Q&A》
情報提供 TKC税務研究所
【件名】
用途変更の建物造作のリフォーム費用を一時の損金とすることの可否
【質問】
甲社は、不動産賃貸業を営む3月決算の青色申告法人です。資本金の額は1,000万円、常時使用する従業員の数は5人で中小企業者に該当します。 甲社所有物件の1つである建物Aを事務所5室、住宅7室として賃貸していますが、住宅(和室)の1室がここ数年空室となっていました。最近になり、この1室を事務所用として借りたいとの申し出がありましたので、事務所用にリフォームをします。リフォームは壁のクロスの張替、畳から床のフローリングへの変更、押入をクローゼットへ変更する予定です。 リフォーム業者には、クロス張替・床のフローリング変更・押入のクローゼット変更をそれぞれ別に見積ってもらい、(1)壁のクロス張替 23万円、(2)床のフローリング変更 25万円、(3)押入のクローゼット変更 27万円となっています。 今回のリフォーム費用は、住宅用から事務所用への変更のため修繕費には該当せずに、資本的支出と考えていますが、それぞれのリフォーム費用を別資産とすることが可能ですか、また可能な場合にはそれぞれの資産は30万円未満となり中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の特例により全額損金計上は可能ですか。
【回答】
1 法令等の規定(1)資本的支出 資本的支出とは、通常の管理又は修理をするものとした場合に予測されるその資産の使用可能期間を延長させ又はその資産の価値を増加させる部分に対応する金額、と規定されています(法令132)。 法人がその有する固定資産の修理、改良等のために支出した金額のうち、当該固定資産の価値を高め、又はその耐久性を増すこととなると認められる部分に対応する金額は資本的支出となる(法基通7-8-1)とされ、同通達(1)では、建物の避難階段の取付等物理的に付加した部分に係る費用の額」、同通達(2)では、「用途変更のための模様替え等改造又は改装に直接要した費用の額」が例示されています。(2)建物の内部造作物の取扱い 建物の内部に施設された造作については、その造作が建物附属設備に該当する場合を除き、その造作の構造が当該建物の骨格の構造と異なっている場合においても、それを区分しないで当該建物に含めて当該建物の耐用年数を適用する。したがって、例えば、旅館等の鉄筋コンクリート造の建物について、その内部を和風の様式とするため特に木造の内部造作を施設した場合においても、当該内部造作物を建物から分離して、木造建物の耐用年数を適用することはできず、また、工場建物について、温湿度の調整制御、無菌又は無じん空気の汚濁防止、防音、遮光、放射線防御等のために特に内部造作物を施設した場合には、当該内部造作物が機械装置とその効用を一にするとみられるときであっても、当該内部造作物は建物に含めることに留意する、とされています(耐通1-2-3)。2 ご質問に対する回答(1)それぞれのリフォーム費用を別資産とすることは可能ですか。 お尋ねのリフォーム費用は、用途変更のための模様替え等改造又は改装に直接要した費用の額として、ご認識のとおり資本的支出に該当すると考えられます。 そして、クロス張替・床のフローリング変更・押入のクローゼット変更は、内装工事等の内部造作に該当するものとして、「建物」になると考えられます。 資産計上の単位としては、住宅用から事務所用へ用途を変更したものであり、その工事のすべてをまとめて1つの資産として償却していくことが相当と考えられます。 なお、見積金額の中に解体・撤去費用等があれば、その金額については損金の額に算入することができるものと考えられます。(2)それぞれの別の資産とした場合には30万円未満となり中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の特例により全額損金計上は可能ですか。 上記(1)の回答のとおり、今回のリフォーム費用はまとめて1つの資産として償却していくと考えられるため、リフォーム費用の合計額は75万円となり、ご質問の租税特別措置法第67条の5第1項に規定する中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例における対象資産の金額要件(30万円未満)に該当しないことになります。 また、法人が行った資本的支出については、原則として租税特別措置法第67条の5第1項に規定する「取得し、又は制作し、若しくは建設し、かつ当該中小企業者等の事業の用に供した減価償却資産」に当たらないとされ(措通67の5-3)、仮に30万円未満であったとしても、同条の特例の適用はできないと考えられます。
【関連情報】
《法令等》
【収録日】
令和 7年 3月13日