《税務Q&A》
情報提供 TKC税務研究所
【件名】
テナントフロアのある居住用賃貸建物に係る課税仕入れ等の税額の控除
【質問】
(株)Aは10階建て(各階の床面積はいずれも500平方メートル)の賃貸用建物を建築予定です。 この建物の1階は店舗用、2~10階は居住用とし、それぞれの目的に合った内装を施すこととしています。 この建物の年間賃貸料収入は、テナント部分の1階は12,000千円、住用部分の2階から10階は合計45,000千円(各階5,000千円)と見込まれます。 この建物は全体として居住用賃貸建物に該当すると思いますが、テナント部分の面積割合(10パーセント)と課税賃貸収入の割合(消令35条の2第1項の課税賃貸割合は約21パーセント)が大きく異なることから、課税仕入れ等の税額(1億円)をテナントフロアと居住フロアとに区分せず、取得した課税期間の申告においては仕入税額控除を行わないこととし、第3年度にテナントフロアを課税賃貸用に用途変更したものとして調整税額の計算を行った方が控除税額は大きくなりますが、そのようなことは可能でしょうか?(注)課税賃貸割合12,000千円×3年÷(12,000千円+45,000千円)×3年≒21.052……
【回答】
消費税法における「居住用賃貸建物」とは、同法別表第一第13号に掲げる住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな建物(その附属設備を含みます。)以外の建物で、同法第12条の4第1項に規定する高額特定資産又は同条第2項に規定する調整対象自己建設高額資産に該当するものをいうこととされています。したがって、居住の用に供するものとして賃貸される建物の一部に居住の用に供されない部分があるとしても、居住の用に供されない部分を含めた課税仕入れに係る税抜支払対価の額が1,000万円以上の場合は、その建物の全体が居住用賃貸建物に該当することになります。 ただし、住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな部分がある居住用賃貸建物について、事業者がその構造及び設備の状況その他の状況によりその他の部分と居住用賃貸部分とに合理的に区分しているときは、当該居住用賃貸部分に係る課税仕入れ等の税額についてのみ仕入税額控除の制限対象とすることとされています。 消費税法施行令50条の2第1項の規定振りからしますと、住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな部分と住宅の貸付けの用に供することが明らかな部分とがある建物について合理的に区分していない場合には、消費税法30条10項の規定どおり、その建物の全部が居住用賃貸建物に該当することになりますから、その建物に係る課税仕入れ等の税額の全部が仕入税額控除を制限されることになります。 ところで、居住用賃貸建物を課税賃貸用に供した場合等の仕入れに係る消費税額の調整は、居住用賃貸建物に係る課税仕入れ等の税額について消費税法30条1項の規定の適用を受けた場合において、当該事業者が第三年度の課税期間の末日において当該居住用賃貸建物を有しており、かつ、当該居住用賃貸建物の全部又は一部を当該居住用賃貸建物の仕入れ等の日から第三年度の課税期間の末日までの間(調整期間)に住宅の貸付け以外の貸付けの用(課税賃貸用)に供したときは、当該有している居住用賃貸建物に係る課税仕入れ等の税額に課税賃貸割合を乗じて計算した金額に相当する消費税額を当該事業者の当該第三年度の課税期間の仕入れに係る消費税額に加算するというものです。 この規定における調整期間の初日は居住用賃貸建物の仕入れ等の日であり、「居住用賃貸建物の仕入れ等の日」とは「当該居住用賃貸建物の課税仕入れの日(自己建設高額特定資産である場合は、当該自己建設高額特定資産の建設等が完了した日)をいうものとされていますから、居住用賃貸建物の引渡しを受けた日が調整期間の初日ということになります。 以上を踏まえますと、ご質問の場合は、調整期間の初日に居住用賃貸建物の一部を課税賃貸用に供したことになり、当該居住用賃貸建物の仕入れ等の課税期間において消費税法施行令50条の2第1項の適用を受けず、課税仕入れ等の税額の全部について消費税法30条10項の規定の適用を受けるということですから、第三年度の課税期間においては、課税仕入れ等の税額の全部が消費税法35条の2第1項の規定の適用対象になるものと考えます。
【関連情報】
《法令等》
【収録日】
令和 4年12月14日