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《税務Q&A》

情報提供 TKC税務研究所

【件名】

従業員が負担すべき建設国保の保険料の一部を会社が負担した場合の税務処理について

【質問】

 建設業を営むA社では、協会けんぽの適用除外の承認を受けて建設国保に加入し、厚生年金とともに保険料の半額を会社負担、半額を従業員負担としていますが、建設国保の保険料について、協会けんぽと同様に半額を会社が負担している場合、法定福利費として損金経理してもいいのでしょうか。

【回答】

1 建設国保(全国建設工事業国民健康保険組合)とは、全国の大工・とび・土木・造園・左官・板金などの建設工事業に従事する仲間が集まって国民健康保険法に基づき昭和45年6月に設立された職域による国民健康保険組合の一つであり、その加入資格は、建設工事業に従事している方で、個人事業所の事業主・従業員と一人親方とされています。
  一方、協会けんぽ(全国健康保険協会)とは、被用者保険者のひとつとして健康保険法等に基づき設立された法人(前身は社会保険庁が実施していた政府管掌健康保険(政管健保))であり、常時、5人以上の従業員を使用する一定の個人事業所や常時、従業員を使用する法人事業所は、事業主や従業員の意思に関係なく、加入が義務付けられています。
  したがって、法人事業所は、原則として、協会けんぽに加入することとなりますので建設国保への加入はできませんが、建設国保にすでに加入している個人事業所や一人親方が法人または常時5人以上の従業員がいる事業所をあらたに設立した場合には、事実の発生した日から14日以内に事業主が事業所の所在地を所轄する年金事務所へ届け出て健康保険被保険者適用除外の承認を受けることで、健康保険については引き続き建設国保に加入していることができることとされています(建設国保のホームページ→保険の手続き→加入資格)。
  その場合、協会けんぽは、会社と従業員が保険料を折半して負担することとされていますので、会社(法人)負担分は、法定福利費として法人の損金に算入され、従業員負担分は、給与天引時に預り金等で処理の上それを取り崩して納付する処理が一般的と思われますが、建設国保は、保険料の全額を従業員が負担することになりますので、会社が負担すべき保険料は発生しません。
2 このように、建設国保の場合は、会社が負担すべき保険料は発生しませんが、お尋ねのA社のように、建設国保に加入している法人において、協会けんぽと同様に保険料の半額を会社負担としている事例もあるようです。
  その場合の従業員が負担すべき保険料の会社負担分の税務上の取扱いについては、役員等の給与の額に含まれる「債務の免除による利益その他の経済的な利益」を例示する法基通9-2-9では、その(10)に「役員等のために個人的費用を負担した場合におけるその費用の額に相当する金額」が挙げられています。
  そして、法基通9-2-10(給与としない経済的な利益)では、「法人が役員等に対し9-2-9に掲げる経済的な利益の供与をした場合において、それが所得税法上経済的な利益として課税されないものであり、かつ、当該法人がその役員等に対する給与として経理しなかったものであるときは、給与として取り扱わないものとする。」とされ、法人税法上、従業員等に対する経済的利益の供与を給与として扱うか否かの判断は、所得税の取扱いに委ねることとされています。
3 保険料に係る所得税の取扱いでは、所得税基本通達36-31の8(使用人契約の保険契約等に係る経済的利益)において、「使用者が、役員又は使用人が負担すべき次に掲げるような保険料又は掛金を負担する場合には、その負担する金額は、当該役員又は使用人に対する給与等に該当することに留意する。」として、(2)に「法第74条第2項《社会保険料控除》に規定する社会保険料」が挙げられており、職域による国民健康保険である建設国保の保険料は、これに該当するものと思われますので、使用者である法人が建設国保に係る保険料の一部を負担した場合には、役員又は使用人に対して経済的利益を供与したものとして、給与等に該当することとなるものと思われます。
  したがって、建設業を営むA社において、建設国保に加入し、協会けんぽと同様に保険料の半額を会社負担としている場合には、それを負担すること自体は法人の任意と思われますが、その場合の当該法人負担額は、税務上は、法人に負担義務がある社会保険料に係る法定福利費ではなく、従業員に対する給与として取り扱われることとなるものと思われます。

【関連情報】

《法令等》

法人税基本通達9-2-9
法人税基本通達9-2-10
所得税法74条
所得税基本通達36-31の8

【収録日】

令和 7年 1月20日


 
注1: 当Q&Aの掲載内容は、一般的な質問に対する回答例であり、TKC全国会及び株式会社TKCは、当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。個別の案件については、最寄りのTKC会員にご相談ください。
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