《税務Q&A》
情報提供 TKC税務研究所
【件名】
クレジットカード会社からの請求明細書の取扱い
【質問】
事業者が法人カードを利用している場合には、クレジットカード会社から一定期間ごとに請求明細書が交付されますが、この請求明細書を保存することで仕入税額控除を受けることはできるでしょうか。 また、インボイス制度の下ではどのようになるでしょうか。
【回答】
クレジットカード会社がそのクレジットカードの利用者(会員)に交付する請求明細書は、課税資産の譲渡等を行った事業者(加盟店)が作成して、カード利用者である課税仕入れを行った事業者に対して交付する書類ではありませんから、消費税法30条9項1号に規定する請求書等には該当しません。 したがって、クレジットカードを利用して課税仕入れを行った事業者がこの請求明細書だけを保存していても、仕入税額控除の要件である「帳簿及び請求書等の保存」を満たしたことにはなりません。 しかし、クレジットカードを利用した時には、会員に対して加盟店が交付する書類がありますから、その書類の記載内容に応じて次のように取り扱われることになると考えます。1 消費税法第30条第9項に規定する請求書等に該当する「ご利用明細」等が交付される場合 クレジットカードを利用した時には、会員に対して加盟店が、消費税法30条9項1号に規定する請求書等の事項である〔1〕その書類の作成者の氏名又は名称、〔2〕課税資産の譲渡等を行った年月日、〔3〕課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容(及び軽減対象資産の譲渡等である旨)、〔4〕税率の異なるごとに区分して合計した課税資産の譲渡等の対価の額、〔5〕その書類の交付を受ける者の氏名又は名称を記載した「ご利用明細」等を交付することもあるようです。 「ご利用明細」等が消費税法第30条第9項の記載事項を満たすものであれば、それを帳簿とともに保存することで仕入税額控除は可能です。2 「クレジットカード売上票(お客様控え)」と「領収書」が発行される場合 消費税法第30条第9項に規定する請求書等に該当する「ご利用明細」等が交付されない場合でも、クレジットカードを利用した時には、一般的に、利用者に対して課税資産の譲渡等を行った事業者が、「クレジットカード売上票(お客様控え)」と「領収書」(いわゆるレシート)を併せて交付しています。 消費税法30条9項1号に規定する請求書等の記載事項は、〔1〕その書類の作成者の氏名又は名称、〔2〕課税資産の譲渡等を行った年月日、〔3〕課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容(及び軽減対象資産の譲渡等である旨)、〔4〕税率の異なるごとに区分して合計した課税資産の譲渡等の対価の額、〔5〕その書類の交付を受ける者の氏名又は名称とされていますが、「クレジットカード売上票」には、〔3〕の記載がなく、〔4〕については税率の異なるごとに区分した対価の額は記載されていないものの、〔1〕、〔2〕、〔5〕(氏名又は会員番号)は記載されています。 これに対して、「クレジットカード売上票」とともに交付する「領収書」は、通常、上記〔1〕~〔4〕の事項が記載されています(課税資産の譲渡等を行った事業者が小売業等を営む場合には、〔5〕は記載不要)から、この「領収書」は、消費税法30条9項に規定する請求書等に該当することになります。 したがって、1の「ご利用明細」等又は2の「領収書」を帳簿とともに保存すれば、仕入税額控除の要件を充足することになります。3 インボイス制度における取扱い インボイス制度が実施される令和5年10月1日以後に加盟店が交付する上記1の「ご利用明細」等又は2の「領収書」に適格請求書又は適格簡易請求書の記載事項である適格請求書発行事業者の登録番号、課税資産の譲渡等に対する適用税率及び税率ごとに区分した消費税額等(適格簡易請求書の場合は課税資産の譲渡等に対する適用税率及び税率ごとに区分した消費税額等のどちらか一方でも可)が記載されたものは、適格請求書又は適格簡易請求書に該当することになりますから、これらの書類を帳簿とともに保存すれば、仕入税額控除の要件を充足することになります。 なお、加盟店が適格請求書発行事業者の登録を受けていない事業者である場合でも、令和11年9月30日までの間は、適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れについて仕入税額相当額の一定割合を仕入税額とみなして控除できる経過措置が設けられています。
【関連情報】
《法令等》
【収録日】
令和 4年 3月14日