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《税務Q&A》

情報提供 TKC税務研究所

【件名】

社員入居前の借上社宅に係る支払家賃及び諸費用の損金算入時期について

【質問】

 A社は、資本金5、000万円で、3月決算の青色申告法人ですが、来期よりB市にB営業所を開設する予定であり、開設に先立って、B市内に営業所赴任者用の社宅アパートを借りることとなり、X年2月15日に不動産会社と賃貸借契約を了しました。
 賃貸借契約に伴い、敷金160,000円、礼金80,000円、前家賃として2月分(日割計算によるもの)40,000円及び3月分80,000円、鍵交換代32,400円、エアコン代108,000円並びに仲介手数料86,400円を支払いました(以下、これらの費用等を併せて、「本件賃借初期費用」といいます。)。なお、エアコンについては、試運転の結果、良好に作動することを確認済みです。
 B営業所の開設は、X年5月以降となる見込みであり、開設に先立って赴任する社員も未定であるため、当期末(X年3月末)現在、社宅は入居者不在の状態ですが、本件賃借初期費用については、前払費用等として損金算入を繰り延べる必要があるのでしょうか。

【回答】

1 法人税法における損金の額の算入時期については、法人税法22条3項において規定されていますが、そのうち、〔1〕売上原価、完成工事原価その他の原価の額については、費用収益対応の原則により、〔2〕販売費、一般管理費その他の費用の額については、期間対応及び債務確定基準により、また、〔3〕損失の額については、発生した事業年度において、それぞれ損金の額に算入されることとされています。
2 お尋ねの社宅アパートに係る本件賃借初期費用は、上記〔1〕の売上原価ではなく、〔2〕の販売費、一般管理費その他の費用に該当するものと考えられますから、収益等との対応を考慮することなく、期間対応及び債務確定基準に基づいて損金算入時期を決定することになります。
  この「債務確定基準」とは、法人税基本通達2-2-12において、次の要件のすべてに該当するものをいうとされています。
(1)当該事業年度終了の日までに当該費用に係る債務が成立していること。
(2)当該事業年度終了の日までに当該債務に基づいて具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していること。
(3)当該事業年度終了の日までにその金額を合理的に算定することができるものであること。
3 お尋ねの社宅アパートについては、X年2月15日に賃貸契約を了していることから、当該事業年度終了の日までに、本件賃借初期費用に係る債務が成立しているものと認められ、また、未だ社員は入居していないものの、借上者たるA社による賃借が開始されていることから、本件賃借初期費用に係る給付原因事実が発生していることが明らかであり、さらに、既に支払が完了し、金額も確定していることからすると、本件賃借初期費用については債務確定基準のすべての要件を満たしているものと認められます。
  したがいまして、本件賃借初期費用のうち、資産計上を要する敷金(契約解除時において返還されるものに限ります。)及びエアコン代を除く各費用については、賃貸借開始時の損金の額に算入して差し支えないものと考えられます。
  なお、エアコンについては、事業供用の判定が問題となりますが、既にA社による賃借が開始された借上社宅に設置され、試運転も了していることからすると、借上社宅用の器具及び備品として事業の用に供されているものと認めるのが相当であり、一括償却資産の損金算入(法令133の2)又は中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例(措置法67の5)の各規定の適用が可能と考えられます。

【関連情報】

《法令等》

法人税法22条3項
租税特別措置法67条の5
法人税法施行令133条の2
法人税基本通達2-2-12

【収録日】

平成29年 5月31日


 
注1: 当Q&Aの掲載内容は、一般的な質問に対する回答例であり、TKC全国会及び株式会社TKCは、当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。個別の案件については、最寄りのTKC会員にご相談ください。
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