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《税務Q&A》

情報提供 TKC税務研究所

【件名】

法人が新工場へのアクセス道路である市道の拡幅・舗装を行い市に寄附した場合の税務処理

【質問】

 当社は工場の新設に伴い、工場に出入りする車輛の通行上の便宜のため、新工場へのアクセス道路でもある市道(一般の方も通行可能です。)を、市役所の同意のもと拡幅、舗装(全面、コンクリート舗装です。)しましたが、この工事に要した費用は、市道の管理者であり、所有者である市役所に対する寄附となるので、国等に対する寄附金として全額損金処理してよろしいでしょうか。

【回答】

1 国又は地方公共団体に対する寄附金(国等に対する寄附金)については、「その寄附をした者がその寄附によって設けられた設備を専属的に利用することその他特別の利益がその寄附をした者に及ぶと認められるもの」を除き、全額が損金に算入されます(法法37〔3〕一)。
  このように、市において採納された寄附金でも、その寄附金の支出に伴い、その後、その寄附をした者に特別の利益が及ぶような場合は、全額損金損入の対象から除かれています。例えば、寄附金により設置等された公共施設によって寄附をした法人がその施設の利用により特別の利益なり便益を享受できる場合には、国等に対する寄附金として損金処理はできない取り扱いになっています。
  この点、貴社が行った工事は、工場に出入りする車輛の通行上の便宜のためのアクセス道路の拡幅、舗装ですので、貴社の必要に基づき行われたものであり、工事の結果、一般人の利便性も向上するとしても、貴社自身が受ける便益のほうがより大きいものと考えられるため、工事に要した費用は国等に対する寄附金には該当しないこととなります。
2 その場合の当該工事費用の税務処理については、法人税法上、「法人が自己の必要に基づいて行う道路、堤防、護岸、その他の施設又は工作物(「公共的施設」)の設置又は改良のために要する費用」は、令第14条第1項第6号イ《公共的施設等の負担金》に規定する「自己が便益を受ける公共的施設の設置又は改良のために支出する費用」として、繰延資産に該当することとされています(法令14〔1〕六イ、法基通8-1-3)。
  したがって、お尋ねの工場に出入りする車輛の通行上の便宜のためのアクセス道路の拡幅、舗装に要した費用が、この通達で例示する「法人が自己の必要に基づいて行う道路・・・その他の施設又は工作物(「公共的施設」)の設置又は改良のために要する費用」に当たるものと判断された場合には、「自己が便益を受ける公共的施設の設置又は改良のために支出する費用」として、繰延資産に計上することとなります。
3 この繰延資産の償却期間については、「公共的施設の設置又は改良のために支出する費用」のうち、(1)その施設又は工作物がその負担した者に専ら使用されるものである場合には、その施設又は工作物の耐用年数の10分の7に相当する年数、(2)(1)以外の施設又は工作物の設置又は改良の場合には、その施設又は工作物の耐用年数の10分の4に相当する年数によることとされています(法基通8-2-3)。
  お尋ねの市道の拡幅、舗装に要した費用の資産区分は、別表第一「構築物」の「舗装道路又は舗装路面」に該当するものと思われますので、上記の償却期間の計算の基礎となる「施設又は工作物の耐用年数」は、その細目(舗装の種類)に応じた耐用年数(お尋ねの場合、コンクリート敷等に適用される15年)によることとなります。
  また、当該改良後の市道は、貴社の新工場へのアクセス道路ですが、一般の方も通行可能、とのことから、改良後の当該市道が、費用を負担した貴社だけでなく他の一般人の用にも供されるものである場合は、上記通達の(2)の取扱いにしたがい、その舗装道路に適用される耐用年数15年の10分の4に相当する年数(すなわち、15年×4/10=6年)により償却していくこととなります。
4 なお、法人税基本通達8-2-3の(注)1では、「法人が道路用地をそのまま、又は道路として舗装の上国又は地方公共団体に提供した場合において、その提供した土地の価額(舗装費を含む。)が繰延資産となる公共施設の設置又は改良のために支出する費用に該当するときは、その償却期間の基礎となる「その施設又は工作物の耐用年数」は15年としてこの表を適用する。」こととされています。
  これは、上記の法人税基本通達8-1-3では、「法人が自己の有する道路その他の施設又は工作物を国等に提供した場合における当該施設又は工作物の価額に相当する金額」についても、「自己が便益を受ける公共的施設の設置又は改良のために支出する費用」として繰延資産に該当することとされていますが、法人が自ら保有する道路用地をそのまま又は舗装の上国等に提供した場合、非減価償却資産である土地については耐用年数の定めがないことから、提供した土地の価額(舗装費を含む。)に相当する金額を繰延資産として償却する場合には、耐用年数を15年としてこの表を適用することを述べているものと思われます。
  この点、お尋ねの事例では、市道の舗装のほか「拡幅」も行っている、とのことであり、仮に、この拡幅部分の道路用地を貴社が市に提供(寄附)している場合には、繰延資産のうち当該土地の価額(舗装費を含む。)に相当する金額については、(注)1の取扱いにより処理することとなります(ただし、この(注)1の取扱いによる15年は、コンクリート敷の舗装道路の耐用年数と同じですので、いずれも償却期間は6年となります。)。

【関連情報】

《法令等》

法人税法37条
法人税法施行令14条
法人税基本通達8-1-3
法人税基本通達8-2-3

【収録日】

令和 7年 9月22日


 
注1: 当Q&Aの掲載内容は、一般的な質問に対する回答例であり、TKC全国会及び株式会社TKCは、当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。個別の案件については、最寄りのTKC会員にご相談ください。
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