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《税務Q&A》

情報提供 TKC税務研究所

【件名】

給与等の経済的利益に係る法人税課税の可否とその分類

【質問】

 当社は本年の年末に創業40周年を迎えることから、社内の福利厚生等を目的として役員や従業員を対象に記念品(社章付き置時計)を支給しますが、この費用について福利厚生費としての損金処理は法人税法上認められるでしょうか。
 また、平成18年度の法人税法改正による役員給与の損金不算入の規定(法人税法34条)によって法人役員に対する経済的利益の法人税課税の取り扱いも変わった部分もあると思いますが、その改正後の経済的利益に係る取り扱いのうち主なものについてもご教示ください。

【回答】

 法人税法上、役員給与には債務の免除による利益その他の経済的な利益を含むものとして規定(法法34条4項)されています。また、その経済的な利益とは、法人がそれらの行為をしたことにより実質的にその役員等に対して給与を支給したと同様の経済的効果をもたらすものとされております(法基通9-2-9)が、ご質問の場合の税務上の取り扱いを含め主なものを区分して列挙しますと次のとおりです。
1 課税されない経済的利益
 すなわち、役員給与には上記のとおり法人が役員に供与した経済的利益の額を含むとして規定されていますが、法人がその社内制度としての福利厚生等を目的として法人が役員等に対し経済的利益の供与をした場合において、その経済的な利益が所得税法上経済的な利益の供与として課税されないものであり、かつ、法人が役員に対する給与として経理しなかった場合、法人税の取り扱いにおいても役員給与として取り扱われないこととされています(法基通9-2-10)。
 したがいまして、ご質問の社章付き置時計につきましては、所得税基本通達36-22(課税しない経済的利益・創業記念品等)に定める社会通念上記念品として相応しいもの等の要件を満たすこと、かつ、法人がそれらの負担額について福利厚生費勘定等として損金処理をしたことを前提にする限り、法人税の課税関係は生じないと考えます。
2 定期同額給与とされる経済的利益
 一方、法人が役員に対して継続的に供与する経済的利益のうち、その供与される利益の額が毎月おおむね一定である、例えば次のようなものは定期同額給与として取り扱われます(法令69条1項2号、法基通9-2-11)。
(1)役員に対する資産の贈与、資産の低廉譲渡又は用益の無償若しくは低価による提供で、その経済的利益の額が毎月おおむね一定しているもの
  これには、例えば、毎月支給する現物給与等で、その額がおおむね一定しているものがあります。
(2)役員に対する居住用の土地、家屋の無償若しくは低価による提供又は金銭の無償若しくは低利率による貸付けで、その経済的な利益の額が毎月著しく変動するもの以外のもの
  これらの経済的利益の供与では、例えば、金銭の貸付けであれば、元本の返済状況等により利息の額が逓減していき毎月の経済的利益の額が一定しない場合もあり得ますが、そのような場合であってもその額が毎月著しく変動するものでなければ「その供与される利益の額が毎月おおむね一定であるもの」として取り扱われます。
(3)役員に交際費等の名義で支出したもののうちでその費途が不明なものやその法人の業務に関係がないと認められるもののうち、毎月定額により支給される渡切交際費に係るもの
(4)役員の個人的費用のうち住宅の光熱費、家事使用人の給料等で法人が毎月負担するもので、その経済的利益の額が毎月著しく変動するもの以外のもの
  これらの経済的利益の供与では、例えば、住宅の光熱費では季節による変動が、家事使用人の給料等では毎月の給与とは別の賞与の支給などにより、必ずしも毎月の経済的利益の額が一定しないばあいもあり得ますが、そのような場合であってもその額が毎月著しく変動するものでなければ「その供与される利益の額が毎月おおむね一定であるもの」として取り扱われます。
(5)役員が会員となっている社交クラブの経常会費その他の費用又は役員の生命保険料で、法人が経常的に負担しているもの
  これらの経済的利益の供与は、例えば、社交クラブの経常会費などは必ずしも毎月支出するものではありませんが、その役員が現に受ける経済的利益の額がおおむね毎月一定であるものと考えられることから、法人が経常的に負担するものであれば、「その供与される利益の額が毎月おおむね一定であるもの」として取り扱われます。
3 上記以外の経済的利益の課税関係
 上記以外にも経済的な利益の供与や現物給与に関しましては税務上多くの取り扱いがあり、例えば、病気見舞いや災害見舞い等のような社会通念上の相当なものについては、経済的な利益の供与としての法人税等の課税関係は発生しませんが、一方、その余のものについては経済的利益の形態や実態に応じて給与としての損金不算入(法法34条)として課税関係が発生する場合もあり得ますので注意が必要です。

【関連情報】

《法令等》

法人税法34条
法人税法施行令69条
法人税基本通達9-2-9
法人税基本通達9-2-10
法人税基本通達9-2-11
所得税基本通達36-21

【収録日】

平成21年11月18日


 
注1: 当Q&Aの掲載内容は、一般的な質問に対する回答例であり、TKC全国会及び株式会社TKCは、当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。個別の案件については、最寄りのTKC会員にご相談ください。
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