《税務Q&A》
情報提供 TKC税務研究所
【件名】
法人への貸付地代を引き下げた場合の特定同族会社事業用宅地等の該当性
【質問】
A社の代表者甲は、今年、亡父がA社の事業用建物(貸付事業以外)の敷地として相当の地代で貸し付けていた宅地(以下「本件宅地」という。)を相続により取得したが、昨今の経済情勢等の影響を受けてA社の経営が厳しくなったことから、支払の負担を減らすため地代の引下げを予定している。 仮に、地代を固定資産税額程度に引き下げた場合、本件宅地は、租税特別措置法(以下「措置法」という。)69条の4に規定する小規模宅地等の特例(以下「本件特例」という。)における特定同族会社事業用宅地等に該当するか。
【回答】
本件特例を適用するためには、特例対象宅地等を相続の開始時から申告期限まで引き続き保有して、相当の対価で貸付けを行うとともに、法人の事業の用に供されている必要がありますが、甲がA社に対する貸付地代を固定資産税額程度に引き下げた場合には、相当の対価での貸付けを継続しないことになりますから、本件宅地は特定同族会社事業用宅地等に該当しないものと考えられます。
【関連情報】
《法令等》
【解説】
1 本件特例における特定同族会社事業用宅地等(措法69の4〔3〕三)とは、相続開始の直前において被相続人及びその被相続人の親族など被相続人と特別の関係がある者(措令40の2〔16〕)が有する株式の総数又は出資の総額がその株式又は出資に係る法人の発行済株式の総数又は出資の総額の10分の5を超える法人の事業(貸付事業を除きます。)の用に供されていた宅地等で、その宅地等を相続又は遺贈により取得した被相続人の親族(申告期限においてその法人の役員であるものに限ります。)が、相続開始の時から申告期限まで引き続き有し、かつ、申告期限まで引き続きその法人の事業の用に供されているもの(その法人(申告期限において清算中の法人を除きます。)の事業の用に供されていた宅地等のうち、要件に該当する被相続人の親族が相続又は遺贈により取得した持分の割合に応ずる部分に限ります。)をいいます(措令40の2〔18〕、措規23の2〔5〕)。 この場合の、法人の事業の用に供されていた宅地等とは、次の宅地等をいいます(措通69の4-23)。(1)その法人に貸し付けられていた宅地等(その貸付けが措置法69の4第1項に規定する事業に該当する場合に限ります。)(2)その法人の事業の用に供されていた建物等で、被相続人が所有していたもの又は被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族が所有していたもの(その親族が建物等の敷地を被相続人から無償で借り受けていた場合における建物等に限ります。)で、その法人に貸し付けられていたもの(その貸付けが措置法69の4第1項に規定する事業に該当する場合に限ります。)の敷地の用に供されていたものそして、措置法69条の4第1項に規定する事業には、事業と称するに至らない不動産の貸付けその他これに類する行為で相当の対価を得て継続的に行うもの(準事業)を含むとされています(措令40の2〔1〕)。2 ご質問の場合も、本件特例を適用するためには、本件宅地を申告期限まで引き続き保有して、相当の対価で貸付けを行うとともに、法人の事業の用に供されている必要がありますが、事業用といえるかどうかは、実際に授受している地代の額により、それが相当の対価といえるかどうかで判断することとなります。 この「相当の対価」については、その貸付け等の用に供している資産の減価償却費の額、固定資産税その他の必要経費を回収した後において、なお相当の利益が生ずるような対価を得ているかどうかにより判定することとされており(措通37-3(2)イ(イ))、同様に考えるのが相当と思われます。 したがって、甲がA社に対する貸付地代を固定資産税額程度に引き下げた場合には、使用貸借による必要費と同程度となり、相当の対価による貸付けを継続しないこととなりますから、本件宅地は特定同族会社事業用宅地等に該当しないものと考えられます。
【収録日】
令和 5年 7月26日