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《税務Q&A》

情報提供 TKC税務研究所

【件名】

離婚に伴つて居住用家屋を妻に分与した場合

【質問】

 甲は、離婚に伴い自分が住んでいた居住用家屋を乙(妻)に分与した。
離婚に伴い財産分与した場合には、その分与をした者に対し、その資産の譲渡について譲渡所得の課税が行われるとのことであるが、この譲渡所得については、居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例(以下「居住用財産の譲渡特例」という。)の適用があるか。
 なお、離婚に際し、乙は長女(丙)を養育し、その養育費として、丙が成年に達するまで、甲は乙に対して毎月20万円を交付することで合意したが、乙は他に収入がなく、甲から受ける養育費により生活している。

【回答】

 居住用財産の譲渡特例は、その資産の譲渡先が、譲渡者の配偶者、直系血族およびその他特別の関係がある者である場合には適用されないものとされています。
 質問の場合、離婚に伴う財産分与は、離婚後の譲渡であって譲渡者の配偶者に対する譲渡には該当しないことになりますし、また、離婚後の配偶者(乙)は、配偶者であつた者(甲)から財産分与として支払われる金銭等により生活していても、「譲渡者から受ける金銭その他の財産によって生計を維持する者」には該当しないものとして取り扱われています。
 したがつて、この譲渡所得については、居住用財産の譲渡特例の適用を受けることができることになります。

【関連情報】

《法令等》

所得税法36条1項
所得税法36条2項
所得税基本通達33-1の4
租税特別措置法35条1項
租税特別措置法施行令20条の3第1項
租税特別措置法施行令23条2項
租税特別措置法通達31の3-20
租税特別措置法通達31の3-23

【解説】

 離婚に伴い、財産の分与として資産の移転(譲渡)があった場合には、その分与をした者に対して、そのときの時価により資産の譲渡があったものとして譲渡所得の課税が行われることとされています(所法36条1項、2項、所基通33ー1の4)。
 ところで、譲渡した資産が居住用家屋である場合には、原則として、居住用財産を譲渡した場合の特別控除の特例の適用があるが、この特別控除の特例は、その譲渡の相手方が、譲渡者の配偶者、直系血族その他特別の関係がある者である場合には適用がないものとされています(措法35条1項、措令23条2項、同令20条の3第1項)。
 したがって、質問の場合は、財産の分与を受けた乙が、甲の「特別の関係がある者」に該当するかどうかが問題となります。
そして、特別の関係がある者かどうかは、資産の譲渡をしたときの現況により判定するものとされていますので、離婚後に資産を移転する財産分与の場合は、乙は甲の親族等には該当しないことになります(措通31の3ー20)。
 また、離婚により、毎月交付される養育費により生活をしている場合には、特別の関係がある者のうちの「個人から受ける金銭その他の財産によって生計を維持しているもの」に該当することになりますが、離婚に伴う財産分与、損害賠償その他これらに類するものとして配偶者であつた者から受ける金銭その他の財産によって生計を維持している者はこれに含まれないものとして取り扱うこととされています(措令20条の3第1項4号、同令23条2項、措通31の3ー23)。
 したがつて、質問の場合のように、離婚によって居住用財産を分与した場合には、分与した甲は、居住用財産の譲渡特例の適用を受けることができることになります。
 ただし、財産分与の前から、ずっとその家屋に分与をする者(譲渡者)が居住していなかった(別居)場合には、適用がありませんので、ご留意ください。

【収録日】

平成24年 7月10日


 
注1: 当Q&Aの掲載内容は、一般的な質問に対する回答例であり、TKC全国会及び株式会社TKCは、当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。個別の案件については、最寄りのTKC会員にご相談ください。
注2: 当Q&Aの内容は、作成時の法令等を基に作成しております。このため、当Q&Aの内容が最新の法令等に基づいているかは、利用者ご自身がご確認ください。
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