《税務Q&A》
情報提供 TKC税務研究所
【件名】
再生資源卸売業において帳簿の保存のみで仕入税額控除が認められる場合
【質問】
当社は非鉄金属スクラップ卸売業を営んでいますが、スクラップは適格請求書発行事業者でない者(消費者、免税事業者等)からも購入しています。 インボイス制度の下でも、このスクラップの購入については、課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿のみを保存することで仕入税額控除が認められるでしょうか。
【回答】
1 仕入税額控除の要件 インボイス制度の下でも、「再生資源卸売業その他不特定かつ多数の者から再生資源等に係る課税仕入れを行う事業を営む事業者が、他の者から買い受けた当該再生資源等」の課税仕入れで、当該再生資源等が棚卸資産(消耗品を除く。)に該当する場合は、課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められます(再生資源等特例)。(注)再生資源等とは、資源の有効な利用の促進に関する法律第2条第4項《定義》に規定する再生資源及び同条第5項に規定する再生部品をいいます。 ご質問の「非鉄金属スクラップ」は、再生資源、すなわち、「使用済物品等又は副産物のうち有用なものであって、原材料として利用することができるもの又はその可能性のあるもの」に該当するものと思われます。 ただし、再生資源等の課税仕入れの相手方である「他の者」からは、適格請求書発行事業者を除くこととされています。 ご質問では、貴社は非鉄金属スクラップ卸売業を営む事業者であり、適格請求書発行事業者以外の者からも仕入れを行っているということです。 そうしますと、国内において消費者や免税事業者などの適格請求書発行事業者以外の者から購入する場合には、課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められますが、購入する相手方が適格請求書発行事業者である場合には、非鉄金属スクラップの課税仕入れであっても、課税仕入れの相手方から適格請求書の交付を受けて保存することが仕入税額控除の要件になると考えます。2 帳簿の記載事項 インボイス制度の下でも、課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿の記載事項は、原則として区分記載請求書等保存方式における帳簿の記載事項と異なりませんから、当該帳簿に「相手方が適格請求書発行事業者でない旨のチェック欄」を加える、再生資源等特例の対象である旨及び相手方の住所又は所在地を追記するなどの対応で、再生資源等特例の適用は可能と考えます。 なお、新消費税法施行令49条1項1号では、帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる課税仕入れに係る追加記載事項のうち、課税仕入れの相手方が国税庁長官が指定する者については、その課税仕入れの相手方の住所又は所在地の記載は要しないこととされています。再生資源卸売業についてもその対象とされていますが、その範囲は、事業者以外の者から課税仕入れするものに限ることとされています。 したがって、再生資源卸売業において、事業者以外の者(すなわち、消費者)から再生資源等の課税仕入れを行う場合には、帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる課税仕入れに係る追加記載事項のうち課税仕入れの相手方の住所又は所在地の記載は要しませんが、免税事業者や適格請求書発行事業者の登録を受けていない課税事業者からの課税仕入れについては、記載を省略できないことになります。(注)インボイス通達の消費税法基本通達への統合後は、インボイス通達4-7の「国税庁長官が指定する者」については国税庁告示に代わります。 また、国税庁長官が指定する者から受ける課税資産の譲渡等に係る課税仕入れのうち、不特定かつ多数の者から課税仕入れを行う事業に係る課税仕入れについては、「課税仕入れの相手方の氏名又は名称」の記載を省略することができることとされています。 以上から、再生資源卸売業を営む事業者の行う再生資源等の課税仕入れが国税長官が指定する者(事業者以外の者、すなわち、消費者)からのものである場合には、帳簿には、新消費税法30条8項1号に規定する記載事項のうち、ロ課税仕入れを行った年月日、ハ課税仕入れに係る資産又は役務の内容(当該課税仕入れが他の者から受けた軽減対象課税資産の譲渡等に係るものである場合には、資産の内容及び軽減対象課税資産の譲渡等に係るものである旨)、ニ課税仕入れに係る支払対価の額を記載すればよいことになると考えます。
【関連情報】
《法令等》
【収録日】
令和 5年 8月16日