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《税務Q&A》

情報提供 TKC税務研究所

【件名】

法人の営業地に派遣された社員が現地で宿泊の用に供する社宅の利用料について

【質問】

 旅行の添乗員派遣業を営むA社では、これまで東京を拠点に事業を展開してきましたが、今後は、人気の観光地である沖縄での事業を拡充すべく、沖縄に東京からの派遣者が寝泊まり出来る宿泊施設として社宅を借りることとしました。
 この社宅は、沖縄で仕事があった際に、派遣された社員が添乗業務等に従事する期間のみ寝泊まりするための施設であり、長期間特定の人間が宿泊することはありませんが、通常の社宅と同様に、その利用者から利用料を徴収する必要がありますでしょうか。

【回答】

1 法人税法上、法人が役員や従業員に対し経済的な利益の供与をした場合において、それが所得税法上経済的な利益として給与課税されないものであり、かつ、当該法人がその役員等に対する給与として経理しなかったものであるときは、給与として取り扱わないこととされています(法基通9-2-10)。
  法人が使用人に貸与する社宅や寮などの居住用の住宅等に係る所得税の取扱いでは、使用人から1か月当たり一定額の家賃(建物や敷地の固定資産税評価額等を基に計算される「賃貸料相当額」の50パーセント)以上を受け取っていれば給与として課税されません(所基通36-41、36-45、36-47)。
  したがいまして、このような所得税の取扱い上、非課税とされる居住用の住宅等に係る賃料の一部負担として、給与ではなく福利厚生費等として処理するためには、利用者から一定の賃料を徴収する必要があります。
2 お尋ねの事例については、これまで東京を拠点に旅行の添乗員派遣業を営んできたA社において、沖縄での事業拡充に当たり、従前から東京での業務に従事してきた添乗員については東京に常駐し、営業場所である沖縄で仕事が入った場合のみ現地に派遣して添乗業務等に従事する執行体制とし、沖縄での業務従事期間の宿泊場所として、当該社宅を確保したものと思われます。
  そのような事実認定が相当と判断される場合には、当該社宅は、上記の所得税通達が適用される一般的な意味での社宅、すなわち、法人が従業員等に対する福利厚生施策の一環として提供する居住用の住宅等というよりは、従業員が現地で業務を行うための宿泊施設として確保したものであり、当該社宅の賃借費用は、派遣社員の現地でのホテル代等の宿泊費に代わるものと解されますので、法人が負担すべき社員の業務遂行上の経費としての損金性が認められるものと思われます。
  なお、所得税法上、非課税となる旅費、宿泊費及び日当の範囲については、それが旅行の目的、目的地、行路若しくは期間の長短、宿泊の要否、旅行者の職務内容及び地位等からみて、通常必要な宿泊費及び食事費の範囲内のもの(この点は、その計算基準の利用者に応じたバランスの適否や支給額の同業他社との比較による相当性等を勘案して判断されます。)とされています(所基通9-3)。
3 したがって、当該社宅が、派遣社員が現地での添乗業務等に従事するための宿泊用の施設として確保されたものであり、所得税法上、経済的利益の供与として給与課税されない通常必要な範囲内の宿泊費が生じるような一般的な宿泊施設と同等のものである場合には、その賃借費用は、業務上の出張に係る宿泊費と同様の損金性が認められ、また、当該社宅は、上記の社宅に係る所得税通達が適用されるような居住用の住宅等には該当しないものと思われますので、法人業務に従事するための派遣社員の利用に際し、利用料等を徴収する必要はないものと思われます。

【関連情報】

《法令等》

法人税基本通達9-2-10
所得税基本通達9-3
所得税基本通達36-41
所得税基本通達36-45
所得税基本通達36-47

【収録日】

令和 5年11月17日


 
注1: 当Q&Aの掲載内容は、一般的な質問に対する回答例であり、TKC全国会及び株式会社TKCは、当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。個別の案件については、最寄りのTKC会員にご相談ください。
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