《税務Q&A》
情報提供 TKC税務研究所
【件名】
社史紹介用の映像動画を収録したDVD制作費用の税務処理について
【質問】
A社では、創業〇〇周年を迎えるのを記念し、外部業者に委託して社史を作成することとなり、創業時から現在に至るまでの関りのある人物や創業者へのインタビュー、研修風景等、映像コンテンツにより構成された動画の完成データがDVDにより納品される予定です。 この社史紹介用の映像動画を収録したDVDの作製費用〇〇万円の税務処理については、例えば、映画フィルムとして器具及び備品に計上する方法、ソフトウエアとして無形固定資産に計上する方法、また、社歌、コマーシャルソング等の制作費用のように支出時の一時の損金に算入する方法などが考えられますが、いずれの方法が合理的でしょうか。なお、A社では、完成したDVDは、社内の研修会や会社説明会等での視聴に使用していく予定です。
【回答】
1 一般に、社史の編纂自体は、法人の沿革や事業内容等を社内だけでなく得意先等にも明らかにするものであることから、一種の広告宣伝費的な要素もあり、また、社史自体は配布を受けた者にとって財産的価値を有するものでもないこと等から、その編集費用は、基本的には、単純損金として支出時の損金の額に算入して差し支えないものと考えられます(この点、社史作成に要した費用は、全額を損金に算入することができるとした【文献番号】43201697【件名】「社史編纂費用」が公開されておりますので、ご参照ください。)。 しかしながら、社史の編集に留まらず、お尋ねの事例のようにDVD等を媒体とし、各種インタビューや研修風景等の映像コンテンツにより構成された動画を制作する場合の制作費用については、PR用映画フィルムの取扱いに準じて、耐用年数省令別表第一の「器具及び備品」の「映画用フイルム(スライドを含む)」の耐用年数「2年」により償却する処理が相当ではないかと考えられます。 すなわち、会社のPR用映画フィルムは、そのフィルムによるPR効果(お尋ねの事例の場合には、予定されている社史紹介用の動画の使途によりますと、社内研修会での社員の学習・啓蒙効果や会社説明会でのPR・リクルート効果等が想定されます。)が期待できる期間中は継続的に使用されるものですから減耗資産ではなく、通常の減価償却資産として耐用年数2年で償却すべきものとされています(国税庁質疑応答事例>法人税>PR用映画フィルムの取得価額)。2 なお、法人税法上、無形固定資産の一つとしてソフトウエアが挙げられています(法令13八リ)が、このソフトウエアとは、例えば、中小企業投資促進税制では、「電子計算機に対する指令であって一の結果を得ることができるように組み合わされたもの(これに関連するシステム仕様書その他の書類を含む。)」と定義され(措令27の6〔2〕、措規20の3〔4〕)、また、研究開発費会計基準では、「コンピュータを機能させるように指令を組み合わせて実現したプログラム等をいう(基準一2)」と定義されているように、一般に、コンピュータに一定の仕事を行わせるためのプログラム、すなわち、コンピュータを機能させて一定の効果を得ることができるように、これに対する指令を組み合わせたものとして表現したもの(著作権法2〔1〕十の二)と解されます。 そして、コンテンツ(法人税上の定義はありませんが、賃上げ促進税制等の対象となる教育訓練費の範囲を定めた措置法規定では、「文字、図形、色彩、音声、動作若しくは映像又はこれらを組み合わせたものをいう。」と定義されています(措規20の10〔3〕)。)は原則としてソフトウエアとは別個のものとして取り扱われますので、お尋ねのDVD等を媒体とした社史紹介用の映像動画は、ソフトウエアには該当しないものと思われます。3 また、社歌、コマーシャルソング等の制作のために要した費用の額は、その性質上、費用効果の及ぶ期間の測定が極めて困難である上、場合によってはごく短期間のうちに費用効果が失われるものも数多いこと等から、その支出をした日の属する事業年度の損金の額に算入することができることとされています(法基通7-1-10)が、お尋ねのDVD等を媒体とした社史紹介用の動画は、A社の創業以来の歴史や活動等の事実を紹介する映像であることから、上記のような効果が期待できる限りは継続的に使用され、短期間のうちに減価するような性質のコンテンツではありませんので、この通達の適用は馴染まないものと思われます。
【関連情報】
《法令等》
【収録日】
令和 6年 2月13日