《税務Q&A》
情報提供 TKC税務研究所
【件名】
紹介に関する業務提携契約書と印紙税
【質問】
A社(建設業者)とB社(住宅ローン申込代行業者)とは、相互に発展することを目的に、業務提携契約(本契約)を締結します。 本契約の2条(業務・営業の範囲)には、「本契約により提携する業務・営業の範囲は、A社がB社に対してA社の顧客を照会・斡旋できることとし、B社は紹介されたA社の顧客に対して、住宅ローン(フラット35)に関する営業を行うものとする。」とし、3条(紹介料)では「B社はA社から紹介・斡旋を受けた顧客に営業をした結果として、住宅ローン(フラット35)の本申込または実行となった場合、別途覚書に定める紹介手数料等を支払うものとする。」としています。 以上のように本契約は、建設業を営むA社が、自社で家を建てる消費者をB社に紹介するということで、照会手数料を受け取るという紹介に関する業務提携契約であり、紹介後、B社が住宅ローン会社に書類を持ち込み、審査が通って初めて紹介手数料が発生する契約内容となっています。なお、本契約に係る有効期間は、2022年8月18日から2023年9月30日までとし、更新の定めが設けられています。 以上を契約内容とする本契約は、印紙税法上の請負契約に該当するか、あるいはそれ以外の課税文書に該当するかについて、ご教示の程、よろしくお願いします。
【回答】
業務提携契約書の第2号文書「請負に関する契約書」該否 印紙税法別表第一「課税物件表」第2号文書にいう「請負」の意義については、民法632条にいう「請負」、すなわち、当事者の一方(請負人)がある仕事の完成を約束し、相手方(注文者)がその仕事の結果に対して報酬を支払うことによって成立する契約をいい、これに対して、「委任」(民法643条)とは、民法656条に規定する準委任(法律行為でない事務の委託。例えば、会計帳簿の検査)を含み、当事者の一方(委任者)が、相手方の有する知識、経験、才能などを利用して、法律行為又は法律行為でない事務を相手方に委託し(前者が「委任」に、後者が「準委任」に当たります)、相手方がこれを承諾することによって成立する契約をいうと解されております。 したがって、仕事の完成が目的である場合には、請負に該当することになり、これに対して、受任した事務を処理すること自体が目的である場合には、委任に該当することになります。そして委任の場合の契約書には印紙は不要となります。 お尋ねの業務提携契約書(本件契約書)は、第2条(業務・営業の範囲)において、「本契約により提携する業務・営業の範囲は、A社がB社に対してA社の顧客を紹介・斡旋できることとし、B社は紹介されたA社の顧客に対して、住宅ローン(フラット35)に関する営業を行うものとする。」とし、第3条(紹介料及び支払)1項において、「乙は甲から紹介・斡旋を受けた顧客に営業をした結果として、住宅ローン(フラット35)の本申込又は実行となった場合、別途覚書に定める紹介手数料等を支払うものとする。」としています。 したがって、本件契約書は、当事者の一方であるB社にとってみれば、A社とA社の顧客の他人間の取引(契約)が成立するように営業活動を実施し、その斡旋行為によりローン契約が成立した場合には、他の一方であるA社が報酬を支払うことを約する契約と解され、このような契約は、あらかじめ仕事の完成(取引の成立等)を約するものではありませんので請負契約には該当せず、委任契約と解するのが相当と考えます。すなわち、仲介(斡旋)が成功した場合に報酬を支払うことを約するものは、仕事の完成(仲介・斡旋の成功)を約するものとは認められませんので、請負契約には該当せず、一般的には委任契約に該当すると解されています。よって、本件契約書は印紙税法別表第1課税物件表の第2号文書(請負に関する契約書)に該当しないと思います。また、本件契約書は、契約の有効期間を2022年8月18日から2023年9月30日までとし、更新の定めが設けられていますので、課税物件表に掲げる第7号文書(継続的取引の基本となる契約書)に該当するのではとの疑義が生じますが、上述したとおり、本件契約書は請負契約に該当しないことから、同法施行令26条1号の規定により同表の第7号文書にも該当せず、結果として、不課税文書として取り扱うのが相当と考えます。
【関連情報】
《法令等》
【収録日】
令和 5年 1月16日