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《税務Q&A》

情報提供 TKC税務研究所

【件名】

倉庫の屋根と壁をカバー工法により改修した場合の税務処理について

【質問】

 A社では、保有する鉄骨鉄筋コンクリート造の倉庫について、築50年程が経過して老朽化が進み、数カ所から雨漏りも発生しているため、このたび倉庫の屋根及び外壁の改修工事を行うこととなりましたが、部分補修が難しいため、屋根及び外壁についてカバー工法による改修工事を行う予定です。この倉庫については、これまでは部分的な補修で対応しており、今回のような大規模な改修は初めてとなりますが、倉庫の機能を高めるものではなく、倒壊等の危険回避や雨漏り対策等として実施するものです。
 この場合、当該改修費用は、「通常の維持管理のための費用」である修繕費として損金処理することは可能でしょうか。

【回答】

1 法人がその有する固定資産の修理、改良等のために支出した金額のうち、当該固定資産の通常の維持管理のため、又はき損した固定資産につきその原状を回復するために要したと認められる部分の金額は修繕費となります(法基通7-8-2)。
  一方、資本的支出とは、通常の管理又は修理をするものとした場合に予測されるその資産の使用可能期間を延長させ又はその資産の価値を増加させる部分に対応する金額、と規定されています(法令132)。通達では、法人がその有する固定資産の修理、改良等のために支出した金額のうち、当該固定資産の価値を高め、又はその耐久性を増すこととなると認められる部分に対応する金額は資本的支出となる(法基通7-8-1)とされています。
2 この資本的支出と修繕費の判定は、事実認定次第となりますが、一般に、固定資産を構成する部分品を同品質のものと交換した場合、その交換部分品が一般の構成部分品であるときは、その交換費用は通常の維持管理費用として修繕費処理が相当と考えられる一方、その交換部分品が、その固定資産の主要な構成部分品(例えば、自動車のエンジンなど)と認められるときは、その構成部分品を交換することによって、その固定資産の耐久性を増し、使用可能期間を延長させることが予想されるため、資本的支出として処理することが相当と考えられます。
  屋根や外壁は、建物の躯体そのものを構成する主要な構成パーツと考えられますので、その部分的な修理ではなく、上から新しい建材を貼るカバー工法により全面的に改修するような大規模な改修工事をした場合には、この考え方にしたがい、資本的支出に該当する、との判断がされる可能性が高いのではないかと思われます。
  また、お尋ねの改修は、倉庫の機能を高めるものではなく、倒壊等の危険回避や雨漏り対策等として実施するもの、とのことですが、修繕費における通常の維持管理とは、一般に、事故や災害などに起因しない日常的な修繕で反復して支出されるものが該当するものと考えられます。この点、お尋ねの倉庫は、鉄骨鉄筋コンクリート造のその他の倉庫用建物の耐用年数である38年を超える築50年程が経過して老朽化が進み、これまでは部分的な補修で対応してきたところ、今回のような大規模な改修は初めて、とのことであり、機能等の価値向上がなくても、結果的に耐久性が増し使用可能期間が延長する場合は、資本的支出と判断されますので、この点からも、お尋ねのカバー工法によるこのたびの改修費用については、資本的支出として処理することが相当と考えます。
3 なお、類似する事例として、建築後20年以上経過した倉庫の屋根のスレート部分をカラートタンで覆い被せた工事(屋根カバー工法)の税務上の取扱いが争われた事件において「耐用年数の到来が近い屋根を新たにカラートタンで覆う工事は、屋根の耐用年数を延長する工事と認められ、単に雨漏りする箇所のみを修繕する応急的な修復工事、すなわち、単にその資産の通常の効用を維持させるための補修とは認めらない。・・したがって、本社倉庫に係る本件工事費用は、全額が本社倉庫自体の使用可能期間を延長させるとともにその価額を増加させるものであり、通常の管理又は修理の範囲を超える支出であることから、法人税法施行令第132条に規定する資本的支出に該当することとなる。」との判断がされた過去の裁決事例が公表されておりますので、ご参照ください(【文献番号】26100133)。

【関連情報】

《法令等》

法人税法施行令132条
法人税基本通達7-8-1
法人税基本通達7-8-2

【収録日】

令和 4年11月15日


 
注1: 当Q&Aの掲載内容は、一般的な質問に対する回答例であり、TKC全国会及び株式会社TKCは、当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。個別の案件については、最寄りのTKC会員にご相談ください。
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