TKC会員事務所一覧 TKC会員のご紹介
戻る 前文献
20文献中の16文献目

《税務Q&A》

情報提供 TKC税務研究所

【件名】

少額減価償却資産の判定基準(判例)

【質問】

 少額減価償却資産の判定をめぐっては、課税実務の現場においても納税者と課税庁とで判断が別れるケースが多々あるようですが、裁判となった事例にはどのようなものがありますか。

【回答】

 法人税法施行令133条によれば、取得価額が10万円未満の減価償却資産は、事業の用に供した日の属する事業年度で取得価額に相当する金額を損金経理すれば、損金の額に算入することができますが、取得価額が10万円未満であるかどうかは、通常1単位として取引されるその単位により判定するとされています。(法人税基本通達7-1-11)問題は、この1単位の範囲をどう見るかということであり、その判定の基準をめぐり納税者と課税庁の間で争いのあった事例としてND社中央事件があります。
(1)事実関係
 原告であるND社等はNP社からPHS事業を譲り受けた際、PHS無線基地局とN社の電話網とを相互接続するためにN社が設置するエントランス回線の利用権を総額111億円で取得しました。その際原告はエントランス回線の利用権はその設置のために、N社に対し1回線ごとに7万2,800円の設置負担金を支払わねばならず、エントランス回線利用権の取得はこの設置負担金の支払いによりなされるものと判断し、1回線の取得価額が10万円に満たないとして、上記111億円の支払い等の全額を一時の損金として処理しました。
 これに対し、課税庁は上記エントランス回線利用権の取得価額は、エントランス回線1回線の設置負担額ではなく、NP社がN社との間で締結した相互接続協定で判断すべきであるとし、譲渡契約における購入代価全体を取得価額とすべきだとして原告の損金処理を否認したという事例です。
(2)東京地裁平成17年5月13日判決(原告、勝訴)
〈1〉原告らがNP社から取得した権利は、本件接続約款及び接続協定を前提とするものではあるが、相互協定上の地位などといった抽象的ないし包括的なものではなく、自社の契約者に、個別の当該エントランス回線を利用し、N社のPHS接続装置、共同線通信網と相互接続し、N社のネットワークを利用して電気通信役務を提供させる権利(エントランス回線利用権)であり、この権利を得るための対価として、NP社及び原告はエントランス回線1回線につき7万2,800円の工事費等を支払っているものというべきである。
〈2〉本件設置負担金をN社に支払って取得した本件エントランス回線利用権の機能は、単体のエントランス回線の利用によって発揮することができる。そうすると本件エントランス回線利用権は、NP社及び原告の事業活動において、一般的、客観的には、1回線で基地局とPHS接続装置との間の相互接続を行うという機能を発揮することができるものである。
〈3〉相互接続協定の締結には何らの対価の支払いも必要なく、また、原則としてN社は相互接続をする承諾義務を負っていることからすると、いまだ具体的な財産価値があるものとはいえない。設置負担金を支払って個々のエントランス回線が設置されることによって、当該エントランス回線を利用した相互接続が可能となり、初めて具体的な財産価値が生ずると見るべきである。
(3)東京高裁平成18年4月20日判決(被控訴人=原告、勝訴)
〈1〉エントランス回線を設置することにより、現実に、当該エントランス回線を通じての基地局とPHS接続装置との間の相互接続が可能となるのであり、これにより、現実の便益が生じることは明らかである。また、被控訴人(ND社)の加入者が、移動しながら通話して基地局間で受け渡し(ハンドオーバー)がされる場合、エントランス回線は順次変わっていくとしても、常に利用しているエントランス回線は一つであって、同時に複数のエントランス回線が利用されるわけではないから、機能しているエントランス回線は一つであるということができる。そして、エントランス回線は1回線ごとに管理され、N社に対し、一回線ごとに設置の申し込みをするとともに、7万2,800円の設置負担金を支払う必要がある上、エントランス回線を利用して通信を行うために、定額制の網使用料及び従量制の網使用料の支払いが必要であるなど、本件接続協定を締結しただけでは生じることのない具体的な個々の支払義務を生じるのである。以上からすると、本件接続協定を締結することにより被控訴人が資産を取得するのでなく、1回線毎に個々のエントランス回線を用いてN社のネットワークと相互接続し、N社をして、エンドユーザーに電気通信役務を提供させる権利(エントランス回線利用権)を取得したと見るのが相当である。
〈2〉昭和42年改正前の法人税法施行令133条によれば、資産の取得価額が少額であっても、〈1〉業務の性質上基本的に重要なもの、〈2〉業務の固有の必要性に基づき大量に保有されるもの、及び、〈3〉事業の開始又は拡張のために取得したもの等については、少額減価償却資産から除く旨定められていたところ、現行の規定においてはこれらの規定は廃止されているのである。これからすれば、少額減価償却資産に該当するか否かを判断するに当たっては、業務の性質上基本的に重要であったり、事業の開始や拡張のため取得したものであったり、多数まとめて取得したものであるなどといったことを当該取得資産の取得価額を判断する上であえて考慮すべき事項ではないというべきである。

【関連情報】

《法令等》

法人税法施行令133条
法人税基本通達7-1-11

【収録日】

平成19年 6月14日


 
注1: 当Q&Aの掲載内容は、一般的な質問に対する回答例であり、TKC全国会及び株式会社TKCは、当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。個別の案件については、最寄りのTKC会員にご相談ください。
注2: 当Q&Aの内容は、作成時の法令等を基に作成しております。このため、当Q&Aの内容が最新の法令等に基づいているかは、利用者ご自身がご確認ください。
注3: 当Q&Aの著作権は株式会社TKCに帰属します。当Q&Aのデータを改編、複製、転載、変更、翻訳、再配布することを禁止します。

 TKC会員事務所一覧 TKC会員のご紹介
戻る 前文献 次文献