《税務Q&A》
情報提供 TKC税務研究所
【件名】
事前確定届出給与を全く支給しない場合の取扱い
【質問】
当社は3月決算法人の同族会社です。5月25日に定期株主総会を開催し、7月15日と12月15日に役員甲、乙に対して事前確定届出給与を支払うことを決定し、期限内に税務署署長に届出を行っています。このような場合において、支給決定後に次の事例になった場合、法人税法上はどのような取扱いになるのでしょうか。(事例1)7月15日と12月15日に役員甲、乙に対して事前確定届出給与の支給を行わなかった(役員甲、乙の支給金額0円)。(事例2)役員甲に対しては事前確定届出給与を届け出たとおりに支給したが、役員乙には支給を行わなかった(役員乙の支給金額0円)。
【回答】
1 事前確定届出給与(法法34〔1〕二)は、所定の時期に確定した額の金銭等を交付する旨の定めに基づいて支給される給与をいいますが、その要件として、株主総会、社員総会又はこれらに準ずるもの(以下「株主総会等」といいます。)の決議により事前確定給与の定めをした場合における当該決議の日(同日が職務執行開始日後である場合には、職務執行開始日)から1月を経過する日(同月が会計期間開始日から4月を経過する場合には4月を経過する日とし、新設法人の場合にはその設立日以後2月を経過する日)までに、所定の事項を記載した書類を所轄税務署長に届け出なければならないこととされています(法法34〔1〕二、法令69〔4〕)。2 ご質問の場合、3月決算法人で同族会社とのことですが、定期株主総会において、同一事業年度中の7月15日と12月15日に役員甲、乙に対して事前確定届出給与の支給を決定したところ、その後、その定めたとおりに支給されなかった場合の質問の各事例の法人税の取扱いについては、次のとおりに考えます。(事例1) 税務署に届け出た事前確定届出給与を法人が全く支給しなかった場合にどうなるかについては、ご質問の役員甲、乙に対して、7月15日と12月15日に事前確定届出給与の全額の支給額がないことを前提に考えますと、税務上、損金不算入とする支給金額がないことから、法人税における課税が生じないことになります。(事例2) 役員甲については事前確定届出給与を届け出たとおりに支給したが、役員乙には支給を行わなかったとのことです。会社全体としては事前確定届出給与を届け出たとおりに支給していませんので、役員甲に支給された事前確定届出給与の全額が損金不算入になるのではないかと考えがちですが、法人税法第34条第1項第2号では「その役員の職務につき所定の時期に確定した額の金銭又は確定した数の株式(出資を含みます。)、新株予約権、確定した額の金銭債権に係る特定譲渡制限付株式又は特定新株予約権を交付する旨の定めに基づいて支給する給与」と規定しており、個々の役員に係る給与について規定しているものであることから、役員(=「その役員」)以外の他の役員に対する給与に影響を与えるものとはなっておりません。 したがって、役員乙に対して届出書の記載額のとおりの金額を支給しなかったとしても、そのことを理由として、役員乙以外の他の役員に対して支給した役員給与が損金不算入になることはありませんので、役員甲に対して届出書の記載額のとおり事前確定届出給与を支給した金額は損金に算入されます。 なお、役員乙については、全く事前確定届出給与の支給額がないことを前提に考えますと、税務上、損金不算入とする金額がないことから、法人税における課税が生じないことになります。3 回答は以上のとおりですが、ご質問の場合、役員甲、乙には法人が定期株主総会で役員に対する事前確定届出給与の支給決定をしていますので、支給日に役員給与請求権が生じるものと考えられます。一旦、事前確定届出給与の支給を決定した後の事情により法人が支給しないことを決めた場合には、支給日前に役員から役員給与辞退届出書の提出をしてもらうか、又は事前確定届出給与の支給しない旨の決議等を法人の取締役会等で行うなど該当する役員に周知する必要があるものと考えます。
【関連情報】
《法令等》
【収録日】
平成30年 4月28日