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《税務Q&A》

情報提供 TKC税務研究所

【件名】

事業を廃止した場合の必要経費の特例・有姿除却

【質問】

 歯科医Aは、平成20年9月途中に脳疾患のため倒れ、治療・リハビリのため診察を休業していた。翌10月には、Aの復帰がいつになるか分からないので看護婦等の職員も一旦退職してもらった。平成20年度の申告については、9月分の社会保険診療報酬等の請求が未了だったため当該報酬については概算計上した上、青色申告書により期限内申告を行っていた。
 今後の診察については、復帰できればという考えで診療設備等もそのままの状態にしておいたが、歯科診療は手先の技術であるため、今の状態では診察を再開することが困難と判断し、平成21年7月付で保健所に診療所廃止届を提出した(税務当局への廃止届は今のところ未了である。)。
 この廃業に伴い、医療機器等を業者に有料で処分してもらったが、平成20年分の事業所得の金額について、医療機器等を有姿除却資産として必要経費に算入して再計算を行い、更正の請求をすることは可能か。事業を廃止した後に生じた費用等の必要経費算入を認めている所得税法63条との関係を教示願いたい。

【回答】

 お尋ねの廃業に伴う医療機器等については、有姿除却による資産損失として平成20年分の事業所得の金額の計算上必要経費に算入することはできません。

【関連情報】

《法令等》

所得税法51条1項
所得税法63条
所得税法69条
所得税法70条
所得税法140条
所得税法施行令179条
所得税基本通達51-2の2
医療法1条の5第2項
医療法8条
医療法9条

【解説】

 事業を廃止した後において生じたその廃止した事業に係る費用又は損失は、まずその廃止した日の属する年分の不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額(総所得金額等の金額が限度となります。)から控除し、なお、控除しきれない場合には、更にその年の前年に遡って、その前年分の不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額(総所得金額等の金額が限度となります。)から控除し、それでも控除できない残額は切り捨てとなります(所令179条)。
 したがって、まず同条の適用に当たっては、事業を廃止した日がいつかという点が問題となります。
 お尋ねの場合、平成20年9月途中から診察を休業し、10月には看護婦等の職員にも退職してもらったということですが、保健所に診療所廃止届を提出したのが平成21年7月であり、かつ、医療機器等の処分もその頃に行われたものであるとするならば、Aさんとしても職務への復帰を望んで病気の回復を待っていたようですし、その間、場合によっては勤務医を雇ってご自身の事業をいつでも再開することも可能な状態にあったと思われる点などを考慮すれば、Aさんの歯科医業の廃業は、法律的(医療法9条に基づく診療所廃止届)にも実質的(診療設備の処分)にも診療行為を行うことができなくなった平成21年7月になされたものとみるのが相当だと考えられます(平成20年9月途中からこの廃業までの間はいつでも営業が再開可能な休業中とみることが可能です。)。
 そうしますと、平成21年分の事業所得の金額の計算は、同年1月から廃業の7月までの期間について行うことになりますので、この場合において、平成21年7月以後に事業所得の金額の計算上必要経費に算入されるべき金額があったか否かということでいえば、ないものと考えられます。
 すなわち、有姿除却に係る損失は、「その使用を廃止し、・・・事業の用に供する可能性がないと認められる固定資産」について必要経費算入を認めていることからしますと(所基通51-2の2(1))、「事業を廃止した後において生じたその廃止した事業に係る費用又は損失」(所法63条)には該当せず、事業の廃業と同時若しくは少なくともそれよりも以前に当該資産の使用を廃止し、事業の用に供する可能性がないと判断した日の属する年分の事業所得の金額の計算上考慮されるべきものと考えます。
 お尋ねの医療機器等につきましては、保健所に診療所廃止届を提出した平成21年7月頃に有料で処分してもらったということのようですから、少なくともそれまでの間は使用を前提としての設置(又は保管)であったものと考えられますので、これが事業所得の計算上必要経費として認識されるのは、有姿除却としてではなく、現実に廃棄処分した日の属する平成21年分の事業所得の金額の計算上除却損として必要経費に算入することになるものと考えます。
 この結果、仮に、平成21年分の事業所得の金額に損失が生じ、損益通算(所法69条)して純損失の金額(所法2条1項25条)が生じた場合、この金額を翌年へ繰越控除(所法70条)するか、青色申告者であれば前年への繰戻しによる還付請求(所法140条)を選択することも可能です。

【収録日】

平成21年10月20日


 
注1: 当Q&Aの掲載内容は、一般的な質問に対する回答例であり、TKC全国会及び株式会社TKCは、当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。個別の案件については、最寄りのTKC会員にご相談ください。
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