《税務Q&A》
情報提供 TKC税務研究所
【件名】
みなし相続(遺贈)財産の種類
【質問】
夫が死亡したことにより、生前の勤務先であった会社から、労働協約の定めるところにより、妻に対して死亡退職金が支給された。 これは、妻がその労働協約により原始的に直接死亡退職金の受給権を取得したものであるから、相続税は課税されないと思っていたところ、課税になるといわれたが、その根拠は何か。 また、死亡退職金のように、相続や遺贈によって取得した財産でないのに相続税が課税される財産がほかにあるか。あるとしたら、どのような財産か。
【回答】
被相続人の死亡により取得する退職金は、本来の相続財産ではありませんが、相続または遺贈によって取得したものとみなされて相続税が課税されます。 なお、このような、いわゆるみなし相続財産には、退職手当金のほか、生命保険金や定期金に関する権利などがあります。
【関連情報】
《法令等》
【解説】
相続税は、民法上の相続や遺贈によって取得した財産に対して課税されますが、相続税の課税財産をそれのみに限定すると課税上公平でない場合が生じてきます。 そこで、相続税法では、民法上の相続や遺贈によって取得した財産でなくても、実質的に相続や遺贈によって財産を取得したのと同様の経済的効果が認められる場合には、その受けた利益などを相続や遺贈により取得したものとみなして相続税の課税対象としています。 このような財産を本来の相続(遺贈)財産に対して「みなす相続(遺贈)財産」といっていますが、このみなす相続(遺贈)財産には、次のようなものがあります。 なお、これらの財産を取得した者が相続人(相続を放棄した人および相続権を失った人は含まない。以下同じ。)である場合には相続により、その者が相続人以外の者である場合には遺贈によって取得したものとみなされます。1 被相続人に支給されるべきであった退職手当金、功労金などの給与で、被相続人の死亡後3年以内に支給が確定したもの(相法3条1項二)。 この場合の退職手当金等には、次に掲げる給付金が含まれます(相令1の3)。 (1)国家公務員共済組合法第79条の4第1項(遺族に対する一時金)又は第89条第1項(公務遺族年金の受給権者)の規定により支給を受ける一時金又は年金(一元化法附則第36条第3項(改正前国共済法による職域加算額の経過措置)の規定によりなおその効力を有するものとされた一元化法第2条(国家公務員共済組合法の一部改正)の規定による改正前の国家公務員共済組合法(以下「旧国共済法」といいます。)第88条第1項(遺族共済年金の受給権者)の規定により支給を受ける年金を含みます。) (2)地方公務員等共済組合法第93条第1項(遺族に対する一時金)又は第103条第1項(公務遺族年金の受給権者)の規定により支給を受ける一時金又は年金(一元化法附則第60条第3項(改正前地共済法による職域加算額の経過措置)の規定によりなおその効力を有するものとされた一元化法第3条(地方公務員等共済組合法の一部改正)の規定による改正前の地方公務員等共済組合法第99条第1項(遺族共済年金の受給権者)の規定により支給を受ける年金を含みます。) (3)私立学校教職員共済法第25条(国家公務員共済組合法の準用)において準用する国家公務員共済組合法第79条の4第1項又は第89条第1項の規定により支給を受ける一時金又は年金(一元化法附則第78条第2項(改正前私学共済法による職域加算額の経過措置)の規定によりなおその効力を有するものとされた一元化法第4条(私立学校教職員共済法の一部改正)の規定による改正前の私立学校教職員共済法第25条において準用する旧国共済法第88条第1項の規定により支給を受ける年金を含みます。) (4)確定給付企業年金法第3条第1項(確定給付企業年金に係る規約)に規定する確定給付企業年金に係る規約に基づいて支給を受ける年金又は一時金 (5)確定給付企業年金法第91条の19第3項(中途脱退者に係る措置)、第91条の20第3項(終了制度加入者等である老齢給付金の受給権者等に係る措置)、第91条の21第3項(終了制度加入者等である障害給付金の受給権者に係る措置)、または第91条の22第5項(終了制度加入者等である遺族給付金の受給権者に係る措置)の規定により企業年金連合会から支給を受ける一時金(平成25年厚生年金等改正法附則第3条第13号に規定する存続連合会から支給を受ける一時金を含む。) (6)平成25年厚生年金等改正法附則第42条第3項(基金中途脱退者に係る措置)、第43条第3項(解散基金加入員等である老齢給付金の受給権者等に係る措置)、第44条第3項(解散基金加入員等である障害給付金の受給権者に係る措置)、第45条第5項(解散基金加入員等である遺族給付金の受給権者に係る措置)、第46条第3項(確定給付企業年金中途脱退者に係る措置)、第47条第3項(終了制度加入者等である老齢給付金の受給権者等に係る措置)、第48条第3項(終了制度加入者等である障害給付金の受給権者に係る措置)又は第49条第5項(終了制度加入者等である遺族給付金の受給権者に係る措置)の規定により存続連合会から支給を受ける一時金 (7)確定拠出年金法第4条第3項(企業型年金規約)に規定する企業型年金規約又は同法第56条第3項(個人型年金規約)に規定する個人型年金規約に基づいて支給を受ける一時金 (8)法人税法附則第20条第3項(退職年金等積立金に対する法人税の特例)に規定する適格退職年金契約その他退職給付金に関する信託又は生命保険の契約に基づいて支給を受ける年金又は一時金 (9)独立行政法人勤労者退職金共済機構若しくは所得税法施行令第73条第1項(特定退職金共済団体)に規定する特定退職金共済団体が行う退職金共済に関する制度に係る契約その他同項第1号に規定する退職金共済契約又はこれに類する契約に基づいて支給を受ける年金又は一時金 (10)独立行政法人中小企業基盤整備機構の締結した小規模企業共済法第2条第2項(定義)に規定する共済契約に基づいて支給を受ける一時金 (11)独立行政法人福祉医療機構の締結した社会福祉施設職員等退職手当共済法第2条第9項(定義)に規定する退職手当共済契約に基づいて支給を受ける一時金2 被相続人の死亡により取得した生命保険契約の保険金や偶然な事故に基因する死亡に伴って支払われる損害保険契約の保険金のうち、被相続人が負担した保険料(共済掛金を含む。)の金額に対応する割合に相当する部分(相法3条1項一) この場合の生命保険契約、損害保険契約には、相続税法施行令第1条の2第1項に規定する生命共済等、第2項に規定する傷害共済等の契約が含まれます。3 相続開始の時において、まだ保険事故(共済事故を含む。)が発生していない生命保険契約(いわゆる掛捨保険契約を除く。)で、被相続人が保険料の全部または一部を負担し、かつ、被相続人以外の者が契約者である場合の生命保険契約に関する権利のうち、被相続人が負担した保険料の金額に対応する割合部分(相法3条1項三)4 相続開始の時において、まだ定期金給付事由の発生していない定期金給付契約(生命保険契約を除く。)で、被相続人が掛金の全部または一部を負担し、かつ、被相続人以外の者が契約者である場合の定期金給付契約に関する権利のうち、被相続人が負担した掛金または保険料の金額に対応する割合部分(相法3条1項四)5 保証期間付定期金給付契約で定期金受取人である被相続人の死亡により継続受取人が取得する保証期間付定期金給付契約に関する権利で、被相続人が負担した掛金または保険料の金額に対応する部分(相法3条1項五)6 被相続人の死亡によって取得することとなる契約に基づかない定期金に関する権利(相法3条1項六)7 被相続人の遺言によって受ける次の利益等(1)著しく低い価額で財産の譲渡を受けた場合の利益(相法7)(2)対価を支払わないで、または著しく低い価額の対価で債務の免除、引受けまたは第三者のためにする債務弁済を受けた場合の利益(相法8)(3)対価を支払わず、または著しく低い価額の対価で、前記(1)から(2)に掲げた以外の経済的利益を受けた場合の利益(相法9)(4)信託の効力が生じた時において、適正な対価を負担せずに信託の受益者等が受ける信託に関する権利(相法9条の2)8 相続人がいないため、被相続人と特別の縁故があった者が請求によって受ける相続財産法人にかかる財産(相法4条1項)9 特別寄与者が支払いを受けるべき特別寄与料に相当する金額(相法4条2項)10 相続開始前3年以内に被相続人から贈与を受けた財産(相法19)11 生前に被相続人から相続時精算課税に係る贈与によって取得した財産(相法21の15、21の16)12 教育資金の贈与者が死亡した時において、教育資金の非課税の特例を受けていた教育資金に係る一定の管理残額(措法70の2の2)13 結婚・子育て資金の贈与者が死亡した時において、結婚・子育て資金の非課税の特例を受けていた結婚・子育て資金に係る一定の管理残額(措法70の2の3)14 農地等の贈与者が死亡した時において、農地等の生前一括贈与を受けて贈与税の納税猶予又は納期限延長の特例を受けていた農地等(措法70条の5)15 事業用資産の贈与者が死亡した時において、個人の事業用資産についての贈与税の納税猶予及び免除の特例を受けていた特例受贈事業用資産(措法70条の6の9)16 非上場株式等の贈与者が死亡した場合の相続税の課税の特例及び非上場株式等の特例贈与者が死亡した場合の相続税の課税の特例を受けていた非上場株式等(措法70条の7の3、措法70条の7の7)(注) 相続や遺贈によって財産を取得した者が、その被相続人の一親等の血族(一親等の血族である子が被相続人の死亡以前に死亡しているため、その子に代わって相続人(代襲相続人)となった孫等を含みます。)及び配偶者のいずれでもない場合には、原則として、その者の相続税額のその相続税額の100分の20に相当する金額を加算する必要がありますのでご留意ください(相法18、相基通18―13)。
【収録日】
令和 4年 1月21日