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《税務Q&A》

情報提供 TKC税務研究所

【件名】

懇親会に伴って生じるタクシー代の費用科目の判定

【質問】

 B市において精密機械の製造を営むA社においては、バス等の運行回数が少ないため、タクシーの利用が多く、そのタクシー代の費用科目の判断に苦慮しています。
 例えば次のケースで使用するタクシー代については、どのように処理すべきでしょうか。
 イ(9月1日)新規取引先C社との契約に先立つ打ち合わせのため、他県から来社するC社の役員及び担当者(以下「C社役員等」といいます。)を、A社営業部長が、B駅まで出迎えた後、A社まで案内するために要したタクシー代
 ロ(同日)昼食時、C社役員等をB市内の昼食会場であるレストランまで案内するための往復に使用したタクシー代(昼食代は全額A社負担)
 ハ(同日)打ち合わせ終了後、C社役員等をB市郊外の温泉ホテルに案内するために要したタクシー代(同ホテルにおいて、A社主催によりC社役員等とA社役員等との懇親会を開催後、C社役員等はそのまま宿泊。懇親会費用及びC社役員等の宿泊費用はA社負担)
 ニ(同日)懇親会終了後、A社役員等が帰宅するために支払ったタクシー代
 ホ(9月2日)温泉ホテルからB駅までC社役員等を送り届けるために負担したタクシー代
 ヘ(9月8日)取引先D社が主催する懇親会(費用はD社負担)にA社の役員等を出席させるために要するタクシー代(A社~懇親会会場、懇親会会場~自宅)
 ト(9月10日)同業者団体の懇親会(費用は分担)にA社の役員2名及び製造部長を出席させるために要するタクシー代(A社~懇親会会場)
 チ(同日)懇親会終了後、発生したクレームへの対応のため、製造部長が帰社した際に支払ったタクシー代
 リ(12月20日)社内忘年会(費用については福利厚生費処理)の後、有志のみで2次会(費用は各自負担)を行ったところ、バス・電車が終わったため、帰宅に要したタクシー代

【回答】

1 交際費等とは、交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するものをいいます(措法61の4〔4〕)が、これらの行為に付随して支出する費用、例えば得意先等の他社を接待した時の送迎費用、旅行招待の際の添乗員の交通費等のように、接待、供応等がなければ支出されなかったであろう費用も交際費等に該当します。
  これに対して、他社が主催する懇親会に出席するための交通費等は、「接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するもの」ではありませんから、交際費等に該当せず、(単純損金たる)旅費交通費等として処理して差し支えないものと解されます(国税庁・質疑応答事例(法人税)「交際費等の範囲(接待を受けるためのタクシー代)」参照)。
  なお、法人が支払うタクシー代が、旅費交通費又は交際費等とされるためには、その法人の業務に付随して生じるものに限られますから、例えば、タクシーを使用する個人自らが負担すべきものと認められるタクシー代を法人が負担する時は、その個人に対する給与と認定される可能性があります(法基通9-2-9(10))ので注意が必要です。
2 以上を踏まえて、お尋ねの各ケースにつき検討すると以下のとおり考えられます。
 イ(9月1日)取引の打ち合わせのために遠方から来社する取引先を、駅から自社まで案内するために要したタクシー代は、打ち合わせの開催に付随する費用と認められますから、旅費交通費として処理するのが相当と考えられます。
 ロ(同日)取引先に昼食を提供する費用は、過度に高額なものでない限り、交際費等に該当しないため、これに付随して取引先を昼食会場まで案内するための往復のタクシー代も、交際費に該当せず、旅費交通費として処理するのが相当と考えられます。
 ハ(同日)温泉ホテルにおける懇親会費用及び取引先の宿泊のために負担する費用は交際費に該当しますから、取引先を温泉ホテルに案内するために要したタクシー代も、交際費等として処理すべきところと考えられます。
 ニ(同日)懇親会終了後、A社役員等が帰宅するためのタクシー代も、接待供応に付随して発生するものと認められることから、交際費等として処理すべきところと考えられます。
 ホ(9月2日)取引先を宿泊先から駅まで送り届けるためのタクシー代は、接待供応に付随するものではなく、取引先の来訪の目的である取引の打ち合わせに付随する費用と認められることから、旅費交通費として処理するのが相当と考えられます。ただし、駅に直行せず、観光や周遊のために使用したものと認められる場合には、タクシー代そのものが交際費等と認定される可能性がありますので、注意が必要です。
 ヘ(9月8日)他社が主催する懇親会に自社の役員等を出席させるために要するタクシー代は、得意先等に対して自社が行う接待のために支出するものではありませんから、交際費等に該当しません。したがって、懇親会会場からの出席者の帰宅に要する費用を含めて、旅費交通費として処理するのが相当と考えられます。
 ト(9月10日)費用分担による懇親会は、共同開催としてA社自らも接待供応の当事者となりその参加費は交際費等に該当しますから、これに出席するために要する付随費用たるタクシー代も交際費等として処理すべきところと考えられます。
 チ(同日)製造部長が帰社した際に支払ったタクシー代は、その費用が交際費となる懇親会終了後に支出されるものではありますが、クレームへの対応という会社業務のための費用と認められることから、旅費交通費として処理するのが相当と考えられます。
 リ(12月20日)一般的に、年に一度開催される(原則)全員参加の社内忘年会等の費用は、福利厚生費として取り扱われますが、終了後、有志のみで行う2次会は、会社の福利厚生行事ではなく個人的な会合にすぎませんから、その2次会参加により通常の帰宅手段がなくなったために要したタクシー代も、個人が負担すべきものであり、これを会社が負担する場合には、経済的利益の供与として、その個人に対する給与と認定される可能性があります。
3 以上の判断については、個別の事実認定を伴いますから、タクシーを使用する理由や目的等を具体的に把握の上、客観的な説明が可能なように記録保存を図ることが肝要と考えます。

【関連情報】

《法令等》

租税特別措置法61条の4
措置法通達61の4(1)-12
法人税基本通達9-2-9

【収録日】

令和 3年 3月17日


 
注1: 当Q&Aの掲載内容は、一般的な質問に対する回答例であり、TKC全国会及び株式会社TKCは、当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。個別の案件については、最寄りのTKC会員にご相談ください。
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