《税務Q&A》
情報提供 TKC税務研究所
【件名】
高額特定資産を取得した場合等の納税義務の免除の特例規定の改正について
【質問】
令和6年度税制改正により、高額特定資産を取得した場合等における納税義務の免除の特例が見直されたということですが、具体的にはどのように変わったのでしょうか。
【回答】
課税事業者が、その課税期間中に税抜金額で200万円以上の金地金等の課税仕入れ等を行い、本則課税により消費税の申告を行った場合においても、その課税期間の初日以後3年を経過する日の属する課税期間までの各課税期間においては、事業者免税点制度は適用されず、課税事業者となることになりました。また、簡易課税制度の適用についても制限規定が追加されました。
【関連情報】
《法令等》
【解説】
1 改正前の高額特定資産を取得した場合等の納税義務の免除の特例 消費税においては、事業者免税点制度及び簡易課税制度の恣意的な適用を防ぐため、一定の高額な資産(高額特定資産)の課税仕入れを行い、又は、課税貨物の引取りを行って、本則課税により課税仕入れ等の税額の控除を受けた場合には、課税仕入れ等を行った課税期間の初日以後3年を経過する日の属する課税期間までの各課税期間については、事業者免税点制度が適用されず、また、新たに簡易課税制度の適用を受けられないこととする特例が設けられています。 また、事業者が、高額特定資産である棚卸資産について、棚卸資産の調整措置(注)の適用を受けた場合にも、その適用を受けた課税期間の初日以後3年を経過する日の属する課税期間までの各課税期間について、同様の制限規定が設けられています。(注)棚卸資産の調整措置とは、免税事業者が課税事業者となる日の前日に、免税事業者であった期間中に行った課税仕入れ等に係る棚卸資産を有している場合、その棚卸資産の課税仕入れ等に係る消費税額を、課税事業者となった課税期間の課税仕入れ等に係る消費税額とみなして仕入税額控除の計算の対象とする等の制度です。2 改正前における高額特定資産の意義 高額特定資産には、棚卸資産又は調整対象固定資産のうち、その対象資産の一の取引単位(通常一組又は一式をもって取引の単位とみなされるものにあっては、一組又は一式)に係る課税仕入れに係る支払対価の税抜金額、特定課税仕入れに係る支払対価の額又は保税地域から引き取られる対象資産の課税標準である金額が1,000万円以上のものが該当します。 しかし、金地金等は、一の取引単位の金額の調整が容易であり、上記1の特例の適用を回避することが可能となっていました。そのため、その課税期間中に仕入れた金又は白金の地金等の合計額が高額である場合を、特例の対象として追加し、事業者免税点制度及び簡易課税制度の適用制限についての見直しを行うことになりました。3 令和6年度改正の内容 課税事業者が、簡易課税制度又は2割特例の適用を受けない課税期間中に国内における金地金等の課税仕入れ又は金地金等に該当する課税貨物の保税地域からの引取り(注1)を行った場合において、当該課税期間中の当該金地金等の仕入れ等の金額の合計額が高額である場合として政令で定める場合に該当するときは、当該金地金等の仕入れ等を行った課税期間の翌課税期間から当該金地金等の仕入れ等を行った課税期間の初日以後3年を経過する日の属する課税期間までの各課税期間における課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れについては、事業者免税点制度は適用しないこととする特例(消法12の4〔3〕)が設けられました(注2)。 また、その課税事業者が消費税法12条の4第3項に規定するときに該当するときは、同項に規定するときに該当する課税期間の初日から同日以後3年を経過する日の属する課税期間の初日の前日までの期間について、簡易課税制度選択届出書の提出も制限されることとなりました。(注)1 「金地金等の課税仕入れ又は金地金等に該当する課税貨物の保税地域からの引取り」には、当該課税期間において消費税法36条1項又は3項の規定の適用を受ける棚卸資産に係る課税仕入れ又は保税地域からの引取りを含みます。 2 その基準期間における課税売上高が1,000万円を超える課税期間及び他の規定により事業者免税点制度が適用されない課税期間を除きます。4 金地金等の意義 上記3の特例における「金地金等の仕入れ等の金額の合計額が高額である場合」とは、金地金等の仕入れ等を行った課税期間中の当該金地金等の仕入れ等に係る課税仕入れに係る支払対価の額の110分の100に相当する金額及び保税地域から引き取った当該金地金等の仕入れ等に係る課税貨物の課税標準である金額の合計額が200万円以上である場合とされています。 なお、金地金等の仕入れ等を行った課税期間が1年に満たない場合には、当該合計額を当該課税期間の月数(注)で除し、これに12を乗じて計算した金額により判定します。(注)月数は、暦に従って計算し、1月に満たない端数を生じたときは、これを1月とします。 また、「金地金等」には、金又は白金の地金のほか、次のものが該当します。 〔1〕 金貨又は白金貨 〔2〕 金製品又は白金製品(金又は白金の重量当たりの単価に重量を乗じて得た価額により取引されるものに限るものとし、当該事業者が製造する製品の原材料として使用されることが明らかなものを除く。)5 適用開始時期 上記3の改正規定は、令和6年4月1日(施行日)から施行されており、施行日以後に事業者が行う金地金等の課税仕入れ及び金地金等に該当する課税貨物の保税地域からの引取りについて適用されます。
【収録日】
令和 6年 5月21日