《税務Q&A》
情報提供 TKC税務研究所
【件名】
執行役員が「みなし役員」と認定される可能性について
【質問】
顧問先法人A社では、この度役員制度の見直しを行い、取締役の定員の減員とともに執行役員制度を導入し、これまで取締役であった者のうち甲、乙及び丙の3名が取締役を退任の上、執行役員に就任し、各担当部門の業務執行に当たることになりました。 しかしながら、この3名は、執行役員となった後も取締役会に出席しており、給与の額や旅費規程における日当の額も従前の取締役在任時のままであるなど、実質的には現在も取締役と同様の処遇を受け、経営にも参画しているようにも見受けられます。 このように事実上、取締役と同様と見受けられる甲、乙及び丙であっても、法人の株式を所有していないことから、法人税法上のみなし役員と認定されることはないと考えてよいのでしょうか。
【回答】
法人税法は、取締役や監査役等、法定されている役員のほか、次のイ及びロに該当する者を役員とみなす旨規定しています(法法2十五、法令7)。イ 法人の使用人(職制上使用人としての地位のみを有する者に限る。次号において同じ。)以外の者でその法人の経営に従事しているもの(法令7一)ロ 同族会社の使用人のうち、法人税法施行令71条1項5号イからハまで(使用人兼務役員とされない役員)の規定中「役員」とあるのを「使用人」と読み替えた場合に同号イからハまでに掲げる要件(特定株主要件)のすべてを満たしている者で、その会社の経営に従事しているもの(法令7二) 上記イの「使用人以外の者でその法人の経営に従事しているもの」には、相談役、顧問その他これらに類する者でその法人内における地位、その行う職務等からみて他の役員と同様に実質的に法人の経営に従事していると認められるものが含まれる(法基通9-2-1)とされています。 ところで、執行役員制度は、「経営」と「業務の執行」を分離してそれぞれの役割分担を明確にすること、また、取締役の数を減らし、取締役会の本来の機能である会社の業務執行に関する意思決定の効率化等を目的として導入されたものといわれています。 一般に、執行役員とは、「役員」との呼称が付されていますが、会社法上の取締役等とは異なり、法定された役員には該当せず、「使用人」又は「重要な使用人」と位置付けられているところであり、上記イのみなし役員が「法人の使用人以外の者」を前提としていることから、通常の場合、執行役員がみなし役員となることは、上記ロ(同族会社における特定株主)に該当する場合でない限り、あり得ないものと考えられます。 しかしながら、執行役員の地位や職務内容等については、会社法等において明記されておらず、執行役員制度を採用している各法人において区々というのが実情と認められることから、執行役員がみなし役員に該当するか否かは、個別・具体的な事実関係を踏まえて判定すべき事項と考えられます。 例えば、その執行役員が本来の職務権限を逸脱して経営上の事項につき議決に加わること等が許されているような事実が認められる場合には、もはや「職制上使用人としての地位のみを有する者」ということはできませんので、上記イの「使用人以外の者でその法人の経営に従事しているもの」に該当すると認定され、みなし役員と判定され得るものと考えられます。 A社の執行役員甲、乙及び丙についてみますと、取締役会に出席したとしても、オブザーバーとしての出席もあり得ることから直ちに経営に従事していると断じることはできませんが、もし、その場において経営上の事項につき議決に加わること等が許されているような場合には、みなし役員と判定される可能性を否定できないものと思われます。
【関連情報】
《法令等》
【収録日】
平成24年 6月26日