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《税務Q&A》

情報提供 TKC税務研究所

【件名】

同族会社への株式の無償譲渡(損益取引)とみなし贈与

【質問】

 A社は、その発行済株式数の40パーセントを代表取締役である甲が、15パーセントを甲の叔母乙(甲の父の妹)が、20パーセントを資産管理会社B社が所有している同族会社である。
また、B社も、甲、丙(甲の妻)及び丁(甲の子)で100パーセントの株式を保有する同族会社である。
 乙には子がなく、今後A社株式が分散されることなどを防止するため、乙の保有するA社株式をB社に無償で譲渡したいと考えている。
 この場合、乙には法人に対する資産(A社株式)の贈与としてみなし譲渡所得の課税が生じ、また、B社はA社株式を無償で譲り受けたことによる受贈益課税が生じることとなるが、その他に、B社の株式の価値が増加したとして甲、丙及び丁に対してみなし贈与の課税が生じることとなるのか。
 乙とB社との取引により、間接的に、甲、丙及び丁の保有するB社株式の価値が増加するとしても、B社の損益取引によりB社には法人税が課税されることになるし、B社株式の価値の増加は含み益であるから、贈与税は課税されないと考えるが、いかがか。

【回答】

 乙からB社への資産の無償譲渡によるB社株式の価値の増加は、甲、丙及び丁にとっては含み益の増加ですが、経済的利益が乙から甲、丙及び丁に移転したと認められます。
 また、B社について受贈益に対する法人税課税が生じるとしても、相続税法9条に規定する「利益」から損益取引により法人税の課税対象となる利益が除かれると解することはできません。
 したがって、甲、丙及び丁についてみなし贈与の課税が生じることになります。

【関連情報】

《法令等》

相続税法9条
相続税法基本通達9-2

【解説】

1 相続税法9条は、対価を支払わないで、又は著しく低い価額の対価で利益を受けた場合には、当該利益を受けた者は、当該利益の価額に相当する金額を、当該利益を受けさせた者からの贈与により取得したものとみなす旨規定しています。
  また、この規定の取扱いについて定めた相続税法基本通達9-2では、同族会社に対し無償で財産の提供があった場合(同通達(1))や同族会社に対し時価より著しく低い価額の対価で財産の譲渡をした場合(同通達(4))に、それにより当該同族会社の株式の価額が増加したときには、当該同族会社の株主は当該株式の価額の増加部分相当額を、「当該財産を提供した者」や「当該財産の譲渡をした者」からの贈与によって取得したものとして取り扱う旨が定められています。
  そして、相続税法9条の規定においても、相続税法基本通達9-2の取扱いにおいても、同族会社の課税対象となる損益取引による利益の移転を除いていません。
2 ご質問の場合には、乙が同族会社であるB社に対して「A社株式」という財産を無償で譲渡するとのことですから、これによりB社の株主(甲、丙及び丁)の保有するB社株式の価額が増加するときには、その増加額に相当する利益の金額を乙からの贈与により取得したものとみなされ、相続税法9条の規定に基づく贈与税の課税対象になるものと考えられます。
  この場合の贈与税の課税価格は、甲、丙及び丁のそれぞれの所有するB社株式について、乙のB社への「A社株式」の贈与前の資産状況に応じて評価したB社株式の評価額と贈与後の資産状況に応じて評価したB社株式の評価額の差額により算定することになります。
3 なお、乙に対するみなし譲渡課税は乙のB社株式所有中に乙に帰属した値上り益(キャピタルゲイン)に対する課税であり、B社に対する受贈益課税はB社の所得に対する課税ですから、乙から甲、丙及び丁への利益の移転に対する贈与税課税について、納税義務者の観点からも、課税客体の観点からも、二重課税等の問題は生じないものと考えます。

【収録日】

令和 6年 3月14日


 
注1: 当Q&Aの掲載内容は、一般的な質問に対する回答例であり、TKC全国会及び株式会社TKCは、当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。個別の案件については、最寄りのTKC会員にご相談ください。
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