《税務Q&A》
情報提供 TKC税務研究所
【件名】
貸家を取壊し、更地化するために支出した立退料、建物取壊し費用等の譲渡費用性
【質問】
この20年来、賃貸アパートを建築し、相当な賃貸料収入を得てきたが、最近、利用率が急激に悪化してきたため、入居者に立退料を支払って退去してもらい、この賃貸アパート建物を取り壊すことにした。 計画では、取壊し跡地に施設を設け月極の駐車場(いわゆる青空駐車場)とし、引き続き不動産賃貸の用に供することになっているが、その跡地が売れるようなら即座に売却処分しようとも考え、買手を捜すよう宅地建物取引業者に依頼している。 このような場合、入居者に支払った立退料や建物の取壊し費用は、その支出年分の不動産所得の計算上、必要経費に算入すべきことになるのか、それとも、取壊し跡地の譲渡による譲渡所得の計算上控除する譲渡費用に算入すべきか。 また、取壊した賃貸アパート建物の残存簿価相当額の税務処理はどのようにすべきか。
【回答】
1 不動産所得の基因となっている建物の取壊しに伴い借家人(賃借人)に支払った立退料やその建物の取壊しに要した取壊し費用は、基本的には、その支出した年分の不動産所得の金額の計算上、必要経費に算入すべきことになります(所法37、所基通37-23)。 その建物の取壊しにより発生する資産損失(建物の未償却残高-発生資材等の価額)についても同様となります(所法51、所基通51-2)。 ただし、建物の取壊しが、その建物の敷地を譲渡するために行われたものであるときは、その取壊しに係る立退料、取壊し費用や取壊しによる資産損失額は、その敷地の譲渡所得の計算上、譲渡費用に算入すべきものとして取り扱われています(所基通33-7・33-8)。2 本件では、取壊しの段階では、まだその敷地を譲渡することになっていなければ、賃貸アパート建物の取壊しに伴う立退料、取壊し費用や資産損失の額は、原則どおり不動産所得の金額の計算上、必要経費に算入すべきものと解されています。 しかし、状況が変化し、取壊しの段階でその敷地の青空駐車場への転用の取りやめ、売却処分へと計画を変更し、賃貸アパート建物の取壊しから敷地の売却処分までのプロセスが切れ目なく続くことになれば、その立退料、取壊し費用や資産損失の額は、敷地の譲渡所得の計算の上で譲渡費用として処理するのが適当であるものと考えられます。
【関連情報】
《法令等》
【収録日】
令和 2年 3月 6日