《税務Q&A》
情報提供 TKC税務研究所
【件名】
同族関係者及びその完全支配関係会社が株主である場合の完全子法人株式等の判定
【質問】
次の出資関係図のとおり、A株式会社(以下「A社」といいます。)及びB株式会社(以下「B社」といいます。)は、甲氏及びその親族(以下併せて「甲一族」といいます。)によって発行済株式の全部を保有されており、C株式会社(以下「C社」といいます。)は、その発行済株式の60パーセントを甲一族に、35パーセントをA社に、5パーセントをB社に所有されています。この出資関係は、C社が設立された5年前以来変わっていません。(出資関係図参照) C社においては、この度、設立以来初めての配当として、配当の基準日を令和3年3月31日とし、令和3年3月期(令和2年4月1日~令和3年3月31日)を配当の計算期間とする一株当たり100円の金銭配当を実施することとし、令和3年5月30日に支払いました。 そこで質問ですが、A社、B社及びC社の間には、甲一族を一の者とする完全支配関係がありますが、A社自体が保有するC社株式は発行済株式の35パーセントにすぎず、また、B社自体が保有するC社株式は発行済株式の5パーセントにすぎないことから、C社から受領する配当については、A社においては「関連法人株式等」として、また、B社においては「非支配目的株式等」として、受取配当の益金不算入額を計算すべきでしょうか。
【回答】
1 現行法人税法上の受取配当の益金不算入額については、次の4つの区分に応じて算定されることとされています(法法23、法令21~22の3の2)。 イ 完全子法人株式等・・・・・配当等の全額 ロ 関連法人株式等・・・・・・配当等の額-負債利子の額 ハ 非支配目的株式等・・・・・配当等の額×20パーセント ニ その他の株式等(上記イ~ハのいずれにも該当しない株式等)・・・配当等の額×50パーセント2 上記の「完全子法人株式等」、「関連法人株式等」及び「非支配目的株式等」の定義等については、概略次のとおりとされています。 イ 「完全子法人株式等」とは、配当等の額の計算期間を通じて内国法人との間に完全支配関係があつた法人の株式等をいいます(法法23〔5〕、法令22の2)が、この「完全支配関係があった」とは、完全支配親会社と完全支配関係子会社の間の双方向に係りますから、親会社が有する子会社株式のみならず、子会社が一部有する場合の親会社株式も完全子法人株式等に該当しますし、その他、グループ内で資本関係が完結している場合のそれぞれの持合株式も完全子法人株式等に該当します(法基通3-1-9)。 ロ 次に、「関連法人株式等」とは、原則として、その配当等の額の支払基準日以前6月間継続して発行済株式等の3分の1超の株式等を保有する法人の株式等をいいますが、「完全子法人株式等を除く」ものとされています(法法23〔6〕、法令22の3)。 ハ そして、「非支配目的株式等」とは、その配当等の額の支払基準日において、発行済株式等の100分の5以下の株式等を保有する法人の株式等をいいますが、これも「完全子法人株式等を除く」ものとされています(法法23〔7〕、法令22の3の2)。3 そして、ここで留意すべきは、関連法人株式等及び非支配目的株式等については、「完全子法人株式等を除く。」とされている(法法23〔6〕〔7〕)ことです。 したがいまして、自社のみでは配当会社の株式等の3分の1を超える株式等を所有するにすぎない場合や、100分の5以下の株式等を所有するにすぎない場合であっても、自社を含むグループ内でその配当会社の株式の全部を有している場合や、グループ内で資本関係が完結している場合には、その配当会社は、自社にとって関連法人株式等や非支配目的株式等ではなく完全子法人株式等に該当します。 お尋ねのケースについていえば、「完全子法人株式等」の判定は、配当を行うC社株式に係るA社又はB社のみの保有割合で判定するのではなく、個人株主を含めたグループ内の個人及び法人の全部で100パーセントを保有しているかどうかで判定することになります。 お示しの出資関係図によれば、配当会社たるC社と株主会社たるA社及びB社の間には、個人株主である甲一族を一の者とする完全支配関係がありますから、A社及びB社が保有するC社株式は、いずれも完全子法人株式等に該当し、その配当の額については、負債利子を控除することなく、全額が益金不算入となります。
【関連情報】
《法令等》
【収録日】
令和 3年 7月15日