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《税務Q&A》

情報提供 TKC税務研究所

【件名】

前期に個別評価金銭債権に係る貸倒引当金を繰り入れなかった場合の当期繰入れの可否と繰入限度額について

【質問】

 A社は3月決算の通信機器販売業を営む法人です。資本金は5,000万円であり、いわゆる中小法人等に該当します。
 A社の売上先であるB社(資本関係等はない。)がX年3月25日付けで更生手続開始の申立てを行った旨の通知を同年3月末に弁護士から受けていました。B社に対する売掛金(以下「当該債権」という。)は1,000万円であり、担保や保証等はありません。
 通知の時期が決算期末であったことや前期は業績が良くないことから、当該債権に係る貸倒引当金の繰入れを見合わせました。
 当期は増収増益が見込まれるため、A社は当該債権について個別評価金銭債権に係る貸倒引当金の繰入れを行いたいと考えていますが、前期に繰入れをしていない場合でも、当期末において繰入れは可能ですか。また、繰入れができるとしますと、金額はいくらになるのでしょうか。なお、現時点では、更生計画認可の決定に至っておらず、切捨額や弁済額もないため当該債権額は1,000万円のままです。

【回答】

1 法令等の規定
(1)貸倒引当金の繰入対象法人
   平成23年の税制改正において、貸倒引当金の繰入対象法人が、中小法人等(普通法人(投資法人及び特定目的会社を除きます。)のうち、資本金の額若しくは出資金の額が1億円以下であるもの(資本金5億円以上の大法人等による完全支配関係がある法人は除かれます(法法66[6]。)又は資本若しくは出資を有しないもの)、公益法人等又は協同組合等、人格のない社団等)や銀行や保険会社などに限定されています(法法52[1])。
(2)個別評価金銭債権に係る貸倒引当金
   (1)に掲げる繰入対象法人が、その有する金銭債権のうち、更生計画認可の決定に基づいて弁済を猶予され、又は賦払により弁済されることその他の政令で定める事実が生じていることによりその一部につき貸倒れその他これに類する事由による損失が見込まれるもの(当該金銭債権に係る債務者に対する他の金銭債権がある場合には、当該他の金銭債権を含む。以下この条において「個別評価金銭債権」という。)のその損失の見込額として、各事業年度において損金経理により貸倒引当金勘定に繰り入れた金額については、当該繰り入れた金額のうち、当該事業年度終了の時において当該個別評価金銭債権の取立て又は弁済の見込みがないと認められる部分の金額を基礎として政令で定めるところにより計算した金額(「個別貸倒引当金繰入限度額」という。)に達するまでの金額は、当該事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入するとされています(法法52[1])。
   なお、損金経理により貸倒引当金に繰り入れた金額については、確定申告書に明細書(別表十一(一))を添付する必要がある(法法52[3])ほか、特定の事由が生じていることを証する書類その他の関係書類の保存が必要となります(法令96[2])。
   また、法人税法第52条第1項又は第2項の規定により各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入された貸倒引当金勘定の金額は、当該事業年度の翌事業年度の所得の金額の計算上、益金に算入するとされています(法法52[10])。
(3)個別貸倒引当金繰入限度額について
   法人税法施行令第96条第1項において個別評価金銭債権を4つに区分し、それぞれの区分に応じて個別貸倒引当金繰入限度額を定めています。
   [1]内国法人が更生計画認可の決定等に基づいてその弁済を猶予され、又は賦払により弁済される場合…当該個別評価金銭債権の額のうち更生計画認可の決定等の事由が生じる日の属する事業年度終了の日の翌日から5年を経過する日までに弁済されることとなっている金額以外の金額(担保権の実行その他によりその取立て又は弁済(以下「取立て等」という。)の見込みがあると認められる部分の金額を除く。)(法令96[1]一)
   [2]内国法人が事業年度終了の時において有する個別評価金銭債権につき、債務超過の状態が相当期間継続し、かつ、その営む事業に好転の見通しがないこと、災害、経済事業の急変等により多大な損害が生じたことその他の事由により、当該個別評価金銭債権の一部の金額につきその取立て等の見込みがないと認められる場合…当該一部の金額に相当する金額(法令96[1]二)
   [3]内国法人が当該事業年度終了の時において有する金銭債権に係る債務者につき次に掲げる事由が生じている場合(当該金銭債権につき、第一号に掲げる事実が生じている場合及び前号に掲げる事実が生じていることにより法第五十二条第一項の規定の適用を受けた場合を除く。)…当該金銭債権の額(当該金銭債権の額のうち、当該債務者から受け入れた金額があるため実質的に債権とみられない部分の金額及び担保権の実行、金融機関又は保証機関による保証債務の履行その他により取立て等の見込みがあると認められる部分の金額を除く。)の百分の五十に相当する金額(法令96[1]三)
    イ 更生手続開始の申立て
    ロ 再生手続開始の申立て
    ハ 破産手続開始の申立て
    ニ 特別清算開始の申立て
    ホ イからニまでに掲げる事由に準ずるものとして財務省令で定める事由
   [4]個別評価金銭債権の債務者である外国の政府、中央銀行又は地方公共団体の長期にわたる債務の履行遅滞によりその経済的価値が著しく減少し、かつ、その弁済を受けることが著しく困難であると認められる場合…当該個別評価金銭債権(これらの者から受け入れた金額がある実質的に債権とみとめられない部分の金額及び保証債務の履行その他により取立て等の見込みがあると認められる部分の金額を除く。)の百分の五十に相当する金額
2 ご質問に対する回答
(1)個別評価金銭債権に係る貸倒引当金繰入れの可否について
   A社は当該債権1,000万円を有しており、当該債権の債務者であるB社はX年3月25日付で更生計画開始の申立てを行っているとのことです。
   会計上は決算の内容にかかわらず、金銭債権のうち回収が見込まれない金額を貸倒引当金に繰り入れることがあるべき姿と考えます。ただ、法人税法上は、貸倒引当金の繰入れは、繰入対象法人が、事業年度末に所定の金銭債権を有する場合に、損金経理を要件に損金算入を認めていますので、法人の選択によることになります。
   当事業年度末における個別評価金銭債権に係る貸倒引当金繰入れの可否については、A社は貸倒引当金の繰入対象法人であること、当期(X+1年3月末)において、債務者のB社について政令(法令96)に定める事実(ご質問の場合には、更生計画開始の申立て)が既に生じていることから、繰入れは認められます。
   これは、貸倒引当金の繰入対象法人が事業年度終了の時に有する金銭債権に係る債務者について、その他の政令で定める事実が生じていれば繰入れが認められるもので、その他の政令で定める事実が発生した事業年度に限定されているわけではなく、また、前期以前に当該個別金銭債権に係る貸倒引当金を繰り入れていたか否かは影響しません。
(2)個別貸倒引当金繰入限度額について
   A社が当期末に有する当該債権に係る債務者B社について、既に上記1(3)[3]の更生手続開始の申立てがされていることから、当該債権(仮に更生計画認可の決定による切捨て等がなく、売掛金は1,000万円のままとします。)1,000万円×50/100=500万円の繰入れができるものと考えます。
   ただし、上記1(3)[3]の適用に当たっては、括弧書きで「当該金銭債権につき一号(上記1(3)[1])に掲げる事実が生じている場合及び前号に掲げる事実が生じていることにより法第五十二条第一項の規定の適用を受けた場合(上記1(3)[2])を除く。」とされていますので、仮に、当期末でB社において法人税法施行令第96条第1項第一号に掲げる事実が生じている場合(更生計画認可の決定など)には、上記1(3)[3]によることはできませんので、上記1(3)[1]を適用し、更生計画認可の決定等の事由が生じる日の属する事業年度終了の日の翌日から5年を経過する日までに弁済されることとなっている金額以外の金額(担保権の実行その他によりその取立て又は弁済(以下「取立て等」という。)の見込みがあると認められる部分の金額を除く。)が繰入限度額となります。
   また、上記1(3)[2]に該当する場合には、こちらを適用して取立て等の見込みがないと認められる金額を繰入額とすることも選択できますが、この適用を受けた場合には、同様に上記1(3)[3]の適用外となります。

【関連情報】

《法令等》

法人税法52条
法人税法66条
法人税法施行令96条

【収録日】

令和 8年 4月20日


 
注1: 当Q&Aの掲載内容は、一般的な質問に対する回答例であり、TKC全国会及び株式会社TKCは、当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。個別の案件については、最寄りのTKC会員にご相談ください。
注2: 当Q&Aの内容は、作成時の法令等を基に作成しております。このため、当Q&Aの内容が最新の法令等に基づいているかは、利用者ご自身がご確認ください。
注3: 当Q&Aの著作権は株式会社TKCに帰属します。当Q&Aのデータを改編、複製、転載、変更、翻訳、再配布することを禁止します。

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