《税務Q&A》
情報提供 TKC税務研究所
【件名】
フリーレント(無償等賃借期間)における借手の損金算入額の取扱いについて(法人税法及び基本通達の新設)
【質問】
A社(飲食業、11月決算)は本店で営業を行っていましたが、来店者の増加に伴い手狭となった駐車スペースを確保するため、隣接する土地を借り受ける予定です。A社は駐車場予定地の地主と賃貸開始日をX年11月1日とする2年の賃貸借契約(以下「本件契約」という。)を締結しました。 なお、本件契約には中途解約禁止条項と、いわゆるフリーレント(無償等賃借期間)条項が定められており、X年11月からの2ヶ月間は賃借料0円とし、X+1年1月から月額賃借料12万円が発生します。 新リース会計基準を踏まえて、フリーレントの取扱いが法人税法等に新設されたと聞いていますので、その概要とA社のX年11月期の経理処理について教えてください。
【回答】
1 法令等の規定(1)リース取引の該当性 新リース基準が公表され、会計上は現行の「ファイナンス・リース」、「オペレーティング・リース」の区分は廃止され、上場企業など金融商品取引法の適用を受ける企業とその子会社・関連会社では、原則リースに該当する資産の場合には、使用権資産・リース負債を計上することが令和9年4月1日以後開始する事業年度(早期適用の場合には令和7年4月1日以後開始する事業年度)の期首から適用開始となります。 一方、税務上、オペレーティング・リース取引は、従来と同様の賃貸借取引のままとなっています。(2)賃貸借取引の損金算入の明確化 内国法人が資産の賃貸借で(法人税法)第六十四条の二第三項(リース取引に係る所得の金額の計算)に規定するリース取引以外のもの(以下この項において「賃貸借取引」という。)によりその賃貸借取引の目的となる資産の賃借を行つた場合において、その賃貸借取引に係る契約をした事業年度以後の各事業年度においてその契約に基づき当該内国法人が支払うこととされている金額(その資産の賃借のために要する費用の額又はその資産を事業の用に供するために直接要する費用の額を含むものとし、次に掲げる額に該当するものを除く。)があるときは、その支払うこととされている金額のうち当該各事業年度において債務の確定した部分の金額は、当該各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する。 一 第二十二条第三項第一号(各事業年度の所得の金額の計算の通則)に掲げる原価の額 二 固定資産の取得に要した金額とされるべき費用の額及び繰延資産となる費用の額という規定が新たに設けられました(法法53〔1〕)。 これは、令和6年9月13日、新リース会計基準の公表に伴い、令和7年度税制改正でリース取引に関する改正が行われ、賃貸借取引(オペレーティング・リース取引)は、債務の確定した部分の金額を損金の額に算入することが明確化されたものです。(3)リース取引 第六十四条の二第三項に規定するリース取引とは、資産の賃貸借(所有権が移転しない土地の賃貸借その他の政令で定めるものを除く。)で、次に掲げる要件に該当するものをいう。 一 当該賃貸借に係る契約が、賃貸借期間の中途においてその解除をすることができないものであること又はこれに準ずるものであること。 二 当該賃貸借に係る賃借人が当該賃貸借に係る資産からもたらされる経済的な利益を実質的に享受することができ、かつ、当該資産の使用に伴つて生ずる費用を実質的に負担すべきこととされているものであること。 その他の政令で定めるものとは、土地の賃貸借のうち、第百三十八条(借地権の設定等により地価が著しく低下する場合の土地等の帳簿価額の一部の損金算入)の規定の適用のあるもの及び次に掲げる要件(これらに準ずるものを含む。)のいずれにも該当しないものとするとされています(法令131の2)。 一 当該土地の賃貸借に係る契約において定められている当該賃貸借の期間(以下この項及び次項において「賃貸借期間」という。)の終了の時又は当該賃貸借期間の中途において、当該土地が無償又は名目的な対価の額で当該賃貸借に係る賃借人に譲渡されるものであること。 二 当該土地の賃貸借に係る賃借人に対し、賃貸借期間終了の時又は賃貸借期間の中途において当該土地を著しく有利な価額で買い取る権利が与えられているものであること。(4)無償等賃借期間を含む賃貸借取引に係る支払額の損金算入(法基通12の5-3―2、以下「本件通達」という。) 賃借期間のうち賃料の支払がない又は通常に比して少額である期間(以下12の5-3-2において「無償等賃借期間」という。)が定められた契約のうち、次に掲げる場合に該当するなどの課税上弊害があるもの以外のものに基づく法第53条第1項《賃貸借取引に係る費用》に規定する賃貸借取引(以下12の5‐3‐2において「賃貸借取引」という。)に係る当該契約に基づき支払うこととされている金額についての同項の規定の適用に当たっては、当該金額が当該賃借期間にわたり支払われるべきものとした場合に各事業年度中に支払われるべきこととなる金額(当該事業年度終了の日までに損金経理をした金額に限る。)を当該各事業年度の損金の額に算入するものとする。〔1〕当該無償等賃借期間に関する定めがないとした場合に当該賃貸借取引につき支払うこととなる金額と当該契約に基づき支払うこととされている金額との差額が当該契約に基づき支払うこととされている金額のおおむね2割を超える場合〔2〕当該賃借期間の開始の日の属する事業年度終了の日において、当該無償等賃借期間内の日の属する各事業年度のいずれかの事業年度で、当該事業年度における賃借期間のおおむね5割を超える期間が賃料の支払がない又は通常に比して少額であるものとなると見込まれる場合(当該契約に係る無償等賃借期間が4月を超える場合に限る。) なお、この取扱いは令和7年4月1日以後に開始する事業年度分の法人税に適用することとされています。3 ご質問に対する回答 ご質問の駐車場の賃貸借契約は、所有権が移転しない土地の賃貸借であり、上記2(3)のその他の政令で定めるものにも該当しますので、上記2(3)のリース取引以外のもの(賃貸借取引)と認められます。その場合のフリーレントがある借手の取扱いについては、本件通達において次に掲げる場合に該当するなどの課税上弊害があるもの以外のものに基づく法第53条第1項《賃貸借取引に係る費用》に規定する賃貸借取引に係る当該賃借期間にわたり支払われるべきものとした場合に各事業年度中に支払われるべきこととなる金額(当該事業年度終了の日までに損金経理をした金額に限る。)を当該各事業年度の損金の額に算入するものとされています。(1)そのため、先ずは本件通達における課税上弊害がある場合に該当するかについて検討します。 上記2(4)のとおり課税上弊害がある場合とは、〔1〕、〔2〕の2つの例が挙げられています。ご質問の事例について具体的に当てはめますと、次のとおりとなります。〔1〕当該無償等賃借期間に関する定めがないとした場合に当該賃貸借取引につき支払うこととなる金額と当該契約に基づき支払うこととされている金額との差額が当該契約に基づき支払うこととされている金額のおおむね2割を超える場合 当該無償等賃借期間に関する定めがないとした場合に当該賃貸借取引につき支払うこととなる金額(12万円×24ヶ月=288万円)と当該契約に基づき支払うこととされている金額(12万円×22ヶ月=264万円)との差額(288万円―264万円=24万円)が当該契約に基づき支払うこととされている金額(268万円)のおおむね2割(268万円×2割=53.6万円)を超えないため非該当(課税上弊害があるもの以外)となります。〔2〕当該賃借期間の開始の日の属する事業年度終了の日において、当該無償等賃借期間内の日の属する各事業年度のいずれかの事業年度で、当該事業年度における賃借期間のおおむね5割を超える期間が賃料の支払がない又は通常に比して少額であるものとなると見込まれる場合(当該契約に係る無償等賃借期間が4月を超える場合に限る。) ご質問の事例を各事業年度でみた場合、X年11月期では1ヶ月の賃借期間の全てが無償等賃借期間であり、おおむね5割を超える期間が無償等賃借期間となり該当します。一方、X+1年11月期は賃借期間12ヶ月のうち1ヶ月が無償等賃借期間のため、おおむね5割を超えず非該当となります。 ただし、括弧書きにおいて「当該契約に係る無償等賃借期間が4月を超える場合に限る。」とされていますので、当該契約に係る無償等賃借期間が2ヶ月であることから、X年11月期、X+1年11月期のいずれの事業年度も非該当(課税上弊害があるもの以外)となります。(2)上記(1)の検討結果のとおり、また、ご質問の事例におけるその他の事実からも課税上弊害がある場合に当たらないとしますと、本件通達に従い、A社は当該契約に基づき支払うこととされている金額(12万円×22ヶ月=264万円)が賃貸借取引に係る当該賃借期間にわたり支払われるべきものとした場合に各事業年度中に支払われるべきこととなる金額(X年11月期は264万円×1ヶ月/24ヶ月=11万円)を賃借料等(未払費用等)として当該事業年度終了の日までに損金経理をした場合には、X年11月期の損金の額に算入するものとされます。 なお、11万円を損金経理するかどうかはA社の判断となりますので、損金経理しなかった場合には、本件契約におけるX年11月期の賃借期間はフリーレントにつき、実際に支払いがありませんので、本件契約の賃借料は0円となります。
【関連情報】
《法令等》
【収録日】
令和 7年11月18日