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《税務Q&A》

情報提供 TKC税務研究所

【件名】

購入した中古アパートに行った塗装工事

【質問】

 当社は、中古の賃貸アパート(平成10年9月築)を購入し、その購入後直ちにその中古アパートの外壁について塗装工事(約500万円)を行いました。その外壁塗装はアパートの自然的減耗によって起こった損耗の修復のための周期的な、建物の維持管理のためのものと思います。
 中古アパートには購入前からの賃借人がそのまま購入後も入居しています。
 このように今回の外壁塗装工事は、購入した中古アパートの維持管理のために行ったものであり、また、その中古アパートは購入前から引き続き事業の用に供されていますので、その外壁塗装費用は修繕費として処理していいですか。

【回答】

1 減価償却資産を購入によって取得した場合の取得価額は、当該資産の購入の代価に当該資産を事業の用に供するために直接要した費用の額を加算した価額です(法令54〔1〕一)。
  この取扱いは、減価償却資産を取得した法人ごとに適用となり、また、その減価償却資産が中古のものであっても同様です。つまり、中古の資産を購入してこれを事業の用に供するために直接要した費用の額は、その中古資産の取得価額に算入となります。
  ご質問の外壁塗装費用は、中古アパートの購入後直ちにその外壁について塗装工事を行った費用でありますから、それは購入した中古アパートを事業の用に供するために直接要した費用と捉えられますので、中古アパートの取得価額に算入するのが相当となります。
2 ただ、建物に着目した場合、中古アパートは貴社が購入する以前から事業の用に供されていましたから、これにつき支出する修理費、改良費等の支出については資本的支出又は修繕費の判定区分によることになるのではないかとの疑問が生じます。
  確かに、資本的支出を規定する法人税法施行令132条は、法人が有する固定資産について支出する修理、改良等について定めていますのでご質問のようなケースを除外していないとも考えられます。
  ところで、法人税法施行令132条は次のものを資本的支出と定めています。
 〔1〕当該支出する金額のうち、その支出により、当該資産の取得の時において当該資産につき通常の管理又は修理をするものとした場合に予測される当該資産の使用可能期間を延長させる部分に対応する金額 
 〔2〕当該支出する金額のうち、その支出により、当該資産の取得の時において当該資産につき通常の管理又は修理をするものとした場合に予測されるその支出の時における当該資産の価額を増加させる部分に対応する金額 
  なお、修繕費を定義した法令はありませんので、資本的支出に係る上記の規定から反対に定義すると、「修繕費とは、固定資産についてその通常の効用を維持させるために支出する費用で、資産の価額を増加させるものでもなければ、また、その耐用年数を延長させるものでもないもの」ということができます。
  このように資本的支出又は修繕費の判定は事実認定によることから難しいところ、資本的支出と修繕費の区分に関して、旧法人税基本通達235は、「自己の使用に供する等のため他から購入した固定資産について支出した金額は修繕費としない。」と定め、当該支出金額は資本的支出に該当するとしていました(この旧法人税基本通達235は、昭和44年に「法令に規定されており、または法令の解釈上疑義がなく、もしくは条理上明らかであるため、特に通達として定める必要がないと認めたことによるもの」として廃止されましたが、現在でもその考え方は基本的に同じと考えられます。)。

(参考)
 (旧法人税基本通達235)
  次に掲げるようなことのために支出した金額は、令第132条の規定を適用して資本的支出と修繕費の区分計算をしないで、その全額を修繕費と認めるものとする。
  ただし、自己の使用に供する等のため他から購入した固定資産について支出した金額又は現に使用していなかった資産について新たに使用するために支出した金額は、修繕費としない。
 (1)家屋又は壁の塗替
 (2)家屋の床のき損部分の取替
 (3)家屋の畳の表替
 (4)き損した瓦の取替
 (5)き損したガラスの取替又は障子、襖の張替
 (6)ベルトの取替
 (7)自動車のタイヤの取替
  この旧通達は例えば、中古の建物を購入してこれについて修繕を行って使用する場合の修繕費は、その建物にとっては修繕費であっても、購入した法人の立場から考えれば、その建物に修繕を行って初めて事業の用に供しうる建物としての機能を発揮しうるものですから、この旧通達は例えば、中古の建物を購入してこれについて修繕を行って使用する場合の修繕費は、その建物にとっては修繕費であっても、購入した法人の立場から考えれば、その建物に修繕を行って初めて事業の用に供しうる建物としての機能を発揮しうるものですから、修繕費とすることはできず、建物の取得価額に算入すべきと整理したものと解されます。
  この取扱いによると、ご質問の外壁塗装費用は購入した中古アパートの取得価額に算入すべきことになります。

【関連情報】

《法令等》

法人税法施行令54条1項1号
法人税法施行令132条
法人税基本通達〔旧〕235

【収録日】

令和 3年 4月23日


 
注1: 当Q&Aの掲載内容は、一般的な質問に対する回答例であり、TKC全国会及び株式会社TKCは、当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。個別の案件については、最寄りのTKC会員にご相談ください。
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