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《税務Q&A》

情報提供 TKC税務研究所

【件名】

受取配当等の益金不算入の株式区分と完全支配関係グループでの判定について

【質問】

 個人Aは、B社の株式を100パーセントとC社の株式を25パーセント保有し、B社はC社の株式を15パーセント保有していますが、令和4年4月1日以後開始事業年度から受取配当等の益金不算入の適用時に判断する株式の区分(関連会社株式等、非支配目的株式等)が、完全支配関係グループで判断することになったと聞いています。
 そこで質問ですが、改正法が適用になる場合、このように個人Aが一番上に位置する法人グループでも、B社がC社から受け取る配当金(以下「本件配当金」といいます。)については、B社の所有するC社株式の株式区分を完全支配関係グループで判断し、「関連法人株式等」に該当すると考えてよいでしょうか。

【回答】

1 受取配当等の益金不算入制度の改正の趣旨について
(1)受取配当等の益金不算入額は、次のイ~ニの4つの区分に応じて算定されることとされています(法法23、法令21~22の3の2)。
 イ 完全子法人株式等(その配当等の額の計算期間を通じて完全支配関係があった法人の株式等)…配当等の全額(法法23〔1〕本文)
 ロ 「関連法人株式等」(その支払基準日以前6月間継続して発行済株式等の3分の1超の株式等を保有する法人の株式等)…配当等の額-負債利子の額(法法23〔4〕)
 ハ 非支配目的株式等(その配当等の額の支払基準日に発行済株式等の5パーセント以下の株式等を保有する法人の株式等)…配当等の額×20パーセント(法法23〔1〕かっこ書き)
 ニ その他の株式等(上記イ、ロ及びハのいずれにも該当しない株式)…配当等の額×50パーセント(法法23〔1〕かっこ書き)
(2)「関連法人株式等」又は「非支配目的株式等」に該当するかどうかの判定については、対象となる「内国法人」に「当該内国法人との間に完全支配関係がある他の法人を含む」(法法23〔4〕〔6〕)取扱いとされています。
  なお、この取扱いは、令和4年4月1日以後に開始する事業年度分の法人税について適用され、同日前に開始した事業年度分の法人税については、従来どおり適用されます(令和2年改正法附則1五ロ、14)。
(3)これは、令和2年度税制改正の連結納税制度の見直しに伴う措置で、それまで受取配当等の益金不算入額の計算は連結納税グループ全体で行い、その益金不算入額については各連結法人の個別帰属額として、各連結法人の受取配当等の金額に応じて案分することになっていました(旧法法81の4、旧法令155の11)。それゆえ、「関連法人株式等」又は「非支配目的株式等」に該当するかどうかの判定も、「連結法人(当該連結法人との間に連結完全支配関係がある他の連結法人を含む。)」(旧法令155の10)として、対象となる連結法人の所有株式に連結支配関係がある他の連結法人の所有株式も含む取扱いとされていました。
  すなわちこれは、連結納税制度からグループ通算制度への移行に伴って「連結支配関係」での判定から、「完全支配関係」での判定に変更したものと解されます。この場合、連結納税制度における「連結完全支配関係」には、当然「個人」の入る余地はありませんから、この改正においても、完全支配関係がある「他の法人」の有する株式等を含めて判定することとされ、完全支配関係がある「他の個人」の有する株式等はその対象としないこととされていると理解できます。
2 ご質問について
 ご質問のC社の株主構成は、B社が15パーセントのほか、個人Aが25パーセントを保有するとのことですが、B社株式はすべて個人Aが保有するとのことですから、B社は「個人A」による完全支配関係がある法人ということになります。
 しかし、上記1(2)のとおり、「関連法人株式等」に該当するかどうかの判定について、対象となる「内国法人」に含めるのは、当該内国法人との間に完全支配関係がある「他の法人」であるところ、B社と完全支配関係があるのは「個人A」であって「法人」ではありません。
 したがって、「B社がC社の株式を15パーセント保有していること」のみを踏まえて判定することになり、それは「非支配目的株式等」(その配当等の額の支払基準日に発行済株式等の5パーセント以下の株式等を保有する法人の株式等)にも該当しませんから、B社の所有するC社株式は結局「その他の株式等」に該当することになります。
 よって、「本件配当金」については、「配当等の額×50パーセント」の金額を益金不算入とすることになると考えられます。

【関連情報】

《法令等》

法人税法23条

【収録日】

令和 4年 8月15日


 
注1: 当Q&Aの掲載内容は、一般的な質問に対する回答例であり、TKC全国会及び株式会社TKCは、当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。個別の案件については、最寄りのTKC会員にご相談ください。
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