《税務Q&A》
情報提供 TKC税務研究所
【件名】
定期給与の額を期首に遡及して減額した場合の取扱い
【質問】
S社(3月決算法人)は、上場会社P社の100パーセント子会社ですが、S社の前期(平成30年3月期)の業績が近来になく不調に終わったことから、平成30年5月末開催予定の定時株主総会に先立って、親会社P社から、S社の代表取締役であるA社長の当期(平成31年3月期)の役員報酬の額を期首に遡り10パーセント減額するよう、指示がありました。 このため、S社は、平成30年5月末開催の定時株主総会において、A社長の定期給与の額(改定前月額100万円)を期首に遡って10万円減額すべく、既に支給済みの4月及び5月支給分の減額分20万円を一括で調整するため、6月支給分を月額70万円とし、7月から期末月(31年3月)までの支給分を月額90万円とする2段階の給与改定を行うことを考えています。 この場合のA社長の改定後の月額給与については、通常改定によるものとして定期同額給与に該当するでしょうか。 もし、該当しないとすれば、役員給与の遡及減額の調整方法としてどのような給与改定を行えば、改定後の給与が定期同額給与として取り扱われることになるのでしょうか。
【回答】
1 役員給与の改定が、事業年度開始日の属する会計期間開始の日から3月を経過する日までに行われるいわゆる「通常改定」(法令69〔1〕一イ)に該当する場合には、改定前と改定後のそれぞれの定期給与が定期同額給与に該当することになります(法法34〔1〕一、法令69〔1〕一)。 しかしながら、会計期間開始の日から3月を経過する日までに行われる役員給与の改定であれば、事実上複数回にわたる給与改定であっても通常改定に該当するということはできず、その場合は、最初の改定のみが通常改定として取り扱われるべきところと考えられます。 すなわち、S社の定時株主総会において予定される給与改定が、4月及び5月支給分の月額100万円を遡及的に減額するための調整を目的として、一旦、6月支給分給与を月額70万円に減額するとともに、7月支給分以降から月額90万円に増額する改定を行ったものである場合には、最初の月額70万円への減額改定のみが通常改定に該当するものとして取り扱われ、7月分からの増額(月額70万円から月額90万円)は、通常改定によるものとは認められないものと考えられます。 その場合には、改定後の給与の額で定期同額給与とされる金額は、6月支給分の月額70万円ということになり、通常改定による改定に該当しない7月支給分以降の改定後の月額90万円のうち20万円については、定期同額給与である月額70万円に上乗せされた支給額とみなされる結果、当期末月までの上乗せ額合計180万円(20万円×9ヶ月)は、損金不算入として取り扱われることが想定されます(国税庁「役員給与に関するQ&A(平成20年12月)」Q3参照)。【別添図表1参照】2 このように通常改定と認められるためには、会計期間開始の日から3月を経過する日までに行われる唯一度の役員給与の改定であることが要件となるものと考えられますから、4月及び5月支給分の月額100万円を事実上遡及して減額するとともに、改定の前後の給与の額が定期同額給与に該当するためには、6月支給分のみによる一括調整によるのではなく、改定後の各月の定期給与の額を同額とする減額調整及び改定方法であることを要するものと考えられます。 例えば、A社長の役員給与の改定前の年額1,200万円(100万円×12か月)を10パーセント減額した金額は1,080万円であり、既に支給済の4月及び5月支給分合計額200万円を差し引くと880万円となることから、これを改定後の期間(6月から期末月までの10か月)で按分した88万円を改定後の月額給与とする場合には、当期中の支給総額は1,080万円となります。 したがいまして、定時株主総会において、A社長の定期給与を、改定前の月額100万円から6月支給分以降の月額88万円に減額する改定を行う場合には、改定前の月額100万円及び改定後の月額88万円のいずれも、定期同額給与に該当することになります。【別添図表2参照】3 また、その他の方法として、A社長に対する4月及び5月支給分の月額給与100万円のうち、10万円を返還させる方法も考えられます。すなわち、例えば、定時株主総会において、A社長の定期給与を、4月及び5月支給分の月額100万円から6月支給分以降の月額90万円に減額する改定を行い、これとは別に、4月及び5月支給分の支給額合計200万円のうち20万円をA社長から返還させる場合には、仮にその返還額を6月支給分と相殺する場合であっても、6月支給分の現金支給額が70万円となるものの、支給額自体は7月以降の支給月額と同じ90万円となるため、改定前の月額100万円及び改定後の月額90万円のいずれも、定期同額給与に該当することになります。【別添図表3参照】 ただし、その場合には、A社長から返還された20万円については、S社が贈与を受けたものとされ、S社における6月支給分に係る仕訳(源泉所得税については省略します。)としては、次のとおりとなるものと考えられます。 役員給与 90万 / 現金 70万 受贈益 20万 なお、この場合の返還額20万円については、適正な定期同額給与として受領したものの一部をS社に贈与したにすぎず、支給の事実がなくなるものではないことから、返還額に対応する所得税額を減額することはできません。
【関連情報】
《法令等》
【収録日】
平成30年 6月27日