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《税務Q&A》

情報提供 TKC税務研究所

【件名】

同族会社に貸し付けている宅地の評価

【質問】

 甲は、乙(父)が社長をしているA社と「建物の所有を目的とする土地の賃借権」を設定する賃貸借契約を締結し、所有する宅地を賃貸している。
 そして、甲はA社の役員でもある。
A社の株式の3分の2は、甲及び乙の親族で有している。
 その賃貸借契約に基づいて支払われる地代は、その地域の通常の地代と同水準である。
 その宅地の所在地は、いわゆる借地権の設定する場合に権利金その他の一時金を収受する取引上の慣行がある地域にある。
 この場合の宅地の評価上、借地権がある貸宅地とされるか。
 その評価方法は、どのようにすればよいのか。

【回答】

 地主である甲は、同族会社であるA社と「建物の所有を目的とする賃借権」を設定する賃貸借契約を締結し、地代を受け取る権利とA社に対するその宅地を使用収益させる義務を有しています。
 他方、A社は、地代を支払う義務とその宅地に係るいわゆる借地権(借地借家法で保護された使用収益する権利)を有していると考えられます。
 このような宅地は、貸宅地に当たり、その評価方法は、自用地として評価したその宅地の価額から借地権の価額を控除した金額によって評価します。

【関連情報】

《法令等》

相続税法22条
相続税法23条
財産評価基本通達25
財産評価基本通達27

【解説】

1 いわゆる借地権の判定について
  同族会社へ賃貸する宅地が貸宅地として評価することができるかどうかは、その土地取引実態に基づいて、通常、次の事項を確認し、同族会社(借主)がその宅地に係るいわゆる借地権を有しているか否かにより判定することになります。
(1)借地権の設定する場合に権利金その他の一時金を収受する取引上の慣行がある地域にあたる地域での土地(又は借地権)賃貸借契約に当たりますか。
(2)借地借家法に規定する「建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権」が設定されている土地(又は借地権)賃貸借契約となっていますか。
なお、どのような経緯の下、どのような目的で合意(契約)していますか。
(3)地代の金額、支払方法(地代の算定根基)は、その地域の通常の地代と比較して乖離がありますか。
(4)権利金相当額、支払方法(権利金の算定根基、借地権の売買の有無)は、その地域の金額と比較して乖離がありますか。
(注)
イ 例えば、立体駐車場施設等で「構築物」と判断されるものには、借地借家法の建物に該当しませんので、借地権は生じないものと考えられています。
  また、土地に定着性のない構築物(例えば、簡易テント張り倉庫や簡易プレハブ倉庫・駐車場施設)は建物となりませんので、借地借家法の建物に該当しませんので、借地権は生じないものと考えられています。
ロ 同族会社との土地の貸借については、権利金その他の一時金の支払いに代えて、「土地の無償返還に関する届出」又は「相当の地代の支払い」の方法を選択適用し、賃貸借であったとしても税務上、借主側にいわゆる借地権を有しないものとする取り扱いを受けている場合が少なくありませんので、選択の有無をご確認ください。
2 同族会社(借主)がその宅地にいわゆる借地権を有している場合
  同族会社(借主)がその宅地にいわゆる借地権を有している場合(原則として通常の権利金相当額又は通常の地代の支払いがある場合)には、通常、その宅地を貸宅地として評価することになります。
  そして、貸宅地の評価額は、路線価方式または倍率方式により評価した自用地としての価額から相続税法第23条に定める地上権の価額または相続税財産評価に関する基本通達27(借地権の評価)に定める借地権の価額を控除した金額により評価することになっています(評基通25)。
  この場合、その同族会社の株式等を純資産価額方式で評価する場合には、上記の借地権の価額を資産として計上する必要があります。
【参考判例・裁決】
1 ゴルフ練習場の借地権について(最高裁判所昭和42年12月5日判決)
  「借地法一条にいう「建物ノ所有ヲ目的トスル」とは、借地人の借地使用の主たる目的がその地上に建物を築造し、これを所有することにある場合を指し、借地人がその地上に建物を築造し、所有しようとする場合であっても、それが借地使用の主たる目的ではなく、その従たる目的にすぎないときは、右に該当しないと解するのが相当である。
  ところで、本件土地の貸借については、それが賃貸借であるといえるか否かの点にも問題がないわけではないが、その点はさておき、仮にそれが賃貸借であるとしても、その目的は当事者間に争いがないように右土地をゴルフ練習場として使用することにあったというのであるから、これを社会の通念に照らして考えれば、その主たる目的は、反対の特約がある等特段の事情のないかぎり、右土地自体をゴルフ練習場として直接利用することにあったと解すべきであって、たとえその借地人たる被上告人が当初から右土地上に業としてゴルフ練習場を経営するのに必要な原判決判示のような事務所用等の建物を築造・所有することを計画していたとしても、それは右土地自体をゴルフ練習場に利用するための従たる目的にすぎなかったものといわなければならない」と判示しています。
2 地方公共団体に対し権利金等の一時金の授受がなく、かつ更地時価による買取請求ができることを約する貸地の評価(平成16年3月5日裁決)
  「本件土地(宅地)の賃貸借契約締結に際し、賃借人であるP市から賃貸人である被相続人に対し権利金等の一時金の授受がないこと、賃貸借契約の期間中であっても被相続人はP市に対して更地時価による本件土地の買取請求ができ、P市はその請求に対し異議なく応じる旨の特約があることは、P市は借地権者としての経済的利益について享受しないものとしたと認められるところであり、一方、本件土地の価額は、何ら減損することなく自用地と同額の価額として保証されているものと認められる。
  そうすると、P市及び被相続人は賃貸借契約において、本件土地における借地権の経済的価値を認識しない旨を定めたものというべきであるから、本件土地の評価に当たっては借地権相当額を何ら減額すべき事由はないのであって、自用地としての価額と同額で評価するのが相当である」とする判断が示されています。

【収録日】

令和 3年 9月17日


 
注1: 当Q&Aの掲載内容は、一般的な質問に対する回答例であり、TKC全国会及び株式会社TKCは、当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。個別の案件については、最寄りのTKC会員にご相談ください。
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