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《税務Q&A》

情報提供 TKC税務研究所

【件名】

相続人が被相続人の居住用財産を譲渡した場合の居住用財産の3000万円の特別控除適用の可否

【質問】

 甲は、所有する居住用財産(土地家屋)に娘(乙)夫婦と同居していたが、その家屋(旧家屋)が老朽化したため住み替えることとし、新たに居住用財産(土地家屋)を取得し、娘夫婦ともども転居した。
 甲は、旧家屋を取り壊し、その敷地(取壊し跡地)を売却することとし、仲介業者を通じて売却の交渉を進めていたが、売買契約締結前に急死した。
 そこで、その取壊し跡地を相続した乙が父の遺志を継いで売却交渉をまとめ、その土地の売買契約を締結し、旧家屋を居住の用に供しなくなってから1年以内に譲渡した。
 譲渡者は、甲の死亡によって相続人乙に代わっているが、乙も旧家屋に居住していたことは事実であり、また、相続により取得した資産については、譲渡所得の計算上、その者が引き続きその資産を所有していたものとみなされる(所得税法60条1項)ことからしても、租税特別措置法通達35-2《居住用土地等のみの譲渡》に該当し、その譲渡所得について居住用財産の3000万円の特別控除の適用対象となると考えるが、それでよいか。

【回答】

 本件の場合、旧居住用家屋の敷地(取壊し跡地)の譲渡直前の所有者は、被相続人(甲)の相続人(乙)です。乙は、旧家屋を甲が居住の用に供しなくなるときまで、旧家屋を甲とともに居住の用に供していたことは否定しませんが、乙自身は旧家屋の所有者としての立場ではなく、甲の同居人として居住していたにすぎないので、たとえ租税特別措置法通達35-2の(1)、(2)に形式上該当するとしても、居住用財産の3000万円の特別控除の適用を受けることはできないと考えられます。

【関連情報】

《法令等》

租税特別措置法35条
租税特別措置法通達35-2

【解説】

(1)租税特別措置法35条2項の「その居住の用に供している家屋」とは、その個人(譲渡所得の特例の適用を受けようとする者)が、譲渡所得の帰属者の立場において、すなわちその所有者として居住の用に供していた家屋をいい、「当該家屋で当該個人の居住の用に供されなくなったもの」についても同様であると解されています。(前掲裁判例参照)。
 この裁判例は、被相続人所有の居住用財産に被相続人と同居していた相続人が、自分の都合で被相続人の死亡前にその居住用財産から転出していたところ、被相続人が死亡したため、転出状態のままこれを相続し、他に譲渡した場合の3000万円特別控除の適用を争ったものであって、質問の事例とは事実関係を若干異にしていますが、譲渡者がその所有者として譲渡資産を居住の用に供したことがなかったという点では、異なりません。
(2)相続によって取得した資産については、譲渡所得等の計算上、その者が引き続きその資産を所有していたものとみなし(所法60)、すなわち被相続人の取得時期、取得価額を引き継ぐことになっていますが、これは相続開始時までのキャピタルゲインについては課税繰延べをすることになっているため、相続人の段階で必要経費に算入すべき減価償却費や譲渡所得計算上控除すべき取得費の算定根拠を示したものであって、被相続人の利用状況を相続人の利用状況とみなす趣旨の規定ではありません。

【収録日】

令和 6年 3月27日


 
注1: 当Q&Aの掲載内容は、一般的な質問に対する回答例であり、TKC全国会及び株式会社TKCは、当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。個別の案件については、最寄りのTKC会員にご相談ください。
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