TKC会員事務所一覧 TKC会員のご紹介
前文献
20文献中の12文献目

《税務Q&A》

情報提供 TKC税務研究所

【件名】

医療法人に対する土地建物の低廉譲渡と課税上の取扱い

【質問】

 医療法人Aは、理事である甲がその出資の全額を負担して設立したいわゆる1人医療法人(出資持分の定めのある医療法人)であり、甲以外にはその出資持分を有する者はいない。
 甲は、現在、個人で診療所を開業した際購入した土地建物を医療法人Aに無償で使用させているが、今回事情があって、その土地建物を医療法人Aに2億円で譲渡しようと考えている。
 この土地建物の時価は、精通者によれば3億円程度(相続税評価額は2.5億円)とされ、その取得費相当額も3億円(建物の減価償却後)となるが、甲としては購入時の借入金の残額2億円の返済資金の調達が目的なので、2億円で譲渡できればよいと考えたという。
 仮に、この土地建物を2億円で譲渡した場合、譲渡所得の取扱いはどうなるか。
 また、取得費相当額や相続税評価額を下回る譲渡対価となることから、低廉譲渡に該当するとして、同族会社の行為・計算の否認規定(相法64(1))により贈与税の認定課税を受けるとか、相続税法66条4項に基づき医療法人Aが個人とみなされ、贈与税の認定課税を受けることにはならないか。

【回答】

1.甲に対する譲渡所得課税について
 法人に対する低廉譲渡に該当するかとは考えられるが、譲渡対価が時価の2分の1以上であることから、いわゆるみなし譲渡所得課税(所法59(1))の適用対象には当たらず、実際の譲渡対価を基に譲渡損益の計算をすることになります。
 その結果、本件譲渡による譲渡損失が発生することになり、この譲渡損失は、一般的には、土地等に係る分離(長期・短期)譲渡所得内損益通算のみできることになります。
2.低廉譲渡に伴う贈与税の認定課税について
 低廉譲渡により、医療法人Aの純資産価額が実質的に増加することから、その出資持分の価額も増価することになるが、土地建物の譲渡者である甲以外に出資持分を有する者がいないので、相続税法9条に基づく贈与税課税の問題は生じません。
(注)普通法人である医療法人Aについては、低廉譲渡を受けたことによる経済的利益が益金に算入されることになります。
3.同族会社の行為・計算の否認規定(相法64(1))との関係
 医療法人は、「会社」ではなく、したがって法人税法2条10号にいう「同族会社」に該当しないことから、本件土地建物の譲渡取引については、相続税法所定の同族会社の行為・計算の否認規定を適用する余地がありません。
4.相続税法66条4項は、個人が「持分の定めのない法人」に対して財産の贈与又は遺贈をした場合で一定の事由に該当するときに、その法人を個人とみなして贈与税又は相続税を課税しようとする規定ですが、ご質問の医療法人Aは、甲がその出資持分の全部を有している持分の定めのある法人とのことですから、医療法人Aに対して相続税法66条4項の規定が適用されることはありません。
 (注)出資持分の定めのある医療法人にあっては、その出資持分について贈与、遺贈又は相続があった際、その受贈者、相続人等に対してその取得した出資持分に対して贈与税又は相続税が課税されることになるので、相続税等が不当に減少するとは解されません。

【収録日】

令和 8年 1月13日


 
注1: 当Q&Aの掲載内容は、一般的な質問に対する回答例であり、TKC全国会及び株式会社TKCは、当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。個別の案件については、最寄りのTKC会員にご相談ください。
注2: 当Q&Aの内容は、作成時の法令等を基に作成しております。このため、当Q&Aの内容が最新の法令等に基づいているかは、利用者ご自身がご確認ください。
注3: 当Q&Aの著作権は株式会社TKCに帰属します。当Q&Aのデータを改編、複製、転載、変更、翻訳、再配布することを禁止します。

 TKC会員事務所一覧 TKC会員のご紹介
前文献 次文献