《税務Q&A》
情報提供 TKC税務研究所
【件名】
講師に支払う交通費の源泉徴収
【質問】
1 A法人は語学教室を営む法人であり、講師については雇用契約ではないので報酬の支払いの際源泉徴収を10%としています。通常の通勤費は報酬に含まれるものとして支払っていないのですが、A法人の都合で授業がない日に出社してもらう場合や、取引先の会社へ行って授業をしてもらう場合のA法人から会社への交通費は実額を別途支給することとしています。この場合の交通費についても源泉徴収する必要はあるでしょうか。2 通常であれば直接交通機関等へ支払うもの以外の、本人に支払う交通費等であれば源泉の必要があるかとは思いますが、この場合の交通費は少額の電車賃であり、新幹線の切符等とは異なり直接交通機関へ支払うことは不可能です。 以上のように、直接交通機関に支払うことは不可能なので、実額を報酬とは別に本人に支払っているのであるから、直接支払っているものとして源泉徴収の必要はないと考えます。
【回答】
1 源泉徴収の対象となる報酬等と旅費、日当とを区別して支払う場合における「旅費、日当」についての源泉徴収に関しては、その旅費、日当を報酬等と共に支払う場合には、その旅費、日当に相当する金額を含む支払金額全額について源泉徴収すべきものと解されています(所基通204-2の逐条解説)。 しかしながら、旅費、日当のみを支払う場合、特に旅費のみを支払う場合に当該旅費の金額について源泉徴収をしなければならないかどうかについては明文の定めはありません。2 国税局担当官の手になる「質疑応答事例集」などにおいては、「旅費を支払う場合には、当該旅費について源泉徴収をしなければならない」としており(例えば、大阪国税局法人税課長補佐編「源泉所得税の実務」381頁)、また、TKC税務Q&Aにも同趣旨の回答例(文献番号46100035)があります。さらに、高知県出納室長が高知県各所属長に宛てた「通知」のように、費用弁償としての旅費の支給に際して源泉徴収をすべきことを明示的に指示している例もあります(平成13年1月18日高知県出納室長「講師等に支払う費用弁償としての旅費からの源泉徴収の取扱いについて」)。3 これらの見解については、説得的な批判的意見(武田昌輔「報酬・料金等をめぐる源泉徴収制度の実務上の問題点」日税研論集VOL15・195頁以下)もあるものの、旅費のみを支払う場合においても、所得税基本通達の考え方に従って源泉徴収をせざるを得ないものと考えられ、税務署の指示には従わざるを得ないことになると考えられます。
【関連情報】
《法令等》
【収録日】
平成17年 9月16日