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《税務Q&A》

情報提供 TKC税務研究所

【件名】

iDeCo+(プラス)の企業負担分掛金について

【質問】

 同族会社であるA社における従事者は、代表取締役社長である夫と取締役である妻のみで、従業員は1人も雇用していません。
 この度、金融機関からiDeCo+(プラス)について、社長のみが加入することを提案されました。金融機関は、その場合でも福利厚生費として損金算入できるとの回答でしたが、その根拠は示してもらえませんでした。
 そこで質問ですが、iDeCo+の企業負担分掛金(以下「本件掛金」といいます。)について、社長のみの加入でも福利厚生費として損金の額に算入できるのでしょうか。

【回答】

1 iDeCo+について
(1)そもそも個人型確定拠出年金(iDeCo)は、確定拠出年金法に基づいて実施されている私的年金の制度で、加入は任意ですから、個人が自分で申し込んで掛金を拠出し、自分で運用方法を選んで掛金を運用して、掛金とその運用益との合計額を給付として受け取るというものです。
 公開情報によれば、iDeCo+(イデコプラス・中小事業主掛金納付制度)とは、企業年金(企業型確定拠出年金、確定給付企業年金、厚生年金基金)を実施していない中小企業(従業員300人以下に限る。)の事業主が、従業員の老後の所得確保に向けた支援を行うことができるよう、個人型確定拠出年金(iDeCo)に加入している従業員が拠出する加入者掛金に追加して掛金を拠出できる制度のようです。
(2)このように、iDeCo+は、従業員が個人で加入している個人型確定拠出年金(iDeCo)の掛金に対して、事業主が掛金を上乗せする制度であるため、事業主が運営管理機関(金融機関)と個別に契約を結ぶものではないようですが、その事業主拠出掛金は、個人拠出掛金と合わさって運用され、掛金とその運用益との合計額を個人が給付として受け取ることになると考えられます。
2 ご質問について
(1)「本件掛金」が一般的に福利厚生費として損金算入が認められることになるのが普遍的要件を満たす場合であると考えますと、「本件掛金」にあっては、従業員が1人も雇用されていないにせよ2名いる役員(代表取締役社長である夫と取締役である妻)のうち「社長のみの加入」とするようですから、それだけでも普遍的要件を満たさないように思われます。
 また、所得税の取扱いですが、「役員又は使用人の全部又は大部分が同族関係者である法人」については、たとえその役員又は使用人の全部を対象として保険に加入する場合であっても、その同族関係者である役員又は使用人については、ただし書(つまり、全面的には経済的利益をないものとしない取扱い)を適用する(「使用者契約の養老保険に係る経済的利益」所基通36-31・注2(2))との考え方があります。
 そうすると、同族会社で社長のみが加入するiDeCo+の「本件掛金」については、福利厚生費には該当せず、給与課税の対象になるものとも考えられます。
(2)しかしながら、内国法人が、各事業年度において、「確定拠出年金法第56条第3項(承認の基準等)に規定する個人型年金規約に基づいて同法第68条の2第1項(中小事業主掛金)の個人型年金加入者のために支出した同項の掛金」を支出した場合には、その支出した金額は、当該事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する(法令135四)との規定が置かれています。
 その点「本件掛金」も、確定拠出年金法に基づいて実施されているiDeCo+の企業負担分掛金ですから、普遍的要件を満たすかどうかに関わりなくその掛金は損金算入できるものと考えられます。
 したがって、「本件掛金」については、社長のみの加入でも福利厚生費として損金の額に算入できるものと考えます。

【関連情報】

《法令等》

法人税法施行令135条

【収録日】

令和 5年 2月16日


 
注1: 当Q&Aの掲載内容は、一般的な質問に対する回答例であり、TKC全国会及び株式会社TKCは、当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。個別の案件については、最寄りのTKC会員にご相談ください。
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