《税務Q&A》
情報提供 TKC税務研究所
【件名】
家財道具の廃棄処分に要した費用は、譲渡費用に該当するか
【質問】
譲渡者甲は、亡父から相続した自宅に母乙と居住していたが、母が老人介護施設に入所することから、自宅を譲渡し、母が入所する老人介護施設の近隣への転居を計画している。 そして、自宅を譲渡する際には、母が使用していた家財道具を廃棄処分する予定である。 この場合、家財道具を廃棄処分に要した費用は、当該自宅の譲渡所得の計算上、譲渡費用に該当するか。
【回答】
当該家財道具の廃棄処分に要した費用は、本件譲渡に係る譲渡費用に該当しません。
【関連情報】
《法令等》
【解説】
1 譲渡所得に係る譲渡費用(資産の譲渡に要した費用)とは、資産の譲渡に係る次に掲げる費用(取得費とされるものを除く。)をいうものとされているところです(所基通33-7)。 (1)資産の譲渡に際して支出した仲介手数料、運搬費、登記若しくは登録に要する費用その他当該譲渡のために直接要した費用 (2)(1)に掲げる費用のほか、借家人等を立ち退かせるための立退料、土地(借地権を含む。以下33-8までにおいて同じ。)を譲渡するためその土地の上にある建物等の取壊しに要した費用、既に売買契約を締結している資産を更に有利な条件で他に譲渡するため当該契約を解除したことに伴い支出する違約金その他当該資産の譲渡価額を増加させるため当該譲渡に際して支出した費用 (注)譲渡資産の修繕費、固定資産税その他その資産の維持又は管理に要した費用は、譲渡費用に含まれないことに留意する。 なお、この通達に定める譲渡費用の範囲については、司法判断においても相当とされているところです(大阪高裁平成10年5月26日判決、文献番号28051098)。2 家財道具の廃棄費用について 家財道具の廃棄費用については、借家権の消滅の対価の額に相当する立退料と異なり、土地・建物を譲渡するために直接要した費用ではなく、また、家財道具が種類、用途、品質、数量等は個人の趣味嗜好によってかなりの差異があるものと考えられるところから、家財道具の取得、維持又は処分に要する費用は、その個人の単なる日常的な生活費ないし家事費の範囲として解されます。 この場合、家財道具の廃棄費用は、各種所得の金額の計算上必要経費に該当しないものとなります。 なお、家財道具などの生活用動産の処分(又は譲渡)による所得は、原則として非課税所得(所法9(1)九)とされています。3 これは、譲渡所得課税の本質がキャピタルゲイン課税であるという特質からくるものであって、業務に係る所得の必要経費に算入される家財道具の維持管理に要する費用を除いて、居住の用に供されている非業務用の家財道具に係る維持管理に要する費用は、税務上使用収益による経済的利益を所得として課税することがありませんので、その要した費用を控除する余地がないことになります。
【収録日】
平成25年 9月18日