TKC会員事務所一覧 TKC会員のご紹介
戻る 前文献
20文献中の11文献目

《税務Q&A》

情報提供 TKC税務研究所

【件名】

建物の賃借人がその建物の改造費等を負担した場合の取扱い

【質問】

 A社は不動産の賃貸管理を営む法人ですが、個人B氏が所有しているCビル(鉄骨鉄筋コンクリート4階建)を賃借し、いわゆるサブリース方式によりテナントに転貸しています。
 この度、Cビルの4階部分のテナントの入れ替えに伴い、内部造作の改造工事及び自動ドア設置工事(以下、「本件工事」といいます。)を施工する必要が生じましたが、本件工事は、単なる維持管理のための修繕にとどまらず、建物価値を客観的に高めるための費用(有益費)と認められたことから、A社とB氏との協議の結果、Cビルの賃貸借契約を更新し、今後のCビルの修繕のうち有益費に係る部分については賃借人A社が負担すべき旨、及び、A社は賃貸借契約終了時(賃借期間は5年ですが、契約を更新できない旨の定めはありません。)において有益費償還請求権をあらかじめ放棄する旨の特約を付加した上で、本件工事に係る工事費用1千万円(以下、「本件改造費」といいます。)については、A社が負担することとなりました。
 そこで質問ですが、B氏所有のCビルに係る本件改造費を賃借人A社が負担することについて、寄付金と認定されることはないでしょうか。
 また、本件改造費については寄附金とされない場合、支出時の損金の額に算入して差し支えないでしょうか。

【回答】

1 建物の賃貸借契約における賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う(民法606〔1〕)とされており、修繕費等の必要費を賃借人が負担したときには、直ちに賃貸人に請求できることとされています(民法608〔1〕)。
  ただ、上記の賃貸人の修繕義務の規定は任意規定と解されており、特約によって一定の範囲で修繕を賃借人の義務とすることを合意しても差し支えないと解されていますが、修繕義務は賃貸人の「使用・収益させる義務」の主たる内容をなすものであることから、無制限に賃借人に修繕義務を課することはできず、例えば、賃借人の責めに起因しない定期的修繕や大規模修繕等の費用を含めて賃借人の負担とする特約を定めた場合には、当該特約は無効とされた判例等もあるようです。
  これに対して、賃借人が建物価値を客観的に高めるための費用(有益費)を支出した場合には、賃借人は賃貸人に対し賃貸借契約終了時にその費用を請求できることとされています(民法608〔2〕)が、有益費は、建物の客観的価値を増すものとはいえ、必要費(修繕費等)のように建物の通常の使用に不可欠なものではないことから、「有益費償還請求権をあらかじめ放棄する特約も有効である」旨の判断がなされています(東京地裁昭和46年12月23日判決及び東京地裁昭和61年11月18日判決等)。
2 お尋ねの本件工事すなわち内部造作改造工事及び自動ドア設置工事は、上記1の有益費(建物価値の客観的に高めるための費用)又は内部造作に該当するものと認められることから、お示しのように、賃借人A社と家主B氏との賃貸借契約において有益費については賃借人A社の負担とする旨、及び、A社は賃貸借契約終了時において有益費償還請求権をあらかじめ放棄する旨の特約を定めることも、上記1の前例等から見る限り有効と考えられます。
  そうすると、更新後の賃貸借契約上において、有益費の賃借人負担条項が定められた場合で、その定めに従って、本件改造費を賃借人A社が負担したとしても、家主B氏に対する贈与等の課税関係すなわち寄付金課税等を考慮する必要はないものと考えられます。
3 ところで、法人が建物を賃借し自己の用に供するため造作した場合の造作に要した金額は、その造作が、建物についてされたときは、その建物の耐用年数、その造作の種類、用途、使用材質等を勘案して、合理的に見積った耐用年数により、建物附属設備についてされたときは、建物附属設備の耐用年数により償却することとされています(耐通1-1-3前段)。
  したがいまして、本件改造費については、支出時の損金の額に算入することはできず、内部造作改造工事費用については、Cビルの耐用年数、その造作の種類、用途、使用材質等を勘案して、合理的に見積った耐用年数により、また、自動ドア設置工事費用については、建物附属設備の「エアーカーテンまたはドアー自動開閉設備」の耐用年数(12年)により減価償却することになります。
  なお、当該建物について賃借期間の定めがあるもの(賃借期間の更新のできないものに限る。)で、かつ、有益費の請求又は買取請求をすることができないものについては、当該賃借期間を耐用年数として償却することができることとされています(耐通1-1-3後段ただし書)が、賃借期間を更新できない旨の定めがないお尋ねのケースについては、この取扱いの適用はありません。

【関連情報】

《法令等》

民法606条
民法608条
耐用年数の適用等に関する取扱通達1-1-3

【収録日】

平成30年 1月31日


 
注1: 当Q&Aの掲載内容は、一般的な質問に対する回答例であり、TKC全国会及び株式会社TKCは、当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。個別の案件については、最寄りのTKC会員にご相談ください。
注2: 当Q&Aの内容は、作成時の法令等を基に作成しております。このため、当Q&Aの内容が最新の法令等に基づいているかは、利用者ご自身がご確認ください。
注3: 当Q&Aの著作権は株式会社TKCに帰属します。当Q&Aのデータを改編、複製、転載、変更、翻訳、再配布することを禁止します。

 TKC会員事務所一覧 TKC会員のご紹介
戻る 前文献 次文献