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《税務Q&A》

情報提供 TKC税務研究所

【件名】

事前確定届出給与において支給日が当初から届出日と異なる見込みの場合について

【質問】

 12月決算のA社は、12月25日に〇〇万円を支給する(これを以下「本件賞与」といいます。)との事前確定届出給与の届出書を提出期限までに所轄税務署長に提出しました。しかし、その支給日たる12月25日が土曜日でその日には金融機関からの振込みができないため、「本件賞与」は翌週月曜日の27日に支給することになりました。
 そこで質問ですが、そのような支給形態となった「本件賞与」について、支給日と届出日が異なるとして損金不算入となるのでしょうか。

【回答】

1 事前確定届出給与について
(1)事前確定届出給与とは、「その役員」の職務につき、所定の時期に確定額を支給する旨の定めに基づいて支給する給与(定期同額給与及び利益連動給与を除きます。)で、原則として、株主総会等の決議により事前確定届出給与の定めをした場合における当該決議の日(同日が職務執行開始日後である場合には、職務執行開始日)から1月経過日(同日が会計期間開始日から4月を経過する場合には4月経過日とし、新設法人の場合にはその設立日以後2月を経過する日)までに、所轄税務署長にその定めの内容に関して所定の事項(事前確定届出給与の支給時期及び各支給時期における支給金額等)を記載した届出をしている場合のその給与のことです(法法34〔1〕二、法令69〔4〕)。
   すなわち、事前確定届出給与としてその事業年度の損金の額に算入される給与とは、所定の時期に確定額を支給する旨の定めに基づいて支給するもの、つまり、支給時期及び支給金額が事前に確定しており、実際にもその定められた支給時期において定められた金額が支給される給与に限られる(法基通9-2-14)ことになります。
   そして、法人が、その所定の時期について「〇月〇日」と定めれば、それが「所定の時期」となります。
(2)それゆえ、納税地の所轄税務署長へ「届け出た支給額」と「実際の支給額」が異なる場合には、「事前確定届出給与」に該当しないこととなりますから、原則として、その支給額の全額が損金不算入となる(法基通9-2-14)旨が明示的に公表されています。
2 ご質問について
(1)「本件賞与」については、理由がどうあれ2日遅れ(25日→27日)で支給することになったようですから、上記1の規定に照らす限り、「本件賞与」は「所定の時期」に支給したとは言えないものと考えられます。
   また、「本件賞与」を12月25日付で計上した場合には「未払い」となりますが、「事前確定届出給与」とはその役員の職務につき所定の時期に確定した額の金銭や確定した数の株式などを支給する旨の定めに基づいて支給する給与であることからすれば、その届け出時点において未払いとなることが見込まれているような場合には、そもそも「事前」に確定した額を支給する「定め」が存在していたのかどうかという疑問が生ずることとなるため、「事前確定届出給与」の「確定した額」には、届け出の時点において未払いが見込まれる金額が含まれている場合のその金額は「確定した額」とは言えないこととなろう(税務研究会出版局刊・十訂版 法人税基本通達逐条解説890ページ・9-2-14の解説参照)という考え方もあります。
   そして、お尋ねの場合、「支給日たる12月25日が土曜日でその日には金融機関からの振込みができない」との事情は、「本件賞与」に係る事前確定届出給与の届出書の提出前からわかっていたことです。
   したがって、こうした規定となっている以上、「本件賞与」は基本的には「事前確定届出給与」に該当せず、損金不算入となる可能性が高いと考えます。
(2)お尋ねの場合、まだ支給日が来ていないようですから、「現金」で届け出どおり12月25日に支給することや、土曜日にも振込可能な金融機関をさがすなどの方法を検討されてはいかがでしょうか。
   いくら毎年同じ日に賞与を支給することとしているとしても、今後は、その日に確実に「支給」することができるかどうか、事前に検討するのを失念しないようにご注意ください。

【関連情報】

《法令等》

法人税法34条
法人税法施行令69条
法人税基本通達9-2-14

【収録日】

令和 4年 1月20日


 
注1: 当Q&Aの掲載内容は、一般的な質問に対する回答例であり、TKC全国会及び株式会社TKCは、当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。個別の案件については、最寄りのTKC会員にご相談ください。
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