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《税務Q&A》

情報提供 TKC税務研究所

【件名】

総額を変えず定期同額給与を事前確定届出給与に変更する場合

【質問】

 最近顧問先A社(同族会社)の経理部長から、代表取締役の役員給与・年額 1,800万円の支給形態について、定額同額給与で月額150万円×12ヵ月としていたものを、定額同額給与は月額10万円×12ヵ月の年120万円とし、別途事前確定届出給与(賞与)を7月と12月に840万円×2回支給する形態に変更したいと考えているが税務上何か問題はありませんかという問い合わせがありました。
 詳しく聞きましたところこれには社会保険労務士の助言があったようで、役員給与の年額を変更せずに支給形態だけをそのようにすると、社会保険料の計算上有利になるという事情があるようです。
 しかし、役員給与をこのように極端に変更してしまった場合、法人税法34条2項にいう不相当に高額な役員給与だとして否認される心配があるため、場合によっては思いとどまるように説得しようと考えていますがいかがでしょうか。

【回答】

1 いわゆる事前確定届出給与(法法34〔1〕二)とは、所定の時期に確定額を支給する旨の定めに基づいて支給するもの、すなわち、支給時期及び支給金額が事前に確定し、実際にもその定めのとおりに支給される給与のことをいうとされています(法基通9-2-14)。
  また、役員給与のうち「不相当に高額な部分」の金額は、損金の額に算入されないことになりますが(法法34〔2〕)、その金額の算定は、法人税法34条2項に規定する実質基準(イ)及び形式基準(ロ)の区分に応じてそれぞれの金額とされ、そのいずれにも該当する場合には、そのうち多い方とされています(法令70一)。
2 定期同額給与をいわゆる通常改訂(法法34〔1〕一、法令69〔1〕一イ)で、月額150万円であったものを月額10万円に変更することは、規定上問題がありません。
  また、事前確定届出給与を賞与として7月と12月に840万円ずつ2回支給することも、それを事前に確定して所轄税務署に届出を行い、実際にもそのとおりに支給すれば、規定上は問題なくその損金算入が認められることになります。
  そもそも、定期同額給与と事前確定届出給与のバランスをどのようにするかについては、法人税法上特段の規定は設けられていません。そうすると、定期同額給与、事前確定届出給与として規定されている各要件(法法34〔1〕、法令69)を充足する限りにおいては、たとえ極端な支給形態の変更があったとしても、一応それを損金算入することは違法ではないことになります。
  また、法人税法上、役員に対して支給される給与の額のうち不相当に高額な部分の金額は損金の額に算入しないこととされていますが(法法34〔2〕)、不相当に高額か否かの判定については、その役員に支給されている定期同額給与、事前確定届出給与及び利益連動給与の全体で判定することになります。したがって、支給形態を変更したとしても、その事業年度の役員給与の総額に変わりがないとすれば、不相当に高額との認定はされないことになります。
  こうした極端な行為については、同族会社であるがゆえに行い得る行為と言えますから、一般的には同族会社の行為計算の否認規定(法法132や所法157)の発動が懸念されます。しかしながら、たとえその目的が、定期同額給与を少額に抑えるとともに事前確定届出給与を増額して社会保険料の負担を軽減することにあるとしても、税の負担に関しては、事業年度や年額を通算して算定されるため不当な減少を生ずることはありませんから、同規定の適用も考えられません。
  結局のところ、お示しのような支給形態を採ったとしても税務上の規定に照らして、問題とされることはないものと考えられますが、本来、他の役員等と同様に決定されるべき役員給与の支給方法が、特定の役員のみについて、社会保険料の節約のために作為的に決定されること自体は好ましいものとは思われません。
  なお、お尋ねのケースと同様の事例について、週刊税務通信3314号(平成26年6月9日)に、成松洋一税理士による「税務相談・役員の報酬を減額し賞与を支給する場合の過大給与の判定」の解説が掲載されています。それによれば、過大給与か否かは、定期同額給与、事前確定届出給与及び利益連動給与の総額で判定する旨を原則としつつも、他の役員に賞与の支給がない場合において社長のみに賞与を支給する場合等においては、賞与の額だけで過大かどうかを判定するという考え方があり得る旨の問題提起がなされていますので、参考までに申し添えます。

【関連情報】

《法令等》

法人税法34条1項
法人税法34条2項
法人税法施行令69条1項
法人税法施行令70条1項
法人税基本通達9-2-14

【収録日】

平成29年 4月28日


 
注1: 当Q&Aの掲載内容は、一般的な質問に対する回答例であり、TKC全国会及び株式会社TKCは、当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。個別の案件については、最寄りのTKC会員にご相談ください。
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