《税務Q&A》
情報提供 TKC税務研究所
【件名】
業務管理システムで使用する通信機器の設置及び設定費用の処理について
【質問】
甲社は、新たに事業所を開設することとし、本社と連携する業務管理システムを導入することとしています。このシステムは、いわゆるクラウドを利用するもので、導入に当たりデータ通信の専用線を使用することから通信事業者と賃借期間を5年間とする契約を結びました。甲社が通信事業者に支払う毎月の使用料には、通信機器の使用料も含まれていますが、初期費用として通信機器(ルーター)の設置及び動作確認等のために100万円を支出することとしています。甲社は、この初期費用をどのように税務処理すればよいでしょうか。
【回答】
1 法令等の規定 法人が支出する費用のうち、資産を賃借し又は使用するために支出する権利金、立退料その他の費用で、その支出の効果がその支出の日以後一年以上に及ぶものは、繰延資産に該当するものとされています(法法2二十四、法令14〔1〕六ロ)。具体的には、〔1〕建物を賃借するために支出する権利金、立退料その他の費用及び〔2〕電子計算機その他の機器の賃借に伴って支出する引取運賃、関税、据付費その他の費用が、この繰延資産に該当するものとして取り扱われます(法基通8-1-5) 次に、上記の法人税法施行令14条1項6号に掲げる繰延資産の償却限度額は、その繰延資産の額をその繰延資産となる費用の支出の効果の及ぶ期間の月数で除して計算した金額に当該事業年度の月数を乗じて計算した金額とされています(法令64〔1〕二)。 そして、法人税基本通達8-2-1は、「繰延資産となる費用の支出の効果の及ぶ期間」について、別段の定めのあるもののほか、固定資産を利用するために支出した繰延資産については当該固定資産の耐用年数、一定の契約をするに当たり支出した繰延資産についてはその契約期間をそれぞれ基礎として適正に見積った期間によることとしています。さらに、法人税基本通達8-2-3(繰延資産の償却期間)は、法人税施行令14条1項6号《公共的施設の負担金等の繰延資産》に掲げる繰延資産のうち、次の表に掲げるものの償却期間は、次によるとして表を掲記しているところ、同表において、電子計算機その他の機器の賃借に伴って支出する費用(法基通8―1―5(2))は、その機器の耐用年数の10分の7に相当する年数(その年数が契約による賃借期間を超えるときは、その賃借期間)とされています。2 ご質問について 甲社は、業務管理システムで使用する通信機器を所有するものではなく、毎月の使用料の中にその機器の使用料も含まれているとのことです。そうすると、ご質問の初期費用は、上記の電子計算機その他の機器の賃借に伴って支出する引取運賃、関税、据付費その他の費用に該当し、繰延資産に該当するものと考えられます。そして、その償却期間は、法人税基本通達8-2-3に定める、電子計算機その他の機器の賃借に伴って支出する費用(8―1―5(2))に該当するものと考えられ、その機器の耐用年数の10分の7に相当する年数(その年数が契約による賃借期間を超えるときは、その賃借期間)となるものと考えられます。そうすると、その機器がルーターであれば、その耐用年数は、「器具及び備品」「事務機器及び通信機器」「電話設備その他の通信機器」「その他のもの」の10年となり(国税庁HP、その他法令解釈に関する情報、法人税、「LAN設備の耐用年数の取扱いに関する質疑応答」参照)、耐用年数の10分の7に相当する年数は7年となりますが、賃借期間が5年間とのことですので、5年で償却することになります。したがって、ご質問の通信機器(ルーター)の設置及び動作確認等のための初期費用は、繰延資産に計上し5年間で償却することになります。 なお、クラウドサービスに係るシステムのカスタマイズ費用については、税務Q&A「クラウドサービスに係るシステムのカスタマイズ費用の取扱い(文献番号:43202945)」をご参照ください。
【関連情報】
《法令等》
【収録日】
令和 5年 5月17日