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《税務Q&A》

情報提供 TKC税務研究所

【件名】

製造に係る作業用消耗品等に対する消耗品費通達の適用について

【質問】

 法人税基本通達2-2-15では、消耗品の損金算入時期について、毎期おおむね一定数量を取得し経常的に消費するものであれば期末の貯蔵品計上は不要で取得時に損金算入する処理が認められている一方で、(注)では、製品の製造等のために要する費用としての性質を有する場合には、製造原価に算入する、とされています。作業用消耗品などの製造に係るものについてこの通達を適用する場合には、貯蔵品や仕掛品の棚卸の要否など、具体的にどのように処理すべきでしょうか。

【回答】

1 消耗品費等に係る法人税法上の取扱いについては、法人税基本通達2-2-15(消耗品費等)において、「消耗品その他これに準ずる棚卸資産の取得に要した費用の額は、当該棚卸資産を消費した日の属する事業年度の損金の額に算入するのであるが、法人が事務用消耗品、作業用消耗品、包装材料、広告宣伝用印刷物、見本品その他これらに準ずる棚卸資産(各事業年度ごとにおおむね一定数量を取得し、かつ、経常的に消費するものに限る。)の取得に要した費用の額を継続してその取得をした日の属する事業年度の損金の額に算入している場合には、これを認める。」とされています。
  この通達は、期末で在庫数量を把握して棚卸することにより使用された払出数量に対応する原価のみを損金に算入する、という消耗品の原則的な取扱いに対し、毎期おおむねー定数量を取得し,かつ,経常的に消費する物品については、在庫計上を省略し継続して取得した時点で損金算入を認めるものであり、企業会計上の「重要性の原則」の適用例の一つである「重要性の乏しい消耗品について在庫計上を省略し買入時の費用処理を認める処理(企業会計原則注解[注1](1))」を税務上も容認した取扱いと解されます。
2 本通達の対象となる消耗品費等の範囲については、本通達が「第2款 販売費及び一般管理費等」の中に置かれているように、一般に販管費等の期間費用として処理されるもの(事務用消耗品、包装材料、広告宣伝用印刷物等)が中心となっていますが、それだけでなく、一般に製造間接費として製造原価に算入される作業用消耗品(例えば、製造作業に使用される手袋、タオル、ウエス、ブラシ、磨粉、グリス、潤滑油など)も適用対象に挙げられています。
  そして、本通達の(注)では、「この取扱いにより損金の額に算入する金額が製品の製造等のために要する費用としての性質を有する場合には、当該金額は製造原価に算入するのであるから留意する。」とされています。
  この注書について、本通達の解説書では、「本通達の取扱いにより損金算入する場合でも、その消耗品等の費用が製造費用としての性格を有する場合には、当然、製造原価に算入しなければならない。本通達は、経常的に取得し、消費される消耗品等について毎期末の在庫計上を省略することを認めることとされたのみで、原価性の有無の判断について特例が設けられたものではないからである。」と説明されています(「法人税基本通達逐条解説(十一訂版)」税務研究会出版局297ページ)。
3 法人税法22条3項では、内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の損金の額に算入すべき金額として、「一 当該事業年度の収益に係る売上原価、完成工事原価その他これらに準ずる原価の額」、「二 当該事業年度の販売費、一般管理費その他の費用(償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除く。)の額」及び「三 当該事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るもの」が挙げられ、同条〔4〕項では、「・・前項各号に掲げる額は、別段の定めがあるものを除き、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算されるものとする。」と規定されています。
  この規定を受けて、企業会計上の費用の認識基準としての発生主義及びそれを各会計期間に割り当てる基準としての費用収益対応の原則にしたがい、売上原価や完成工事原価等のように、商品や製品を媒介とする個別的・直接的対応が求められる費用については個別的対応によりその収益が計上された事業年度、販売費及び一般管理費については期間的対応により発生した事業年度、損失については発生した事業年度の損金の額にそれぞれ計上されることとなります。
4 このように、製造原価を構成する費用である材料費、労務費及び経費については、原価計算を通じ、当期中に発生した製造費用(棚卸が必要な材料費等については、期首・期末棚卸の加減算後の製造工程に投入された費用)のうち製造過程にある仕掛品として棚卸計上される費用を除く完成品原価が製品の製造原価に算入され、更に、製品の棚卸を通じて算定される売上に対応する売上原価が当期の損金に算入されることとなります。
  そして、上記2に記載した解説書の説明のとおり、本通達は、このような製造費用に該当する消耗品費等については、当期中の製造費用の発生額である当期総製造費用に算入される当期材料費や当期経費等の算定に当たり、継続適用を条件に棚卸を省略して取得ベースで認識すること(すなわち、期末の在庫計上を省略し、期中の取得高をもって直ちにその払出高として計算すること)を認めることとされた取扱いであり、製造費用のうち本通達の適用要件に該当する作業用消耗品に係る費用について、原価性がないものとして原価計算の対象から除外することまでを容認したものではないものと解されます。
  したがって、本通達の適用要件に該当する作業用消耗品については、期末の貯蔵品の棚卸しを省略し取得ベースで費用の発生を認識することは認められますが、このような本通達の適用の有無に関わらず、作業用消耗品等の費用の発生額については、当該費用が製造費用に該当する以上は、製造原価に算入され、原価計算を通じて損金に算入されることとなるものと思われます。

【関連情報】

《法令等》

法人税法22条
法人税基本通達2-2-15

【収録日】

令和 7年 3月12日


 
注1: 当Q&Aの掲載内容は、一般的な質問に対する回答例であり、TKC全国会及び株式会社TKCは、当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。個別の案件については、最寄りのTKC会員にご相談ください。
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