《税務Q&A》
情報提供 TKC税務研究所
【件名】
法人の解散及び清算に係る役員退職金の損金算入時期
【質問】
有限会社A(以下「A社」といいます。)は、令和2年9月30日をもって法人を解散し、令和3年3月までの清算結了を目指す予定です。A社の役員は、代表取締役B(以下「B氏」といいます。)及び取締役C(以下「C氏」といいます。)の2名であり、B氏は解散後A社の清算人に就任し、C氏は解散時に退任します。 A社としては、B氏及びC氏に対し、しかるべき金額の役員退職金を支給する予定であり、B氏には清算人としての退職金も支給したいと考えています。 そこで質問ですが、解散及び清算の場合の役員退職金の一般的な支給手続き及び損金算入時期についてご教示ください。
【回答】
1 法人の解散に際して、代表取締役等から清算人に就任する場合の役員退職給与の支給時期としては、下記2のとおり、清算人を退職する時に清算人を含む役員在任期間に係る退職金を一括支給する原則的ケースの場合のほか、例外的ケースとして下記3のとおり、解散時に打切支給を行った後、清算人分退職金(解散前の勤続期間を一切加味しないもの)を追加支給する場合の両様が考えられますが、結論としては、下記のとおり、いずれの場合の役員退職金についても損金算入が認められるものと考えます。2 退職給与は、退職という事実に基因して支払われる一時の給与であり(所法30)、清算人は、法人税法上の役員である(法2十五)ことから、解散前の代表取締役が解散後も引き続き清算人に就任した場合、法人の役員としての地位は連続し、退職という事実がないことから、実質的には分掌変更と異ならないものと考えられます。 したがいまして、お尋ねのケースにおいても、解散後において引き続き清算人として清算事務に従事する元代表取締役B氏に対して、解散前及び清算中の役員在任期間を含む勤続期間について、清算確定の最後事業年度の株主総会等で決議され、支給される役員退職金については、過大とされるものでない限り、損金の額に算入されるものと考えます。3 一方、法人税基本通達9-2-32《役員の分掌変更等の場合の退職給与》においては、実質的に退職したと同様の事情があると認められる特別の場合に限り、その事情に基づき当該役員に対し役員退職金をいわゆる打切支給したときは、退職給与として損金算入することができる取扱いが明示されています。また、所得税基本通達30-2《引き続き勤務する者に支払われる給与で退職手当等とするもの》の(6)においては、引き続き勤務する役員等に対し退職手当等として一時に支払われる給与のうち、その給与が支払われた後に支払われる退職手当等の計算上その給与の計算の基礎となった勤続期間を一切加味しない条件の下に支払われるもので、法人が解散した場合において引き続き役員又は使用人として清算事務に従事する者に対し、その解散前の勤務期間に係る退職手当等として支払われる給与は、退職所得として取り扱うことを認めています。 したがいまして、法人が解散した場合において、引き続き役員として清算事務に従事する者に対し、その解散前の勤続期間に係る退職手当等として支払われる、いわゆる打切支給の退職給与は、前述のように所得税法上退職手当等として取り扱われることから、法人税法上も退職給与として、その適正額については損金として取り扱うことが相当と考えられます。ただし、打切支給の退職給与は、原則として、法人が未払金等に計上した場合の当該未払金等の額は含まれないこととされます(法基通9-2-32(注))から、その損金算入時期は、実際に支給された時となります。 なお、この場合の解散時までの役員退職金は、打切支給に係るものであることから、別途、清算人期間について退職金を支給する場合には、解散前の勤続期間を一切加味しないで算定する必要があります。4 また、清算人にならず解散時に退任する取締役C氏については、通常の役員退職金の損金算入時期の取扱いにより、株主総会の決議等によってその額が具体的に確定した日の属する解散事業年度において未払計上することができますし、一方、実際に退職給与を支払った日の属する清算中の事業年度においてその支払った額につき損金経理をした場合には、これを認めることとして取り扱われます(法基通9-2-28)。
【関連情報】
《法令等》
【収録日】
令和 2年 9月29日