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《税務Q&A》

情報提供 TKC税務研究所

【件名】

美術品(絵画)に係る一括償却資産の損金算入制度の適用について

【質問】

 A社(資本金3億円の3月決算法人)では、このたび本社ロビーの装飾用に1点18万円の美術品(絵画)を購入しましたが、これを一括償却資産として処理することは可能でしょうか。なお、この美術品は、特別、歴史的価値や希少価値のあるようなものではありません。

【回答】

1 法人税法上、「減価償却資産」とは、建物、構築物、機械及び装置、船舶、車両及び運搬具、工具、器具及び備品、鉱業権その他の資産で償却をすべきものとして政令で定めるものをいうとされ(法法2二十三)、政令では、建物及びその附属設備以下、各種の資産が掲げられていますが、そこには「事業の用に供していないもの及び時の経過によりその価値の減少しないものを除く」旨の規定が設けられています(法令13)。
  したがって、「時の経過によりその価値の減少しないもの」については減価償却資産には該当しないことになりますが、美術品等については、法人税基本通達7-1-1において減価償却資産に該当するかの判定について、次のものは「時の経過によりその価値の減少しない資産」として取り扱うとしています。
(1)古美術品、古文書、出土品、遺物等のように歴史的価値又は希少価値を有し、代替性のないもの
(2)(1)以外の美術品等で、取得価額が1点100万円以上であるもの(時の経過によりその価値が減少することが明らかなものを除きます。)
(注1)時の経過によりその価値が減少することが明らかなものには、例えば、〔1〕会館のロビーや葬祭場のホールのような不特定多数の者が利用する場所の装飾用や展示用(有料で公開するものを除く。)として法人が取得するもののうち、〔2〕移設することが困難で当該用途にのみ使用されることが明らかなものであり、かつ、〔3〕他の用途に転用すると仮定した場合にその設置状況や使用状況から見て美術品等としての市場価値が見込まれないものが含まれます。
(注2)取得価額が1点100万円未満であるもの(時の経過によりその価値が減少しないことが明らかなものを除きます。)は、減価償却資産として取り扱います。
2 この通達では、歴史的価値又は希少価値を有し、代替性のないもの以外の美術品については、金額基準により、取得価額が1点100万円以上であるものは、原則として「時の経過によりその価値の減少しない資産」として取り扱うとしつつ、(注1)では、3つの要素を示し、それらの全てを満たす美術品等については、「時の経過によりその価値が減少することが明らかなもの」として、100万円以上のものでも減価償却資産に該当するものとし、(注2)では、その結果、取得価額が1点100万円未満のものについては、時の経過によりその価値が減少しないことが明らかなものを除き、原則として減価償却資産に該当する旨が明らかにされています。
  同通達の解説書(税務研究会出版局発行「十訂版法人税基本通達逐条解説」602頁~)では、100万円基準は、新鋭作家のデビュー作が1点60~80万円で取引される実態にあることや、市場における一定の評価を得ることができる作者かどうかは一般にその作品の価格が100万円を超えるかどうかで評価することができるといった専門家の意見等を踏まえたものと説明されています。
  また、(注2)の「時の経過によりその価値が減少しないことが明らかなもの」とは、例えば、高価な素材が大部分を占める小型の工芸品のように素材の経済的価値が取得価額の大部分を占めるようなものがこれに該当し、このようなものについては、取得価額が1点100万円未満であっても減価償却資産として取り扱わないこととなる、と説明されています。
3 これらの通達の規定や解説から判断しますと、歴史的価値又は希少価値を有し代替性のないもの以外の美術品については、その美術品としての価値を金額基準により100万円で線引することとし、1点100万円未満の美術品については、(注2)により、「時の経過によりその価値が減少しないことが明らかなもの」、すなわち、高価な素材が大部分を占める小型の工芸品のように素材の経済的価値が取得価額の大部分を占めるようなものに該当しない限り、減価償却資産として取り扱われることとなります。
  この点、お尋ねの美術品は、特別、歴史的価値や希少価値のあるようなものではない1点18万円の絵画、とのことから、この通達の(注2)の取扱いに該当するものと思われますので、法人税法施行令13条に規定する「時の経過によりその価値の減少しないもの」には該当しないものと判断される結果、法人税法上の減価償却資産として取り扱われることとなるものと思われます。
4 ところで、一括償却資産の損金算入制度は、内国法人が各事業年度において減価償却資産で取得価額が20万円未満であるものを事業の用に供した場合において、その全部又は特定の一部を一括したもの(「一括償却資産」)の取得価額の合計額を以後の各事業年度の費用又は損失の額とする方法を選定したときは、当該一括償却資産の取得価額の合計額を一括りにして3年で均等に償却することを認める制度です(法令133の2)。
  このように、この制度の対象となる資産は、「減価償却資産」とのみ規定されており、特段、美術品等を排除する旨の規定はないことから、上記の取扱いにより減価償却資産に該当するものと判断される美術品等も対象となるものと思われますので、その取得価額が20万円未満であれば一括償却資産の損金算入制度の対象となるものと考えます。

【関連情報】

《法令等》

法人税法2条
法人税法施行令13条
法人税法施行令133条の2
法人税基本通達7-1-1

【収録日】

令和 3年11月25日


 
注1: 当Q&Aの掲載内容は、一般的な質問に対する回答例であり、TKC全国会及び株式会社TKCは、当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。個別の案件については、最寄りのTKC会員にご相談ください。
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