《税務Q&A》
情報提供 TKC税務研究所
【件名】
所得拡大促進税制における出向者給与の取扱い
【質問】
A社は在籍する従業員数名をグループ内の子会社等へ出向させていますが、平成25年度税制改正で創設された所得拡大促進税制における出向者に係る取扱いについてお尋ねします。 A社の従業員甲を例にとりますと、甲は子会社B社に出向していますが、その給与は、出向元A社から100が支給されており、出向先B社はA社に対して甲の出向負担金として80を支払っています。 この場合の甲の給与に係るA社及びB社における所得拡大促進税制上の取扱いはどのように取り扱われるのでしょうか。
【回答】
1 平成25年税制改正により創設されたいわゆる所得拡大促進税制は、青色申告書を提出する法人が、平成25年4月1日から平成28年3月31日までの間に開始する各事業年度(以下、「適用年度」といいます。)において、国内雇用者に対する給与等支給額(以下、「雇用者給与等支給額」といいます。)が、基準年度(最初の適用年度の前年度)の雇用者給与等支給額に比べて5%以上増加した場合において、次の(1)及び(2)の要件を満たす場合には、その増加額の10%の税額控除(当期の法人税額の10%(中小企業者等については、20%)を限度とします。)を認めるというものです(措置法42の12の4)。(1)雇用者給与等支給額が前年度の雇用者給与等支給額を下回らないこと(2)平均給与等支給額が前年度の平均給与等支給額を下回らないこと2 この場合、出向者に係る給与を出向先及び出向元が分担している場合における雇用者給与等支給額及び平均給与等支給額の算定方法が問題となります。 ところで、雇用者給与等支給額については、「その給与等に充てるため他の者から支払を受ける金額がある場合には、当該金額を控除した金額」(措置法42の12の4[2]三)とされ、その法人における実際の支給額により計算することとされています。 そして、上記の「他の者から支払を受ける金額」には、出向者に対する給与を出向元法人が支給することとしているときに、出向元法人が出向先法人から支払を受けた給与負担金の額が該当することとされています(措置法通達42の12の4-2)。 一方、出向先法人が出向元法人へ出向者に係る給与負担金の額を支出する場合において、当該出向先法人の国内に所在する事業所につき作成された労働基準法108条に規定する賃金台帳に当該出向者を記載しているときには、当該給与負担金の額は、措置法第42条の12の4第2項第3号から第5号までの「国内雇用者に対する給与等の支給額」に含まれることとされています(措置法通達42の12の4-3)。 したがいまして、出向先が負担する出向者負担金は、雇用者給与等支給額に含まれるとされる一方で、その出向者負担金は、出向元においては「他の者から支払を受ける金額」として雇用者給与等支給額から控除すべきことになります。3 また、平均給与等支給額を算定する場合の給与等支給者数は、適用年度における給与等月別支給対象者の数を合計した数とされており、給与等月別支給対象者は、その適用年度に含まれる各月ごとの給与等の支給の対象となる国内雇用者をいいます(措令27の12の4[12])から、出向者が出向先及び出向元の両社から給与等の支給を受けている場合には、両社において給与等月別支給対象者に該当することになります。 一方、賃金台帳に記載された国内雇用者であっても、給与等の支給の対象とならない者は、給与等月別支給対象者に該当しませんから、出向者が在籍していても、給与の実質負担がない場合には、給与等月別支給対象者に該当しないことになります。4 以上をお尋ねの出向社員甲のケースで考えますと、出向者甲の給与を、出向元であるA社が100支給し、出向先B社が出向負担金をA社に80支払う場合の各社の実質負担額は、A社が較差補填相当額20(100-80)、B社が給与負担金80となりますが、この場合の各社の所得拡大税制の適用上、甲は、各社において給与等支給者に該当し、各社の実質負担額の支給を受けたものとして、計算することになるものと考えられます。
【関連情報】
《法令等》
【収録日】
平成25年10月31日