TKC会員事務所一覧 TKC会員のご紹介
前文献 次文献
20文献中の20文献目

《税務Q&A》

情報提供 TKC税務研究所

【件名】

営業を終了した店舗設備等の有姿除却の可否と翌期の除却費用の取扱いについて

【質問】

 飲食店業を営むA社(3月決算法人)では、現在使用している営業店舗のうち1店舗を賃借契約の期間満了により今期(令和X年3月31日期)一杯で営業を終了し、この店舗の設備や内部造作等の取壊し撤去作業を翌期の令和X年4月1日から2週間程度で行って、退去する予定です。その場合、この店舗の設備や内部造作などについては、有姿除却により今期の除却損として計上可能でしょうか。また、それらの取壊し撤去作業も、今期末で実施することが決まっているので、当該費用の見積額を今期の除却損の計算に含めることは可能でしょうか。

【回答】

1 法人税基本通達7-7-2(有姿除却)では、その使用を廃止し、今後通常の方法により事業の用に供する可能性がないと認められる固定資産については、たとえ当該資産につき解撤、破砕、廃棄等をしていない場合であっても、当該資産の帳簿価額からその処分見込価額を控除した金額を除却損として損金の額に算入することができるものとする、との取扱いが示されています。
  この通達の解説書では、本通達の趣旨について、「企業が現状有姿のまま固定資産の使用を廃止することについては、種々理由があり、例えば、その解撤、破砕等に多額の費用を要することが見込まれるため、差し当たり解撤、破砕等をせずにそのまま放置するということもあり得るところ、このような場合でも、客観的にみて当該資産が今後従前と同じように使用される見込みが全くない等とすれば、たまたま現状有姿のまま放置しているからといって、除却処理を認めないというのははなはだ実情に即さない。」と説明のうえ、そこで本通達において、「資産がもはや固定資産としての命運又は使用価値を失ったことが客観的に立証される限り、スクラップ価額を残したところで除却処理できる旨が明らかにされている。」と説明しています(税務研究会出版局発行「十一訂版法人税基本通達逐条解説」756ページ)。
  また、「今後通常の方法により事業の用に供する可能性がないかどうかは個々の事実認定の問題であるが、その使用を廃止した時点における事後処理の方法、客観的な経済情勢その他状況の変化を見極めた上で、今後使用の可能性があるかどうかを判断することになろう。」と説明しています(同解説書757ページ)。
2 この通達の適用の可否については、詳細な事実認定に基づき判断すべき事柄となりますが、お尋ねの事例では、現在使用している1店舗を賃借契約の期間満了により今期末で営業を終了し、店舗の設備や内部造作等の取壊し撤去作業を翌期の4月1日から2週間程度で行って、退去する予定、とのことであり、今期末の営業終了をもってその使用を廃止し、今後通常の方法により事業の用に供する可能性がなく、当該法人において当該資産がもはや固定資産としての命運又は使用価値を失ったことが家主との賃貸借契約、店舗設備等の取壊し撤去作業の発注関係書類、法人の今後の事業計画書、有姿除却の決定に係る社内稟議書等から客観的に立証できる場合には、素材としてのスクラップ価額を残したところで除却処理が認められる可能性があるものと思われます。
3 次に、お尋ねの事例で業者に発注した店舗の設備や内部造作などの取壊し撤去作業については、翌期の4月1日から2週間程度かかると見込まれている、とのことです。
  この役務提供費用である取壊し撤去費用の損金算入時期については、法人税法上、債務確定基準、すなわち、期末までの債務の成立(取壊し撤去工事の発注・契約)、具体的な給付原因事実の発生(当該工事の完了)及び金額の合理的算定可能性(見積・発注金額の確定)の3要件を満たすことが求められています(法基通2-2-12)。
  この点、お尋ねの事例においては、取壊し撤去作業は、翌期の4月1日から2週間程度かかる予定、とのことから、具体的給付原因事実である当該作業の完了する翌期の損金に算入する処理が相当と考えられます。
  また、上記1の有姿除却の取扱いで除却損として損金の額に算入することができる金額は、「当該資産の帳簿価額からその処分見込価額を控除した金額」とされていますので、この点からも、その取壊し撤去作業の発注等が当期末までに行われ、作業を実施することが決まっている場合であっても、当該作業に係る費用の見積額を今期の有姿除却に係る除却損の計算に含めることはできないものと思われます。
4 ところで、上記の解説書では、「本通達により除却損として損金算入することができる金額は、その除却の対象となった資産の帳簿価額からその処分見込価額を控除した金額に相当する金額に限られるのであるから、既に解撤、破砕、廃棄等に着手している場合を除き、その解撤等に要する費用の額をあらかじめ見積り、これを当該処分見込価額から控除して除却損の額を計算することは、原則として認められないこととなる。」と説明されています(同解説書757ページ)。
  この点、除却の対象となった資産の帳簿価額から控除することとされているその廃材等のスクラップとしての処分見込価額の計算において、解撤等の費用を控除するということは、スクラップはスクラップとしてその処分見込価額により除却損の計算から控除するとともに、別途、解撤等の費用の見積額を引当計上するのと同様の結果となり、これは、未確定債務の引当計上を厳に認めない、とする上記の税務上の債務確定基準に反する処理と考えられます。
  したがって、解撤等をすることが客観的に確実であるとしても、その解撤費用等の見積額を処分見込価額から控除するということは、一種の未確定債務の引当計上にほかならないことから、税務上は、原則として認められないものと思われます。
  ただし、上記の解説書の説明では、「既に解撤、破砕、廃棄等に着手している場合を除き、」とされ、期末までに現に解撤等に着手している場合には、解撤費用等の見積額を処分見込価額から控除することが認められるような記述ぶりとなっています。
  これについては、仮に、期末時点までに現に解撤等に着手している場合には、もはや単なる有姿除却とはいえない面があるうえ、その解撤費用等についても債務確定に近い状態にあるともいえることから、上記の解説書では、これを弾力的に取り扱うこととし、処分見込価額から解撤費用等の見積額を控除(「控除」ですから、マイナスはありませんので、差し引くのは処分見込価額までとなるものと思われます。)することを認める余地があることを述べているものと推察されます。
  このような取扱いの法令上の根拠等は定かではありませんが、債務確定基準の例外を認めているものではなく、あくまで有姿除却により除却損として損金算入することができる金額の計算上、処分見込価額の算定を弾力的に行うことを容認した取扱いと思われます。
  なお、お尋ねの事例の場合には、当該店舗の設備や内部造作などの取壊し撤去作業は、翌期の4月1日から着手して2週間程度かかる見込、とのことであり、当期末までに取壊し撤去作業に着手しておりませんので、この弾力的な取扱いによったとしても、当該作業に係る費用の見積額を処分見込価額の算定上、控除することは認められないものと思われます。

【関連情報】

《法令等》

法人税基本通達7-7-2

【収録日】

令和 8年 4月20日


 
注1: 当Q&Aの掲載内容は、一般的な質問に対する回答例であり、TKC全国会及び株式会社TKCは、当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。個別の案件については、最寄りのTKC会員にご相談ください。
注2: 当Q&Aの内容は、作成時の法令等を基に作成しております。このため、当Q&Aの内容が最新の法令等に基づいているかは、利用者ご自身がご確認ください。
注3: 当Q&Aの著作権は株式会社TKCに帰属します。当Q&Aのデータを改編、複製、転載、変更、翻訳、再配布することを禁止します。

 TKC会員事務所一覧 TKC会員のご紹介
前文献 次文献