《税務Q&A》
情報提供 TKC税務研究所
【件名】
土地付建売住宅(居住用)の取得価額の算定方法
【質問】
平成3年に、土地付き新築住宅を建売業者から総額5,000万円で購入したが、その際作成した売買契約書その他の書類には、土地と家屋の売買価額を区分して明らかにしたものはなかった。 取得後15年間居住用として使用してきたが、周辺の環境もすっかり変わってしまったので住み替えようと思い、宅建業者に打診したら、土地家屋を一括して4,000万円程度で売れるだろうとのことであった。 念のために、譲渡損益を試算しようとしたが、取得時の購入金額が土地と家屋に区分されていないため、譲渡損益の計算に必要な家屋の取得費の算定ができない。 土地と家屋それぞれの取得価額を求める方法を教示してほしい。
【回答】
本件のように、一括して取得した土地家屋(居住用)の取得対価の額が、土地と家屋に区分されていない場合の各資産の所得価額の算定方法としては、次のようなものが考えられます。(1)取得対価の総額(5,000万円)のうち、購入時に課税された消費税額を消費税3%(平成9年4月1日以後は、5%、平成26年4月1日以後は、8%、令和元年10月1日以後は、10%)で割り戻して求めた金額を家屋の取得価額とし、その余を土地の取得価額とする方法(2)取得対価の総額(5,000万円)を、購入時の土地と家屋の時価の比により按分した価額とする方法(措通(山林所得・譲渡所得関係)36の2-9参照)(3)国税庁が参考用に公開している「建物の標準的な建築価額表」を基に、家屋の取得価額を算定する方法
【関連情報】
《法令等》
【解説】
1 譲渡所得の金額の計算上控除する取得費 譲渡所得の金額の計算上控除する取得費は、概算取得費の特例(措法31の4)を適用する場合を除き、譲渡資産の取得に要した金額と設備費・改良費の合計額(なお、家屋などのように期間の経過により減価する資産であるときは、その資産の取得の日から譲渡の日までの期間の減価の額(業務用資産にあっては減価償却費の累積額、非業務用資産にあっては、一定の方法により計算した減価の額)を控除します。)となります(所法38条2項)。2 家屋の取得費の具体的な算定方法 譲渡する家屋の取得費の算定方法は、当該家屋が事業用(業務用を含む)として利用されているものか、どうかによって次のように異なります。(1)事業用(業務用)資産である場合 減価償却費の計算の基礎になっている家屋の取得価額を「取得に要した金額」とし、各年分の減価償却費の合計額を控除して算定します。(2)事業用(業務用)資産でない場合 次のような方法により算定した家屋の取得価額から法所定の減価の額(耐用年数の1.5倍の年数に応じて計算。所令85参照)を控除して算定します。3 土地と家屋を一括して取得した場合の取得価額の区分 次の方法によります。(1)購入対価の額を基に区分する方法 土地と家屋の取得価額の区分については、原則的として次によります(措通(山林・譲渡)36の2-9)。 〈1〉土地と家屋の価額が、当事者間の契約において区分されており、かつ、それらの価額が契約時の時価として概ね適正なものである場合 その契約上で明らかにされたそれぞれの価額によります。 〈2〉土地と家屋の価額が、当事者間の契約において区分されていない場合 その取得先等において確認された価額が概ね適正なものであるときは、その取引先等で確認されたそれぞれの価額によります。 〈3〉上記〈1〉及び〈2〉より難い場合 購入対価の額を土地と家屋の取得時の時価の比で按分した価額によります。(2)支払った消費税額から逆算する方法 消費税は、建物の譲渡等には課税され、土地の譲渡等には課税されません。 そこで、土地家屋の一括取得時に支払った消費税額から逆算して家屋の取得価額を求める方法が、簡便法の一つとして用いられています。 具体的には、土地家屋の一括取得時に支払った譲受対価の総額のうち、次により計算した金額を家屋の取得価額とし、その余を土地の取得価額とする方法です。 (算式) 支払った消費税額×{1+消費税の税率}÷消費税の税率=その家屋の取得価額 ※消費税の税率 平成元年4月1日以降 3% 平成9年4月1日以降 5% 平成26年4月1日以後 8% 令和元年10月1日以後 10%(3)標準的な建築価額を基に家屋の取得価額を推計する方法 支払った消費税額が確認されない場合には、(2)の方法により家屋の取得価額を算定することができません。 このような場合には、国税庁が参考として開示している「建物の標準的な建築価額表」を基として家屋の建築価額を算定し、家屋の取得価額とする便法が公表されています。 ※「建物の標準的な建築価額表」(例)平成3年(単位:千円/平方メートル) 木造・木造モルタル造 鉄骨鉄筋コンクリート造 137,6 329,8 鉄筋コンクリート造 鉄骨造 246,8 158,7 なお、この「建物の標準的な建築価額表」については、あくまでも、標準的な家屋を前提としていますので、当該家屋の構造、間取、材質などからみて、当該家屋が標準的な家屋の範囲内にあるのか否を検討することも必要と考えます。
【収録日】
令和 2年 3月 6日