《税務Q&A》
情報提供 TKC税務研究所
【件名】
受取人が先死している場合の死亡保険金受取人
【質問】
被相続人甲は、自己を保険契約者(保険料負担者)兼被保険者、保険金受取人を妻乙とする生命保険契約を締結していたが、甲の生存中に乙が先に死亡してしまい、受取人の再指定をしないうちに、甲の相続が開始し保険事故が発生した。 甲と乙の間には子AとBがいるが、甲には先妻との間に子CとDもおり、甲の法定相続人は、A、B、C及びDの4名である。 なお、乙はCとDとは養子縁組をしておらず、CとDは乙の相続人ではない。 ところで、生命保険契約に係る保険事故発生前に受取人が死亡し、受取人の再指定をしないまま保険事故が発生した場合の死亡保険金については、保険法46条の規定により、すでに死亡した受取人(乙)の現存する相続人の全員が受取人となるとともに、その受取割合は、民法427条の規定により平等の割合によることとされているとのことである。 そうすると、被相続人甲の死亡時に生存する受取人乙の法定相続人はAとBであるから、AとBが均等に取得することになると解してよいか。
【回答】
ご質問の受取人乙の法定相続人は、甲と子のA、Bの3名であったところ、甲の死亡により、その順次の相続人であるCとDも受取人としての権利を取得することになりますから、ご質問の死亡保険金は、A、B、C及びDの4名が均等に取得することになると考えられます。
【関連情報】
《法令等》
【解説】
1 生命保険契約に係る保険金の受取人として指定されていた者が死亡し、契約者が受取人の再指定をしないうちに被保険者が死亡して保険事故が発生した場合の保険金の受取人については、「保険契約者によって保険金受取人として指定された者(指定受取人)の法定相続人又はその順次の法定相続人であって被保険者の死亡時に現に生存する者をいうと解すべきである」とされ、「指定相続人の法定相続人が複数存在し、保険契約者兼被保険者が右法定相続人の一人である場合においても同様である」とされています(最高裁平成5年9月7日判決、保険法46)。 また、その場合の確定した受取人の保険金の受取割合は、全員が均等に取得するものと解されています(同最高裁判決、民法427)。 そして、その最高裁判決の事例は、保険契約者兼被保険者が、母を受取人として保険契約を締結していたところ、母が先に死亡し、受取人の再指定をすることなく被保険者が死亡した事例でしたが、上記解釈に基づいて、受取人であった母の法定相続人で現に生存する母の子3名の他、母の法定相続人である保険契約者兼被保険者の順次の相続人として、保険契約者兼被保険者の相続人である異母兄姉等11名(母の相続人ではない)も保険金受取人となったと判断して、合計14名で均等に受け取るべき権利が有るものと判示しています。2 ご質問の場合には、保険契約者兼被保険者である甲が、妻乙を受取人に指定して生命保険契約を締結していたところ、甲の死亡前に乙が死亡し、受取人の再指定をしないまま、甲が死亡した(保険事故が発生した)とのことです。 そうしますと、受取人に指定されていた乙の法定相続人は、甲とA、Bの3名であり、これら3名が保険金受取人の地位を承継していますが、甲の死亡により、順次の相続人として現に生存するCとDも保険金受取人としての権利を取得するものと考えられます。 したがって、AとBのほか、CとDも保険金受取人になるものと考えられ、その取得割合は4名が均等(各4分の1)に取得することになると考えられます。
【収録日】
令和 6年 3月14日