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《税務Q&A》

情報提供 TKC税務研究所

【件名】

スタッドレスタイヤを新規購入した場合の経理処理について

【質問】

 A社は、土木工事請負業を営む青色申告法人(資本金3千万円)ですが、この度、B県より山間部の県道の改良工事を受注したことに伴い、冬場において工事用トラックが雪道を走行する頻度が増すことが想定されたため、スタッドレスタイヤ6本(前輪に2本、後輪に4本を使用)を購入し、装着しました。
 購入価額は、タイヤとホィールのセット及び装着作業代込みで、一本当たり 49,000円、6本合計294,000円でしたが、一本当たりの取得価額が10万円未満であることから、法人税法133条の「少額の減価償却資産の取得価額の損金算入」の規定(以下、「少額資産特例」といいます。)の適用が可能かと思われますし、仮に、取得価額を6本合計で判定した場合であっても30万円未満であることから、租税特別措置法67条の5の中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例(以下「中小企業者等少額資産特例」といいます。)の適用が可能と思われることから、これらの特例のいずれかを適用したいと考えていますが、差し支えないでしょうか。
 なお、このスタッドレスタイヤの装着については、資本的支出に該当するとの見解も耳にしますが、スタッドレスタイヤの購入・装着はあくまでも冬場の雪道を走行する際に車両として至極当然の機能である「安全な走行」を確保するための処置であり、特別な性能の向上や耐用年数の改善に繋がる改良等ではないものと考えますが、いかがでしょうか。

【回答】

 A社における工事用トラックへのスタッドレスタイヤの購入・装着費用は、以下のとおり、タイヤという個別の減価償却資産の取得価額となるものではないことから、少額資産特例や中小企業者等少額資産特例の適用場面とは認められず、そのトラックになされた資本的支出として、トラック本体の耐用年数により減価償却を行うのが相当と考えられます。
1 車両に常時搭載する機器(例えば、ラジオ、メーター、無線通信機器、クーラー、工具、スペアタイヤ等をいいます。)については、車両と一括してその耐用年数を適用することとされています(耐用年数通達2-5-1)。
  ところで、通常、積雪時においてのみ使用され、使用されないときにおいては車両から取り外されて保管されるスタッドレスタイヤは、「車両に常時搭載する」ものではありませんが、取扱いとしては、スペアタイヤと同様に、個別の減価償却資産ではなく、車両の一部品とみなし、その車両と一括してその耐用年数を適用するのが相当と考えます。
  すなわち、例えば、航空機の予備エンジンや電気自動車の予備バッテリー等のように減価償却資産を事業の用に供するために必要不可欠なものとして常備され、繰り返し使用される専用の部品は、当該減価償却資産と一体のものとして減価償却をすることができることとされています(法基通7-1-4の2)から、装着しない期間があっても、いつでも装着可能な状態にある限り、本体と合わせて減価償却することができることになります。
2 ところで、資本的支出とは、その有する固定資産の修理、改良等のために支出した金額のうちその固定資産の価値を高め、又はその耐久性を増すこととなると認められる部分に対応する金額をいい、例えば、機械の部分品を特に品質又は性能の高いものに取り替えた場合のその取替えに要した費用の額のうち通常の取替えの場合にその取替えに要すると認められる費用の額を超える部分の金額等が該当するものとされています(法基通7-8-1)。
  「スタッドレスタイヤの装着は、車両として至極当然の機能である「安全な走行」を確保するための処置であり、性能の向上や耐久性の向上に当たらない。」旨のご見解ですが、「路面の良くない雪道で通常の安全走行を確保」すること自体、「車両の性能の向上」に当たるのではないでしょうか。
  すなわち、通常のタイヤ仕様の場合は雪道の安全走行が困難であるところ、新たに購入したスタッドタイヤを装着することによって安全走行が可能になることは、まさに 性能の向上、引いては車両の価値を高めることになり、明らかに資本的支出に該当するものと考えます。
  また、普通仕様のタイヤに加えてスタッドレスタイヤを備えることは、上記の航空機の予備エンジン等の場合と同様に物理的・量的な価値増加があったことにもなりますから、その意味でも資本的支出を認識すべきところと考えます。
3 そして、明らかに資本的支出に該当するものであっても、その固定資産について行う修理、改良等のために要した費用の額が20万円に満たない場合又はおおむね3年以内の期間を周期として行われる費用については、修繕費とすることができることとされており、この場合の20万円未満であるかどうかについては、一の計画に基づく費用の額ごとに、また、同一の固定資産について支出した費用ごとに行うこととされています(法基通7-8-3)。
  お尋ねのケースは、工事用トラックに装着するスタッドレスタイヤ6本を購入したとのことですが、その6本をセットとして、「一の計画若しくは同一の固定資産(トラック)について支出した費用」を考える必要があるものと考えられます。
  そうすると、スタッドレスタイヤ6本の購入総額294,000円は、「20万円に満たない場合」に該当しないことから、修繕費として処理することはできないものと考えられます。
  なお、今後、スタッドレスタイヤの破損や摩耗等により同じ性能のスタッドレスタイヤに取り換える費用については、修繕費として差し支えないものと考えられます。

【関連情報】

《法令等》

法人税施行令133条
租税特別措置法67条の5
法人税基本通達7-1-4の2
法人税基本通達7-8-1
法人税基本通達7-8-3
耐用年数通達2-5-1

【収録日】

平成28年12月20日


 
注1: 当Q&Aの掲載内容は、一般的な質問に対する回答例であり、TKC全国会及び株式会社TKCは、当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。個別の案件については、最寄りのTKC会員にご相談ください。
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