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《税務Q&A》

情報提供 TKC税務研究所

【件名】

試験研究費と開発費の区分、処理、及び企業会計・会社法・法人税法の改正について

【質問】

 当社は、現在、自社又は関係会社が事業用に使用する試験研究用機械を開発及び製造中ですが、その開発・製造費用は極めて多額の金額となっており、この金額については、試験研究費、開発費又は他のどのような科目で処理すべきか等々について、社内においても種々の意見が出て困っております。
 聴くところによりますと、近年、試験研究費及び開発費に関する法人税法上の規定も改正されたということのようですが、企業会計や会社法の改正及び取り扱いも含めて詳しくご教示ください。

【回答】

1 試験研究費と開発費に係る法人税法改正の概要と処理
 ご質問の試験研究費及び開発費につきましては、平成19年度の法人税法の改正により、試験研究費については繰延資産から除外され、一方、開発費については新たな事業の開始のために特別に支出する費用に係る金額については繰延資産から除外されました(この改正は、平成19年4月1日以後に支出するものから適用することとされております(平成19年改正令附則7条1項))。
 したがいまして、ご質問につきましては上記の改正を踏まえて次のような種々の検討を加え、更に、法人自体の当初の設備投資の計画やその支払いの目的等から総合的に判断し、製造原価に算入すべきもの(法人税法施行令32条、法人税基本通達5-1-3、同5-1-4、同5-1-5等)、棚卸資産の取得価額に算入すべきもの(法人税法施行令32条、法人税基本通達5-1-1、同5-1-1の2等)、開発研究用減価償却資産とすべきもの(減価償却資産の耐用年数等に関する省令の別表第6等)、又は、販売費・一般管理費等とすべきもの(法人税法22条、法人税基本通達2-2-12等)にそれぞれ区分して処理をすることとなると考えます。
2 試験研究費について
(1)即ち、試験研究費からみてみますと、一般的には、試験研究費とは試験及び研究のために要する費用であり、換言すれば基礎研究、応用研究、又は開発研究を包含した費用としての原材料費、労務費、経費等を含む複合費として捉えられると考えられます。
(2)これについて、会社法等の取り扱いをみてみますと、旧商法施行規則において試験研究費を含む8種類の繰延資産が限定列挙されておりましたところ、平成18年5月1日施行の会社法及び会社計算規則においては、繰延資産の限定列挙の規定は削除され、「繰延資産として計上することが適当であると認められるもの」は、繰延資産として貸借対照表の資産の部に区分表示することとして規定されました(会社計算規則106条)。
 また、その具体的な処理や計算等は、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準その他の企業会計の慣行を斟酌して取り扱うこととなる(会社計算規則3条)と考えられます。
(3)更に、試験研究費について企業会計上の取り扱いをみてみますと、「企業会計原則と関係諸法令との調整に関する連続意見書」の「連続意見書第五」の「繰延資産について」においては、「試験研究費とは、現に営業活動を営んでいる企業が、新製品の試験的製作、あるいは新技術の研究等のため特別に支出した金額をいう」とされておりました。
 その後、この取り扱いは、会社法及び会社計算規則の制定を受けて、平成18年8月に企業会計基準委員会は「繰延資産の会計処理に関する当面の取り扱い」を公表し、繰延資産の範囲を創立費、開業費、開発費(原則として支出時に費用処理するが、繰延資産に計上することができる)、株式交付費、社債発行費の5種類としたことにより、試験研究費は、発生時の費用として処理すべきであることとして改正されました。
(4)一方、法人税法においては、平成19年度の改正前は、繰延資産の意義として、「法人が支出する費用(資産の取得に要した金額とされるべき費用及び前払費用を除く。)のうち次に掲げるものとする」とした上で、試験研究費を掲げ、これを「新たな製品の製造又は新たな技術の発明に係る試験研究のために特別に支出する費用をいう」と定義していました(法人税法施行令14条)。
 しかしながら、前記1のとおり、平成19年度の法人税法改正により、試験研究費は繰延資産の範囲から除外されました。
 以上の経過を前提にして税務上の試験研究費の処理や取り扱いを検討しますと次のとおりです。
 即ち、法人が試験及び研究に関する費用を支出した場合、その費用の内容や性質等を検討し、まず製造原価となるものを取り出すものと考えられます。
 次に、試験研究用の建物や設備など固定資産として処理すべきものを抽出し、それらに該当する場合には、減価償却資産として計上することとなると考えられます。
 以上のような抽出の検討を踏まえ、以上のそれぞれに当たらない金額については、債務として確定している金額については、販売費・一般管理費に該当することとなり、試験研究費等としての損金処理をすることになると考えられます。
 この場合、試験及び研究に関する費用が原価性を有するかどうかについて実際上その判断が困難な場合がありますので、税務上の取扱いにおいては、「試験研究費のうち、基礎研究及び応用研究の費用並びに工業化研究に該当することが明らかでないものの費用の額」については、製造原価に算入しないことができることとして取り扱われます(法人税基本通達5-1-4)。
 ここで「基礎研究」とは、自然現象に関する実験等によって法則を決定するための研究をいい、「応用研究」とは、基礎研究の結果を具体的な物質、方法等に実際に応用して工業化の資料を作成するための研究をいうものとされています。基礎研究や応用研究に要した費用は、製造等に要した費用等という性質のものとは言えませんので、製造原価に算入する必要はないという考え方がとられています。また、「工業化研究」とは、基礎研究及び応用研究を基礎として工業化又は量産化するための研究をいい、工業化研究に該当することが明らかな試験研究費は製造原価に算入すべきものですが、これが明らかでないものについては製造原価に算入しないことが認められています。
3 開発費について
(1)次に、開発費についてみてみますと、一般的には、開発費とは新技術又は新経営組織の採用、資源の開発、市場の開拓等のために支出した費用、生産能率の向上又は生産計画の変更等により、設備の大規模な配置換えを行った場合等の費用とされております。
(2)また、開発費についての会社法等の取り扱いをみてみますと、旧商法施行規則においては開発費は、8種類の繰延資産の一として限定列挙されておりましたが、平成18年5月1日施行の会社法及び会社計算規則においては、繰延資産の限定列挙の規定は削除され、「繰延資産として計上することが適当であると認められるもの」は、繰延資産として貸借対照表の資産の部に区分表示することとして規定され(会社計算規則106条)、その具体的な計上や計算等は、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準その他の企業会計の慣行を斟酌して取り扱うこととして改正されました(会社計算規則3条)。
(3)一方、平成18年8月に企業会計基準委員会は、前記2の(3)のとおり「繰延資産の会計処理に関する当面の取り扱い」を公表することにより、「開発費は、原則として支出時に費用(売上原価又は一般管理費)として処理する。ただし、開発費を繰延資産に計上することができる。」として、企業の繰延資産としての任意計上も認めております。
(4)ところで、法人税法においては、前記1のとおり、平成19年度の法人税法の改正により、開発費については、新たな事業の開始のために特別に支出する費用に係る金額については繰延資産から除外されました。
 したがって、平成19年4月1日以後に支出する開発費については、確定債務としての費用に当たる部分については損金として認められ、一方、その支出の効果がその支出の日以後1年以上に及ぶもの、即ち、新たな技術若しくは新たな経営組織の採用、資源の開発又は市場の開拓のために特別に支出する費用については、本来の繰延資産に当たる部分として処理することとなり(法人税法施行令14条)、更に、「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」の第2条二号に規定する資産の取得に要するものについてはその取得原価として処理することとなると考えられます。
4 したがいまして、ご質問の試験研究費又は開発費については、上記のとおり、それぞれについて上記のような法令等の改正及びそれぞれの判断基準並びに法人自体の当初の設備投資の計画やその支払いの目的等から総合的に判断して、製造原価、製造費用、開発研究用減価償却資産の取得原価、又は、販売費・一般管理費等に当たるものを区分し、それぞれに応じた処理を行うこととなると考えます。
《参考》
 平成18年8月11日企業会計審議会「実務対応報告19号「繰延資産の会計処理に関する当面の取り扱い」」
 平成10年3月13日企業会計審議会「研究開発費等に係る会計基準」及び「研究開発費等に係る会計基準注解」
 昭和35年6月22日大蔵省企業会計審議会「企業会計原則と関係諸法令との調整に関する連続意見書」

【関連情報】

《法令等》

法人税法2条
法人税法22条
法人税法施行令14条
法人税法施行令32条
法人税法施行令改正令(平成19年政令第83号)附則7条
法人税法2条(平成18年改正)
法人税法施行令14条(平成18年改正)
法人税法施行令32条(平成18年改正)
耐用年数省令2条2号
法人税基本通達2-2-12
法人税基本通達5-1-1
法人税基本通達5-1-1の2
法人税基本通達5-1-3
法人税基本通達5-1-4
法人税基本通達5-1-5
会社計算規則3条
会社計算規則106条

【収録日】

平成20年 8月11日


 
注1: 当Q&Aの掲載内容は、一般的な質問に対する回答例であり、TKC全国会及び株式会社TKCは、当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。個別の案件については、最寄りのTKC会員にご相談ください。
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