《税務Q&A》
情報提供 TKC税務研究所
【件名】
出向先法人が支出する給与負担金に係る役員給与の取扱いについて
【質問】
当社は精密機械製造業を営むA社の子会社ですが、来期からA社の甲営業課長を販売担当取締役として、下記の出向条件により出向を受け入れる予定です。 〔1〕 出向期間:4年間 〔2〕 給与負担金:月額100万円、年合計額1,200万円 当社では全役員について年俸制を採用しておりますが、甲取締役の給与負担金についても他の役員に対する支給日に毎月定額(月額100万円)でA社に支払う予定です。 この場合、当社がA社に支出する甲取締役に係る給与負担金の取扱いはどのようになるのでしょうか。 なお、甲取締役はA社において毎月給与(80万円)の支給を受け、賞与についても他の使用人と同様に支給(年2回240万円)されるとのことです。
【回答】
法人の使用人が他の法人に出向した場合、その出向者の給与については、〔1〕出向先法人が支払う場合と、〔2〕出向元法人が支給する場合とがあります。 貴社のように、出向者に対する給与を出向元法人が支給した場合には、通常、出向先法人においては自己が負担すべき給与に相当する金額(以下「給与負担金」という。)を出向元法人に支払うことになります。このような場合のその給与負担金の額については、出向先法人におけるその出向者に対する給与(退職給与を除く。)として取り扱われることとされています(法基通9-2-45)。 この場合、「その出向者が出向先法人において役員となっている場合の給与負担金」の取扱いについては、同通達9-2-46において、下記に掲げる要件を満たした場合についてのみ、法人税法34条(役員給与の損金不算入)の規定が適用されることが定められています(法基通9-2-46)。 〔1〕 その役員に係る給与負担金の額について、その役員に対する給与として出向先法人の株主総会、社員総会又はこれに準ずるものの決議がされていること。 〔2〕 出向契約等において、その出向者に係る出向期間及び給与負担金の額があらかじめ定められていること。 そして、法人税法の規定においては、法人がその役員に対して支給する給与について、〔1〕定期同額給与、〔2〕事前確定届出給与、〔3〕利益連動給与に該当する場合のみ、各事業年度の損金の額に算入することができると定められています(法法34〔1〕一、二、三)。 したがって、「その出向者が出向先法人において役員となっている場合の給与負担金」については、まず、上記通達9-2-46に定められている二つの要件を満たしているか否かについて検討することになります。この二つの要件を満たしていない場合には、その給与負担金が給与として取り扱われたとしても、法34条(役員給与の損金不算入)の規定の適用が認められないので損金不算入となります。 この二つの要件を満たしている場合には、次に、法法34条における役員給与の損金算入の要件である「定期同額給与」等に該当するか否かの検討をすることになります。 このように、その出向者が出向先法人において役員となっている場合の給与負担金については、法令解釈通達の要件を満たすとともに、法法34条の役員給与の損金算入に係る諸要件を充足することが必要となります。 ご質問の事例について検討しますと、貴社とA社とは、出向契約において出向期間及び給与負担金の額をあらかじめ定めていますので、甲取締役に係る給与負担金の額を貴社の株主総会等において決議することにより通達の要件を満たすことになります。 次に、甲取締役に対する給与が「定期同額給与」に該当するどうか検討することになりますが、貴社では年俸制を採用しており、甲取締役の給与負担金についても他の役員に対する支給日に毎月定額(100万円)でA社に支払うとのことですので「定期同額給与」に該当すると考えられます。したがって、A社における甲取締役に対する給与の支給形態にかかわらず、給与負担金の全額が損金の額に算入されます。 なお、出向先法人が給与負担金として支出した金額が出向元法人におけるその出向者に支給する給与の額を超える場合のその超える部分の金額については、出向元法人に対する寄附金等として取り扱われることになりますので注意が必要です(同通達9-2-46(注)2)。(注)平成22年度の税制改正において、下記のような改正が行われましたので、ご留意ください。1.内国法人が各事業年度において当該内国法人との間に法人による完全支配関係がある他の内国法人に対して支出した寄附金の額は、当該内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しないこととされるとともに(法37(2))、それに対応して当該他の内国法人が受けた受贈益の額は、当該他の内国法人の各事業年度の所得の計算上、益金の額に算入しないこととされました(法25の2(1))。 なお、この改正は、平成22年10月1日以後に支出する寄附金の額又は同日以後に受ける受贈益の額について適用され、同日前に支出した寄附金の額については、なお従前の例によるとされています(平成22改正法附則16、18)。2.法人が有する当該法人との間に完全支配関係がある法人(「子法人」)の株式等について、子法人が他の内国法人から上記1の適用がある受贈益の額を受けたこと又は子法人が他の内国法人に対して上記1の適用がある寄附金の額を支出したという事由、いわゆる寄附修正事由が生ずる場合には、下記の算式により計算した金額を利益積立金額及びその寄附修正事由が生じた時の直前の子法人の株式等の帳簿価額に加算することとされました(令9(1)7、119の3(6))。(算式)(子法人が受けた上記1の適用がある受贈益の額×持分割合)-(子法人が支出した上記1の適用がある寄附金の額×持分割合) なお、この改正は、平成22年10月1日以後に寄附修正事由が生ずる場合について適用されます(平成22改正法附則5(2)(6))。
【関連情報】
《法令等》
【収録日】
平成22年11月29日