Q&A経営相談室
親事業者との価格交渉を見直したい
 
Q:
 親事業者との関係を見直し価格交渉をしたいと考えています。取引条件の改善につながるような交渉のノウハウを教えてください。(金属加工)
 
<回答者>江塚経営研究所代表 江塚 修

A:
 高品質と世界で高く評価されている「日本ブランド」の製品は、下請け事業を行う多くの中小企業等によって支えられています。国際競争が進展する中、この高い品質をしっかりと維持するには、親事業者と下請け事業者の信頼関係を高め「コストを適正に負担しあう」取引慣行の定着がますます重要になっています。

 しかし親事業者が一方的に自社に有利な取引を強要するケースが存在していることも事実です。

 そこで政府は、下請け事業者に対しては価格転嫁などの取引条件改善が一層進むように「価格交渉サポート事業」で中小企業支援を行い、また親事業者に対しては製造業を中心に業界団体(17業種)が「下請ガイドライン」を策定、適正な下請け取引が定着するよう加盟企業の指導を強化しています。

 このような背景のもと、下請け事業者は積極的に価格交渉の機会をつくり、親事業者との信頼関係を高めながら取引条件を適正に見直していくことが重要です。

親事業者の法令違反取引とは

 価格交渉の準備をするとき、事前に「どのような取引が法令違反なのか」をしっかりと認識することが重要です。通常親事業者は下請け取引を管理する部署があるので、「親事業者は下請法を熟知している」という前提で、下請け事業者も親事業者の禁止行為など下請法の基本を学んでおきましょう。

 下請法は、上図のとおり親事業者に四つの義務と11項目の禁止事項を課しています。下請け事業者の了解を得ていても、この規定に触れるときは、法違反です。具体的事例は以下の通りです。

◆合理的説明のない価格引き下げ
◆原材料価格の上昇等を無視
◆型の無償での保管・管理
◆補給品を量産価格で発注
◆発注数減少でも当初の見積もり価格
◆合理的でない指し値の発注
◆発注者コストを受注者へ転嫁
◆割引困難な長期手形の交付
◆図面などの無償での提供
◆事後的仕様変更を受注者負担にする
◆発注者都合での受領(じゅりょう)の拒否
◆発注者商品の購入強要等

 適正価格の取引を実現させるには、親事業者と下請け事業者が敵対や対峙(たいじ)するのではなく、信頼関係を高めながら納得性ある取引価格で合意することが重要です。

 そのための価格交渉のノウハウは、具体的には次の三つです。

@価格の根拠を上手に説明する
原材料価格、光熱費、労務費などの価格根拠を上手に伝える方法は、コストに関する客観的データを提示することです。原材料などの内訳を明確化し、推移表などで分かりやすく説明します。この際、自助努力も加えて説明すると、さらに効果的です。

A発注者とのルールづくり
価格交渉ではその後のルールについても協議します。値上がり経費の「スライド制」や「サーチャージ制」などの合意は効果的です。

B交渉経緯を書面に記録
交渉経緯や取り決め事項は、必ず書面に記録しておきましょう。自社だけの議事録でも有効です。

 なお、価格交渉サポート事業は、価格交渉ノウハウを無理なく身につけられる施策です。ぜひ活用し、早期に取引改善を実現しましょう。

提供:株式会社TKC(2018年3月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
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