Q&A経営相談室
【法改正】
「音」や「動き」も商標になる?
 
Q:
 商標法の改正が予定されているとききました。検討対象となっている商標について教えてください。(雑貨製造業)
 
<回答者>ファーイースト国際特許事務所 弁理士 平野泰弘

A:
 商標権とは文字や図形等からなる商標を独占して使用できる権利をいいます。商標法は商標の取り扱いについて定めた法律です。現行の商標法では、登録できる商標は文字や図形などに限定されていますが、現在審議中の商標法改正案では「音」、「動き」、「ホログラム」、「輪郭のない色彩」および「位置」といったものを新たな商標として保護することが検討されています。

 欧米ではすでにこれらの商標が保護されています。また韓国では昨年3月から音、におい等の商標が保護されるようになりました。台湾でも昨年の7月以降、輪郭のない色彩、音に加えて動きやホログラムも保護されています。こうした海外の動向にあわせ、日本でも産官学の有識者を集めた商標制度小委員会で商標法の改正準備作業が進められています。導入が検討されているのは次に掲げる商標です。
【音】
 音の商標の具体例としては、「サロンパス」で有名な久光製薬株式会社のテレビCMで流れる♪ヒ・サ・ミ・ツのメロディーをイメージしていただけると分かりやすいと思います。
【動き】
 ホームページで使用する会社ロゴの動き等が挙げられます。法改正が実現すれば動きのある画像も商標登録の対象になります。
【ホログラム】
 見る角度によって異なる図形が映し出される光学技術を応用した図柄等が当てはまります。
【輪郭のない色彩】
 改正案では、従来商標の付随的要素であった色彩も構成要素として扱われる方向で調整が進んでいます。
【位置】
 商品のどの位置に商標を表示するかを指定することができるようになります。

 なお「香り」の商標については検討すべき課題が多く、継続審議の段階です。

先願主義に要注意

 これらの新たな商標が保護されるようになると「自由に使用していたものが使えなくなるのでは」と懸念される方がいるかもしれません。商標制度は指定商品・指定役務の範囲内で権利が発生する制度です。効力がおよぶのは、あくまで指定した商品、役務に限られます。

 したがって音が商標登録されても、音全般に適用されるわけではありません。例えば口笛を吹くなどしただけでは、商標権の侵害にはなりません。商標権侵害が問題になるのは業務上商標を使用した場合です。

 社会的にひろく認知されているものについては、そもそも商標登録が認められません。ラーメン屋台のチャルメラの音、豆腐屋のラッパ音など、国民に慣れ親しまれているものが当てはまります。

 日本では、先に特許庁に出願した者に商標権を与える制度を採用しています。最初に商標を使用した者が商標権者になるわけではないことに注意してください。商標制度はいわば"早い者勝ち"の制度といえます。法改正後はライバル会社に商標権を登録されてビジネスチャンスを逸することがないよう、先んじて対策をとることが重要です。

提供:株式会社TKC(2013年5月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
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