Q&A経営相談室
【法改正】
改正障害者雇用促進法への対応
 
Q:
 この春、障害者の法定雇用率が引き上げられると聞きました。改正の内容を具体的に教えてください。(調剤薬局業)
 
<回答者>社会保険労務士 小岩和男

A:
 すべての事業主は、法定雇用率以上の割合で障害者を雇用する義務があります。4月1日に「障害者雇用促進法」が改正され、雇用義務事業主の範囲が広がります。企業経営はいまやCSR(社会的責任)を問われる時代です。自社の現状を把握し、早期に障害者雇用対策に着手しましょう。

 今年4月1日以降の法定雇用率は図表1(『戦略経営者』2013年3月号33頁図表1参照)のとおりです。法定雇用率は事業主区分ごとに定められており、民間企業では2.0%以上の障害者雇用が義務づけられることになります。

 〈対象となる障害者〉
 身体障害者・知的障害者の方です。精神障害者の方については、雇用義務はありませんが、雇用した場合は身体障害者・知的障害者を雇用したものとみなされます。

 〈対象となる企業〉
 前述のとおり、民間企業では2.0%に引き上げられるとともに、雇用義務が生じる事業主の範囲が、現行の従業員56人以上から50人以上に変更となります。現在50人前後の従業員が在籍している企業、もしくは増加が見込まれる場合は、早急に対策をすすめる必要があるでしょう。

 図表2(『戦略経営者』2013年3月号33頁図表2参照)に具体例を示しました。

 この企業では、法定雇用障害者数2人に対し、現在在籍している障害者は1人のため1人不足していることになります。短時間労働者(所定週間労働時間20時間以上30時間未満)は、0.5人としてカウントします。また、重度身体障害者、重度知的障害者は1人を2人としてカウントしますが、両者とも短時間労働者の場合は1人としてカウントするので注意が必要です。

雇用率を達成できない場合

 法定雇用率を下回る企業には行政指導がおこなわれ、達成に向けた企業努力が求められます。あわせて、労働者200人超の事業主は、法定雇用障害者数に不足する人数に応じて「障害者雇用納付金」が徴収されます。

 この納付金は、法定雇用率を上回っている企業に対する障害者雇用調整金、報奨金、各種助成金の財源として使われています。所定の雇用率を満たしていない企業から徴収し、上回っている企業へ支給する経済的援助のような仕組みです。徴収される納付金は、一人あたり5万円(現在、一定規模の企業は経過措置で4万円に減額中)となっています。

 障害者雇用を進めるさいに比較的活用しやすい国の支援制度(助成金)として「特定求職者雇用開発助成金」があります(『戦略経営者』2013年3月号33頁図表3参照)。

 これは新たにハローワーク等の紹介によって障害者や高齢者(60歳以上65歳未満)、母子家庭の母等、就職がとくに困難とされる人を継続して雇用した事業主に対し、賃金相当額の一部を助成する助成金です。詳細は最寄りのハローワークでご確認ください。

 企業も社会を構成する一員です。早期に取り組まれることをおすすめします。

提供:株式会社TKC(2013年3月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
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