Q&A経営相談室
【被災者雇用】
「被災者雇用開発助成金」活用の留意点
 
Q:
 「被災者雇用開発助成金」を使って被災離職者を雇用したいと考えています。留意点などを教えてください。(食品加工メーカー)
 
<回答者>社会保険労務士(岩手県社労士会所属) 西巻充史

A:
 東日本大震災を受けて、被災者を雇用した場合に助成金を支給する「被災者雇用開発助成金」が創設されました。これは、60歳以上の高齢者、母子家庭の母、障害者等の再就職困難者を雇用した場合に支給される「特定求職者雇用開発助成金」を東日本大震災の被災離職者に拡大適用したものと言われています。東日本大震災による被災離職者及び被災地域に居住する求職者の方を、ハローワーク等の紹介により、継続して1年以上雇用することが見込まれる労働者として雇い入れる事業主に対して支給されます。ただし、雇用保険の一般被保険者として、平成23年5月2日以降に雇い入れられた場合に限ります。

 対象労働者の主な要件は以下の3つです。(1)東日本大震災発生時に被災地域(東京都を除く災害救助法が適用された市町村地)において就業していた方、(2)震災後離職し、その後安定した職業についていない方、(3)震災により離職を余儀なくされた方。

 なお、震災後安定した職業についたことがなく、震災により被災地域以外に住所又は居所を変更している方は該当しますが、震災の発生後に被災地域に居住することとなった方は除外されます。

中小企業には90万円支給

 受給金額は上記対象労働者を雇った場合、大企業が50万円、中小企業が90万円、1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満の短時間労働者は、大企業が30万円、中小企業が60万円支給されます。

 ここでいう中小企業とは、従業員数が300人以下の製造業、100人以下のサービス業50人以下の小売業など。支給対象期間ごとに2回に分けて支給されます。支給対象期間は雇い入れから6カ月であり、各支給対象期間の末日の翌日から1カ月以内となります。

 例えば中小企業の事業主が1週間の所定労働時間20時間以上30時間未満の短時間労働者を7月1日から雇い入れた際は、支給申請期間の第1回目は1月1日から1月31日、第2回目は7月1日から7月31日までとなり、各回30万円の合計60万円が受給できます。なお、支給申請期間内に申請が行われない場合は原則として助成金を受けることができないということがあります。第1回目の申請を忘れた場合、第2回目の申請は可能ですが、第1回目分は受給できません。

 ほかにも利用にあたっての注意点としては、対象労働者が過去3年間、出向、派遣、請負で働いたことのある事業所で働く場合、雇い入れの前日から起算して6カ月前の日から1年経過する日までの間に事業主都合による解雇をしていたり、同期間内において雇い入れ日における被保険者数の6%を超える被保険者数を倒産、解雇等で離職させている場合(離職させた被保険者数が3人以下の場合を除く)には受給できないということがあるのでぜひ知っておいてください。

 今回の東日本大震災により被災地域において離職された方のなかには、職務上経験豊富な方や優秀な技術を持った方が多くおられます。新規に雇い入れてから人材育成し、そこから利益を得るまでは相当な時間と労働コストを必要とします。被災者雇用開発助成金をうまく活用しながら、優秀な人材を確保することをぜひ検討してみてください。

提供:株式会社TKC(2011年10月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
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