Q&A経営相談室
【企業共済】
「小規模企業共済制度」の改正ポイント
 
Q:
 平成23年1月から「小規模企業共済制度」が改正されたそうですが、主な改正ポイントを教えてください。(ソフトウェア開発)
 
<回答者>TKC企業共済会事務局長 青野祥一

A:
 小規模企業共済制度とは、中小企業基盤整備機構が小規模企業共済法に基づき運営する、小規模個人事業主や会社等の役員のための退職金積立制度です。ご質問のとおり平成23年1月1日から制度が大きく改正されました。

 本稿では、改正事項のうちまだ制度に加入されていない方や、これまで加入したくても加入できなかった方のために、「加入資格の拡大」についてご説明します。

 その前に、この制度について簡単におさらいをしておきます。この制度に加入できるのは、商業・サービス業では従業員が5人以下、その他の業種では従業員20人以下の個人事業主・会社等の役員です。加入後は毎月掛金を積み立て、将来個人事業を廃業した時や会社等の解散・役員退任時にまとまった共済金(退職金)を受け取る仕組みになっています。

 制度のメリットは、掛金全額が所得控除になることです。このメリットは非常に大きく、たとえば課税所得600万円の人が月額掛金の最高額7万円を1年間納付した場合、単純計算で所得税が27万7200円安くなります。したがって、実質的に7万円×12ヵ月−27万7200円=56万2800円の負担で、84万円の退職金を毎年準備できることになります。

 また、廃業や会社等の解散・退任による共済金請求時は、運用益を原資とする一定額を積立金に加算のうえ共済金が支給されます。更にこの場合、共済金が税法上の退職所得扱いになるなど税制上のメリットがあり、事業主や役員等の退職金制度を自前で持つことが困難な小規模企業者にとっては非常に魅力的な制度といえます。

加入資格の拡大

 しかしながら、小規模企業者が置かれた現状はどうでしょうか。厳しい経営環境や後継者難などが将来の不安となっています。特に個人事業者においてこの傾向が強く、それが事業者数の減少となって現れています。そうしたことを背景に、小規模個人事業主に安心して事業に専念していただけるように、制度が改正されました。

 改正事項のなかで最も重要なのは、個人事業主の配偶者や後継者など、従来この制度に加入できなかった方たちが「共同経営者」として加入できるようになった点です。ここでいう共同経営者とは、事業主との間で「共同して個人事業を経営する契約(書)を締結し、かつ当該個人事業から報酬を得ている者」とされています。青色事業専従者であるかどうかは問われませんが、当該事業が前記の従業員数以内であることが前提となります。上記の加入資格を満たせば、1個人事業者について2名の共同経営者が新たにこの制度に加入でき、大きな税制上のメリットを受けることが可能になりました。

 ただし、共同経営者の加入には注意すべき点もあります。それは、個人事業主の廃業等の場合に共済金を請求したり、事業を継いで個人事業主となった場合に共済契約の継続は可能なものの、死亡・疾病又は負傷によらずに共同経営者でなくなった場合(独立・のれん分け等を含む)は解約扱いになることです。解約手当金は積立額を下回ることがありますので、注意が必要です。

 さらに詳しい内容について知りたい場合は、TKC全国会に加盟する税理士等に問い合わせてみることをお薦めします。

提供:株式会社TKC(2011年1月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
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