Q&A経営相談室
【法改正】
小規模企業共済と倒産防止共済が拡充
 
Q:
 今年度の税制改正で小規模企業共済制度と中小企業倒産防止共済制度が拡充されたと聞きました。内容を教えてください。(印刷業)
 
<回答者>税理士 畑中孝介

A:
 まず小規模企業共済制度ですが、この制度はいわば小規模企業者の経営者の退職金といえ、経営基盤が脆弱で経済環境の変化の影響を受けやすい小規模企業者の廃業・引退時の生活資金や事業再建資金の確保を図る目的で設けられています。

 今般の景況の悪化により、将来不安が高まっていることから個人事業者の将来不安を払しょくする目的で、今回対象加入者の拡大が図られることとなりました。

 現行制度で加入できるのは、常時使用する従業員の数が20人以下(商業、サービス業は従業員5人以下)の個人事業主又は会社役員など小規模企業の経営者です。個人事業の場合には家族が一体となって事業を行っていることが多いため、実態に合わせ個人事業主の配偶者や後継者をはじめとする共同経営者(2名まで)に加入対象者が拡大されます。今回の改正で10万人以上の「共同経営者」の加入者の拡大が見込まれています。

 この改正に伴い、次のような措置が講じられます。
(1)共同経営者が支払った掛金についても、全額が所得控除の対象となります。
(2)共同経営者が廃業時などに支給を受ける共済金等についても退職手当等とされます。

 以上の改正により、共同経営者が通常の加入者と同様の取り扱いが受けられるようになります。

 次に、倒産防止企業共済の改正です。

 倒産防止共済は取引先が倒産した際、積み立てた掛金総額の10倍を限度に共済金を無利子・無担保・無保証人で迅速に貸し付け、連鎖倒産を防止する制度です。なお、貸付を受ける際には掛金総額から貸付額の10分の1が保険料として控除されます。

 改正の目的は、倒産件数の増加、取引先倒産により回収困難となる売掛金債権の高額化、それに加え長い不況の影響で中小企業の余剰資金や自己資本等の経営体力の低下により、中小企業の連鎖倒産リスクが増加している状況に対応するものだといえます。

 主な改正の内容は、
(1)貸付限度額を3200万円→8000万円に引き上げ
(2)(1)に伴い掛金総額上限を320万円→800万円に引き上げ
(3)月額掛金の上限を月額8万円→20万円に引き上げ
(4)貸付金の返済期限の上限も5年→10年に延長されます
(5)貸付事由に、現行の法的整理の開始・手形取引停止処分に加え、一定の資格を持つ弁護士・司法書士が関与する私的整理が加えられます。
(6)貸付金を早期に返済した場合には、金利相当分が還元されます。

 今回の改正で上限金額が増えたことと、一定の私的整理が追加されたので、活用の幅が一段と増えました。

 小規模企業共済の掛金は個人において全額所得控除の対象となり、倒産防止共済の掛金も税法上全額損金算入もしくは全額必要経費算入が認められているなど、税制上のメリットもありますので、これらの制度については積極的な活用を検討すべきでしょう。

提供:株式会社TKC(2010年5月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
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