Q&A経営相談室
【会  計】
最近よく耳にする「IFRS」とは
 
Q:
 最近「IFRS」という言葉をよく耳にしますが、正式名称は何というのでしょうか、その内容についても教えてください。(IT関連経営者)
 
<回答者>TKC取締役 常務執行役員 森木隆裕

A:
 IFRS(International Financial Reporting Standard)とは、世界的に承認され遵守されることを目的として、国際会計基準審議会(IASB:International Accounting Standards Board)によって制定される会計基準の総称です。

 IFRSを自国の会計基準として採用している国、また自国の会計基準をIFRSへコンバージェンス(収斂)しようとしている国は、全世界で100ヵ国以上に及んでいます。これほどまでにIFRSが全世界に広まった理由は、各国の証券市場監督者(日本であれば金融庁)が、IFRSに基づく財務諸表の開示を推奨してきたからです。

 企業の資金調達の国際化に伴い、投資家にとってみれば、投資先の企業がそれぞれの国の会計基準に基づいて財務諸表を作っていたのでは比較可能性がなくなり、投資先に関する意思決定を誤る可能性が生じてしまいます。また、財務諸表を作成する企業側にとってみても、上場する国々によって会計基準が異なり、その国ごとに財務諸表を作成し直さなければならないのであれば、コストがかかってしまいます。このような背景のもと、国際的な資本市場において資金調達を行う企業に関しては、全世界で承認され遵守されることを目的としたIFRSに基づいて、財務諸表を作成し、報告しなければならないという要請が高まってきているのです。

 日本でも、まず07年に国際会計基準審議会(IASB)と我が国の会計基準を制定している企業会計基準委員会(ASBJ)との間で、IFRSと日本の会計基準をコンバージェンスしていく合意がなされました(東京合意)。この合意に基づきプロジェクト計画表(コンバージェンス関連項目)が定められ、計画表に基づきコンバージェンスの作業が進められています。

 さらに、金融庁は09年6月に「我が国における国際会計基準の取扱いについて(中間報告)」を発表し、我が国企業に対するIFRS適用についての将来的な展望を示しました。10年3月期から、一定の条件の下に、上場会社の連結財務諸表についてIFRSの任意適用を認めました。また、上場会社の連結財務諸表について12年を目処にIFRSを強制適用するかどうかの有無を判断し、強制適用する場合においては15年ないしは16年から強制適用する事としました(〔『戦略経営者』2010年3月号30頁〕図表参照)。

 会社法あるいは税法との関連で、中小企業の会計制度にどのようにIFRSが適用されてくるかは現段階では不明です。IFRSの目的等から考えて、国際的な資本市場に直面していない日本の中小企業においては、いきなりIFRSへの適用が迫られるということはないのではないかと思います。なお今年1月22日に、ASBJ等が中心となり「非上場会社の会計基準に関する懇談会」の設置に向けての動きがありました。非上場会社に適用される会計基準のあり方について、今後議論が進められるものと思います。

 ただし、上場企業の子会社、関連会社においては、上場企業が連結財務諸表についてIFRSを適用して作成しなければならないため、(1)IFRSに準拠した財務諸表を作成して、上場・公開している親会社に提出、(2)日本基準からIFRSへ財務諸表を組み替えるための基礎情報を親会社へ提出、のいずれかの対応を迫られることになると推測されます。

提供:株式会社TKC(2010年3月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
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