Q&A経営相談室
【法 改 正】
「改正入管法」で外国人労働者の雇用はどう変わるか
 
Q:
 09年7月に入国管理法が改正されましたが、これによって外国人労働者の雇用・労働条件はどう変わるのか教えてください。(外食産業)
 
<回答者>社会保険労務士 三留敏明

A:
 平成21年度の通常国会で「改正入国管理法」が可決・成立し、21年7月15日に公布されました。ここでは雇用管理上重要な2点に絞って解説します。

 1つは「新たな在留管理制度の導入」(公布の日から3年以内)に関してです。これは、適法な在留資格をもってわが国に中長期間に在留する外国人を対象に、法務大臣が在留管理に必要な情報を継続的に把握する制度として、新たに導入しようとしたものです。対象者には「在留カード」が交付されます。新制度の導入で、在留管理に必要な情報をより正確に把握することができるため、在留期間の上限をこれまでの3年から最長5年とすることや、1年以内に再入国する場合の再入国許可手続きを原則不要とする「みなし再入国許可制度」などの措置も導入されました。なお、この在留管理制度の導入に伴って「外国人登録制度」は廃止されます。

 この在留管理制度の対象となるのは、原則3ヵ月以上在留する外国人です。「在留カード」には写真が表示されるほか、「氏名、生年月日、性別及び国籍の属する国、在留資格、在留期間及び在留期間の満了の日、就労制限の有無」など7項目が券面に記載され、偽変造防止のためICチップが搭載されます。

 改正入管法の施行前から、わが国に在留している外国人については更新等の手続きの際に現在持っている「外国人登録証明書」と引き換えに、地方入管局で「在留カード」が交付されます。また、住居地を定めて(変更の際も含む)から14日以内に住居地を市区町村に届け出ること、氏名、生年月日、性別、国籍等を変更したときは14日以内に地方入国管理局に届け出ることが必要です。

 もう1つは「研修・技能実習制度の見直し 」(公布の日から1年以内)に関してです。

 研修生・技能実習生が実質的低賃金労働者として扱われ、さらに賃金不払い、時間外労働等の労働関係法規違反も発生しています。実務研修(いわゆるOJT)を行う場合は、原則雇用契約に基づき技能実習活動することを義務づけ、労働基準法や最低賃金法等の労働関係法令上の保護が受けられるようにする必要があります。そのため、在留活動として新たに「技能実習」が創設され、講習終了後、受け入れ企業の雇用契約に基づいて、労働関係法令が入国3ヵ月目から適用されます。当然、不正な研修・技能活動のあっせんや受け入れ団体の監督の強化、送り出し機関と本人との間の契約書の確認なども盛り込まれています。

 この在留管理制度が施行されれば、適法に中長期在留する外国人の在留情報を正確かつ継続的に把握できることになります。

 また、住民基本台帳制度の対象に外国人住民が加えられ、日本人住民と同様に外国人住民の正確な情報を把握し、各種行政サービスの適切な提供ができるようになります。わが国で就労している(しようとする)場合には、アルバイトを含めその雇用・労働条件が労働関係法規に適合していることが必要です。

 外国人労働者は、適正な雇用・労働条件のもとで働きやすくなると思われます。一方、外国人を雇用する使用者は「在留カード」等をもとに今まで通り在留資格や在留期間を確認し、適切な雇用に努めてください。また、研修生・技能実習生を受け入れている使用者は3ヵ月目から労働法規が適用されることに注意し、労働法規に基づいた適正な労働条件に配慮することが求められます。

提供:株式会社TKC(2010年1月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
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