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09年度に入ってからの日本経済は緩やかながらも回復局面にありますが、雇用者にとってはなおも厳しい状況が続いています。
今年11月に厚生労働省が発表した09年夏の1人当たりボーナス支給額は前年比▲9.7%(08年夏同▲1.0%)と過去最悪の減少幅を記録しました。昨年後半以降の世界的な需要急減によって企業収益が大幅に悪化し、業績連動給的性格の強いボーナスはまともに影響を受けた格好です。
とはいえ、事前に発表されていた日本経団連の調査(前年比▲17.5%)と比べると落ち込みは緩和されています。その理由は、日本経団連の調査には含まれていない中小企業の減少幅が、大企業に比べて小さかったからです。事業所規模30人以上の支給額は同▲11.5%と2桁減となりましたが、5〜29人の小規模事業所は同▲5.7%でした。支給対象者数をみても、30人以上事業所では前年比▲3.2%と減少したのに対して、小規模事業所は同▲2.8%とややマイナス幅が小さくなっています。中小企業ではそもそも支給水準が低く、圧縮余地が限られているということに加えて、昨年末以降の需要減ショックは輸出業種に偏っていたため、相対的に輸出業種が多い大企業でマイナス幅が大きくなったとみられます。
今年の冬のボーナス支給についても経営環境が夏から大きく改善しているとは言い難く、厳しい結果となりそうです。日銀短観(9月調査)によれば、09年度上期の経常利益は前年比▲65.3%と大幅減の見込みです。09年度下期には増益に転じる見通しですが、それでも収益水準は景気後退前の07年度下期と比べて6割程度にとどまります。
収益低迷が続く中、企業の人件費負担感は相当に強まっています。労働分配率(人件費/付加価値総額)は09年1〜3月期に71.7%と過去最高水準まで上昇した後、4〜6月期も同程度で高止まりしています。需要が持ち直しているとはいえ、価格下落傾向が強まるなど売上の本格的な回復は見込み難い状況です。企業は人件費など固定費削減によって、利益を確保する傾向を強めていくとみられます。
実際、ボーナス算定基礎となる所定内給与は今年に入って下落基調が鮮明となっています。09年の春闘賃上げ率は1.83%と6年ぶりに低下するなど正社員の給与圧縮が続くほか、正社員よりも賃金水準の低い非正社員を活用する傾向が強まっており、所定内給与の低迷は当面続く見通しです。
以上を踏まえて、みずほ総合研究所では今冬の1人当たりボーナス支給額を前年比▲9.3%と、夏並みの大幅減になると予想しました。規模別にみると、大企業で同▲10.8%と大きく減少するのに対して、中小企業では同▲5.6%と比較的小幅となる見通しです。公務員ボーナスを含めた支給総額は前年と比べて2兆円減少する見込みであり、冬のボーナスだけで年間可処分所得を0.6%押し下げる計算です。夏場まではエコポイントなどの効果で堅調を維持していました個人消費ですが、年末にはボーナスを中心とした所得減による悪影響が心配されます。
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