Q&A経営相談室
【法改正】
改正「育児・介護休業法」とは
 
Q:
 今年成立予定の改正「育児・介護休業法」について教えてください。(サービス業)
 
<回答者>社会保険労務士 山本礼子

A:
 少子化対策から、仕事と子育ての両立支援に関する施策が進められています。しかし、厚生労働省の「働く女性の実情」(平成20年版)によると、大学・大学院卒女性25歳〜44歳の離職理由は、「育児のため」18.9%、「結婚のため」16.3%となっており、育児・結婚が約35%を占めています。

 また、女性の育児休業の取得率は約90%ですが、第1子出産を機に約70%が離職しており、男性の育児休業取得率も1.56%と低迷しており、男性が子育てや家事に費やす時間は先進諸国の中で最低水準にあります。さらに、育児休業の取得を理由とした不当解雇の「育休切り」も問題化しています。

 そこで、男女ともに子育て等をしながら働き続ける雇用環境の整備として、育児・介護休業法が改正され、今年、成立予定です。

 改正内容のポイントは、5つあります。第1に、3歳までの子を養育する労働者について、短時間勤務制度(1日6時間)を設けることが事業主の義務となります。また、労働者から請求があったときには所定外労働の免除(残業させない)も義務化となります。

 現行の制度は、3歳までの子を養育する労働者に対する勤務時間短縮等の措置として、(1)勤務時間の短縮、(2)所定外労働の免除、(3)フレックスタイム、(4)始業・終業時刻の繰り上げ下げ、(5)託児施設の設置運営、(6)(5)に準ずる便宜の供与、(7)育児休業に準ずる制度、のうち、いずれか1つの措置を講ずることが義務となっています。改正後は、育児期の女性労働者のニーズが高い(1)勤務時間の短縮と、(2)所定外労働の免除の2つともが義務となり、(3)〜(7)までの措置は努力義務となります。

 第2に、子の看護休暇が拡充されます。現行は子の人数にかかわらず年5日ですが、改正後は小学校就学前の子が1人であれば、年5日、2人以上は年10日となります。

 第3に、父親も子育てできる働き方の実現に向けた改正が行われます。父母がともに育児休業を取得するときには、現行1歳までの育児休業ですが、改正後は1歳2ヵ月まで育児休業を延長して取得することができます。ただし、父母1人ずつが取得できる休業期間(産後休業期間を含む)の上限は1年で、現行と変わりません。

 さらに、父親が出産後8週間以内に育児休業を取得した場合、特例として、再度、育児休業を取得することができるようになります。例えば妻が産後休業で休んでいる時に夫が1度目の育児休業を数週間とり、数ヵ月後に2度目の育児休業をとるということが可能となります。なお、この改正に伴い、配偶者が専業主婦(主夫)の場合、これまで育児休業の取得不可が(会社側に)認められていましたが、これは廃止されます。

 第4に、仕事と介護の両立支援として、新たに介護休暇制度が創設されます。要介護状態の家族の通院の付き添い等に利用でき、1人であれば年5日、2人以上であれば年10日の休暇となります。

 第5に、育児・介護休業法の違反に対して、制裁措置が創設されます。改正後は育児休業等の取得に伴う苦情や紛争について、紛争解決の援助や調停制度が設けられます。勧告に従わない場合は公表や、報告の際に虚偽申告をした者等に対する過料が設けられます。

 これらの改正は公布日から1年以内の政令で定める日から施行されます。ただし、一部の規定は常時100人以下の労働者を雇用する企業は3年以内の施行です。

提供:株式会社TKC(2009年7月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
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