Q&A経営相談室
【雇用対策】
「雇用安定助成金」制度を活用するには
 
Q:
 いま話題になっている、休業の場合にもらえる中小企業緊急雇用安定助成金について、詳しく教えてください。(サービス業)
 
<回答者>社会保険労務士 山本礼子

A:
 雇用保険制度の雇用調整助成金が見直しされ、新しく「中小企業緊急雇用安定助成金」が平成20年12月1日に創設されました。この助成金は、売上または生産量が減少している中小企業が、従業員の雇用を維持するため、休業、教育訓練や出向を行う場合に、給与の一部が助成されるものです。

 支給限度日数は、当初は3年間で200日でしたが、平成21年2月6日から1人につき1年間で200日(3年間で300日)に引き上げられています。

 この助成金が支給対象となる事業主には、(1)中小企業事業主であること、(2)雇用保険の適用事業主であること、(3)売上高または生産量の最近3ヵ月間の月平均値がその直前3ヵ月または前年同期に比べて減少していること、(4)前期決算等の経常利益が赤字であること、という要件があります。ただし、(4)の赤字要件については、売上高又は生産量の減少が5%以上である場合は不要となります。

 中小企業事業主とは、小売業(飲食店含む)では資本金5000万円以下又は労働者50人以下、卸売業では資本金1億円以下又は労働者100人以下、サービス業の場合は、資本金5000万円以下又は労働者数が100人以下、その他の業種では資本金3億円以下又は労働者数300人以下の企業が該当します。

 売上高または生産量等の減少要件は、以前は従業員数が増加していると不可でしたが、現在は従業員数の増減は要件でありません。

 支給対象となる休業は、イ 事業主が自ら指定した対象期間1年間以内の休業であること、ロ 所定労働日の全1日にわたる休業又は、所定労働時間内に事業所の対象被保険者等全員について一斉に1時間以上休業すること、ハ 休業手当の支払が労働基準法第26条に違反していないこと、ニ 労使間の協定による休業であること、という要件になっています。ただし、平成21年2月6日から当面は、ロの休業範囲の要件が緩和され、事業所の対象被保険者等ごとに1時間以上行われる休業でも申請できます。つまり、休業の対象者は○○工場の従業員や、○○部の従業員などと限定した休業でも対象となります。全員ではなく1人1日以上の休業であっても対象となります。

 対象となる被保険者等とは、休業を実施する事業所の雇用保険に加入している従業員等です。なお、解雇予告されている者や、日雇労働被保険者、判定基礎となる期間に特定求職者雇用開発助成金などの支給対象となる者、有給休暇や育児休業などは対象となりません。

 助成額は、休業手当または平均賃金(厚生労働大臣の定める方法により算定した額)の5分の4です。ただし、1人1日あたり雇用保険の失業給付基本手当の日額の最高額が限度(平成21年3月1日現在7730円)になっています。

 たとえば、平均賃金額が1万円で休業手当を60%の6000円支給する場合、6000円×4/5=4800円×月間休業延日数となります。20人で10日休業し月間休業延日数200日の場合は、4800円×200=96万円となります。

 申請は、休業等実施計画届、事業活動の状況に関する申出書、年間休日カレンダー、就業規則、登記簿謄本、会社組織図、労働者名簿、月次損益計算書、損益計算書、休業協定書などの書類を管轄のハローワーク(又は労働局)へ休業2週間前を目安に(期限は休業前日)提出することになっています。

提供:株式会社TKC(2009年4月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
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