Q&A経営相談室
【賃金政策】
中小企業の冬季賞与の相場は
 
Q:
 “ハイパー原油高”で大打撃を受け、先行きの見通しはよくありせんが、なんとかボーナス資金は手当てしたいと考えています。今年の冬季賞与の相場を教えてください。(運輸業)
 
<回答者>みずほ総合研究所 経済調査部 シニアエコノミスト 井上淳

A:
 厚生労働省の統計によれば、今夏の1人当たりのボーナス支給額は前年比▲0.4%でした。夏のボーナスが前年割れとなるのは2年連続のことで、夏冬を通じてみれば、昨年の夏以来、3回連続して前年水準を下回ったことになります(07年夏:前年比▲1.1%、07年冬:同▲2.8%)。

 しかし、減少は小幅にとどまっており、昨年来続くボーナスの減額にやや一服感が見られた格好になっています。

 これは一部の企業でボーナスが下げ止まったためです。毎月勤労統計で6〜8月の特別給与(内訳の多くは夏のボーナス)の推移を従業員規模別にみますと、従業員5〜29人規模の事業所でボーナス削減が一段と進んでいますが、従業員500人以上の事業所では前年比プラスを維持している上、100〜499人規模の事業所や30〜99人規模の事業所でも前年水準を上回りました。夏のボーナスに一服感が見られたのは、こうした30人〜499人規模の事業所で下げ止まりの動きが見られたためです。

 また業種別でみると、建設需要の低迷で業況が厳しさを増す不動産業(前年比▲14.6%)や建設業(同▲4.8%)で減額が目立ったほか、金融市場の混乱の影響を受けた金融・保険業(同▲8.4%)や、夏場までのガソリン高で収益が圧迫されてきた運輸業(同▲3.7%)などで今夏のボーナスは減額となりました。しかし、製造業(同1.1%)が前年水準を上回ったことなどから、全体としては既に述べたように微減にとどまっています。

 ただ、こうした一服感も一時的なものとみています。ボーナス支給額のベースとなる所定内給与は緩やかながら増加していますが、夏のボーナスでは昨年冬のボーナスと同様に支給月数を調整(縮小)しボーナス支給額を抑える動きが見られました。夏の支給額が大幅な減少となった前述の業種ではこの支給月数の縮小が特に大きかったようです。

 企業がボーナスの抑制スタンスを変えていない中で、このところ景気後退感が強まっていることを考えれば、夏のボーナスが削減された業種では、冬のボーナスも引き続き厳しい状況になると考えられます。加えて、今夏ボーナスで下支え役となった製造業でも、世界経済の減速の影響を受けた輸出の落ち込みや足元の円高など企業を取り巻く環境は厳しさを増しており、冬のボーナスでは再び前年水準を下回る可能性が高まっています。

 以上のようなことから、みずほ総合研究所では民間企業(事業所規模5人以上)の1人当たりボーナス支給額を前年比▲1.6%の41万0793円と予想しています。

 中小企業(事業所規模5〜29人)に限れば、前年比▲2.7%の28万6502円と、全体を上回る減少幅になるとみています。運輸業については、夏のボーナスで前年比▲3.7%でしたが、事業規模5〜29人の中小企業では▲9.6%(但し対象企業の入替えの影響を含む)と大幅な減少となっています。運輸業などこの夏ボーナスが減少した業種、なかでも中小企業では冬のボーナスでも支給額が大幅に減少すると予想します。

提供:株式会社TKC(2008年12月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
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