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従来、我が国ではリース取引について明文化された会計基準がなく、物を融通する物融であるとの観点に立って賃貸借処理が認められ、借り手にとって、支払リース料が税法で損金算入され、リース物件の固定資産管理と減価償却処理が省略できるという経理事務、会計処理の簡便性が優先され、実務として定着していました。
設備資産を購入した場合とリースによった場合の実質的な差異は金融面であり、設備を利用することの経済的効果は購入もリースも同一です。財務面からみると、購入の場合には設備資産は貸借対照表に資産として計上されますが、リースの場合には資産として計上されず、損益計算書に「支払リース料」として費用計上されるだけでした。購入とリースによる設備資産の取得を比べた場合、(1)財務内容の企業間比較ができない、(2)リース債務が貸借対照表に表示されずオフバランスとなる、などの問題点が指摘されていました。
そこで今回(今年4月施行)、リース契約による資産の取得についても資産に計上するとともに、リース負債総額を負債に計上することに改めました。これに伴い、リース税制も改正されました。
改正「リース税制」
図表(〔『戦略経営者』2008年8月号22頁〕)のとおり、リース取引はファイナンスリース取引とオペレーティングリース取引に大別されます。法人税法ではファイナンスリース取引のみを「リース取引」と定義しています。従ってオペレーティングリース取引は、税法上のリース取引の対象外であり、賃貸借取引として扱われます。
実務上大部分のリース取引は所有権移転外ファイナンスリース取引による契約になっています。
〈賃借人(借手)の税務処理〉
(1)リース資産の取得価格……原則として、「リース料総額+付随費用」がリース資産の取得価額となります。ただし、リース料の総額のうち利息相当額を合理的に区分することができる場合には、リース料総額から利息相当額を控除した金額を取得価格とすることができます。
(2)リース資産の減価償却方法……借手のリース資産の減価償却方法は、「リース期間定額法」となります。
従来通り支払リース料として経理した場合は、その金額を償却費として損金経理した金額に含まれることになります。この場合、賃貸料として経理した金額がリース期間定額法により計算される償却限度額と同額(償却超過額又は償却不足額が生じていない)の場合は、課税所得金額に影響しないため、申告調整は不要となります。
(3)リース税額控除の廃止と通常の税額控除制度の適用……措置法上も法人税と同様、所有権移転外リース取引は売買取引に準じた処理を行い、当該リース取引を「資産の取得」と取り扱われます。この結果、「リース税額控除制度」は廃止され、代わりに資産を取得した場合に適用される通常の税額控除制度の取り扱いと同じように、売買価額全額を対象とする税額控除を適用することができます。
(4)減価償却制度の特例の不適用……次に掲げる減価償却制度については適用できなくなります。
・少額減価償却資産(10万円未満)
・一括償却資産(20万円未満)
・機械及び装置の増加償却
・特別な償却方法の選定
中小企業者等の少額減価償却資産(10万円以上30万円未満)の特例については適用できます。
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