Q&A経営相談室
【法  律】
「改正最低賃金法」の内容を教えてください
 
Q:
 最低賃金法が改正されたと聞きましたが、そもそも最低賃金法とはどういうもので、当社にも関係があるのでしょうか。(飲食店経営)
 
<回答者>社会保険労務士 山本礼子

A:
 憲法25条第1項において、「全て国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」という生存権が保障されています。憲法27条第2項では、「賃金、就業時間、休憩その他勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める」とあり、労働基準法が定められています。労働基準法第28条では「賃金の最低基準に関しては、最低賃金法の定めるところによる」とあります。したがって、最低賃金法は、憲法で保障されている生存権を具体化した法律です。違反した場合には、労働刑法違反として重い罰則となります。

 最低賃金法では、地域や産業の種類によって賃金の最低額を定めています。この最低賃金額によって、労働者の生活の安定をはかることを目的とし、社員、アルバイト、パートタイマーなどを問わず原則全労働者に適用されます。

 最低賃金額は、「地域別最低賃金」と「産業別最低賃金」の2種類があります。地域別最低賃金額は毎年10月頃に改正され、平成19年10月19日発効の最低賃金時間額(地域別)では、東京都は739円となっています。最低賃金は、厚生労働省や労働局のホームページなどで確認ができます。

 例えば東京都の事業所では、時給者は739円以上であるということです。日給者の場合は日給÷1日の所定労働時間が739円以上でなければなりません。また、月給の場合は月給÷1ヵ月平均の所定労働時間が739円以上であることが必要です。1ヵ月平均の所定労働時間が150時間の会社では、739円×150時間=11万850円以上の月給でなければなりません。なお最低賃金の対象となる賃金は、1) 結婚手当などの臨時賃金、2) 賞与、3) 時間外割増手当、4) 休日割増手当、5) 深夜割増手当、6) 精皆勤手当・通勤手当・家族手当は除かれます。

 最低賃金は、完全歩合給制の場合にも適用されます。このため、従業員の成績が悪く、営業売上が○円であっても、製品完成が○個であっても、労働時間×739円(東京都)は絶対に支給しなければなりません。労使合意で最低賃金を下回る額を契約したとしても、無効扱いとなり、最低賃金額と同様の契約とみなされます。なお、不法就労の外国人であっても、最低賃金法は適用となります。

 今回の改正では、生活保護の水準と最低賃金の水準との整合性をとることで、いわゆる「ワーキングプア」をなくしていくことを目的としています。賃金格差が広がるなか、最低賃金額引き上げへの要望が高まっていたからです。

 そこで、地域別最低賃金の原則として「労働者が健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるよう、生活保護に係る施策との整合性に配慮するものとする」という規定が盛り込まれました。現在の全国平均687円を今後どこまで引き上げるかが議論されています。なお、派遣労働者は派遣先の事業場の所在地の地域別最低賃金を適用することが規定されました。

 産業別最低賃金は自動車製造業809円など地域別最低賃金より高いため、廃止要求がありましたが、特定最低賃金として枠組みは継承されています。産業別最低賃金は時間額と日額がありますが、改正後は時間額のみとなります。

 また、罰則が厳しくなり、地域別の最低賃金額を支払わなかった場合、使用者は50万円以下の罰金(現行2万円)に処されます。施行は平成19年12月5日から1年以内です。

提供:株式会社TKC(2008年2月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
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