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飲食店のパート・アルバイト(以下P/A)の採用状況は、近年、急激に悪化しつつあります。
従来、人手が足りなくなったら求人誌などで募集すればよいと考えられていたP/Aが、最近は応募ゼロといったケースも多いようです。このため、採用したP/Aの定着率をいかに高めるかは重要な問題になっています。
大手外食チェーンでは、賃金の前払い・日払い制度、きめ細やかな昇給、時給の他に手当支給といった制度を導入して定着率の向上をはかっているようですが、中小企業の飲食店では、こうした大手チェーンの手法を取り入れるのは難しいかと思います。
そこで、比較的P/Aの定着率が高い店に共通する傾向や手法をいくつか挙げてみました。
働きやすい勤務体制
P/Aの定着率を高めるためには、まず彼らの立場に立って、長く続けやすい環境を整える必要があります。
学生や主婦など“本業”があるP/Aは、それを妨げない勤務形態を望んでいます。例えば、学生なら試験期間中は勉強に専念したいとか、主婦であれば子どもが家にいる週末や夏休みなどは休みたい、といった具合です。こうした本来の生活を大事にする人ほど必ずしも高給でなくとも、自分に合った働きやすさが確保されれば、まじめに長期間働いてくれる可能性が高いのです。
世の中には週末に休みたい人もいれば週末だけ働きたい人もいますから、定着率の高い店では決してP/Aに正社員と同じフルタイム勤務を望まず、勤務シフトを細かく割り振ってP/Aが希望する日時に休むことができる体制にしています。むろん、そうした人たちが都合よく集まるはずはありませんが、時間をかけて根気よく一人ずつ確保していくわけです。
ある店では、常に店内外に「スタッフ募集」の張り紙を出しておき、必要人員より多めのP/Aの登録者を確保しています。こうすることで、全員が希望する日時に休むことが可能になり、定着率を高めるのに成功しています。
店内ルールを厳格に定める
飲食店の従業員が辞めてしまう大きな理由の一つとして、店内での人間関係などのトラブルが挙げられます。こうした問題に「それは個人的なことだから」といって関与しない経営者や店長もいますが、それではスタッフは定着しません。飲食店の作業は個人プレーではないため、人間関係のトラブルは仕事のモチベーションに直結します。
勤務時間や金銭トラブル、公私の混同、上下関係といった人間関係の問題に発展しやすい事柄にはキチンとした店内ルール(ハウスルール)を決め、店長をはじめ全員がこれを厳格に守ることが大切です。とくに飲食店の場合、厨房の調理人がこうしたルールを形骸化してしまうことが多いのですが、ルールを決めたら「知らなかった」といわせないように、周知徹底することが重要です。
例えば、学生アルバイトの多いある店では「店内恋愛は禁止」というルールを決め、従業員同士が交際する場合には、どちらか一方は辞めてもらうというルールを作り、厳しく守らせています。もちろん、交際すること自体は悪いわけではありませんが、そのことで他のスタッフが働きにくくなる事態を避けるため、どちらかに辞めてもらっているそうです。
お客にとって魅力ある店が繁盛するのと同じように、P/Aも魅力ある店であれぱ長続きするはずです。働く人の立場に立った“魅力”ある店づくり取り組むことが定着率向上の第一歩です。
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