Q&A経営相談室
【資金調達】
保証協会の流動資産担保保証の活用法
 
Q:
 中小企業信用保険法の一部が改正され、中小企業が金融機関から借入する際、信用保証協会が保証を行う担保対象に「在庫」が追加されたと聞きました。その活用法を教えてください。(機械部品製造業)
 
<回答者>ファインビット代表 中小企業診断士 中村 中

A:
 
先の通常国会で中小企業信用保険法の一部を改正する法律が成立し、従来は「売掛金」のみを担保対象にしていた流動資産担保の保証協会保証が、新たに「在庫」も担保に見てくれるようになりました。全国の信用保証協会はすでに8月6日からその取り扱いを開始しています。
 これまでは商品の販売プロセスにおいて「在庫」や「売掛金」である間は、いわば売主がその資金を立て替えていたわけですが、その資金の借入が出来ることは実に有難いことです。かつては金融機関や保証協会の担保は、定期預金・不動産・株式であり、売掛金や在庫などの「流動資産」は担保の埒外でした。これら流動資産を担保にする協会保証付借入は、より大きな金額で、しかもより安い金利で調達できるものと思われます。

「正常運転資金貸出」の融資

 しかし多くの中小企業にとって、これは手放しでは喜べません。「売掛金」担保の協会保証は先行してスタートしていましたが、これには販売先の企業やその売掛金に関する取引基本契約書など取引状況の資料を提出しなければならず、また原則、売掛債権の明細を毎月金融機関に報告することや、申し込む金融機関に返済専用口座を設けて、担保の売掛債権を同口座に振り込むよう売掛先企業に変更の交渉をすることが必要になっています。
 しかし中小企業の場合、販売先への発言力が弱く、自社の売掛金管理事務も強くはありません。当然、これは「在庫」についても言えることです。
 つまり「売掛金や在庫」を担保に協会保証が出来るようになっても、多くの中小企業は各地の保証協会の厳格な条件や事務負担の大きさに、なかなかついていけないということです。
 それなら保証協会がその保証条件を緩和すればいいではないかと考えるかもしれませんが、現実にはそのような対応は出来ません。この「売掛金や在庫」などの流動資産担保は、あくまで借り手企業の管理下にあるもので、従来の金融機関管理下にある定期預金・不動産・株式の担保とは違います。
  例えば担保処分でその貸出の回収をしようとする時に、貸手の金融機関が実際に企業内部にある「売掛金や在庫」を処分したり、企業の業況悪化局面でも企業内にある「売掛金や在庫」の帳簿内容を信頼できるものに保ってもらえるかといった点を、明確にしておかなければならないのです。だからこそ売掛金担保の協会保証は、借入企業に厳格な条件を課していたのです。
 もともと協会保証は中小企業支援を目的にしているので、近い将来にはもっと使いやすい保証条件になると思われますが、現状ではこの条件を乗り越えられない企業もかなりあるはずです。
 しかし、この厳しい保証条件をクリアしようとする多くの企業の努力が徒労に終わることはありません。
 金融機関が貸出を行う時のバイブルであり、金融庁の手引書である「金融検査マニュアル」は、この「売掛金や在庫」にかかわる資金立替のニーズを「正常な営業活動を行う時の運転資金貸出(正常運転資金貸出)」として、金融機関に信用扱いで積極的に融資することを勧めているからです。
 この保証協会の流動資産担保保証をきっかけに、「売掛金や在庫」の立替資金ニーズを明確にして、御社もぜひ金融機関から信用扱いの「正常運転資金貸出」を受けていただきたいと思います。

提供:株式会社TKC(2007年9月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
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