Q&A経営相談室
【法律改正】
改正パートタイム労働法の中身と注意点
 
Q:
 通常国会に提出された改正「パートタイム労働法」とはどのような内容の法律改正なのでしょうか。また、その注意点は何かを教えてください。(飲食業)
 
<回答者>社会保険労務士 山本礼子

A:
 パートタイム労働法の正式名は「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」で、同法は平成5年に制定されました。平成15年には、「事業主が構ずべき短時間労働者の雇用管理の改善等のための措置に関する指針」が出されました。
 
今回の改正の背景には、まずパートタイム労働者の状況変化があります。総務省の労働力調査によると、パートタイム労働者の数は急増していて、平成17年には1266万人となり、雇用者総数に占める割合は女性雇用者中では40%、男性雇用者中では12%にも達しています。
  もう一つの背景は、人口減少に伴い労働力人口も減少の一途を辿っており、今後は高齢者や女性、若年層に労働市場へ参加してもらいたいということがあります。そこで、パートタイム労働者の処遇を見直すという観点から、今年4月に法律改正が成立する予定です。

4つの改正ポイント

 改正内容は、第1に労働基準法で書面による明示が義務付けられている事項に加え、「昇給、賞与、退職金の有無等の労働条件の書面による明示」の義務化です。現在は、昇給、賞与、退職金の有無等は社員もパートタイム労働者も口頭でもよいとされています。このため社員に関しては就業規則を明示する方法などが用いられていますが、パートタイム労働者は個別に条件が異なるケースが多いため、就業規則による適用が難しい場合もあります。そこで改正後はパートタイム労働者の昇給、賞与、退職金の有無等は書面よる明示(交付)が義務化されたわけです。
  第2に「通常の労働者と同視すべきパートタイム労働者については、待遇について差別的取扱いをすることを禁止する」ことが規定されました。通常の労働者と同視すべきパートタイム労働者とは、(1)職務の内容が社員等の通常の労働者と同一である、(2)期間の定めがない労働契約(契約期間があり、繰り返し更新をしている者を含む)、(3)正社員と同様の職務の変更(人事異動)がある、という3点にあてはまる者をいいます。この規定により、パートタイム労働者の職務、意欲、能力、経験、成果等を勘案して職務関連の賃金を決定することと規定されました。なお、賃金の中には、通勤手当、退職手当等は除かれます。
  第3にパートタイム労働者が「通常の労働者等への転換」を配慮することです。具体的な転換推進の措置内容は、(1)通常の労働者の募集に関する情報を遅滞なく周知する、(2)通常の労働者の募集に応募する機会を与える、(3)一定の資格を有するパートタイム労働者を対象とした試験制度など通常の労働者への転換制度を導入、のうち一つ以上の実施となりました。
 第4に「苦情処理と紛争解決援助」が強化されたことです。パート労働法の義務事項や禁止事項に関する案件で、パートタイム労働者から苦情を受けた場合、自主的な解決を図ることが努力義務となりました。さらに紛争の場合には、調停のために必要があるときに、当該事業所の労働者を参考人として出頭を求め、意見を聴取することができると規定されました。
  この改正は平成20年4月1日施行予定です。が、「待遇について差別的取扱い禁止」の規定が対象となる人は、パートタイム労働者のうち4〜5%と想定されており、少ないようです。しかし、パートタイム労働者をめぐる法律改正は今後も続くと思われますので、パートタイム労働者の職務内容や勤務時間について見直しをすることが重要となります。

提供:株式会社TKC(2007年5月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
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