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法人企業統計で18.4半期連続の増収・増益を記録するなど好調な企業業績を背景に、賃上げ機運は確かに高まっているようです。実際、帝国データバンクの調査によれば、2007年度に一時金などを含めた賃金改善を実施する(見込み)と回答した企業の割合は44.0%と、昨年よりも10.6%ポイント上昇しました。
今年の春闘では賃金改善はもとより、昨年から復活したベースアップ(ベア)の拡大に注目しています。賃上げには、定期昇給(定昇)とベア(賃金表の改訂)があります。失業率が5%を超える高水準で推移していた02年以降、各労組はベア要求を断念して雇用維持を春闘の最優先としてきました。しかし、今年は連合が昨年を上回るベア(もしくはベア復活)を方針として掲げるなど、ベア要求の動きは広がりをみせつつあります。ベアによる月例給与の引き上げは、一時金等の算定にも影響するため、賃金全体の増加に結びつくことが見込まれます。
こうしたなか、みずほ総合研究所では、主要企業の07年度春闘賃上げ率を前年比+1.90%(前年同+1.79%)と予想しています。中小企業の賃上げ率は同+1.56%(前年同+1.47%)と、小幅ながらも4年連続で拡大すると見込んでいます。金額ベースでは主要企業6125円、中小企業3863円となる見込みです。
賃上げ率の拡大を見込む理由としては、(1)労働分配率の低下、(2)人手不足の深刻化、があります。
労働分配率(人件費/付加価値額)は02年以降、低下しています。景気回復期には、付加価値の増加によって、労働分配率は低下する傾向にありますが、大企業ではすでにバブル期の最低水準を下回っています。そのため、労組側の賃上げ要求に対応する余力は高まっているといえます。
さらに、少子高齢化が進行するなか、今年は団塊世代の退職が本格化することも重なり、企業の人手不足感は深刻化しています。最近では賃上げの主な理由として「労働力の確保・定着」を重視する企業が増加しており、賃上げによる人材確保が急務となりつつあります。新卒採用の争奪戦が激しさを増していることから、06年度の学卒初任給は多くの業種で前年を上回りました。
もっとも、賃上げの上昇幅は、過去に比べると緩やかなものになるとみています。賃上げ相場を左右する上場企業が、大幅な賃金上昇には依然、慎重な姿勢を崩していないからです。アジア諸国との競争激化のほか、年金保険料率の引き上げなど先行き福利費の増加が予想されるため、企業は固定的な月例給与の賃上げに対して抑制的な姿勢をとらざるをえないのが実態のようです。
なお、業種別にみると、堅調な外需に支えられて好業績を維持した製造業では、昨年を上回る賃上げ率が見込まれます。一方、消費の低迷などから収益が低調だった卸売・小売業、サービス業などの賃上げ率は、他の業種に比べて小幅にとどまる可能性が高いとみています。 |