Q&A経営相談室
【新規出店】
2店舗目の運営を息子に任せたいのだが…
 
Q:
 20年ほど洋食店を一店舗でやっていましたが、2年前に修業先から戻った息子が地元周辺での多店舗化の提案をしました。息子に新規の2店舗目を任せたいと考えていますが、注意点を教えてください。(洋食店経営者)
 
<回答者>商業環境研究所 代表 入江直之

A:
 後継者の育成と多店舗化は、どちらも多くの飲食店経営者が頭を悩ませている課題です。ご質問者の場合は、ご子息が地元周辺での多店舗化を提案されたとのことですが、まず多店舗化を展開するにあたって何を考慮すべきなのかといえば(1)出店立地、(2)投資の考え方、(3)商品(メニュー)・店舗オペレーション、といったことがポイントになるかと思います。

 これまで1店舗だったところが2店舗目を出すというのは、「オーナー自身の目が行き届かない店舗を管理する」という課題を抱えることになります。とくにメニューや価格は後からでも変えられますが、店舗はなかなか変更することができないため、出店立地と物件の選択は非常に重要です。
 ご質問者の場合、20年ほど洋食店を行っているということから恐らく地域で評判の人気メニューがあり、それが固定客の確保にもつながっているようですので、これを踏まえた出店物件の選択がカギとなります。考え方としては「本店のお客様を取り合わない程度に遠く、それでいて本店の評判は届いている範囲」というのが理想的です。例えば電車なら1駅程度、あるいはターミナル駅なら駅を挟んで街の反対側といった所が想定されますが、管理上、店舗間の交通の便は良くないといけません。
 次に、出店投資に関してですが、昨今では内装工事の技術も向上し、居抜き物件などを活用して、かなり低投資でも出店できる方法があります。直接工務店などに発注する前に、まず一度、飲食店舗の経験が豊富な設計者に相談することをお勧めします。
 よく「店は私が作ってあげるから、あなたは店長として毎月○○万円売ればよい」といった言い方をする経営者がいます。しかし、これでは店長に経営感覚が身につきません。新規店の立ち上げに伴って、投資をどのように売上につなげるのか、またそのために必要な経費をどうコントロールするのか――といったマネジメントの基本を店長となるご子息に身につけさせることが必要です。このため、投資と回収を検討する資金計画の段階から、息子さんを参加させるのがよろしいでしょう。
 商品構成は、あくまで既存店の人気メニューを軸にして組み立てるべきですが、新規店の店舗オペレーションは原則としてご子息に任せるべきです。オーナーが目標となる経営指標は提示するにしても、店の管理を任せたならば、細かな運営方法についてはあまり口を挟むべきではありません。ただし、新規店での固定客づくりが当初の予想通りにいってないような場合は「美味しい料理さえ出していればお客様はついてくる」とか「流行のメニューやコンセプトを採り入れればよい」など安易な姿勢に流れていないかどうかをチェックする必要はあるでしょう。
 二世経営者といってもいろんなタイプの人がいますが、例えば黙っていてもお客様がくるような有名店で修業したことのある人の場合は、とかくプライドが高くなりがちで、来店してくれるお客様への感謝の気持ちが薄いということがあります。料理の腕などに自信を持つことは大切ですが、独りよがりになると、前述したように、固定客づくりに手こずることになりかねません。
  いずれにしろ、既存店の常連客を最初からあてにするのではなく、2店舗目は独自のファンづくりに取り組み、投資した資金をいち早く回収することが重要だと思います。

提供:株式会社TKC(2007年3月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
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