Q&A経営相談室
【賃金政策】
中小企業の今冬ボーナス支給額は
 
Q:
 水産物加工の会社を経営しています。賞与を検討するための参考にしたいのですが、中小企業の今冬一人あたりのボーナス支給額はどれくらいになるでしょうか。(食品製造業)
 
<回答者>みずほ総合研究所 大和香織

A:
 企業業績の好調が続くなか、民間企業の今冬ボーナスは3年連続で前年を上回る見込みです。
 みずほ総合研究所では、今冬の民間企業(事業所規模5人以上)1人当たりボーナス支給額を、前年比プラス1.2%の43万8306円と予想しています。人手不足感の強まりから企業の採用意欲は旺盛で、支給対象となる雇用者数も増加する見通しです。そのため、民間企業のボーナス総額(1人当たり支給額×対象者数)は前年比プラス2.4%の16.5兆円を見込んでいます。
  中小企業(事業所規模5〜29人)に限ると今冬の1人当たりボーナス支給額は約31万円、前年からの伸び率は全体と同程度になると予想しています。なお産業ごとの支給額は一概に比較はできませんが、一般に製造業全体では産業平均の1.1〜1.2倍、食品製造業では0.6〜0.7倍程度の水準となっているようです。


恩恵は確実に波及

 3年連続の増加とはいえ、企業収益が過去最高を記録している割には、プラス幅や支給額がやや小さいのではないか、という印象をもたれるかもしれません。
 その理由として、パート労働者の影響があります。予想に用いた統計では、パートを含む全常用労働者を分母として一人当たりボーナス額を算出しています。パート労働者はボーナスが支給されないか、されても少額なため、正社員の人たちの実感からすると控えめな数字となっているのです。
 また2006年以降、小規模事業所を中心に所定内給与が伸び悩んでいることも、増加幅を抑制した要因と考えられます。ボーナスは「所定内給与×支給月数」で算出されますが、2006年上期の所定内給与は前年比マイナス0.1%と3期ぶりの前年割れとなりました。
 一般に人手不足感が強まると、企業は欲しい人を採用するために、賃金など労働条件を他企業より魅力的にする必要がでてきます。2006年9月の日銀短観では企業の人手不足感が強まっていることが示されており、賃金は本来上昇しやすい状況にあるといえます。しかし先ほど指摘したとおり、賃金の伸び率は低調です。その背景として、今のところパートからフルタイム、あるいは正社員へといった雇用形態の改善による対応が主で、なかなか賃金上昇には結びついていないことが影響していると考えられます。
 こうした傾向は当面続くとみられることから、今冬ボーナスの算定基準となる2006年下期の所定内給与も低調な伸びにとどまる見込みです。
 一方、ボーナス支給月数については順調に増加するとみています。支給月数の目安となる2006年度上半期の企業収益は前年比プラス9.5%と2005年度下半期(同プラス7.3%)から伸びを高めているためです。昨年以降、企業業績と支給月数の連動性が強まっており、所定内給与は伸び悩んでいるものの、ボーナス支給月数の増加を通して業績回復の恩恵は確実に雇用者に波及しているといえるでしょう。

 

提供:株式会社TKC(2006年12月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
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