Q&A経営相談室
【法 改 正】
次期通常国会に提出される「労働契約法」とは
 
Q:
 2007年通常国会に提出される「労働契約法」とはどのような内容の法律なのですか。当社にも関係するのでしょうか。(印刷業)
 
<回答者>社会保険労務士 山本礼子

A:
 ご質問のとおり「労働契約法」という新しい法律が2007年の通常国会に提出される予定で審議が現在進んでいます。平成18年9月11日の労働政策審議会では、厚生労働省側より「労働契約法制及び労働時間法制の今後の検討について」という議論の叩き台も示され、労働契約法の内容が具体的になってきています。
 そもそも現状の労働条件などについては労働基準法によってルールが定められていますが、今回この新しい法律を定めようとする背景には、少子化の進展、ホワイトカラー労働者の増加、就業形態・就業意識の多様化などに対応して、多様な働き方を実現できる労働環境の整備が必要ということがあるようです。
 新法案の主な内容ですが、まず労働契約と就業規則の関係が明らかにされ、「労働基準法を遵守した合理的な就業規則がある場合は、個別に労働契約で定める部分以外については、当該事業場で就労する個別の労働者と使用者との間に、就業規則による労働条件による旨の合意が成立しているものと推定する」と明文化することが検討されています。
 第二に、重要な労働条件に係るルールの明確化です。出向、転居を伴う配置転換(転勤)、転籍などの場合には、その辞令の際に改めて書面による労働条件の明示を義務付けるなどのルール作りが検討されています。
 第三に、労働契約の終了の場面のルールの明確化があげられています。現在、労働基準法において「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」と規定されています。この規定を労働契約法へ移行し、さらに整理解雇の4要件(人員削減の必要性、解雇回避措置、解雇対象者の選定方法、解雇に到る手続き)などの要件を明文化することも議論されています。


「解雇の金銭解決」も検討対象

 他にも、解雇をめぐる紛争が長期化していることから、労働審判や裁判において解雇が争われる場合で、労働者の原職復帰が困難な場合には、これを金銭で迅速に解決する仕組みなどが提案されています。
 また、労働基準法改正により「労働時間法制度」の見直しが提案されています。その中では、一定時間数以上の長時間の残業をさせた場合には割増賃金の引き上げ等も検討されています。
 さらに、ホワイトカラー労働者の自立的な働き方の創設も提案されています。自立的な働き方をする者とは、使用者から具体的な労働時間の配分の指示を受けない者であることや、使用者から業務の追加の指示があった場合は既存の業務との調節ができる者であることなどが過去の議論の中で示されています。この対象者は、労働時間、休憩、残業・深夜業に関する割増賃金などの規定が適用されないことになっています。
  以上が主な内容で、現在も議論の最中ですが、使用者側からは「現行の労働基準法などで十分に労働者は守られており、新法は不要」、労働者側からも「自立的な働き方は現行の裁量労働制度等で十分なので不要」という意見もでています。この新法は、人事労務管理上の重要な部分に関する改正であるため、動向を注視してほしいと思います。

 

提供:株式会社TKC(2006年11月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
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