Q&A経営相談室
【労務管理】
業務専用の携帯電話を支給したいが…
 
Q:
 営業社員に会社所有の携帯電話を支給し、業務専用の使用を義務づけたいと考えています。どんな点に注意したらよいでしょうか。(自動車販売業)
 
<回答者>社会保険労務士 三留敏明

A:
 携帯電話は、個人生活でも仕事でも、便利で欠かせない情報機器として定着しています。しかし、私有の携帯電話を暗黙の了解で業務に使用させたり、何の対策もとらずに会社から携帯電話を支給したりすることは、さまざまな問題を起こすことにつながります。ここでは、労務管理の視点から、プライバシーの問題、情報管理の問題、企業秩序の問題を整理し、その対策として「携帯電話管理規程」についてふれたいと思います。

携帯電話管理上の問題

 携帯電話はどこへでも持ち出せるため、適正な管理を放置しておくと、純粋な業務利用か、無断の私的利用か、不明確になりがちです。放っておくと見過ごすことができないものになってきます。会社で通話記録を管理することが求められますが、パソコンのメールと同様に、プライバシーの干渉ととられかねません。携帯電話の支給にあたっては、事前に通話記録の照会を行うことなどを周知させておく必要があります。
 また、携帯電話の紛失・盗難が増加しています。警視庁の調査では、遺失物のうち携帯電話は6番目に多い(平成17年度は約9万5000台)とされ、かつ増加率は顕著に増えています。携帯電話には、氏名、電話番号、メールアドレスなどの個人情報が記録されている場合が多く、携帯電話の紛失・盗難が個人データの漏えい事故につながる恐れがあります。携帯電話を紛失した場合、社員は安全管理義務違反となり、会社も社員の監督責任を問われます。会社としても、適切なセキュリティ対策を講ずる必要があります。社内規程等により携帯電話の使用に必要な安全管理措置を定め、周知徹底しておくことが重要です。
 その他、病院や公共交通機関での携帯電話の使用によるトラブルや、運転中に携帯電話で取引先との通話中、前方不注意で事故を起こした場合の責任の所在などについても、将来的にあり得る問題です。今まで以上の管理と社員の協力が必要になります。

「携帯電話管理規程」の作成

 会社支給の携帯電話における私的利用の制限など、社員の行動を規制する場合には、「携帯電話管理規程」などで詳細な取り決めをしておくことで、社員の意識のすり合わせを前もって行うことができます。こうした対策で、運用面の不公平感をなくすことや社員の余計な誤解を防ぐこともできるようになります。
 管理規程の内容は、「目的=効率的な使用と事故防止」、「管理者=統括管理責任者の明示」、「使用要件者=職種や地位などの明示」、「使用届出・返還=使用手続きの明示」、「使用者の義務=管理の責任、運転中の使用禁止、公共の場での配慮、私的利用禁止、無断貸与禁止等」、「使用状況調査=通話記録の照会」、「会社の求償権=私的利用の通話料金請求」、「損害賠償=紛失、破損、その他損害の賠償」、「懲戒=規定違反の際の懲戒」などです。私有携帯電話の業務利用の規定を盛り込むこともできます。
 会社から支給される携帯電話やパソコンを社員が私的に利用した場合の懲戒処分については、従来からの会社の電話を使った私用電話の場合と同様に考えることができ、職務専念義務、職場での私的行為、企業秩序違反が問題となります。

 

提供:株式会社TKC(2006年9月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
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