Q&A経営相談室
【情報技術】
営業支援システム(SFA)構築の留意点は
 
Q:
 営業力強化の手段としてSFA構築を考えています。成果を高めるためのポイントを教えてください。(印刷業)
 

<回答者>中小企業診断士 ローズマインド代表 香川 哲

A:
 勘と経験と根性の3Kスタイルから脱却して、科学的、システム的な営業スタイルに変革させるITツールとして注目されているのが、営業支援システム(SFA)です。パソコン、携帯情報端末(PDA)、携帯電話などを使って営業活動を支援します。
 主な機能としては、「顧客情報の管理」「顧客との商談記録」「営業マンのスケジュール管理」などがあります。SFAを通じて営業日報を作成すれば、客先や案件ごとに商談履歴を容易につかむことができ、新規アプローチから契約成立までの営業プロセスの管理が行いやすくなります。また、ネットワークを通じて社内で情報共有化ができるため、チーム内の連携がスムーズになります。結果として、営業のスピードアップ、営業品質の向上が期待できることになります。
 SFA構築は、システムベンダーの協力のもとパッケージソフトを自社向けにカスタマイズする方法が一般的です。SFAの導入時については、特に以下の2点を注意してください。
(1) 事前に営業マンにSFA導入の目的、必要性を十分に理解させること。
(2) 最初は1営業所のみで実施し、不都合な点を改善した上で、全社に導入すること。

 事務機器などを扱うある販売代理店は、商談活動の強化を目指しSFAを導入しました。その会社では、営業マンを集めて説明会を実施後、まずは1つの営業所だけで試験稼働を数ヵ月間行いました。そこで自社の営業スタイルに不具合のある部分を修正したうえで、全社に導入しました。運用上不都合な点がすでに改善されていたことから、特に大きな問題が発生することなく、すべての営業マンが効果的に活用するようになりました。

「営業プロセス」の検証も重要

 次に、SFAの運用に当たっては、下記の内容に配慮してください。
(1) 部下の行動管理だけを利用目的にしない。
(2) 営業データ(顧客情報や商談情報など)のインプットを各営業マンに徹底する。ただし入力項目は最小限に。
(3) 情報システム部門主導ではなく、使用する側の利便性を重視して、営業部門主導で運用する。

 SFAを構築すれば、それだけで営業生産性が良くなるというわけではありません。営業管理者が部下の行動管理だけに使用し、適切なアドバイスを行わないために、営業担当者が営業データの入力を怠るようになってしまったという失敗事例もあります。また、あまりに詳細なデータのインプットを強要したばかりに、それに時間を取られてしまい本来の営業活動が疎かになってしまったというケースもあるので注意が必要です。
 また、いくらコンピュータに詳しいからといって、営業現場の事情がよくわからない情報システム部門が主導的な立場でSFAを運用すると、様々な問題が噴出する恐れがあります。あくまで営業部門が主体となって運用したほうが良いでしょう。
 SFAを運用していくなかで、営業マン一人ひとりの行動内容、つまり「営業プロセス」がデータとして明らかにされていきます。見込み客へのアプローチからいくつかの商談を経て契約に至るまでのプロセスが可視化されるわけです。SFAを導入したからには、それら「プロセス・データ」を採取・分析し、効率的な営業活動を行っているかどうかの検証をすることをお薦めします。それを通じて、最適な営業プロセスが全社で標準化されるようになれば、着実に“強い営業組織”が形成されていくはずです。

提供:株式会社TKC(2006年8月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
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